魔法少女リリカルなのは -Dark of Hero-   作:白狼天狗

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EP00

 

 

「なぁ! 知ってるか? 最近噂になってる“アレ”!」

「もちろんだって! “カブト”だろ?」

「かっこいいよな! 悪いやつをやっつける正義のヒーロー!」

「そして誰もその正体を知らない謎のヒーロー!」

「「かっこいいよなぁ~!」」

 

クラスメイトの男子達がそんな話をしている。

最近、海鳴市に現れた謎の人物、“カブト”。

 

海鳴市で起きた銀行強盗事件では犯人を気絶させ、ビル火災事件が起きた時は取り残された人を救出した英雄。

他にも海鳴市で起きた事件を影で解決してきた。

 

だけど、いつの間にかその姿を消して正体がつかめないのである。

映像に写っていた姿と目撃者の証言でその名がついたのだ。

革製と思われるライダースーツに上半身に黒い金属製のプロテクターを着け、頭全体を覆う仮面をかぶったその姿。

そして一番の特徴は、その仮面にある左右に割れた角が有る事。

それがまるでカブトムシみたいだから、ついた字が“カブト”。

 

───私の名前はアリサ・バニングス。

 

両親がとても大きい会社を経営している、云わばお金持ちの令嬢。

という点を除けば何所にいる普通の小学3年生である。

だけど、普通じゃない事がつい最近起きた。

 

「なあ! バニングス、お前この前“カブト”に助けてもらったんだろ? どうだった?」

「え!? うそ! 本当か!? どんなだったか教えてくれよ!」

 

さっきの男子生徒達が私に話しかけてきた。

そう、確かに私は“カブト”に会った。というか助けてもらったのだ。

あれは一週間前、私が誘拐された。

身代金目的の誘拐だった。犯人は3人。

たまたま一人で下校していた時の事、突然にワゴン車に連れ込まれそのまま市街の外れの廃ビルに連れてさられた。

犯人の1人が私の両親に8億円もの身代金と逃走用の車を3時間以内に持ってくるよう要求した時は、子供の私でも無理だと思ったわ。

 

───誰か助けて!

 

来るはずもない誰かにそう願った。

だけど、来るはずのない人が来たのよ。

まるで、困った時に何処からともなくやってくる正義の味方のように・・・。

 

 

 

◇    ◇   ◇

 

 

 

海鳴市の外れの廃ビルに連れ込まれた私は正直言って恐怖で怯えていた。

周りの子たちよりは精神的に成長していると自負してはいたけど、それでも怖かった。

小学3年生で9歳の私にこの状況で冷静でいろって言うほうが無理があるわ。

それでも、それを表に出さないように喰いしばって耐えてはいたけどね。

 

犯人達の1人は廃ビルの入口の見張り。

1人は私が椅子に縛り挙げられている部屋の入り口付近で見張り。

そして最後の1人が私の傍で大きめのナイフを弄びつつ携帯をいじっていた。

 

その時だった。

 

 

「なんだぁ、お前っ!? ぐへぁっ!?」

 

私を椅子に縛り付けている部屋の見張りをしている犯人の一人の悲鳴が聞こえた。

 

「あン? なんだ?」

 

不思議とカツンカツンと足音だけが響いてくる。

そして、その人は姿を現した。

 

「誰だ、テメェ!!」

 

その人はまるでラグビー選手が着けている様な上半身に重点を置いた強固な鎧を着ていた。

薄暗いこの室内でもその白金と赤の装甲は目に栄えた。

そして、黄色のフェイスガードが怪しく光を湛えていた。

 

「誰かと問われれば、そうだな・・・。通りすがりの仮面ライダー、っていうところかな?」

「かめんらいだー?」

 

自分の事を仮面ライダーと名乗ったこの人は誰なのだろうか?

そんな疑問が浮かんだと同時、どこか安心している自分に気がついた。

 

誘拐犯の仲間じゃないとはいえあんなコスプレみたいな鎧を着た不審人物が来て安心するなんて・・・。

 

でも、あの姿を見ていると男の子向けの正義のヒーローのようで、なぜか私を助けにきてくれたんだと思ってしまった。

 

 

「大人しくその子を解放しろ。その方が利口な判断だ」

「バッカじゃねぇーの? この状況で何言ってんだ? こっちには人質がいるんだぞ? そっちこそ変な事すんなよ! コイツがどうなっても良いのかよ、オイ?」

 

そう言って私にナイフを近づける誘拐犯の男。

それを見て、鎧の人も動くのをやめた。

 

「・・・・・・」

「そうだ、それで良い。抵抗すんなよ? そうだな、まず、ご大層に着てるその鎧を脱げ。そしたら、“コイツ”をぶち込んでやるぜ!」

「この鎧を脱げば良いのか?」

「ダメぇ!! そんな事したら刺されるわよ!?」

 

思わず私は叫んだ。

どういう理由であんな鎧を着ているか知らないけど、この状況で鎧を脱げば間違いなく刺されてしまう。

 

「大丈夫だ、問題無い」

 

そう言って鎧の人はベルトに右手を持っていく。

そこをよく見ると黒いカブトムシのようなメカがあり、鎧の人はその角を少し持ち上げた。

その瞬間。

圧縮された空気が短く排出される音と大型機械を動かした時にすような重低音ともに頭、胸、両肩、両腕、すべての鎧のが複数のパーツに分かれ若干浮かび上がる。

甲高い機械の駆動音が私たちのいる部屋に鳴り響く。

 

「オイ!! 何をする気だ!?」

「何って? お前に言われた通り、脱ぐんだよ。鎧を。・・・キャスト・オフ!」

【Cast Off】

 

鳴る電子音声と同時に浮き上がっていた鎧が弾け飛ぶ。

 

こちらに飛んでくる鎧のパーツに驚き、一瞬身構えたが鎧のパーツは全て私と

誘拐犯の男に当たらない角度で飛んで行って粒になって消えていった。

 

鎧の人の変化は止まらない。

鎧の下には黒いスマートなプロテクターを身につけていた。

そして、頭全体を覆う仮面のアゴを支点にして、“角”が顔を縦に割るように競り上がっていった。

 

【Change Bettole】

 

黒いプロテクターに金色の光とともに現れた電子回路が光が消えると赤い模様となって残った。

私は知っている・・・この人を。そう、この人は・・・!

 

「お前が・・・あの“カブト”か!?」

 

そう、この人は今、海鳴市で噂になっている正体不明の正義のヒーロー。

 

“カブト”!!

 

 

「クロック・アップ!」

【Clock Up】

 

「なっ!? 消えた!?」

 

そう、“カブト”が消えた。それと同時に犯人の男が持っていたナイフが根元から折れて中を舞う。

 

【Clock Over】

 

折れたナイフのはがコンクリートの地面に数回バウンドする音が空しく響いた。

 

・・・一瞬の事だった。

 

“カブト”が右手で右腰を叩いたと思ったら、その姿はかき消えた。

そして次の瞬間、誘拐犯の男の持っていたナイフが音をたてて根元から折れて宙を舞い、そのまま重力に従って落ちた。

 

「なぁあ!? あ、ぐあお・・・!! がはっ!!」

 

いつの間にか私と誘拐犯の男の後ろにいた“カブト”は誘拐犯の男の頭をつかんで持ち上げ、放って壁に叩きつけた。

その衝撃で誘拐犯の男は気絶したようでそれっきり動かなくなった。

 

「大丈夫かい?」

「・・・え?」

 

あまりの一瞬の出来事で理解が追い付かない。

だけど、わかる事は“カブト”によって私は囚われの身から解放されたと言う事だけだった。

 

「怖かっただろう? 大丈夫、もう大丈夫だよ」

 

と“カブト”に優しく抱きしめられて、今まで私の心を占めていた恐怖が無くなって底から安心して泣いてしまったのはココだけの内緒。

 

しばらくして、パトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

 

「呼んでた警察が来たか・・・。じゃあ、お別れだね」

「ちょっと待って! お礼がしたいの!」

「お礼はいいよ、俺がやりたくてやった事だし」

「それじゃ、私の気が済まないの! 助けてくれた恩人を無碍にするなんて、バニングス家の名に関わるわ!」

「そんな大それた事かな? 困っている人を見たら助けるのは普通でしょ?」

「それは・・・そうだけど・・・」

「俺が偶々見かけただけさ、だから助けた。それで良いでしょ?」

 

恩には報いなければならない。私はそう思っている。

でも、彼にそう言われると何故か強く出れない。私らしくもないのに・・・。

 

「じゃあ、せめて名前を教えて!」

 

「“カブト”じゃ、駄目?」

「ダメ」

「じゃあ、ダークカブト」

「は?」

 

一瞬、言葉の意味を理解できなかった。

ダークって闇って意味でしょ。名前とやってる事、違うじゃない。

 

「仮面ライダーダークカブト。それが俺の名前さ」

「どうしても教えてくれないの?」

「この姿の名前は本当だよ? あ、中身の方? それは内緒。なぜならその方がかっこいいでしょ?」

「・・・知らないわよ! このバカ!!」

「馬鹿って・・・そりゃ手厳しいな・・・」

 

本当に名前を教えてくれそうにない。

少し沈黙が続いた。

 

「・・・・・・また、会える?」

「おじいちゃんは言っていた。一期一会とは限らない、と。」

「つまり、縁があれば、また、会えるって意味?」

「俺はここのご当地ヒーローだからな」

「ならもっと表に出てきなさいよ」

「それは勘弁願いたいな」

「どうしてよ?」

 

彼は自分を海鳴市だけのヒーローと言った。

もし、警察と協力すればもっと海鳴市を平和にできるんじゃないか?

普通はそう思うはずだ。

 

「この力のせい、って言えば分ってくれるかな? マスクドライダーシステムはそう簡単に人の手に渡しちゃいけないものなんだ。強い力は必ず悪意に染まる。それが過ぎたものなら尚更さ。君にはまだ難しい話だったかな?」

「・・・私をそこらへんの小学生と一緒にしないでほしいわ」

 

お父さんとお母さんの会社を継ぐつもりでいるから、それなりの勉強はしているからわかる。

もし、“カブト”の力が悪用されたらどうなるか。

力の片鱗を見た私には良く分かった。

 

パトカーのサイレンの音が間近に聞こえる。すぐに警官がここにやってくるはず。

 

「さて、警察の人に見つかる前に退散するとしよう。 じゃあね、きっとそのうち会えるよ。その時になったら俺の名前を教えてもいいかもね」

【Clock Up】

 

そう言い残し、彼は忽然と消えてしまった。

それから間もなく、私は警察に保護。誘拐犯3人は連行されていった。

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

 

それが、私とカブトの出会い。

 

「さっきからどうした? バニングス」

「いきなり黙って」

「え!? あ、そう。ええと。“カブト”の事だったわね?」

「そうそう」

 

もう一度、思い返す。

 

「そうねカブトは強くてかっこ良かったわ」

「そんなの知ってるよ」

「ニュースで銀行強盗の犯人をあっという間に倒したりしてるんだぜ! 強いに決まってるじゃん。なあ?」

「そうだよ、それに何処からともなく現われて事件を解決してはいつの間にか去っている・・・。謎のヒーロー! カッコいいに決まってるだろ!」

「そうそう。そんなんじゃなくて、もっと詳しく教えてくれよ!」

 

これだからバカな男子って好きになれないわね。

 

「違うわよ。そういう意味じゃないわ。」

「じゃあ、どういう意味だよ」

「分らないならそれまでね。もっと勉強しなさい」

「もったいぶらずに教えろよな!」

「そんな事より、予鈴が鳴るわよ。席に戻りなさい」

「ちぇ、“カブト”に会えたからっていい気になってさ」

「行こうぜ」

 

男子達が席に戻っていく。

その直後、予鈴が鳴った。すぐに先生が来るだろう。

 

ふと、窓へ視線を向けた。

 

この海鳴市にいればカブトにまた会えるかもしれない。

いや、会いに行こう。

受け身なんて私らしくないわ。

待ってなさいカブト。

絶対に会いに行ってやるんだから!

 

 

 

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