魔法少女リリカルなのは -Dark of Hero-   作:白狼天狗

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EP01

 

3月30日。

 

海鳴市、凪原産業ビル屋上。

 

「まず1個・・・か」

 

俺の手のひらの上にはひし形の青い宝石が1個乗っている。

残り20個は海鳴市に散らばって行った。

そしてその一つを追うように緑色の魔力光を見た。

 

───あれがユーノ・スクライアか。

 

それにしても飛行能力を持たないマスクドライダーシステムじゃ、取れても1つか2つが良い処か。

 

「さて、ここから・・・不屈の少女と運命の少女が交差する物語がはじまります、ってね」

 

青い宝石を優しく握る。

そこから確かに強い“力”を感じる。

 

「封印・・・!!」

 

かなり強引に自分の魔力を押し付ける形で封印する。

魔力は有っても、それをまともに扱う資質が無ければ意味は無い。

かれこれ3年近く魔導師もどきやってるけど、デバイスの補助無しじゃこれ位しかできない。

 

封印したジュエルシードはⅩ。十番目の物だ。

 

「さて、上手く立ち回らないとな・・・。俺というイレギュラーがどう作用するか・・・」

 

俺は月を見上げ、一息つき。眼下に広がる海鳴市を見た。

ここが戦場になる。俺の二つ目の故郷が。

黙って騒ぎを見過ごして誰かに解決して貰おうなんて思わない。

ましてや年端もいかない幼子と言って良い子達に。

今の俺には幸か不幸か力がある。

だから、俺は。

 

「とりあえず、今日は帰って寝ましょうか。物語の始まりはまだ少し先の事だしね」

【Clock Up】

 

俺は帰路に就いた。

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

私は今混乱の中にいます。

 

深夜の事です。助けて、と男の子の声が聞こえたからその声を追って外に飛び出したら、

ついた先は、昨日公園で怪我をしたフェレットを預かってもらった動物病院で。

しかも、そのフェレットが外に飛び出していたと思ったら変なドロドロした何かに襲われてて。

 

さらにそのフェレットが人の言葉を喋れて、探し物をしたいから力を貸してほしい。

魔法の資質があるからその力を貸してほしいとか。

 

もう、何がなんだかわかんないよ~!!

 

そうしたら、さっきのナニかが空から落ちてきて、とっさに電柱の陰に隠れました。

 

 

「お礼は必ずしますから!」

「お礼とかそんなのしてる場合じゃないでしょー!?」

 

電柱の陰からさっき大きい音を立てて落ちてきたナニかを見ます。

長いひげが2本生えたなにかユラユラしてて黒い怪物に見えます。

 

「一体どうしたらいいの・・・!?」

「これを!」

 

フェレット君が口にくわえて差し出してきたのは首にかけていた赤い宝石の玉でした。

私は促されるままそれを左手で受け取りました。

 

「あたたかい・・・」

「それを手に、目を閉じて心を澄まして、僕の言う通りに繰り返して」

 

私は赤い宝石の玉をそっと握り、覚悟をきめました。

 

「いい? いくよ!」

「うん!」

 

フェレット君の言う通りに目を閉じ心を澄ませました。

 

「我、使命を受けしものなり」

「・・・我、指名を受けしものなり」

 

戸惑いながらも後に続いて言います。

 

「契約の下、その力を解き放て」

「えと、契約の下、その力を解き放て」

 

まるで呪文みたい。

 

「風は空に、星は天に」

「風は空に、星は天に」

 

だんだん気持ちが高まっていくのを感じます。

 

「そして、不屈の心は・・・」

「そして、不屈の心は・・・」

 

手の中にある宝石から確かな脈動を感じ、心が研ぎ澄まされていく、その時でした。

 

「グラァァァアアアアアアアアアアア!!」

 

響いたのは怪物の叫び声。

 

「しまった!? 気付かれた!!」

「きゃあああああああ!!」

 

 

黒い怪物が私たちに気づき襲いかかってきたのです。

何も抵抗の方法も持たない私にはどうしようもありませんでした。

ただ、来るであろう衝撃に備えるべく体を丸める事だけが私にできる事でした。

 

ですが突然、車で何かをはねた様なすごい音が響いてきたのです。

 

私たちに襲いかかって来た黒い怪物のたてた音ではなく、別の誰かによるものでした。

私たちと黒い怪物の間に力強く立つその人。

黒いびっちりした革製の全身スーツに胸と肩を守る黒い鎧を着て、頭全体を覆う角の持つ仮面をかぶった、その人。

 

その人は、おもむろに右手で天を指さしました。

 

「おじいちゃんは言っていた。か弱きものを守るのが強き者の在り方だ、と」

「あ・・・あなたは・・・?」

 

内心で確信しながらも私は意を決して質問します。

 

「“カブト”と言えば通りが良いかな?」

「“カブト”!?」

 

やっぱりその人は、最近この街で噂になっている謎のヒーロー“カブト”だったのです。

 

「詳しい話は後だ。俺が時間を稼ぐ、その内に君のやるべき事を」

「誰だか分りませんが、ありがとうございます!」

 

“カブト”の申し出に返事をするフェレット君。

 

「もう一度、最初から起動の呪文を!」

「う、うん!」

 

“カブト”が私たちを守ってくれている間にもう一度挑戦します。

 

目を閉じ心を澄ますとさっきの言葉が自然と浮かんできました。

 

 

「我、使命を受けしものなり。

 

 契約の下、その力を解き放て。

 

 風は空に、星は天に。

 

 不屈の心は、この胸に!

 

 この手に魔法を! レイジングハート! セットアップ!」

【Standby Ready.Set Up.】

 

 

その瞬間、点に掲げた宝石からすごい光が放たれました。

その桃色の光は雲を貫き、天に届くほどでいた。

 

 

「なぁ!? ふえぇ・・・!?」

「なんて魔力だ・・・!!」

 

こんなこと続きだけどあまりの事で状況を把握できない私はうろたえるばかりでした。

その時、フェレット君が私の前に構えてアドバイスをくれました。

 

「落ち着いて、イメージして! 君の魔法を制御する杖の形を!そして、君の身を守る強い衣服の姿を!」

 

強い衣服!? そんなこと突然言われても困るよー!

 

と内心おろおろしてましたが杖はともかく服のイメージは湧きました。

 

「とりあえずこれで!」

 

私を包んだ光が消えると、私が通う学校の制服に似た白い服と金の三日月に赤い宝玉の付いた白と桃色の杖を持っていました。

 

「成功だ!」

「ふぇええ!? どうなっちゃったの!?」

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

魔法に愛されたと言わんばかりの魔力量。正直うらやましいです。

と言っても取って置きなら俺にもあるのだが、一人じゃ使えないんだよね。

 

それはともかく、彼女の変身し終わるまで時間は稼いだし思念体にダメージも与えた。

後は封印するだけだ。

 

「後は封印するだけだ、落ち着いて」

「ふえ!? あ、えっと、封印ってどうやるの?」

「えっと、僕たちの魔法はプログラムと呼ばれる術式を持って構成されて・・・・・・」

 

相手が再生中だからってそんな難解な説明が小学生に分かる訳がないだろう。

とくに、なのはは頭で覚えるんじゃなくて体で覚えるタイプだからなおさらだ。

 

「君! 大丈夫だ安心して!心を落ち着かせるんだ、そうすれば呪文が心の中に浮かんでくる。それを唱えるんだ」

「わ、わかったの!」

 

なのははレイジングハートを構えて目を瞑る。

その間にも思念体は再生しているので、思念体にゼクトクナイガンで攻撃しておく。

 

サイクロトン粒子加速機によって収束された高エネルギーのイオンビームが思念対を貫く。

 

なのはは、目を開けると杖を掲げる。

 

「リリカル・マジカル! 封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード! ジュエルシード!封印!」

【Sealing mode.Set up.】

 

なのはの声でレイジングハートがシーリングモードに変形する。

そして、桜色の光の帯が思念体を締め上げる。

 

【Stand by. Ready.】

 

「ジュエルシード シリアルⅩⅩⅠ! 封印!!」

【Sealing.】

 

光の帯が思念体を貫き、消滅させていく。

そして、青い菱形の宝石であるジュエルシードだけが残った。

 

「これが、ジュエルシードです。レイジングハートで触れて」

 

ユーノにそう言われ、なのははレイジングハートを翳すと、ジュエルシードがレイジングハートに吸い込まれる。

すると、なのはのバリアジャケットが解除され、レイジングハートも待機状態になる。

 

「あれ? 終わったの?」

 

なのはは、実感が湧かないのか呆けた声を漏らす。

 

「はい・・・・・貴方のお陰で・・・・・・ありがとう・・・・・」

 

ユーノはそこまで言って、力尽きて気絶する。

 

そこに聞いた事のある音が聞こえてくる。

パトカーのサイレンだ。

 

「も、もしあしたら、私ここいいたら大変あれなのでは・・・!?」

 

パトカーのサイレンが聞こえたきてあたふたしはじめるなのは。

 

「まあ、こんな時間にこんな惨状にいれば職務質問は間違いないよね」

「ふぇええええええ!? どうしよう!?」

「ここにいるのはまずい、移動しよう。君は・・・立てそうにないね」

 

俺はユーノとなのはを抱き抱えた。

 

「よっと」

 

腰を抜かして脱力状態だったなのはを、いわゆるお姫様だっこしてしまったが緊急事態だったので致し方ないだろう。

 

「ふぇ!? ふええええええ!?」

 

案の定恥ずかしさで赤面させてしまったが、重ねて言うが緊急事態だ。

早急にここを離れる必要がある。

 

「ごめんね、激しく動く事になるからしばらく我慢して貰えるかい?」

 

落ち着かせるために優しい声で語りかける。

 

「は、はい・・・・・・」

 

跳躍。

着地は電柱の一番上。

 

「ふえええっ!?」

 

なのはが驚いているのを無視して石跳びの感覚で電柱を足場にし俺たちはこの場を後にした。

 

 

 

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