【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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主人公アブダクション編
あぁ無丈


「……馬鹿者め……」

 

 つぶやくものが一人。

 これは、旅禍侵入、また五番隊隊長、藍染惣右介他隊長3名の裏切りから、一週間が経ようとしていた。

 

「あっ! 朽木さん! 起きてたんですか!」

 

 ここは病室。

 すでに誰もいない病室で、殻のベッドを見つめている朽木ルキアは、冴えない男……山田花太郎に話しかけられる。

 

「どうしたんですか?

 そういえばさっき朽木さんのことを探している旅禍の……いえ、客人の方がいましたよ」

「あぁ、それはありがたい。

 ……念のため聞いておくが、女性だったか?」

「えぇ、そうですね。

 確か井上さん? でしたっけ?」

「あぁ、それであっている。

 そうか、私のことを探していたか……」

「なんか布を持っていたんですけど……なんのようだったんでしょうか?」

「布……?」

 

 ルキアはなんの心当たりもないため、なおさら不思議に思う。

 

「まぁ良い、私が探しに行こう。

 おそらく井上も少しすればこちらの方にもどってくるはずだからな」

「あ、はいっ」

 

 山田花太郎は、仰々しく返事をする。

 未だに花太郎の中ではルキアの印象は高貴というイメージがあるままなので、もちろんなのだが。

 

「ところで、なんで……

 なんで、一護さんの病室に来ているんですか?」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「チャドくーん!」

「ふぅ……」

 

 織姫は、勉強部屋と呼ばれる場所を訪れていた。

 本来織姫はここを知らないはずだが、道中で聞き回ったところ、何をどう間違ったのか、この勉強部屋にたどり着いた。

 

「あぁ、あんたは一護の……」

「えっと……阿散井、さんだっけ?」

「あぁ、どうしたんだ? こんなところまで」

「えっと、朽木さんを探してて……」

「ルキア? あいつなら今日はなにか用事があるって朝早くから出たけど……」

「えっ! そうだったんだ!」

 

 織姫の呼びかけに返事をしたのは、阿散井恋次。

 事件当時は傷こそ深かったが、護廷十三隊の誇る医療チームの活躍で、現在では全快するに至っている。

 そんな彼は現在、チャドとともに訓練を行っていた。

 

 事件当時に傷が浅く、体を持て余してたチャドは、自身の弱さを自覚し、現在はどこかにでかけていて、瀞霊廷内にいない夜一から勉強室の存在を聞き出し、利用していた。

 

 本来なら誰にも話していないはずなのに、織姫が急に現れたことに驚いていたのだが、織姫特有の謎の行動力のせいかと、少し安心した。

 

「チャドくん、今日も訓練?」

「……あぁ」

「やっぱり、気がかり?」

「そうだな。

 俺はあの時、何もできなかった。

 あの場にいたのに、何も、できなかった」

 

 自身の拳を握る。

 チャドは、悔いていた。

 あの時を。

 

 その舞台にすら上がることができなかった、自分に。

 

「なぁ、こいつっていっつもこんな感じなのか?」

「え? いつもって?」

「ほら、こんな感じで辛気臭い感じで」

「いつも……」

 

 阿散井に聞かれ、思い出してみる織姫。

 いつものチャドは、たしかに言われてみれば辛気臭い雰囲気を出していたかもしれない。

 けど、それでも辛気臭いとは何一つ思わなかった。

 

 それは……

 

「うーん……そうだな、私は辛気臭いとは思わないなぁ」

 

 織姫は、知らないフリをした。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「よぉ、またか?」

「あぁ、行くぞ」

 

 場所は変わり、瀞霊廷内、高台。

 ここは先の事件でも大きく関わりのある、極刑の執行場所である。

 そこで木刀を持ち、戦うのは二人の男。

 

 一人は、オレンジ髪の死覇装を纏った青年。

 もう一人は、太陽のような髪型をした、傷だらけの大柄な男。

 

「それじゃあ」

「行くぞ」

 

「黒崎くーーーん!」

 

 そんな二人が、剣呑な様子を醸し出している最中、大きな声がかかる。

 その声に青年……黒崎一護はずっこけ、大柄な男……更木剣八は、ため息を付いて木刀を肩に担いだ。

 

「あ、ごめんなさい、なにかしてる最中でした?」

「いいや、死にたがりの相手は飽きてきたからな、俺はどっかに行ってる」

 

 声をかけた井上は、剣八に断りを入れるが、剣八は面倒くさそうにため息を付いて何処かへ去っていった。

 その様子に、一護は声をかけ損なうが、すでに剣八の姿はない。

 

「ごめんね、邪魔、しちゃったかな」

「いや、大丈夫だ。

 剣八もやる気じゃなかったみたいだしな」

「うん、そう、みたいだね」

 

 井上織姫は、知っている。

 事件が起きて3日後。

 黒崎一護はその重症の体を起こした。

 

 そして、今に至るまで、ひたすらに鍛錬を行っている。

 

 もちろん、卯ノ花から厳重に言われ、斬魄刀を使用したものは禁止されているが、それでも毎日どこかしらで訓練をしている。

 

 織姫はそれを知っている。

 知っている上で、声をかけることができなかった。

 

 でも今偶然、ルキアを探すのに夢中になっていて、声をかけることができた。

 なにか、なにか話をしよう。

 そんな思いが、何故だか織姫の胸中にはできていた。

 

「で、どうしたんだ?」

「あ、そうだ、えっとね、朽木さん、見てない?」

「ルキア?

 見てねぇな、あいつ、かなり重症だっただろ?」

「あはは……見てないなら大丈夫、かな」

 

 黒崎くんがそれを言う?

 そんな言葉を胸にしまい込んで、織姫は愛想笑いをする。

 

「ところで、さっきまで何してたの?」

「ん? あぁ、剣八のやつに頼んでさ、訓練してたんだ。

 次に備えて」

「うーん、黒崎くん、体休めたら? そのほうがいいと思うよ」

「……まぁ、そう、かもな」

 

 黒崎は、織姫の言葉に、地面に倒れ込んだ。

 会話は、ない。

 そうして生まれるのは、この状況の生み出した、今はここにいない人物。

 

 織姫は、我妻源氏という男との接点が少ない。

 もちろん、ないというわけではないが、その関係性はただのクラスメイト止まり。

 

 だからこそ、少しだけ、ほんの少しだけ、織姫は嫉妬してしまっている。

 我妻源氏、という存在に。

 別に黒崎を取られたわけではない。

 でも、黒崎一護、茶渡泰虎の心は、確実に連れて行かれてしまった。

 

 我妻源氏という男に。

 

「黒崎、くん」

「ん? なんだ?」

 

 本当は、言ってしまいたい。

 

 彼なら大丈夫だ。

 

 彼なら戻ってくる。

 

 心配する必要はない。

 

 そう、織姫だからこそ言える言葉。

 

 ずるい、言葉。

 

 だからこそ、

 

「……ううん、なんでもないや、訓練、がんばってね」

 

 言えなかった。

 

 一護がその言葉に返答をしようとした、その瞬間、

 

ヒューーーーーー

 

 なにかが落ちる音がする。

 どこか、聞き覚えのある音。

 それは、遠くの方から聞こえて、

 

ダダダダダダダダダダダダッ!!!

 

 地面に並ぶ。

 

 そう、それは一護らが侵入するときにも阻んだ、壁。

 瀞霊廷を守るために造られた、いまだ破られていない壁。

 

「あれは……」

「なにか、来たってこと?」

 

 一週間。

 一週間しか、いや、一週間もというべきなのであろうか。

 

 その時の長さは、その人が判断する程度のものであり、

 

 今この時、敵は襲ってきてもおかしくはない。

 

 だからこそ、自然と、二人の体に力が入る。

 

「ふたりともっ!」

 

 そこに駆けつけたのは、ルキア。

 

「ルキアっ!」

「朽木さんっ!」

 

「ふたりとも、よく聞いてくれ」

 

 ルキアはすでに帯刀をしており、臨戦態勢と言った状態でいる。

 そして息も絶え絶えに、苦笑いをしながら、

 

「旅禍だ」

 

 一護、織姫の体がこわばる。

 悪い予感があたったか、そんな気持ちが胸中に広がる。

 

「すでに身元が判明している」

 

「一人は、四楓院夜一」

「一人は、浦原喜助」

 

「そして、最後の一人が……」

 

バァン!

 

 降りてきた壁の一つが、上に跳ね上がった。

 まるで、スーパーボールのように上にはね飛んだそれを、思わず見ながら、

 

「我妻、丈」

 

 その言葉だけは、しっかりと聞こえた。

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