だが、そんな中にも例外…雇い主に 想いを募らせる者が居る。
──これはそんな男の哀れで儚い人生録だ。
「──はあ、今日も疲れた」
ん?誰だって?そんなのどうでも良いだろ。だってただの執事だぞ?じゃあ次の仕事あるから戻るな。
「──早く寝るか」
凄い小さくベット一つと衣服棚しか無い質素な部屋。俺が十何年間か過ごしてきた自分の部屋。寝巻きに着替えてただただ天井を眺めていた。
そんな時、ふと声が耳に入る。
『あの、まだ起きてる?』
「起きていますが?」
『じゃあ入るね』
お嬢様が此処に来たようだ。何故だろう、寝れなかったのか?お嬢様というのは広町七深という少女だ。歳は俺の一個下で元幼馴染み…今はご主人様である。お嬢様はその事を認めていないらしいが関係ない。
『お邪魔します。今から寝る所だった?迷惑なら出るね』
そんな事ないですよ、と呼び止める。どうやら勉強が詰まっていたらしい。独学で学んだ俺に聞いて良いのだろうか?そして、この天才に解けない問題なんてあるのか?
『天才なんかじゃないよ〜?普通普通』
「お嬢様がそう言うならそうですね」
『そうだよ〜。私は普通だよ』
普通の人間は地の文を読むことが出来ないと思うのだが、違うだろうか?いや、俺は正しい筈だ。天才って普段からちゃんと勉強してるのか。偉い偉い。
『むー?なんか馬鹿にされた気がする』
「勘違いではないでしょうか?」
『そうなの?雲雀くん』
「っ!!」
その呼び名を聞いてお嬢様、彼女に向けていた感情が少しだけ蘇ってしまった。だが、そんなに俺の心は弱くない。今日は帰って貰えばこんな事直ぐに忘れるだろう。今日は帰ってくださいと伝えようとした時、
『なんで家柄なんかで遠慮しなくちゃいけないの?』
とお嬢様が言う。なるべく冷静に告げる。
「それは私が西尾家に生まれて、お嬢様が広町家に生まれてきたからですよ」
「お嬢様、今日は帰ってください。そして、諦めてください」
『なんで?そんなの納得いかない。それなら家を出「辞めてくださいお嬢様」なんで?止めないでよ』
そう言いお嬢様は涙をポロポロ落とす。俺の心は罪悪感でいっぱいになる。こればっかりはしょうがない、俺にはどうしようもない。お嬢様には部屋に帰ってもらって寝よう。俺にできる事はそのぐらいだ。
それから何ヶ月も経って、お嬢様はバンドを始めて笑顔が増えて、少しだけお嬢様との距離が近くなった、気がする。やっと頑張って執事として決心ができてたのに、それが崩れそうだ。
駄目だ、お嬢様はお嬢様。幼馴染みでも友達でもない。“ナナ”じゃないんだ、俺が使うべき相手なんだ。そう言い聞かせても日に日にお嬢様が好きな気持ちが抑えられなくなってる。もしかしたらここを追い出されるかもしれない、けど、けど。それは結局お嬢様を幸せにしているのだろうか?
そうやって自分の世界に浸っていると部屋がノックされる。またお嬢様だろうか。
『雲雀君、入っても良いかい?』
旦那様がなぜここに?旦那様の説明するか。この人は見た目完全にが8◯3。めちゃくちゃ怖い、けど世界的に有名な画家。ギャップ凄すぎ。
外で待たせるわけにはいかないので速攻でドアを開ける。だが、この部屋に椅子なんて無いので旦那様にはベットに腰をかけてもらって俺は地面に正座する。
『何故そっちに座る、隣に来なさい』
「で、では失礼します。お嬢様の事ですよね」
『やはり気づいていたか。そうだよ、七深の事だ。単刀直入で申し訳ないが、七深をよろしく頼むよ。嫁は知らんが私は雲雀君の味方だからな』
「だ、旦那様?勘違いですよ、別にお嬢様この事好きだとかじゃ…」
『まあいい。私はこれで帰るよ雲雀君。頑張ってくれ』
そう言って足早に去って行った。二分の一は攻略したのか?さっきは慌てて否定したけどやっぱナナの事好きなのかなぁ?はっ!ナナじゃない!
もう寝よ!寝て忘れよ。それが1番!
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はい、忘れられませんでした。我慢するので精一杯です、今日も仕事やろう、そうしよう!
てか、これって奥様の許可も必要なのかなぁ?あの人結構怖いんだよ、まじで。普通に解雇宣言してくるし、話しかけたくないんだよ!仕事だ仕事、仕事なんだよ!
集中出来ねぇ、お嬢様見るだけで悶え死にそうだし、キツい。なんだあれ、笑顔でベース弾く姿。尊すぎるだろ、死ねるぞおい。バンドメンバーに気づかれてるんじゃないか?
あれ?奥様からメール?
雲雀くん、私達ちょっとだけ海外旅行行ってくるから七深よろしくね。
ps七深は高校卒業まで手出しちゃ駄目だよ♡
な、なんだこれ?俺公認されたって事?早くないですかねぇ。てかあの人がハート使うとか吐き気がするわ。…やめとこ。これ以上変な事考えたら殺されそう。まあ、いい。あの二人が帰ってくるまで待とう。え、でもこれは振りなのか?じゃ、じゃあナナを?駄目だ、駄目だぁ。
突然だが今日は三月十七日だ。何の日かって?分からないのか?今日はお嬢様、ナナの卒業式だよ!遂にこの日が来たんだよ。まだ奥様と旦那様は帰ってきてないけどな!
桜が満開の月ノ森学園。講堂では生徒全員で校歌を歌って色んな人から言葉をもらって。卒業生は拍手の中卒業証書をもらう。自分が選ばなかった道、俺自身が進みたかった道。未練とかは無いけど泣いてたら笑ってたりする人を見ると少し羨ましい。
うん?ナナと目が合う、俺に向かって小さくピース。相変わらずかわいい。
でも、やっぱり緊張すんな。告白…だもんな、本当に俺でいいのか?よい、そんな弱気じゃ駄目だろ。
いや、ヤバい。ナナを物陰に呼んだのは良いんだけど緊張して言葉が出ない。
『どうしたのー?こんな人が来ないとか呼び込んでナニするのかな〜?』
「え、えっと…、あの、、、」
ヤバいまじでヤバい、頭ん中真っ白になる。でも、言わないと。
「あのっ!ナナ!話す事があるんだ」
『なに?話すことって?』
俺がやっと言葉を紡ぎ出すとナナは悪戯っぽく『なに〜?』と言う。
そして俺は遂にこの言葉を紡ぎ出す。だが、そんなことには関係なくナナは俺のことを急かしくる。
『はやくっ!時間経っちゃうよ?』
「っ!あ、あのっ!ナナ、いや、広町七深さん。俺と結婚して下さい!」
俺の告白に対して彼女は少し恥ずかしそうにしながら笑顔で微笑んだ。
拙い文章ではありますが、最後まで読んでいただきありがとうございました。