魔法少女リリカルなのは -Dark of Hero-   作:白狼天狗

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EP03

 

 

沈黙がその場を支配した。

 

「え? なのははこの人と知り合いなのかい?」

 

ユーノの問いかけになのはは答えず、ただ真っ直ぐに俺を見ていた。

 

「・・・・・・」

 

俺は答えて良いものか悩む。

普段は大人しくどこか抜けているなのはだが、こういう時に限って勘が鋭い。

親譲りなのか。

 

「賢志さん、なんでしょう?」

 

なのはがもう一度、問いかけてきた。

 

・・・・・・観念するか。

 

俺は、右手でベルトのバックルからダークカブトゼクターを取り外し、変身を解いた。

スーツを構成するヒヒイロカネが粒子となって消えていく。

 

「やっぱり、賢志さん!」

 

なのはは花が咲いたように微笑んだ。

 

「どうして分かったんだい? 声質を変えて口調も固くしていたんだけど」

「えっと、それは・・・。なんとなく、です!」

「うん、そっか。・・・なのはちゃんらしい」

 

と、二人で完結しているところにユーノが質問をしてきた。

 

「今のは一体なんですか? バリアジャケットじゃない様ですし・・・」

「こいつも一種のロストロギアさ」

 

ユーノの問いに何気なく答える。本題であるダークカブトゼクターは俺の肩の上に佇んでいる。

 

「ロストロギア!?」

「不法所持とか言いたいんだろうけど、こいつは主を選ぶ。それにこいつ自身が異次元を渡る力を持っているから拘束もできない。有るべき物は有るべき者の所にってね」

 

ダークカブトゼクター。

俺の戦う力。

 

出典は「仮面ライダーカブト」という特撮。

地球外生命体「ワーム」と戦う組織「ZECT」に所属する仮面ライダー達の戦いを描いた物。

ゼクターとは昆虫型の小型自立機動メカであり、仮面ライダーに変身するためのアイテムだ。

主人公、天道 総司が使用するカブトゼクターの色が赤に対し黒であるため便宜上“ダーク”の名を冠する事になった。

使用者は天道 総司に擬態した敵対しているワームの別種のワームであるネイティブ。

ネイティブの中でも実力者で、最後は全人類ネイティブ化計画を阻止するためその身を犠牲にした。

 

本来の名称は“プロトゼクター”なのだろう。

カブトゼクターの試作品であり、その開発データは後発のゼクターの礎となった。

 

話を戻そう。

 

「ダークカブトゼクター、それがこのロストロギアの名前だ。こいつの適格者は俺だから、俺にしか使えない。この力を悪用する気はないし、ミッドチルダの事も知っている。心配しなくて良い」

「そ、そうなんですか? 分かりました・・・」

「詳しい話は俺の家に帰ってからしよう。なのはを送っていかなければならないしな」

 

その後、無事になのはを自宅へ送り届け俺とユーノは帰路に着く。

送って行く道中、なのはは難しい表情のままだった。

 

悩んでいるのだ。

どちらの道へ進むか。

なのはがどの道を選択しようとも、俺は俺の責務を果たす。

 

力を持つ物には相応の責務が課せられる。

力が強ければ強いほどに。

魔法の力と比べてもマスクドライダーシステムは異常の力。

 

ああ、これからFT事件が始まるから、まず、それを片付けよう。

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

「ただいま、母さん、父さん」

「お帰り、賢志」

「お帰りなさい、賢志」

 

帰宅。それを迎えてくれたのは俺の両親。

母さん、東堂 月夜、専業主婦。

父さん、東堂 賢介、㈱片倉重工営業部所属。

 

ごく普通の家庭。その団欒に一石を投じる。

 

「あのさ」

「なんだ? 賢志」

「俺。この街に飛び散ったロストロギア探す事にしたんだ」

 

父さんの返しにさらりと話す俺。

 

「あら? そうなの?」

「そうか」

「「・・・・・・って、え?」」

 

そろって疑問符を浮かべる両親。息ぴったり。

 

「どういうことか、説明しろ。賢志」

「また魔法関係? えっと、管理局、だったかしら。そこに任せるわけにはいかないの?」

 

さっきまでの平穏な家庭の雰囲気が一気に険しくなる。

そこでさっきあった事を説明し、その際に小動物状態のユーノを紹介する。

 

「大丈夫、うまくやるよ。魔導師しては欠陥だらけだけどサポートに回ればそこそこ安全なんだよ?」

「だが、息子が危ない事をすると聞いて心配しないほど私達は冷徹では無いぞ、賢志」

「ありがとう、父さん。だけどほっとくとこの街が危ないんだ。だから、さ」

 

そこで沈黙がこの場を支配する。

やっぱり、まだ、完全には納得はしてくれてないんだな。親心が身にしみます。

 

「・・・・・・そうか、わかった。あんまり私達に心配かけてくれるな」

「ありがとう、父さん・・・・・・」

 

渋々といった感じだが許してくれた父さん。

無事、許可を得た事だし放課後から探索開始だ。

 

「それにしても、ユーノ君? 災難だったわね」

「いえ、僕の方こそケンジ、さんにご迷惑おかけして・・・・・・」

「あの子が言いだしたんでしょ? なら思う存分迷惑かけなさい、賢志はそういう子だから」

「そんなんじゃないよ。ただ我儘を押しつけてるだけ。自分勝手なんだよ、俺は」

 

母さんとユーノの会話に思わず口をはさむ。

俺は聖人君子のようなお人よしじゃあない。ただ、ほっとけないだけだ。

 

「ね?」

「はは、そうみたいですね」

 

と笑いあう母さんとユーノ。

母さん、何が「ね?」なんだろうか。分からん。

 

「じゃあ、さっそくユーノを回復させるか」

「え?」

 

素っ頓狂な声を上げるユーノ。

 

「いや、ちゃんとした魔導師が居ないとジュエルシード集めできないから戦力を充実させるのは当然でしょ?」

「そうだけど、僕を回復させるってどうやって?」

 

まあ、当然の疑問だな。

特別製のデバイスじゃないと俺はまともに魔法が使えないと言って良いくらい資質が無い。

だからと言ってできないわけじゃあ、ないんだよな。

 

「これからするのは治癒魔法と魔力譲渡。俺だけでできる数少ない魔法なんだ」

「そうなんだ」

 

居間に移動し、ユーノを床に下ろす。

 

「んじゃ、さっそく。《我、彼の者に癒しの力を翳さん! 治癒(キュア)》!」

 

ユーノを両手で間を空けて挟むようにして詠唱。魔法を使う。

魔法の光がユーノを包み程なくして消えていった。

 

「ありがとう、大分良くなったよ!」

「次行くぞ」

 

そのまま次の魔法を詠唱する。

 

「《我が力の源より汲み上げし力を彼の者に与えん! 魔力譲渡(マナチャージ)》!」

 

俺の両手から放出される魔力がユーノへ注がれていく。

 

「すごい! なんて魔力だ! なのはより強い魔力を感じる!」

「お褒めに預かり恐悦至極ってね。魔力だけ有ってもね、まともに使えなきゃ意味無いんだよねー」

 

前に魔法関係のトラブルに巻き込まれた時はアーマードデバイスを使わせて貰えたから戦えたけど、そういう特別なデバイスがないと攻撃魔法は暴発するし防御魔法は障壁を維持できないという体たらく。

親友で防衛魔導師であるアイツと組んで無かったら、あの事件は解決できなかったな。

最後はアイツに任せて電池役に徹してやっと押し勝ったんだし。

分の悪い賭けだったな、あれは。

 

「改めて自己紹介するよ。俺は東堂 賢志。市立海風中学校二年生兼民間魔導師だ」

「うん、よろしくね。ケンジさん」

 

そうした後、掻い摘んで魔導師になった顛末を説明していたんだが。

ふと、思いつく。

 

「なんでユーノは人間の姿に戻らないんだ?」

「あ、そうだよね。魔力も回復したし戻るよ」

 

言われて気づいたユーノは変身魔法で人間の姿に戻る。

 

「あれ? でも、なんでケンジさんは僕が元々人間だって分かったの?」

「いや、自己紹介してたろ? スクライアは遺跡の発掘調査で有名な部族だから変身魔法について知ってて当然だろ」

「あ、そう言えばそうだよね」

 

その後、改めて人間の姿のユーノを紹介した。

両親は大変に驚いていた。

特に父さんは「変身した後、人間だった時の質量は一体何処に?」とこぼしていたが、魔法だからと母さんに言われて不承ながら納得いった様子。

 

それから。

俺の部屋でユーノと作戦会議。

 

「まあ、今後の方針としては」

「うん、僕がサーチャーを飛ばすからそれでジュエルシードを探すよ」

 

休眠状態のジュエルシードを探すのはかなり難しい。

砂丘で一粒の宝石を捜せ、って言う事と同じだからな。

 

問題は・・・・・・。

 

「発動したヤツは、その時の魔力の高まりで感知できる」

「うん、それをできるだけ早く沈静化させて封印しないと」

 

結局、確実な線は後手に回るしかないと。

未発動のジュエルシードは見つかればラッキー程度の確立。

 

そういう結論に至った俺たちは、とりあえず今日はここまでに。

もう、夜も深い。

俺の部屋に運び込んだ客人用の布団にユーノは潜り込み、俺もベットに入る。

 

「おやすみ、ユーノ」

「おやすみなさい、ケンジさん」

 

こうして就寝となった。

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

私が魔法とカブトに出会って、次の日。

 

あれからずっと考えています。

 

私はどうするべきなのでしょう?

賢志さんは言ってました。

私には魔法使いの才能がある、成長したら沢山の人を救う事が出来るようになる、って。

手伝ってくれたらジュエルシードって言う危ないものがすぐ集められる、って。

 

でも、魔法の世界は危ない、って。

私がケガをしたらお父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもアリサちゃんやすずかちゃんも心配する。

もし私が大ケガしちゃって昔のお父さんみたいになったら、みんな泣いちゃうと思う。

 

そんなの絶対いやだよ・・・・・・。

 

「──のは! なのは!」

「にゃあ!?」

 

突然の声に驚きました。

顔を上げるとそこにはアリサちゃんとすずかちゃんがいました。

 

「おはよう、なのはちゃん。」

「おはよう、なのは」

「お、おはよう。アリサちゃん、すずかちゃん」

 

朝のあいさつを交わす私たち。

考え事をしていて、アリサちゃんの声に気がつかなかったみたいです。

 

「ずっとボーっとしてたけど、どうかしたの?」

「なのはちゃん、元気ないみたいだけど大丈夫?」

「う、うん。大丈夫。ちょっと考え事してただけだよ」

「・・・・・・何かあるんだったら私たちにちゃんと言いなさいよ?」

「なんでも協力するからね」

「ありがとう。アリサちゃん、すずかちゃん。でも、大丈夫だよ。これは私が考えなきゃいけない問題だから・・・・・・」

 

ダメだなぁ。もう心配かけちゃってるよ、私。

 

「そ、あんまり根を詰めるんじゃないわよ? それでさ、昨夜の話聞いた?」

「ふぇ? 昨夜って?」

「昨日行った病院で、車か何かの事故があったらしくて壁とかが壊れちゃったんだって」

 

内心、ギクリとしました。

だって昨夜はそこにいたわけで、しかも原因も知ってるし。

 

「あのフェレットが大丈夫か心配で・・・・・・」

 

これは、どう話せばいいの~?!

とりあえず、しらんぷりしかないよね?

 

「うん、心配だね・・・・・・」

 

そして時間は進み、授業中でも私は考えていました。

ずっと、ずっと。考えていました。

 

その時、思いついてしまったのです。

 

もし、昨日みたいなお化けが人がいっぱいいるところに現れたら?

 

もし、そこにお父さんやお母さん、お兄ちゃん、お姉ちゃんが居たら?

 

もし、そこにアリサちゃんやすずかちゃんがいたら?

 

怖いのも痛いのもいやだよ。

 

だけど、私の大切な人たちが怖い思いをしたり痛い思いをするのはもっといやなの!

 

お父さんが言ってました。困っている人がいて、助けてあげられる力が自分にあるなら、その時は迷っちゃいけないって。

 

そうなんだ。簡単なことだったんだ。

なんで今まで忘れていたんだろう。

ユーノ君が困ってる。私には魔法使いになれる力がある。それに、賢志さんが助けてくれる。

なら、もう迷わない。

 

私は賢志さんに念話を始めました。

 

≪あの、賢志さん、ユーノくん≫

≪ん? 何かな、なのはちゃん≫

≪どうしたの、なのは≫

 

意を決して言います。

 

≪私、決めたよ。答えが出たの≫

≪そう、なんだ≫

≪私は迷わない。私のできる事がしたいの! だから、ジュエルシード探し、手伝うよ!≫

≪・・・・・・そっか、分かったよ。それがなのはちゃんが出した答えなんだね?≫

≪うん、これが答えなの≫

≪ありがとう、なのは≫

≪じゃあ、今日からなのはちゃんが怪我しない様にカブト直々に護衛を勤めよう≫

≪にゃぁああ!? そうなんだったんだよね!? よ、よろしくお願いします!≫

 

怖いけど、私は魔法の世界に飛び込みます。

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

下校の時間。

私はアリサちゃんとすずかちゃんと一緒に下校しています。

 

「フェレットのお見舞いに行きたいね」

「でも、建物の片付けとかで中に入れてもらえ無いわよね」

「にゃはは、仕方ないよね」

 

私たち3人はたわいのない話をしていました。

 

 

───その時です。

 

 

ブォンって感じの強い違和感を感じました。

 

「!?」

 

《なのはちゃんも、感じたかい?》

《ジュエルシードが発動したんだ!》

 

賢志さんとユーノくんもこの違和感を感じたようです。

すぐに私に念話で話しかけてくれました。

 

≪ねえ、今の感じって・・・・・・?≫

≪うん、その感覚だよ。なのはちゃん≫

≪反応は近いよ!≫

 

私の念話に賢志さんとユーノくんと応えてくれました。

 

≪どうすれば!?≫

≪決まってるよ、封印しに行くよ≫

 

「どうしたの、なのは?」

「ごめん。アリサちゃん、すずかちゃん。急用を思い出したの!」

「急用って、なのは、どこ行くのよ?」

「・・・それは、えっと。その・・・」

 

言いよどむ私に困った顔をするアリサちゃんとすずかちゃん。

 

「話せないの?」

「・・・・・・うん」

 

アリサちゃんの問いかけにうなづく事しかできませんでした。

重く静かな雰囲気が私たちの間にできてしまいました。

 

「・・・・・・いつか、ちゃんと話してくれますか?」

「すずか!?」

 

その時、すずかちゃんが静かに話してくれました。

 

「なのはちゃんがそんな表情で言いよどむなんてよっぽどの事なんですよね。だから、なのはちゃんが話したいと思う時まで待ちます」

「すずか、ちょっと! それで良い訳ないじゃない!」

 

アリサちゃんとすずかちゃんの会話は続きます。

 

「アリサちゃん。なのはちゃんが頑固なのは知ってるでしょう?」

「うっ・・・・・・。そうだけど・・・・・・」

「なら、なのはちゃんを信じて待ちましょう? 話せないのはきっと、なのはちゃんが考えて悩んだ結果だと思うんです」

 

すずかちゃん・・・・・・。

 

「うん、終わったら全部話すよ。だから、アリサちゃん、すずかちゃん。心配しないで!」

 

たぶん、初めてになる魔法での戦い。

正直に言えば怖いの。

 

・・・・・・でも放っておけないの!

 

「分かったわ、なのは。この街で何が起きようとしてるのか分からないけど、きっと危険な事なんでしょう? それになのはは自分から関わって行くのよね。 それを解決できる力があるんでしょう?」

 

アリサちゃんの言葉に思わずギクリとしてしまいました。

それは私の秘密にしている事をズバリと言い当てたからです。

 

「にゃ、にゃはは・・・・・・」

 

私は笑ってごまかす事しかできませんでした。

アリサちゃんって本当にすごい女の子なの!

 

「はぁ・・・・・・。まあ、良いわ。その時になったらこってり絞ってやるんだから覚悟しなさい!」

「あまり、無理はしないでね。なのはちゃん」

 

にゃはは、アリサちゃんが怖いよ・・・・・・。

 

「なのは、あんたの事。信じて待っててあげるからちゃっちゃと解決してきなさい!」

 

アリサちゃんが元気良く言ってくれました。

 

信じて待っててくれるって言ってくれた。

 

「うん! 私、頑張る!!」

 

そんな友達を、大切な人たちが住むこの町を守るために。

 

高町 なのは! 行きます!

 

 

 

 

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