魔法少女リリカルなのは -Dark of Hero-   作:白狼天狗

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EP05

 

 

 

「さて、今の所回収したジュエルシードは3個」

「うん」

 

月が映える夜。

何時もの作戦会議及びなのは育成計画だ。

 

なのはの育成計画は防御重視の砲撃魔導師という方面で決り、レイジングハートはなのはが持っていて貰う事になった。

と言う訳で、今までのおさらい。

 

「シリアルナンバー13、16、21」

「残るジュエルシードは19個か、まだ先が長いな」

 

本当はプラス1個なのだが、有事の為に黙っておく。

敵を騙すには先ず見方からと言うし。

 

「順調に回収できてるよ! ありがとう、ケンジさん」

「どういたしまして」

 

ここ数日で4個。

良い滑り出しだな。

 

「そう言えば、管理局とはどうだい?」

「一応、知り合いの人に連絡を取ったんだが・・・・・・」

 

ユーノの問いに苦い顔で俺は答える。

 

4年前。海鳴市に戻ってくる前に生活していた街で巻き込まれた魔法事件。

今では『賢者の石事件』として処理されたそれに、俺は民間協力者として関わっていた。

その時に知り合った執務官のアレンさんに連絡したのだが、人手不足のためこちらに艦を向かわせるには少し時間が掛かるそうだ。

 

それまでの行動は俺に一任してくれる事になった。

 

アレン・ヴァイシュオン一佐

時空管理局執務官にして管理局のエースオブエース。管理局の英雄。

『賢者の石事件』を表向きでは彼が主導で解決した事になっている。

その働きにより当時は二尉から二階級昇進して今の地位に。

 

当時、拠点となっていた時空間航行艦船テラナイトに今も所属。

ちなみにテラナイトの館長のマーカスさん共々、元気に仕事に従事しているとの事。

 

マーカスさんはかなり豪胆かつ大らかなでとても気持ちの良い人だ。

管理局では珍しい真人間の1人であったりもする。

 

何故、そんな大物達と今でも連絡が取れるかと言うと通信機を持っているからだ。

ちなみにこの通信機を使ってユーノにスクライアの皆へ連絡する様に言っている。

 

話を戻そう。通信機はその事件で知り合った友人から譲り受けた物だ。

 

ミッドチルダの居を構える大手民間デバイス製造会社。アーネンレイベ社。

そこの社長の娘、アリス・アーネンレイベ。

彼女がこちらの世界に逃げて来たのが、俺にとって事件の始まりだった。

彼女は自身に託された『七聖門の鍵』の1つを奪いに来た者から逃走中だったのだ。

戦う力の無い彼女は助けを求めた、その助けに応えたのが俺だった。

その時、彼女の持っていた試作型のアーマードデバイス『キュリオス』。

俺はそれを使って相手を撃退したは良いがそのままずるずると巻き込まれて最後まで。

通信機は事件解決後、別れる時に今後も交流出来る様にと渡されたのだ。

 

友人はもう1人。親友といって良い間柄だったし、結局の所、敵の大将を倒したのも彼だ。

マルコ・エイリネス。

両親が管理局員だったが、色々あって母親のエリアさんと2人でこの世界に住んでいる。

最初に出会ったのは俺が海鳴市から転校して来て、そこで同じクラスになった時だ。

温厚な性格で、すぐ打ち解けられたが、実は魔導師だったとはその時は思ってもみなかった。

防衛魔導師という珍しい魔導師で、攻撃を防ぐことに関してずば抜けて高い能力を持っている。

使っているデバイスはユニゾンデバイスという、魔導師と融合できる珍しい物を使っている。

出自はかなり古いらしく古代ベルカの遺産らしい、エリアさんの家系の家宝だそうだ。

ちなみに展開したら盾の形をしたデバイスになる。

管制人格のアイギスさん合わせて3人とも元気にしている様だ。

 

『賢者の石事件』

 

───あれは、嫌な事件だったな。

 

と、その時だ。

 

「「!」」

 

突如感じる存在の力。

 

「ユーノ!」

「うん、ジュエルシードだ!」

 

即座になのはに念話。

 

《なのはちゃん!》

《うん、感じたの! すぐ向かうね!》

 

即座に行動に移す。俺はユーノとともに夜の海鳴市の空を飛んだ。

俺の場合、ユーノに連れて行って貰う事になるが。

 

向かう途中になのはと合流し、目的地である学校に向かう。

到着した俺たちを待っていたのはすでに暴走し活動を開始する寸前の暴走体だ。

姿はかなり変容しているが学校で飼われている兎を取り込んだモノの様だ。

暴走体はグラウンドで俺たちを見上げてうなり声をあげていた。

 

「な、なんだか怖いよ、賢志さん」

「どうやら、学校で飼っていた兎みたいだね」

「ふぇ!? あれウサギさんなの!?」

 

さて、どうするか。

有事に備えて、なのはにはある程度戦闘経験を積ませる必要があるし、ここはなのは一人に任せてみよう。

それができるだけの知識と技術は教えたつもりだ。

 

「なのはちゃん、今回は1人であれを封印してみようか」

「ふえええ!? でも、私、まだ・・・・・・!」

「今のなのはちゃんなら出来るよ。大大丈だからやってみて」

「・・・・・・うん、やってみるの!」

 

ユーノに合図して、結界を張って貰う。

これで準備完了。

 

一方、上空から相手と自分の間合いを確認するなのは。

やはり、俺の教えた戦いのいろはを実践できている。

 

「暴れられると困るからまずは動けなくするの!」

【Chain Bind】

 

暴走体が桃色の光の鎖に拘束された。

逃れるために抵抗する暴走体。しかし、なのはのバインドは強固。

それを打ち破るには至らなかった。

 

「えと、学校の迷惑になるからこれで!」

【Divine Shooter】

 

なのはの周りに形成される8つのディバインスフィア。

なのはのディバインバスターなら一発で決着がつくだろう。しかしユーノが結界を張ってあるとはいえそんなものを放てばグランドが大変なことになるだろう。

 

なのはのディバインバスター、結界を貫通するんだよな・・・・・・。

 

ともかく、状況判断も出来ているな。

 

「シュート!」

 

なのはの掛け声を合図に全てのディバインスフィアから魔法弾が次々と発射される。

逃げようにも拘束されている暴走体はなすすべなく魔法弾の雨を受ける事になった。

着弾とともに巻き上がった土ぼこりが消えた時、そこにはぐったりと無力化された暴走体がいた。

 

「これなら封印できるね、レイジングハート!」

【All right. Stand by. ready】

 

「リリカルマジカル! ジュエルシード、シリアルⅩⅩ! 封印!」

【Sealig】

 

封印完了。

すぐに助けに入れるように身構えていたが、杞憂に終わり結果は見事な圧勝であった。

 

もうなのは一人で良いんじゃないかな?

 

それぐらいの成長を見せている。確かにこの時期は覚えるのも上達するのも早いが・・・・・・。

 

「おつかれ、なのはちゃん」

「なのは、お疲れさま」

 

初めての一人での戦いで緊張したであろうなのはに労いの言葉を贈る俺とユーノ。

 

「ふぅー、緊張したの・・・・・・。こんな感じでいいのかな?」

 

とゆっくりと下降してきたジュエルシードをレイジングハートで回収しながらなのはは俺達に聞いてきた。

 

「うん、上出来上出来」

「これ以上ないぐらいすごかったよ、なのは」

「にゃはは、なんだか照れくさいの」

 

とまあ、こんな様子でジュエルシード回収に勤しんでいる訳なのです。

 

「これで回収したジュエルシードは4個だね」

「うん、そうだね。ユーノくん」

 

現在、レイジングハートに収納されているジュエルシードは4個。

 

ユーノが最初に回収したシリアル13、なのはが初めて封印したシリアル21、この前の神社で相手したシリアル16、そして今回のシリアル20。

 

この調子で危なげなく回収できれば良いのだが・・・・・・。

 

「さて、今日はこれにて解散だね」

「はうぅ・・・・・・、ちょっと眠いよ」

「夜も遅いし早く帰って寝た方がいいね、なのは」

「うん、そーする・・・・・・」

 

緊張も解け一気に眠気に襲われているなのは。これは十分な休息が必要そうだ。

 

「明日の午前中の模擬戦はお休みにしといた方が良いね。明日はゆっくり休みな、なのはちゃん」

「ありがとう、賢志さん」

 

それで今日は解散となった。

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

そして、翌日の朝を迎える。

 

「「いただきます」」

「はい、召し上がれ」

 

トーストにベーコンエッグ、サラダにコーヒー。

一般的な朝食を食べ進める俺とユーノ。

 

「ねえ、賢志。問題の方は順調?」

「うん。問題無いよ」

「ケンジさんともう1人、協力してくれてる人がいるので周りに被害が出る前に回収で来ていて、とても助かってます」

 

なのはの事は、両親に内緒だ。

 

特におじいちゃんに知れたら叩きのめされる。

 

さすがに年端も行かない少女に戦いを強いている事は褒められるべき事じゃない。

彼女の選択であっても、年長者の俺が殴ってでも止めなきゃいけないのだが・・・・・・。

 

相手が、あのなのはだからなー。

 

始めてあった時は、本当にか弱い少女だったんだけど。

いつの間にかあんなに意志が強く頑固な性格になってしまったのだろう?

言葉遣いや雰囲気は優しく柔らかいけど、これと決めたら一貫するのは血筋なのだろうか。

 

さすが、戦闘民族高町家。

 

高町家の皆さんと知り合ったのは家の道場との交流試合が切っ掛け。

試合の相手は年齢が近いという事で美由希さん。

強敵と思い張り切っていたんだけど、割りと呆気なく倒してしまった。だがそれが運の尽き。

即座にグリリバ、もとい、恭也さんと試合する事に。

案の定、ボコボコにされましたけど。

 

朝食も終わり、せっかくの日曜日なのだから有意義に過ごしたいものなのだが。

休日は午前と午後になのはの魔法の講習を入れていたが昨日はさすがに疲れたらしく午前の分はお休みにしたため自由行動となっている。

 

「ユーノはどうする?」

「この街の散策をしてみたいね。もしかすると発動前のジュエルシードが見つかるかもしれないし」

「あー・・・・・・、探知系の魔法使えたら協力できるんだけどなぁ」

「人には向き不向きがあるからね。僕は気にしてないよ?」

「うん、ありがとう・・・・・・。街に出るならその服装だとちょっと目立ちそうだし、俺のお古でよければ着る?」

「あ、うん、そうだね。ありがとう、借りるよ」

「一応俺も外、見て回ってみるよ。見つかれば御の字だからね」

 

という訳でユーノが身支度を終えてと別々の方向へ出発した。

有事の際は念話で取ればいいのは魔導師の特権だよね。携帯要らずで便利だ。

まあ、携帯自体持ってないんだけど。

 

───意識を集中する。

 

広域を精密に探知する魔法は俺には使えないが、身の周り程度の広さなら出来ない事もない。

探知をかけつつ歩きまわる。

かれこれ一時間半ほどたっただろうか?

体内時計だから正確にはわからないがそれなりの時間は経っただろう。

少し疲れた。休憩したいと思い休めそうな場所を探していたら・・・・・・。

 

「図書館か、ちょうど良さそうだな」

 

 

 

◇   ◇   ◇

 

 

 

俺は誘われるように図書館へ歩を進めて、その中にいる。

休日という事でそれなりの利用者がいるようだ。

さて、何を読もうかな?

そう考えながら図書館の中を彷徨っていると───。

 

「んー・・・・・・! あと、ちょっと・・・・・・!」

 

車椅子に乗った少女が一生懸命手を伸ばして本を取ろうとしていた。

彼女の言葉と通り、あと少しなのだが姿勢が少し危ない。

バランスを崩して倒れてしまいかねない。

 

「これが読みたいの?」

 

見かねた俺が彼女に近づきお目当ての本を手に取った。

 

「あ、おーきに!」

 

茶色の短髪で左に交差する赤色の髪飾りを付けた美少女が笑顔でお礼を言った。

本当に美少女率高いよなぁ、海鳴市。

 

「まだ、何か読みたい本とかある?」

「あー、えっと。ホンマにええの?」

「うん、遠慮なく言ってよ」

「じゃあ、お言葉に甘えて。あそこの“今日の夕食100品”とあっちの“おすすめディナーメニュー”も取ってーな」

「分かったよ。はい、どうぞ」

 

ご所望の本を取ると少女に手渡した。

とても明るい少女だ。だが、なんだか無理をしているようにも見える。

と、そこで気がつく。

 

「本持ったままだと車椅子じゃあ動きづらいよね、押して行くよ」

「え!? ええって、ええって!」

「遠慮しなくてもいいよ。俺がやりたくて言ってるんだからさ。本当に迷惑ならやめるけど・・・・・・」

「うぅー。そういう言い方、卑怯やんか! わかったで。じゃあ、あっちのスペースまで押してってーな」

「了解」

 

彼女の指示に従って車椅子を押していく俺なのだが、何か違和感を感じる。

この少女、どこかで見たような気がする。

はて、どこだったか・・・・・・。

 

まあ、そんなわけで彼女を車椅子のためのテーブルのみのスペースへ移動させた俺はちょうど途中で見かけた本を片手に椅子を持って彼女の向かいに座った。

 

「なぁなぁ、お兄さん名前なんて言うん? あ! 私は八神 はやて。よろしく!」

「はやてちゃんか、うん、よろしく。俺は東堂 賢志。好きに呼んでくれていいよ」

「東堂 賢志さんかぁ・・・・・・。うん、覚えたで! 改めてよろしくお願いします、賢志さん!」

 

と自己紹介した俺達。

彼女の名前は八神 はやてと言う。八神 はやて、八神 はやて・・・・・・。

どっかで聞いたことある様なない様な?

・・・・・・まあ、いい。きっと気のせいだ。

 

読書をしながらたわいもない話をする俺たち。

お互いの読んでる本から話題を切り出し弾ませていた。

どうやらはやてには家族がいなく、一人で暮らしているとか。

病院の担当の先生や毎月仕送りしてくれている親戚の人がよくしてくれているようだが、やはり、一人だと寂しいのだろう。

 

「あのさ、はやてちゃん」

「なに?」

「今日会ったばかりでこんなこと言うのおかしいかもしれないけどさ、遊びに行ってもいいかな? はやてちゃんの家にさ」

「え?」

「いや、今とかじゃなくてさ。迷惑になるなら今の言葉は忘れてくれて良い。ただ、一人でいるよりも二人でいる方が楽しいと思ってさ。他にもはやてちゃんと同世代の子も友達にいるからさ、声をかければ来てくれるから皆でお邪魔したいと思ったんだ」

 

はやてがうつむいてしまった。

 

しまった、自分勝手が過ぎたか・・・?

用事を思い出したとでも言って立ち去るべきか?

 

急いで立ち去って二度と此処に近づかなければ、変な奴だったってすぐ俺の事なんて忘れてくれるだろう。

 

「なあ、賢志さん」

「な、何かな?」

 

そんな思考を巡らせていた時に、はやてが口を開いた。

 

「なんで、そんな事までしてくれようとするんやろか?」

「え? なんでって、それは・・・・・・」

「それは?」

「もう友達だから、かな?」

「とも・・・だち・・・・・・?」

 

はやての疑問には自然と言葉が出た。

 

「おじいちゃんが言っていた。心が少しでも通って、名前を呼び合えば、それでお互いは友だ、と。 それともこんなずうずうしい奴を友達なんて御免かな?」

「ううん、そんな事あらへん! そうか、友達か・・・・・・。そうやね! 私と賢志さんは友達や!」

 

それから、俺とはやては時間を忘れて色々話した。はやての長年に溜まったを寂しさを吐き出すように。

なんだが最初に感じていた影が取れて少し表情に明るさが増した気がする。

 

「あれ、もうこんな時間か」

 

時計の針は正午を大きく過ぎていた。

 

「ホンマや。帰ってお昼にせなな」

 

一度帰ってお昼を食べてこなくちゃいけないな。午後も散策して、五時前後になったらなのはの魔法講座しなきゃいけない。

 

ううむ。鍛錬の時間が取れなくなっていく。

おじいちゃんにどやされるかも。

 

「そうや! なあ、賢志さん。今日のお昼ウチで食べていかへん?」

「え? 良いの?」

「友達やさかい、いいに決まっとるやないか!」

「・・・・・・そっか。じゃあ、お呼ばれしようかな」

「よーし、気合い入れて作るでー!」

 

そうして俺たちははやての家に向かう事になった。

はやての車椅子を押して図書館のカウンターへ行き本を借りる手続きをした後、図書館を後にした。

彼女の家に向かう道中、俺がいる事で彼女の寂しさが少しでも和らげばいいなと切に願った。

 

 

 

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