【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「まぁ、確かにいきなり言われても理解できないっスよね」
「はい」
「そういう時こそどちらとも言えない感じの返事ではないんじゃないんスか?」
「まじでわからないので」
「……変なところ真面目なんスね」
わからないところはしっかりと分からないと発言する。
そうしないと行けないって身に教えられた(修行時代)
「それで、クインシーというものについて、でスね」
「死神と違う点は、人間か死神以外では、何があるんですか?」
「結構違うっスよぉ」
BLEACHは設定というよりオサレというものが先行しているイメージなので、設定に関しては初見もいいところだ。
ぶっちゃけ今だってそんな違いないんだろ、とか思っていると、
・死神が虚を倒すと成仏。クインシーが倒すと消滅する。
・死神は斬魄刀使う、クインシーは空気中の霊子を使う
クインシーが虚を倒すと消滅するのか。
後クインシーの空気中の霊子を使うとか意味わからんな。
具体的に何が違うのだろうか。
「あれ? 何も思わないんスか?」
「へ?」
「一応、滅却師はクインシーと同じなので、源氏さんも虚を消滅させているんスよ」
「そうなんですか」
「……やけにさっぱりしてるっスね」
「……なんか考えるところ有りましたか?」
浦原さんが俺のことをしげしげと見る。
何を見ているのだろうかと気になるが、
「あ、殺してる的な?」
「まぁ、本来は成仏するはずの魂を消滅させているので、多少は思うところがあったんスけど」
「いやだって殺されそうになっといて、殺し返すのになんか思わなきゃいけないんですか?」
「丈さんのお孫さんっすね」
「なんかむかつく言い草ですね」
別に今更虚になんの思い入れもない。
家族であろうが何であろうが、殺されかけたら殺し返す。
自分の命最優先だ。
今更死んでしまった他人の命まで気にかけるほど俺はできた人間ではない。
そんな俺の様子に、浦原さんは少し苦笑いしながらも、話を続ける。
「それで、クインシーはその虚を殺すという性質故に、現世と尸魂界の魂の均衡を崩す可能性があったので、200年前に一気に粛清が行われました」
「粛清」
「まぁ、殺したんですよ」
「俺は?」
「丈さんが唯一の生き残りです」
「粛清したのに?」
「丈さんは特殊な人だったんです」
「そうなのか……」
確かに他に呼吸を使っている人を知らないので、その粛清が行われたというのは納得できるのだが、ジジイは流石に強かったのか。
三年修行しても一太刀も入れれないから、てっきり俺が才能ないのかと思っていたわ。
「あ、丈さんから『ここらへんで自分が才能なかったわけじゃなかった』とか勘違いすると思う、って連絡きてましたよ」
「クソジジイェ……」
一緒にいる期間が長かったというか、修行時代のときは基本的にジジイとしか相手にしてこなかったので、こういうのは基本的に読まれる。
ムカつくけど、その通りではあるので沈黙する。
「まぁ、これがクインシーの歴史です。
詳しく話すともっと長くなるんですが、今回は割愛しますよ」
「まぁ、俺としては滅却師の方の話を聞きたいのですが」
「そうでスね。
ここからが滅却師の話に入ります」
身構える。
この話には聞き覚えなんてものはないだろう。
それに俺が今後の生き方を考えるのに必要な話であるには違いない。
「滅却師。
クインシーが虚を殺すために技を磨いたのに対し、滅却師は死神を目指した人たちです。
滅却師は死神と同じ様に、少しだけ特殊な刀を使い、虚と対峙します。
本来なら、肉体的に遅れを取るはずの滅却師でしたが、とある技で虚に対抗することに成功します」
「あぁ」
「そうです。
源氏さんも使っていた、呼吸による霊子の取り込みっス。
クインシーが空気中の霊子をそのまま外部で操作するのに対し、滅却師は体内に取り込んで、自身の霊体に取り込みます。
一時的に死神に迫るほどの魂を持ったことによる膂力で、滅却師たちは虚に立ち向かっていきました」
「ほう」
「……一応聴くっスけど、理解できましたか?」
「クインシーは武器を創る。
滅却師は呼吸を使う」
「大体合ってるっスけど……」
そうですね、と少し考える浦原さんは、自身の顎に手を当てると、
「ちょっとだけ、失礼しますね」
いきなり俺の額を杖でつついてきた。
少し押された感覚。
何をするんだ、と抗議をすると同時に感じる倦怠感。
「もとに戻しますけど、一応わかりやすく実践です」
俺の間の前には、浦原さんと、地面に突っ伏している俺がいる。
「は?」
「今、源氏さんの魂魄を体から一時的に切り離しました。
いわゆる生霊ってやつっス」
体を確認すると、ギプスもしているし、何か変わったところは……
「鎖?」
「生きている人は、魂魄と体がそれで繋がれています。
体とのつながりを持っているからっすね」
「切れるとどうなりますか?」
「虚になります」
あっぶね。
こういう知らないもの見ると壊しちゃうタイプなんだよな。
そっとしとこ。
「それで、その状態だと息苦しくないっすか?」
「まぁ」
「なんでそんな平気そうなんスか?」
「こんなので音を挙げていたら死にますよ?」
「いやいや、何普通のコトみたいに言ってるんスか。
普通の人は立っていられないような状態なんスよ」
いやそういうのではないのだ。
過去の体験に基づく常識なので、たしかに一般の常識ではないのは把握している。
けど、俺の体が覚えているのだ。
この程度でへばると死ぬ。
「それで、なんでこうしたんですか?」
「あぁ。
その状態で、呼吸してみてほしいんスよ」
「……はい」
どういう意味かわからないままに、呼吸を行う。
もちろん常中。
するとどうだろうか。
俺の体に何かが集まってくる感覚がある。
それは口から入り、俺の体を満たしていく感じがする。
「それが霊子を取り込み、肉体を強化する、ということっス。
それにより霊体に多くの霊子を集め、肉体にも影響を与え、動けるんスよ」
「すげぇ」
「まぁ、そういう原理だ、ということなので」
浦原さんは、俺が驚く様子を見ながら、何かを投げ渡した。
小さいそれは、俺の手元に飛んで来る。
「薬?」
「はい。
もとに戻るときはその薬を飲んでください。
別に戻らなくてもいいっスけど、離れてると勝手に鎖外れる可能性がありますよ」
素早く飲む。
カプセル錠のそれを飲むと、俺の体が引っ張られるような感じがする。
その感覚に従って力を抜くと、
「それが滅却師の特徴です」
畳とキスしてた。
あ、体の方に戻ったからか。
起き上がろうと腕を使う。
あ、やべ、右腕……
「……治ってる?」
「ああのカプセル錠には、霊体の肉体情報を優先させる効果を付けておきました。
霊体だと傷の治りも速いので、先程の呼吸で結構治ったんスね」
普通に嬉しい。
刀を振るう分には問題ないんだけど、右のほうがやはりやりやすいので助かる。
ギプスがまだ付いたままだが、このままでは学校の連中に何か言われる可能性があるので、付けてはおく。
「滅却師はその能力により、多くの犠牲を出しつつも、虚を消却していきました。
後はクインシーと同じく、200年前に大粛清が起こり、その血筋は途絶えた、ということです」
「俺の親ってどうなってますかね?」
「……源氏さんのご両親は、滅却師ですら無く、普通の人でしたが、その霊的能力の高さから虚に襲われ……」
「あ、呼吸は継承しなかったんスね」
「本人の意向、だそうっス」
そうか。
呼吸習ってれば死ななかったのかぁ……
少し残念のような。
でもそれでいて、普通に生きた親というものを考える。
「俺は、呼吸覚えててよかったですね」
「そりゃまたどうして」
「友達守れたんで、それで十分ですよ」
俺が赤子のときとかに両親は死んでいるので、思い出はない。
だから悲しむとかはないのだが、少しは思うところもある。
けど、それで俺が今を後悔しているということにはならない。
「ま、こんなのが虚とその周辺の話っす」
「そうですか……」
話を整理しながら、とりあえず自分の事を中心に考える。
俺はなんで生まれた?
多分クインシーはいる。
石田くんのはずだ。
顔の見覚えはあったし結構頭良かったけど、なんのキャラか忘れたし、一護たちともつるまないんだよな、と思っていた。
クインシー枠だ。
まぁ、石田くんかどうかは置いといて、俺の設定、なんか追加設定みたいじゃないか?
こう……適当に考えた雰囲気のあるというか……
「そういえば、呼吸って死神が使えるんですか?」
「あ、それに関しては無理でしたね」
「そりゃまたどうして」
「単純に、霊子を操る力ってのが我々は低かったんっスよ。
呼吸によって取り込んだとしても、その多量の霊子を体内でなんとかできる能力がなかった。
それに、死神の魂魄から出る霊力が空気中の霊子と混ざり合わないのが大きな要因でしたね」
「……やろうとしたんですか?」
「へ?」
浦原さんの答え方に、俺は思ったことを口にした。
「だって、なんか妙に実体験っぽいし……」
話し方が、なんかテストで問題が解けなかったときのような話し方だった。
なんだかそれがそう見えた。
「いやいや、人づてに聞いたんスよ。
人聞き悪いなぁ」
「人聞きも何も怪しさ満点な状態で何言ってるんですか……」
「お? 流石にミステリアスハンサム店主オーラが伝わってきたっすか?」
「なわけ」
浦原さんと談笑する。
しばらくし、お茶を飲み終え、菓子を食べ終わり、当たりも暗くなった。
「送っていきましょうか?」
「別に大丈夫です。
腕も治りましたし、これもあるし……」
俺は背中に背負った袋を指す。
そこには先程頂いた月輪刀があるのだが、
「そういえば、これってなんすか?」
「月輪刀っすか?」
「はい」
「その刀は滅却師が使う刀で、呼吸と同じ原理でその刀の中に多量の霊子を含むことによって、虚に対し頑丈に作られています」
「なんか能力はあるんですか?」
「多量の霊子を確保するために、使い手の霊力を吸い取ります。
あ、微量なのでそんな問題はないっすよ。
困ったら呼吸してください」
「それ以外には?」
「へ?」
「へ?」
俺と浦原さんの間に流れる沈黙。
え、もしや、
「これってただの刀?」
「そりゃそうですよ。
頑丈な刀です」
「なんか、こう、浦原さんの刀の能力的な……」
「そんなの無くても呼吸でなんとかなるでしょう?」
「俺だけ?」
「昔からッスけど」
良かったのか悪かったのかは置いといて、まぁムカつく。
こんな能力使える感じ出しといてただの刀って。
「……これって持ち歩いたほうがいいですよね」
「そうでスね」
「危なくないですか?」
「あ、それに関しては、袋に迷彩の効果を付けておきました。
充電の続く限り霊的なものとなり、隠してくれますよ」
袋をまじまじと見る。
あ、メーターある。
これ充電か。
……え? 布に充電?
機械的なのを探すがない。
「ちなみに丈さんからの餞別なので、あたしにはお礼とかはいいっすよ」
「ジジイが……」
俺の両親のこともあるのか、やけに優しいな。
いつもそうであってくれよ。
「それじゃあ、また今度ー、源氏さん!」
二度とこないような人生であることを望みながら、俺は帰路に着く。
俺は知らなかった。
この時、既に一護は死神になっていたことに。
☆☆☆☆☆
「大丈夫っスか?」
「もちろんです」
「いやぁ、黒崎さんが覚醒するためには邪魔なので、と思ったッスけど」
「どの程度の実力だと?」
「右腕を負傷していて副隊長中堅クラス。
だけど恐らく死のかかった場面だと、もっと評価は上がるっすかねぇ」
「それほどまでとは」
「丈さんから少しは聞きましたが、どんなスパルタだったのやら……」
「丈殿は昔から度が過ぎますから」
「それ、本人の目の前で言わないでくださいっすよ。
あたしがしばき倒されます」
「それにしても、話さなくても良かったのですか?」
「何を?」
「色々、とです。
詳しくは知りませんが、外野にいた私でも、あの説明では不十分だとはわかっていますよ」
「ボクは説明が下手ですから……」
「あぁ、そういう設定でしたね」
まだ原作一巻が終わらないのですがゆっくり見ていってください。
明日は投稿できません。