艦娘の満載排水量   作:是反

8 / 10
村雨ちゃんが拗れてしまった続編になります。
前編を読んでなくても問題ないです。

[村雨の場合:ムラムラ村雨篇]
https://syosetu.org/novel/245902/6.html



村雨の場合Ⅱ:続・ムラムラ村雨篇

イケナイことだと理解していた。

 

「ハァ……ハァ……」

 

こんなことしていてはダメだと、強く理解していた。

 

「んぅ……んっ、んっ……」

 

(こんなことダメ……ダメなのに……)

 

それでも止められない。

淫らな衝動を抑えることが出来ない。

 

(提督、戻って来ちゃう、誰か来ちゃうかもしれないのに……こんな、こんなところで……私、シちゃってる……!)

 

"こんなところ"というのは、執務室……提督と秘書艦が職務をする神聖な部屋……そんな場所で自慰に耽っているのは、白露型三番艦・村雨であった。

 

(お腹、たぷたぷして苦しい……ちょっと、痛い……)

 

それもそのはず、彼女は膀胱になみなみと水分を溜め込んだ状態で行為に臨んでいたからだ。

もちろん偶然ではなく、わざとである。

彼女は、尿を溜め込んだ状態で自慰をする少し変わった趣向の持ち主だった。

元々はその趣向に自己嫌悪を抱いていたのだが、ついにはそれを受け入れたのだった。

 

(ごめんなさい……こんな場所でこんなことして、村雨、とっても悪い子です……でも、でも……!)

 

気持ちいい。

それは手、指よりも強い力を掛ける為に"机の角"を使っているからだろうか。

秘書艦用の机にのしかかるようにして小刻みに体重をかける。

掛けた力の分だけ、机が秘所を押し返す。

角が秘所に沈み、離れる……その繰り返し。

 

(そろそろ誰か来るかも、帰ってくるかもしれないから、一旦止めなきゃ、やめ、なきゃ……いけないのに……)

 

前傾姿勢で机を掴みながら、身体を小刻みに上下に揺らす。

スカートはめくれ上がり、机の上に広がっている。

白い下着は直接机の角に当てられており、布地が吸いきれなくなった"水分"が机に付着している。

下着と水気が奏でる淫らな水音と、村雨の押し殺した切ない声だけが響いていた。

 

(もうちょっと、もうちょっとで……)

 

もう少しで達する、その予兆を感じ取り気持が高まる。

 

「あっ……だめ……出るのは……」

 

それにつられて小水の方も身体を飛び出そうとする。

"そちら"は許可していないと身体を強く机に押し付け、押し止める。

彼女は内心、このギリギリのせめぎ合いを愉しんでいる部分もあった。

 

コンコン

 

そんなお愉しみは一つの乾いた音に中断させられた。

 

「っ……!」

 

素早く居住まいを正して席に着く。

机の濡れた部分は持っていたハンカチで拭って証拠隠滅。

 

「は、はぁ~い……」

 

『危なかった』という安堵と『もう少しだったのに』という口惜しさ、若干の疲労が混ざった声色で返事をする。

返事は無いままドアが開けられ、軍服を纏った男性が部屋に入ってきた。

 

「戻ったよ」

 

「お、お帰りなさい」

 

この部屋の主とでもいうべき提督が戻ってきた。

 

「……何か変わりは無かったか?」

 

「は、はい、特に何も……」

 

さっきまでしでかしていたことなど言えるはずもない。

 

「顔が赤いが大丈夫か?」

 

ずっと室内で座っていたはずの人物が顔を真っ赤にしていたら誰でも気になるだろう。

 

「え?そ、そう?別になんにも、なんともないわ」

 

言葉とは裏腹に、火照った身体はまだ静まっていない。

加えて腹部には大量に水分を抱えたままだ。

 

「そうか、体調が悪かったら言うんだぞ、休憩もしてきて良いからな」

 

ただ欲望のまま愉しんでいただけなのに気遣われ、少しの罪悪感が芽生える。

短く返事をしつつ、すぐに意識を切り替えた。

本来は仕事へ向けられるべきなのだが……。

 

(お、おトイレ……そろそろ、キツイかも……)

 

今日は最初から腹に水分を抱えて執務に臨んでいた。

秘書艦の時にこんなことをするべきではないと理解していたが、好奇心が勝った。

 

(さっき、シちゃったからかな……余計に……)

 

提督は工廠に赴いて長時間の離席……元々はそこまでするつもりは無かった。

敢えて執務中尿意を我慢してみよう、と思った程度だったのだが、高まる好奇心を抑えきれず自慰に耽ってしまった。

 

(集中、集中……お仕事……お仕事……)

 

気を紛らわして尿意を忘れようとする。

ペンを手に取り、書類に向き合う。

しかし目が泳ぐ、文字を認識しても頭に入ってこない、ペンは所在なくフラフラ揺れるだけ。

この調子では仕事など全く進まない。

 

「……村雨、大丈夫か?一息入れるか?それとも手洗いなら行って来ていいんだぞ?」

 

紅潮した顔に、落ち着きのない所作。

明らかに集中していない村雨を案じ、提督が声をかけた。

 

「っ!だ、大丈夫!大丈夫だから……!そういうのじゃなくて、その、何でもないから……」

 

とっさにそう答えてしまった。

この時に素直にトイレに立っていれば良かったのだ。

そう思うのはもう少し後の話。

 

「くれぐれも無理はしないでくれ、君たちは身体が資本だ」

 

その資本を先ほどまで実に有意義に使っていた彼女は申し訳ない気持ちで一杯になる。

が、それもすぐに強烈な尿意に上書きされる。

身体の動きは最小限に、声色は努めて平静に。

そうして必死で気取られないよう取り繕う。

 

「村雨は、大丈夫、心配してくれてありがとうね」

 

半分自分に言い聞かせるように『大丈夫』という言葉を絞り出す。

一旦は納得した提督がすぐに彼の手元にある書類に目を向け、村雨から意識を外す。

するとすぐに空いている手を股座に滑り込ませ、秘所をギュウギュウと押さえつける。

 

(んっ……)

 

小水が漏れ出ないようにするための行為……なのだが、同時に幾ばくかの心地よさも感じてしまっている。

 

(な、何考えてるの村雨、提督の、前なのよ?どうして別のことを考えているの?)

 

自問する。

今は尿意を抑え込むのが第一、そして執務に取り掛かることが第二、そう考えていたはず。

提督が居る前で気持ちよくなろうなどと考えるべきではない。

 

(でも、こうしていないと、辛い、から、仕方ない、の……)

 

自分に言い訳をする。

 

(早く出したい……おトイレで全部出しちゃいたい……けどもう少し、もう少し、もう少しだけ……)

 

我慢のためか自慰のためか分からないぼんやりした思考の中で、手だけは動き続けていたが。

 

コンコン

 

意識の外から響いた音に驚き、手を止める。

 

「入れ」

 

「軽巡・大淀です。失礼します」

 

聞こえた言葉で執務室に人が来たと遅れて理解する。

その後間を置かず大淀が礼をしながら入室した。

 

「提督、報告があって参りました」

 

「言ってくれ」

 

手に持ったバインダーには何枚かの書類が挟まれている。

それについての報告だろうか。

提督の意識は大淀の言葉と書類に集中する。

 

(い、今のうちに……!)

 

意識が自分に向けられないこの瞬間を好機と見るや、両手を股座に滑り込ませ、思い切り力を加える。

 

「ふっ……ん……」

 

少し声が漏れ出てしまったが"下から"漏れ出るよりはずっといい。

両の足を思い切り閉じてすり合わせ、指先に力を籠める。

 

―――――本日の水道設備点検ですが、遅れが………

 

大淀が何かを提督に報告している。

 

―――――わかった、先に開発を済ませて正解だった………

 

―――――ええ、水回りが使えないと………

 

二人の会話は聞こえてくるが聞いていない。

右から左である。

彼女は絶賛尿意と格闘中だからである。

 

―――――了解した、聞いていたと思うが村雨………村雨?

 

誰かが誰かを呼んでいる気がする。

 

「おい、村雨?」

 

「…………へ、え、あ……は、はい、村雨です!」

 

しまった、と思った。

自分が呼ばれていることにすら気付いていなかった。

 

「どうした、さっきから調子悪そうだぞ」

 

「い、いえ、何でもないの、何でも……」

 

「……」

 

提督が訝しげに村雨を見る。

まさか尿意を我慢ているとバレやしないだろうか。

視線に晒される間、身動きせずじっと堪える。

 

「……そうか」

 

視線が外され、大淀に向き直る

 

「大淀、報告ありがとう」

 

「はい、それでは私はこれにて失礼します」

 

大淀は提督と村雨に綺麗な礼をして、執務室を後にした。

 

「さて……」

 

提督は受話器を手に取り執務再開。

村雨も、執務に取り掛からねばならない。

何せ今日の仕事は殆ど進んでいないのだ。

彼女の自業自得であるが。

 

「えっと……」

 

書類に向き直る。

 

(遠征の、報告書……じゃない計画書、えっと時期は……違う、これじゃなくて……)

 

しかし頭が回らない。

意識の大半が下腹部に持っていかれている。

 

(さ、さすがにもう、我慢、出来ないかも……でもさっき「何でもない」って言っちゃったし、今更おトイレ行きたいなんて……)

 

素直に打ち明ければ良いものを、先ほどまで"愉しんでいた"ことによる罪悪感から妙な心配をしてしまう。

『わざと我慢していたのか』『変なことをしていたのではないか』『何故さっき言い出さなかったのか』そんなことを思われる、言われるのではないかという杞憂。

後ろめたい気持ちがあるからこその不安。

 

(ど、どうしよう、本当にそろそろ……)

 

コンコン

 

そう思い始めたとき、またしても来訪者が現れた。

 

「入れ」

 

「駆逐艦・時雨、失礼します……」

 

姉の時雨の登場に少しばかり動揺する。

とっさに我慢の仕草を止めて居住まいを正す。

 

「すまないな急に……村雨、午後からの秘書艦は時雨と交代だ、今日はもう休んでいてくれ」

 

突然のことに目を見開き、提督と時雨を交互に見る。

 

「え、あの……どうして……」

 

怯えるような表情と声色で提督に問う。

 

「体調を崩しているからだ、すぐに自室に帰って休んでなさい」

 

「そ、そんな、私なんとも……」

 

「じゃあ、どうしてそんなに仕事が進んでいないんだ?」

 

当然、今朝から別のことに熱中していた為である。

 

「それは……」

 

自白などとてもできない。

 

「顔が赤いし、時々苦しそうにしているし……頑張ろうとする心意気は良いが、そういう時は素直に申告してくれないと君が苦しい思いをするだけじゃなくて、最終的にはみんなが困るんだ、わかるね?」

 

正に今、苦しい思いをしている。

 

「これからは秘書艦でもなんでも、体調が悪ければきちんと申し出ること、そして今日は身体を休めること、これは命令だ……良いね?」

 

「は、はい……申し訳、ありません……」

 

言い訳も反論もできず、ただただ失態を認め、謝罪するしかできなかった。

 

「分かればよし、じゃあ時雨、今日残りよろしく頼むよ」

 

ドアのすぐ横に立つ時雨に目をやる。

彼女の目は村雨をじっと捉えているが、心配するというよりも何かを見定めようとする目だった。

 

(うぅ……やっちゃった、私、こんなことしてたから提督にも時雨姉さんにも迷惑を……)

 

椅子を引いて立ち上がる。

歩こうとするとパンパンに膨れた水風船が揺れるような感覚に襲われるが、今は申し訳なさで胸がいっぱいでそれどころではない。

提督に一礼し、出口と時雨の方に向き直り、歩みを進める。

 

「し、時雨姉さん、今日の秘書艦、よろしくお願いします……」

 

姉の近くまで行き、謝罪の意を込めながら礼をする。

時雨はやれやれといった表情をしながら村雨に顔を近づけ……。

 

「……ほどほどに、しときなよ?」

 

まるで諭すような口調で時雨はそう言った。

 

「…………え?」

 

「ほら、あとは僕に任せて戻ってて」

 

「あ、あの……ハイ……」

 

意図を確認できぬまま退室を促され、村雨はそのまま部屋を出た。

 

(も、もしかして時雨姉さん、気付いて……?いえ、体調のこと、よね……そうよね?)

 

時雨の本意を推察していたが、すぐに中断させられた。

 

「んんぅ!……んっ!!!」

 

人の目から解き放たれた途端、膀胱が強く強くその存在感を放ち始めたからだ。

下腹部がチクチクと痛み、危険な状態だと知らせている。

 

(だめ……早くしないと……!)

 

もう、あまり猶予はない。

油断して溢れさせないよう、細心の注意を払いながら歩き始める

 

(トイレトイレトイレ……トイレ……!!)

 

歩幅は広く、早歩きで、しかし太股は常に擦り合わせるようにしっかりと閉じて歩いていく。

普段よりも大きめの足音を立てて歩みを進めていく。

待ち望む場所を、トイレを一直線に目指して……。

 

「あ……」

 

廊下の端ある赤いアイコン……女子トイレのマーク。

それを視界に捉えた瞬間、膀胱が小躍りする。

 

「やっ……んっ……!」

 

(もうちょっと、もうちょっと……だから……)

 

加速する尿意。

ゴールが近付いたと見るやいなや、身体が先走ろうとするのを抑え込みながら歩を進める。

1秒でも早くという思いで進み、ついにトイレの前に到達した。

 

(ま、間に合っ………………え?)

 

間に合った……はずだった。

しかし入り口には「使用不可」という立札。

 

「な、なんで……!なんで……!!」

 

清掃中ならば申し訳ないが使わせてもらおうと思ったのだが、よく見ると付近の手洗い場にも使用不可の札がある。

よくよく立札を中止するとそこには「水道設備点検のため」と書かれた紙が上から貼付してあった。

 

(そ、そういえばあの時の大淀さんの報告……もしかして)

 

『本日の水道設備点検ですが、遅れが………』

 

予定では午前に点検は終わっているはずだったが、遅れが生じていた。

今になって大淀の言葉をフラッシュバックのように思い出す。

 

「そんな……じゃあ……」

 

このトイレは、使えない。

 

「あっ!……いや……だめ……!」

 

もうできると思っていたのに、トイレは目の前なのに、出来ない。

その事実が下腹部に重くのしかかる。

足を擦り合わせ、手で"出口"をギュっと塞ぐ。

 

(た、確か寮なら、使える、はず……そこまで、なんとか、我慢……)

 

設備点検は全ての棟を一斉に行うわけでは無い……寮ならば水道が使えるはずだ。

尿意を抑え込む儀式をして、小康状態になったタイミングでトイレを目指して再び歩き始める。

本来なら放出出来ていた筈の場所を名残惜しく思いながら……。

 

―――

――

 

/

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

廊下を進み、階段を下り、棟の外に出る。

その間も何度も何度も危ないタイミングがあったが、何とか堪えてきた。

自らの行いで水気を吸って冷たくなった下着も追い打ちをかけてきたが、それでも耐えた。

 

「はぁ……ん…………んん…………」

 

無意識に声が出てしまう。

呼吸も荒い。

恐らく、既に何度か小規模な噴出はしてしまっている。

認めたくはないが、そんな感覚があった。

だからといって諦める訳にはいかない。

 

「だめ……ほんとに……もう……」

 

まばらに備品や倉庫が並ぶ通り道を歩きながら、村雨の心は折れかかっていた。

寮までどれくらいかかるだろうか。

それまで、決定的な決壊をせずにいられるだろうか。

持たせたとしても、果たしてトイレを目前にしたときに我慢しきれるだろうか。

 

(お漏らしなんて……だめ……絶対、絶対、絶対に嫌!)

 

薄々感じている"間に合わない"という予感、予想……それらをすべて無視し、何とか間に合わせようと進んでいく。

一歩前に進む度に、腹部にジワリとした痛みが襲う。

一歩前に進む度に、出口がヒクつく。

一歩前に進む度に、全てを放出しそうになる。

 

(トイレ……おトイレで……するの……!)

 

猫背気味になり、腹部を抱えるようにして歩くその姿は、普段では考えられない弱弱しい姿だ。

幸い、スカートの表面にはまだシミは出来ていないが、時間の問題であると薄々察していた。

 

(絶対、絶対、我慢するから……おトイレまで、我慢する、から……!)

 

そうやって心の中で何度も自分を鼓舞する。

だが、遠い。

寮までが、トイレまでが。

それでも、それでも諦めるわけにはいかないと進んでいると……。

 

「む、村雨!?」

 

突然名前を呼ばれ、心臓が跳ね上がる。

今まで奇跡的に誰にも出会わなかったが、ついに人に遭遇してしまった。

晒してしまった……情けない姿を。

 

「白露、姉さん……?」

 

自分の姉に。

 

「ちょ、どうしたの!?大丈夫!?すっごい辛そうじゃん……」

 

「あ、その、何でも、な……あ……」

 

この期に及んでもなお意地を張ろうとしたのが運の尽き。

いや、運はとっくに尽きていた……ただギリギリのところで延命していただけだ。

会話に意識を割かれた上で、平静を装おうとして我慢する姿勢を解いたのは悪手だった。

 

「あ、あぁっ!!」

 

水門をこじ開けるように小水が"出口"に殺到する。

もはやなりふり構っていられず、全力で股座を押さえ、握りしめるようにして塞ごうとする。

 

ブシュッ……シュゥゥゥゥ……

 

しかし完全には抑え込めず、内側に押し留めておけなくなった分が噴き出してしまった。

 

「や……やぁ……!」

 

「村雨……もしかして……!」

 

やってしまった。

人前で、姉の目の前で……"おもらし"をしてしまった。

それでも必死で我慢し、水門を無理矢理閉じた。

乙女の意地である。

 

(バチが当たったんだ……私、お仕事もせずに気持ちよくなろうとして、こんなことしたから……)

 

先ほどの噴出でスカートまでぐっしょり濡れており、ごまかしは利かないだろう。

あとはどれだけ人に会わずに済むか、どれだけ"残り"を我慢できるかという撤退戦だけ。

 

「フー……フー……うぅ……」

 

両手は股座に添えられ、限界まで足を閉じ、身体はくの字に折り曲げられたへっぴり腰。

幼子でもここまですることは中々ないだろうと思えるような我慢の姿勢。

溢れ出る奔流を押さえるためにはこうするしかなかった。

なかったが、ただ問題を先送りにしているだけで本格的な決壊はもう目の前に迫っている。

 

「村雨!ちょっとこっち!」

 

白露が力強く村雨の肩を掴んで歩かせる。

 

「ね、姉さん……!?ど、どこに……ぁん!」

 

無理矢理足を動かされ、抑え込んでいた水流が股座から溢れる。

村雨にだけ聞こえる情けない水音を立てて下着とスカートが吸いきれなくなった水分が脚を伝い、地面に落ちる。

 

「や、やめ、出ちゃ、出ちゃう、からぁ!」

 

「もう少し!辛抱して!」

 

情けない声で姉に抗議するが聞き入れて貰えず、連行されズンズンと進んでいく。

その間も少しずつ小水が溢れ出る。

 

「姉さん、やめ、もう、出ちゃう、漏れちゃう……」

 

既に相当量漏れ出ているが、村雨の中では本格的な決壊はまだしていないという認識だ。

故にそれだけは、どうしてもそれだけは避けたいという思いで必死に我慢を続けている。

そうしているうち白露が歩みを止めた。

 

「村雨!ここなら大丈夫!」

 

連れてこられたのは、どうやら物置小屋の裏らしい。

日の当たらない薄暗いその場所は、覗き込みに来ない限りは誰にも見られないだろう。

 

「白露、姉さん……あの……」

 

「もう間に合わないでしょ?ここでしちゃいなよ」

 

「え……」

 

なんと姉から"野ション"を提案されたのだ。

全く予想だにしていなかった展開に目をぱちくりさせる。

 

「む、無理よそんな……こんな、お外でなんて……!」

 

「じゃあ、どうするの……?そんな恰好で寮まで行って、我慢できるの?それにもうずぶ濡れじゃん」

 

「そ、それは……」

 

彼女の言うことは概ね正しい。

もう誰が見ても"お漏らしした"と分かるような見た目になっており、歩くたびに少しずつ溢れ出るような状態だ。

間に合う間に合わないの段階はとうに超えている。

それでも……。

 

「で、でも、私……私……んぅ!……んんっ!!!」

 

それでもなお尿意に抗おうとする村雨。

 

「が、我慢、するから……おトイレまで……我慢……!」

 

目に涙を浮かべ、脚を震わせ、全身を強張らせ、尿意を抑え込もうと、我慢しようとする。

 

「村雨……」

 

その様子はいじらしくもあったが、それ以上に白露にとっては痛ましく思えた。

妹が必死で苦痛に耐え忍ぶその姿を、彼女はもう見ていられないと思った。

 

「ね、姉さん……?」

 

ゆっくりと白露が村雨に歩み寄る。

意図が理解できず、困惑した表情を姉に向ける。

すると白露がそっと優しく、村雨の二の腕に手を乗せた。

 

「よく頑張ったね、村雨……もういいんだよ」

 

その言葉を聞いた瞬間、プツンと、音を立てて村雨の中で何かが切れた。

 

「あ……」

 

村雨の股座から手が離され、込めていた力が完全に抜け、水門が開かれた。

 

ジュゥッッ!

ジョワァァァァァァッァ!!!

 

まさに堰を切ったようというに下着から大量の小水が一気に噴出し始めた。

一瞬、下着と脚の隙間からドバっと溢れ出し、すぐに許容量を超えた分が下着を突き抜けて始め、さながら小規模な滝を形成するかのようであった。

 

「あ……ああぁぁああっぁぁあっぁぁぁ………!!!」

 

今まで出したことのないような情けない声を上げる。

我慢に我慢に我慢を重ねたそれらを一気に開放する気持ちよさで脳が煮える。

 

「わっ!」

 

「はぁ、はぁ……あ、あぁ……あ……んん……!」

 

溢れ出る水量と勢いに姉が驚きの声を上げるが、今の村雨の耳には届かない。

頭がぼんやりとし、視界は焦点が定まらず、音はくぐもっている。

自分が真っすぐ立っているのかどうかも分からない。

ただ一つ分かることは。

 

(ああ、気持ちいい…………)

 

それだけであった。

全開になった蛇口からは止めどなく尿が噴き出す。

そうしてようやく下腹部が軽くなり始め、茹だった頭も冷え始め、視界に映るものが像を結び始める。

 

(あれ……?姉さん……?どうして……)

 

「ッッ!?!?!?」

 

村雨がついに現状を理解した。

今、自分が姉の目の前で失禁しているという事実を。

 

「や!!いや!!姉さん!!!みないで!」

 

この期に及んでまだ我慢をしようと再び手で出口を塞ぐ。

だが開ききった水門には全く効果が無く、手が自分の尿で濡れるだけだった。

 

「だめ、だめぇ……!!はなれて!!!きたないから!!!」

 

「あー、いーよいーよ、ここで全部しちゃいなって」

 

足下にびちゃびちゃと音を立てて小水が撒き散らされる。

当然、近くに居る白露の足にも跳ね返りが掛かるが気にする様子はない。

 

「だめぇ……だめ……おしっこ……ぜんぶ、でちゃう……だめ、いや……」

 

言葉になっていない悲鳴を上げる。

 

「すっごい我慢してたんだ……辛かったね……でももう良いんだよ、全部ぜーんぶ出しちゃって」

 

「ね、ねえさん……わたし……わたし……」

 

白露が言葉をかける度に村雨の身体から力が抜けていく。

村雨は涙を浮かべながら縋り付くように姉の顔を見つめる。

 

「村雨、よくここまで我慢したね」

 

「あ」

 

再び、水門が完全に開いた。

もう我慢しなくていいと、心も体もそう認識した。

ジャバジャバ、ビシャビシャと音を立てながら村雨を苦しめ続けた液体が外に出ていく。

最も、自らの意思で溜め込んだものなのだが。

そうして永遠に止まらないかと思うほどの量を出し、ようやく水流が止まった。

 

「ご、ごめんなさい白露姉さん……私……私……!」

 

「あー、良いって良いって!たまにはこんなこともあるって!誰でも失敗するかもしれないんだし!」

 

白露はカラカラと笑いながら村雨の肩を叩いた。

恐らく彼女は慰めや哀れみでそう言っているのではなく、本気でそう思っているだろう。

 

「それにしても提督もひどいよねー!こんなになるまでトイレ行かせないなんてさ!」

 

「ち、違うの!私が、私が言い出せなかったから……」

 

自業自得でそうなったのだ、提督に罪を着せるわけにはいかないと否定する。

 

「え?そーなの?……でもなんで?」

 

「それはその……なんとなく、は、恥ずかしくて……」

 

適当な言い訳は思いつかず、何とかはぐらかす。

 

「えーー!?何で今更!?ていうか漏らす方が恥ずかしいじゃん!」

 

「も、漏らすとか言わないで!」

 

「だって漏らしてるじゃん!」

 

「だ、だからもう……」

 

自分はお漏らししてしまった、その事実を改めて突き付けられ、暗い顔になる。

 

「ゴメンゴメン!もう気にしないの!ね?」

 

落ち込む妹を見てこれ以上この件に言及するのはやめようと考え、話題を変える。

 

「あー、とりあえず着換えとタオル、持ってきたげる!イッチバン早くね!」

 

「で、でもそこまでして貰うわけは……」

 

「……じゃあ、その格好で寮まで戻る?」

 

そう言われ改めて自分の姿を見るとそれはまあ見事に下半身がびしょ濡れ、いやずぶ濡れだった。

 

「お、お願いします……」

 

「うむ!わかればよろしい!じゃあ、ここで待ってて!すぐ取ってくるから!」

 

言うが早いか駆けだそうとする白露を呼び留めた。

 

「白露姉さん!」

 

「ん?」

 

「その……ありがとう……」

 

礼を言うと白露はニカッと笑ってブイサインをし、寮の方へ駆けて行った。

 

(姉さん、本当にありがとう……ここまで引っ張って貰わなかったら、もっと大勢の人の前で失敗していたかもしれない……)

 

そんなことを思いながら、物置裏に自分が作った水溜りを見る。

 

(そ、それにしても、本当にこんなに我慢してたのかしら、私……こんな風に見せられると、凄く恥ずかしい……)

 

しかしその場から動くこともできないため、白露が戻るまでまじまじと自分の功罪を見せつけられるハメになったのだった。

 

………

 

そうして悶々としている内に白露が戻ってきた。

外でスカートも下着も着替えるのは恥ずかしさと少しばかりのドキドキがあったが、着替えた後すぐに別の問題が……。

 

「ね、ねぇ、白露姉さん……」

 

「ん?どうしたの?」

 

「そ、その、ね……ええと……」

 

モジモジと落ち着かない様子の村雨。

それを見た白露は驚き半分、呆れ半分で問う。

 

「もしかして、まだ出るの!?」

 

「だ、だって……まだちょっと、その、残ってて……それに何だかおトイレが近くなってて……」

 

「だぁーーー!もぉーーー!今度こそその辺にしちゃいなよ!」

 

「い、嫌よそんな!」

 

「次は着換え取りに行ってあげないからね!」

 

「もう!白露姉さんのイジワル!!」

 

今度こそはトイレまで我慢すると言って聞かず、寮まで二人で駆けていくこととなった。

結局この時は間に合ったのだが、大量に放出した後にもまだそれなりの量を溜め込んでいたことがトイレまで付き添った白露にもバレてしまった。

そのせいか、この事件の後暫く「トイレ行った?」と頻繁に聞かれ、赤面しながらプリプリ怒る村雨の姿が見られたという。

 

なお、村雨は反省して職務中には決してこのような遊びをしなくなったが、非番の時の「遊び方」がどうなったのかは、彼女の秘密である。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。