魔法少女リリカルなのは -Dark of Hero- 作:白狼天狗
反応はすぐ近い。月村家の敷地内だ。
近くなった所でユーノに結界を張って貰った。
結界が張り終わっていざ捜索となった時、ジュエルシード暴走体が現れた。
現れたのだが・・・・・・。
「にゃーお」
高さにして5メートル程と言ったところだろう。その巨大な暴走体を見て俺たちは呆気に取られる事になる。
「はえ?」
「えぇ・・・・・・」
「おう・・・・・・」
上からなのは、ユーノ、俺の順である。
そこに居たのは灰色に黒縞模様の猫。俺がちょっと前に遊んでいた仔猫。
アレンであった。
ズシンズシンと地面を響かせながらゆったりと歩く巨大仔猫はあまりにもシュールだった。
「あ、あ・・・・・・、あ、あれ、は?」
「多分、あの猫の大きくなりたいって想いが正しく叶えられたんじゃないかな、と・・・・・・」
「そ、そっか・・・・・・」
なのはとユーノの会話を聞きながら俺は少し頭痛を感じていた。
今までのジュエルシード暴走体は禍々しい姿に変貌していたから今回もそうだろうと思っていたんだが、こういうのもあるのか・・・・・・。
大きさはともかく姿が愛くるしい仔猫ののままなので攻撃するのを戸惑う。
特に俺。すっごく戦いたくないです。色んな意味で。
「でも、このままだと危険だから元に戻さないと」
「そうだね。さすがにあのサイズだとすずかちゃんも困っちゃうだろうし」
「それ以前の問題だと思うが」
とりあえず封印しよう。あれなら攻撃して無力化しなくても封印できそうだ。
「にゃーお」
「襲ってくる様子もなさそうだし、ささっと封印を」
「だね」
なのはが服の中からデバイスを取り出した。
「じゃあ、レイジングハート!」
だが、なのはがセットアップしようとしたその時、後方から魔力弾が飛び抜け、無抵抗な仔猫に直撃した。
「ニャアァァ・・・・・・!!」
「「「ッ!?」」」
仔猫の悲痛な鳴き声。
驚愕する俺達。
振り返るその先、視界の奥に魔力弾を放った魔導師がいた。
金髪の長い髪を二つに分けて黒いリボンで結び、レオタード風の物にスカート、マントに至るまで黒いバリアジャケットを身に纏う少女。
その手には黄色のコアを持つハルバードの型の黒いデバイス。
この物語の第2の主人公。
───フェイト・テスタロッサ。
「バルディッシュ。フォトンランサー、電撃」
【Photon lancer. Full auto fire】
術者の指令に則りデバイスから複数の魔法弾が放たれた。
まだ仔猫のアレンに、しかもいつもとなれない巨体ではよける事などできない。
全て直撃。仔猫は苦痛の声を上げ、勢い良く吹き飛ばされて行った。
「な、魔法の光!? そんな・・・・・・」
「驚いている場合か、ユーノ! なのはちゃん!」
「うん! レイジングハート! セットアップ!」
【Stand by. ready. Set up】
なのは即座にバリアジャケットとデバイスを展開、迎撃態勢に入る。
「あの黒い魔導師・・・、一体誰なんだ?」
「あなたは・・・、誰・・・なの?」
なのはとユーノ問いかけに黒い魔導師の少女は答える。
「私はフェイト・テスタロッサ。民間協力者としてジュエルシードの回収を行っている者です」
俺は驚愕した・・・・・・!!
フェイトが民間協力者!?
どういう事だ、何が一体どうなって・・・?
だが、今すべき事は決まっている。
「なのははあの仔猫を頼む! ユーノはそれのサポート! 彼女は俺が!」
「うん、わかったの!」
「まかせて!」
なのははフライヤーフィンで飛行し、この仔猫の元へ。ユーノは陸路からそれに続いた。
「君! 待ってくれ!」
「あなたは?」
なのはとユーノを追いかけ様としたフェイトに向けて俺は叫んだ。
「俺は東堂 賢志。君の目的を教えてくれないか?」
「スクライアからの依頼です。輸送中に襲撃を受け、紛失したロストロギアの捜索及び回収です」
完全に原作と乖離している・・・!
俺の存在自体がすでに異常なのだが、フェイトが民間魔導師として依頼を受けている事。
それは全くの予想外・・・・・・!
「俺はアレン・ヴァンシュオン一佐から特例でこの案件の指揮を執っている者だ。すまないが話を聞いてくれないか?」
そうだ、ここは冷静になって話し合う場面だ。
「ヴァンシュオン一佐!?」
フェイトが驚く。
管理世界では名の知れた人物だ。
これなら・・・・・・。
「証拠は?」
「え?」
フェイトの言葉に思わず気の抜けた返事をしてしまった。
しかし、証拠。証拠と言われて提示できるものは無い。
ここでデバイスを持ち合わせていない事に対する弊害が発生しようとは・・・!
「今、提示できる証拠は無い。だが、信じてくれ。確認を取ってくれれば分かる事だ」
「しらじらしい嘘ですね」
俺の意見は無常にも切り捨てられてしまった。
いや、確認ぐらい取って!
「ここは管理外世界ですよ。何故、あなたがヴァイシュオン一佐の名を知りえたかは分かりませんが・・・・・・」
彼女のハルバート型のデバイスがハーケンフォームに変形、魔力刃を発生させ鎌の形となる。
「あなたは排除すべき敵のようですね」
戦いは避けられないって言うのか!?
「ハーケンセイバー!」
【Haken Saber】
誘導制御型の射撃魔法!
くつ! 仕方ない!
「来い!」
「なに!?」
飛来する魔力刃が次元の壁を越えてやって来たダークカブトゼクターによって弾かれる。
俺に寄って来たゼクターをすかさず掴み、ベルトのバックルに差し込む。
「変身!」
【Henshin】
マスクドフォームへ変身。臨戦態勢へ。
「パワードスーツ!? ロストロギアの不法所持か!」
「待ってくれ! 話を───」
「問答無用!」
【Photon lancer. Full auto fire】
フェイトの周りに無数に生成されるスフィアが槍状に変化し、俺目掛けて射出される。
弾速が速いが避けられない事も無い!
フェイトの魔法を全て避け、再び対峙する。
「ならば、ブリッツアクション!」
【Blitz Action】
あれは高速機動魔法・・・!
瞬間移動を繰り返しているような高速移動、感知は出来るが反応が出来ない!
「たあっ!」
「はっ!」
背後から振り下ろされる鎌を辛うじて右腕で受け止める。
魔力刃がヒヒイロカネの装甲を切り裂け無いでいる。
「頼む! 話を聞いてくれ!」
俺の言葉に無言で高速移動で距離をとる。
この身のこなし、戦い方。原作通りのスピードタイプの魔導師。
ライダーフォームなら対応できるが、必要なのか・・・・・・?
「強敵のようですね。なら・・・!!」
フェイトのデバイスがデバイスフォームに変形。
【Thunder Smasher】
「撃ち抜け、轟雷! サンダァァァスマッシャーー!!」
砲撃魔法!?
俺はなすすべ無く、砲撃魔法の光に飲まれた。
───が、しかし。
「そんなっ!?」
フェイトの驚く声が聞こえた。
俺も内心驚いている。
何故なら・・・・・・・。
「無傷なんてっ!?」
フェイトの言う通り。俺は無傷だ。
「眼がチカチカするな・・・・・・」
ダメージと言えばコンパウンドアイの遮光機能が一瞬遅れたため少し眼が眩んだ程度だ。
マスクドフォームの防御力に感謝。
いや、違う。魔法攻撃を軽減する、なんて可愛い話じゃない。
・・・・・・まさか、ヒヒイロカネの特性か?
「なら、これならどうです!!」
【Thunder Smasher】
更に強力な砲撃魔法を使う気か!?
「サンダースマッシャー!! オーバーシフト!!」
【Orver Shift】
「天破轟雷っ!! 撃ち抜───」
「待ちなフェイトっ!!」
今まさに、強力な砲撃魔方を行使しようとしていたフェイトに静止の声が掛かった。
「アルフ!?」
フェイトの傍らに現れた女性。
オレンジ色の長い髪、整った顔立ち、釣り上がり気味の眼でさえ美点。
そして、纏う運息がまるで誇り高き狼を思わせる。
助かった・・・!
「どうして止めるの、アルフ!」
フェイトの問いにアルフと呼ばれた女性が答える。
「プレシアに確認を取って貰ったよ。そいつの言っている事は本当だ」
「本当なの、アルフっ!?」
アルフが端末を取り出し映像を空間に投影した。
望遠機能で俺も中身を確認する。
そこには、俺の顔写真と一緒に管理局が到着するまでこの一件は俺に指揮が任されている事がアレン一佐の正式な書面で書かれていた。
更に、今回の輸送船襲撃事件に関して管理局が把握している情報も書かれていた。
その中に気になる一文を見つける
襲撃者の胸に赤と黒の縞々の模様が描かれたエンブレムがあった、と言う事だ。
そのエンブレムに俺は心当たりが在った。
───血反吐が出るほど憎いと感じる程に。
と、うつむいたままのフェイトがゆっくりと俺の前に下りてきた。
「あ、あの・・・・・・」
絞り出すようなか細い声。
その直後、フェイトは盛大に頭を下げた。
「ごめんなさい!!」
フェイトの表情を確認すると目は潤み、顔は蒼白なものになっていた。
先ほどまで纏っていた凜とした雰囲気とうって変わって、まるで弱った小動物の様だ。
・・・・・・何この可愛い生き物。
「え、っと、その。本当にごめんなさい! 私、とんだ勘違いを! しかも攻撃までしちゃって、砲撃魔法まで撃っちゃったし・・・・・・」
「いや、気にしなくて良いよ。あの場面は仕方ない部分が多かったし。まあ、俺はご覧の通り無傷だから、ね。大丈夫だよ」
眼に見えてうろたえているフェイト。
俺は即座にフォローを入れる。
「すまないね、あんた。フェイトは今回が初仕事だから張り切っちゃって。勘弁してくれると私も嬉しいしさ」
アルフと呼ばれた女性が降りてきてそう言った。
「自己紹介するよ。私はアルフ。フェイトの使い魔さ」
「俺は東堂 賢志。よろしく。あー、と。まあ、こちらこそ色々と至らぬ点があったし、さっきの事は相子という事で」
「そう言って貰えると助かるよ」
良かった。これでこっちはなんとか丸く収まったか。
「賢志さん!」
その時、後方からなのはの声が聞こえた。
あっちの方が解決したみたいだ。
「なのはちゃん、大丈夫だった?」
「うん、ちゃんとできたよ。問題なし! ぶい!」
ピースサインを出して自信満々に報告してくれたなのは。
「えーと、私たちはあんたらの指揮に入れば良いのかい?」
アルフが俺に聞いてきた。
「あ、ああ。そうだな。ジュエルシードの回収を手伝ってくれるなら、そういう事になる。」
「分かりました、よろしくお願いしますね」
落ち着きを取り戻したフェイトがお辞儀をする。
なのは達に彼女らを紹介しないと。
「なのは、ユーノ。こちらはスクライアからの依頼でジュエルシード回収を手伝ってくれる人達だ。自己紹介して」
「高町 なのは、っていいます。よろしくおねがいします!」
「ユーノ・スクライアです。依頼は族長から?」
ん? どうやら、ユーノは今回の依頼を知らされていない様だ。
「はい、そうです。スクライア族長から私の母さん、プレシア・テスタロッサへの依頼です。 私はフェイト・テスタロッサ。母さんの変わりに娘の私が今回の依頼を受け持ちます」
「私はアルフ。フェイトの使い魔さ」
すると、なのはがとてて、とフェイトに歩み寄った。
「よろしくね、フェイトちゃん!」
「・・・・・・う、うん」
なのはの微笑に対し戸惑い気味のフェイト。
「名前で呼んで?」
「え?」
お互いの雰囲気が険悪より、良好の方がと言う事か。
なのはの場合、ただ単純に仲良くなりたいだけなんだろうけどさ。
「な、なの・・・は?」
「うん」
「なのは」
「うん!」
なのはの笑顔は自然と人の心を穏やかにする。
そういう、魅力がある。
「よろしくね、なのは」
「よろしくね、フェイトちゃん!」
◇ ◇ ◇
月村邸の庭園のティースポット。そこで私はすずかと一緒になのはたちの帰りを待っていた。
「お嬢様」
「どうしたの、寺島」
なのはたちが席を飛び出した時、すぐさま寺島を呼び跡を付けさせていた。
だけど、寺島が帰ってくるのが速すぎる。
何があったのかしら?
「追跡対象の消失を確認しました」
「消失!? 消えたってこと!?」
私は面食らった。
消えたってどういうことよ!
「はい。私の目の前で目標は忽然と消失。以後、捜索しました発見できませんでした」
「人が突然消えるわけないでしょう! いい加減なこと言ってんじゃないわよ!」
「私の報告に虚偽はありません」
確かに、今まで寺島が嘘をついたことは一度もない。
だからって、人が突然消えるなんて・・・・・・。
「まるで魔法みたいね」
すずかのこぼした言葉に、はっ、となった。
しかし、そんなことありえるの?
私はすずかに聞きなおした。
「魔法?」
「うん、魔法。それなら、説明できるよね? 自分でも変なことを言ってるって思ってるけど」
そうだ、魔法だと言ってしまえば今の状況に説明がつく。
今でこそ空想、ファンタジーとして定着した魔法だが、かつてはありえていたかもしれない存在。
錬金術が一番有名な魔法の例と言えるだろう。今の科学の元にあったのは錬金術だ。
魔法なんてあると信じる事は現代では異常な事だ。
だけど、わたしには“異常”に出合ったことがある。
ならこの際、常識なんて投げ捨てて仮説を立てましょう。
アニメや漫画、小説で描かれる魔法にも色々ある。
攻撃魔法、防御魔法、回復魔法、飛行魔法。
その中に、認識阻害魔法もある。
仮に魔法があるとすれば・・・・・・。
「ふーん、分かったわ。ありがとう、寺島。戻っていいわよ」
「了解しました」
これは、なのはたちが帰ってきた時が待ち遠しいわね!
ねえ? なのは!! 賢志!!
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