【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「さて、キミには選択肢が2つ存在してる」
拝啓、現世の皆様、元気にお過ごしでしょうか
「一つは藍染隊長の言うことを聞いて、素直に我妻丈を殺すこと」
私の方は、まだギリギリ生存はしています。
「もう一つは、ここで死ぬこと」
そりゃ、生きることにかけては、とかなんとか言われている手前、正直いやもう無理だわ、って場面でもそれなりに火事場の馬鹿力という名前の小さなプライドを燃焼して生きてきましたが、
「で、どうする?」
「ぁあ我妻丈をぶっ殺します!!!」
「ほらね?」
「話には聞いたとおりだね。
だが、本当に彼はやるのかい?」
俺が今、目の前にしているのは、はじめましてな悪の親玉、藍染惣右介さん。
そして、にっくき半殺し友達、市丸ギンさん。
最後に、こちらは名前しか知らないはじめましてな隊長さん、東仙要さん。
キャトられた俺は、いつの間にか気絶して窓のない真っ白い建物に閉じ込められている。
そういえば気絶する前まで総隊長と戦ってたもんだから気絶するよねそりゃ。
「いやいや、この子はやるでぇ。
なんせ隊長と連戦全生存。
それに扱う技はあの我妻丈と同一のもんや」
「そうだね。
我妻丈は確かに強力だ。
それも、こちらの戦力的に相性が特に悪いと来ている」
「しかし、このような人間を利用する必要はないのではないでしょうか」
「要、だからこそ、彼を利用するんだ。
我妻丈という、世界における異分子を倒すためには、彼のような異分子を利用しないといけないんだ」
ちなみに俺を無視して完全に会話が繰り広げられています。
その間、一応情報を集めるために周囲を見渡すが、何の情報もない。
窓がないから外の景色を確認するすべがない。
霊圧を探ろうにも、ここばかみたいな霊圧の人が多すぎてまともに索敵できている自信はない。
多分鬼強い人は10人? なのかなって感じなんだけど、ここまじでおっきい霊圧が入り乱れすぎててよくわからん。
あと、俺の傷が良くなっている。
具体的には全治一ヶ月から一週間くらいに治ってる。
おそらく気絶してからそんなに時間も経ってないと思うから、そんなに回復しているはずはないんだけど、もしかしたら目の前の三人のうちの誰かが治してくれたのかもしれない。
「わかりました。
それで、彼をどうするんですか?」
「あぁ、それなら、いいもんがあるんですよ」
そんな思考に耽っていると、目の前でなにやら話が一段落したようで、市丸ギンがなにやらふところから取り出した。
「これ、面白い首輪でね」
取り出したのは、黒いチョーカー。
ただの紐に見えるそれは、おしゃれ目的でつけていても何ら問題はなさそうな代物だ。
「これはつけるだけでその本人の微弱な垂れ流しの霊圧を使って機能する優れもので」
そのチョーカーをブンブンと指に引っ掛けて振り回しながら、こちらに近づいてくる。
なにやら嫌な予感がする。
非常に嫌な予感がする。
「これ、つけるとその人の命令に従わなくならないといけなくなるんですよ」
「えっと……それ、洗脳的なアレですか?」
「あら、流石は滅却士か、ここにいるだけで調子が良くなるんか」
「その回復の様子だと、おそらくもう虚空は使えるのかな?」
「いや、僕が見る限りまだ虚空モドキは使用していましたけど……」
俺の話しかけに、手が止まる。
よし、このまま忘れてくれれば、と言うかこれはやばい、なんかやばいのがわかる。
「あの!」
ならば、やるしかない。
「俺、ほんっとに死ぬ気でジジイ……我妻丈を殺してきます!
昔……一年前も、こんな感じで俺さらわれてあのジジイと戦えるのは俺しかいないって言われて!
その時修行で虐められすぎて本気で殺してやろうと思ってマジで本当に殺しに行ったんですよ!
結果の方は聞かなくても明白だとは思うんですけど! 最後まで倒れないで10日間ぶっ続けで戦い続けたんですよ自分!
別に本当に手を抜いていたとかではなく、本当に本気でやって軍の支援とかもあってやってたんですけど、なんか軍のほうが物資の無駄とか言ってやめちゃったんですよね! あのときは後一ヶ月戦い続ければなんとかなるとは思ってたんですけど!
だからほら、俺そういう裏切り行為とかめっちゃ得意なんでその首輪は本当にいらないとおもうんですよね!」
懇願詠唱。
その昔、言えない国の軍が俺のことを今回みたいに同様に拉致って同じような状況になった時があって、そのときはこれで信頼を勝ち取った。
「……」
そう、ドレッドヘアーの人! その目だよ!
そのドン引きの目! 命がかかってるからって堂々と肉親ぶっ殺す発言とか引いちゃってほしい!
あわよくばそれで同情とかしてくれると尚良し!
そんでもってこっちの市丸さんは……
「そうかそうか」
あめっっっっちゃ笑顔!
すごい! しっかり目の笑顔だ!
止まらない!
逃げるしか……
「動くんじゃない」
ピタっ
俺の動きが、止まった。
正確には、俺の体が意思に反して動くのをやめた。
それは、ただ一つの生理的反射から。
恐怖。
俺は、目の前の藍染惣右介の霊圧に当てられ、動きを止めた。
それは、銃を目の前にして立ち止まる一般人のように。
あ、俺だったらその状況でも動かない自信はあるけど。
「さぁ、ギン、つけてくれ」
「はいはい」
あっ、だめっ、あーーーーーっ!!!
☆☆☆☆☆
「驚くほどに、普通だね」
「ですよね」
藍染は、ギンに語りかける。
「過去、滅却士の一掃は、本懐を達成しつつも、一つの大きな問題を残した。
それが、我妻丈。
彼の存在は、それほどまでだった」
「確かに、昔に乗り込んできたときは、本当にえげつなかったなぁ」
「あの時、我妻丈もともに消えたことは予想外だったけど、予想内の予想外だった」
「そして、それがあったから、こうして目の前に我妻丈を殺すための手札が現れた」
「彼には鏡花水月を掛ける必要もない。
そして、崩玉もまた、彼には見向きもしない」
藍染は、手元にある、四角い箱に入った謎の文様の入った玉……封印された崩玉を弄びながら、見つめる。
ギンは、その言葉に返すことなく、軽い調子で話を変える。
「それにしても、東仙さんに預けてよろしかったんですか? 彼?」
「あぁ、おそらくだが、彼の戦い方はそれこそ東仙が一番教えやすいだろう。
それに……」
「それに?」
「……いや、まだ彼には早いだろうから、大丈夫だよ」
☆☆☆☆☆
「それではまず、こちらに打ち込んできてくれ。
ただし、鬼道を使わずに、白打と剣術のみで」
「えっと」
「どうした? やらないのか?」
「いえ、それより、ここどこかなって」
拝啓、背景が砂だらけで非常に困っています。
「ここは虚圏、虚たちの住む世界だ。
現世と尸魂界の間に存在して、ここには多数の虚が存在している」
「あ、ありがとうございます」
冗談はさておいて、俺は実質死刑台の上に常時首をかけている感じになってしまった。
さっきの首輪、大事なところを端折ってしまったが、あの首輪はつけたものの命令に背く、もしくはつけたものが命じる事によって、急速に収縮して首をチョンパする代物らしい。
当然、俺につけたのは市丸ギンであるから、彼が命じれば俺はいつでも死に放題なのである。
全くもってお得ではない。
そして、俺にくだされた命令は、4つ。
『藍染惣右介が自害を命じたら、自害すること』
『東仙要が自害を命じたら、自害すること』
『ニヶ月以内に我妻丈を倒すこと』
『強くなること』
最初の2つは、わかる。
これがあれば例え市丸ギンが命じていなくとも、俺を処刑することはできる。
そして3つ目、これもわかる。
最初俺がキャトられた時点でわかっていたことだけど、キャトられるということは、俺に使い道が存在するからキャトるわけで。
なので俺は割りと生き残れるんだろうなぁ、とか思ってここに来たらなんとびっくり首輪をつけられたという話。
そして最後。
市丸ギンは面白そうだし、命じておく、と命令したけど、俺にとっては意味不明なものだ。
強くなる、という命令に反するということは誰が判断するのだろうか。
市丸ギンが成長してないなって思った瞬間死ぬのか。
色々考え事をしていると、
「そちらから来ないのなら」
眼の前の東仙さんが、
「こちらから行くぞ!」
こっち来た。
そして一瞬で俺の輝かしい頭脳が感知する。
あ、殺気ゼロ
優しい
やばい、当たる。
これは当たる。
というか俺の体が避ける気力をなくしている。
絶対当たる。
ほら
「いっっっっってぇ!」
「なんで普通に受け止めるんだ!?」
「……ありがとうございます」
「なぜ攻撃を受けて感謝をするんだ!?」
ありがとう、ございます。
なんで俺、敵の攻撃で優しさ感じてるんだろう……。