両面宿儺の指という特級呪物を回収するため、とある学校に取りに来た伏黒恵は、先生である五条悟が言っていたことを思い出す。五条曰く、その学校には両面宿儺の指の他にも特級呪物があるらしいが、その呪物は人に害を及ぼさず、呪霊すらもおびき出さない呪物らしい。そんなのが何故特級と位置づけられた理由として、まず、外部へと運べない。そして、何をしても破壊できない。これが、両面宿儺の指のような悍ましい履歴があるなら納得できるが、その呪物に至ってはどの時代に出来た物なのかすら分からなかったそうだ。故に、伏黒に課せられた任務は両面宿儺の指の回収だけとなっていた。
伏黒は困惑していた。一般人でしかない虎杖が、伏黒を助けるために宿儺の指を食べて呪力を得たこと、更に宿儺が受肉してしまったこと。一瞬の間に色んな事が起きすぎた。
そして、今伏黒の前にいるのは受肉した宿儺だ。未だ指一本しか取り込んでないのにも関わらず、自分とは一線を画す呪力に恐怖するも、呪術師として逃げることは出来ない。故に伏黒は立ち向かうしか選択肢は無い。生憎今の宿儺は自分の存在を歯牙にもかけてない。先手はこちらが取れるだろうが、一撃で倒せるような相手では無い。伏黒が考えを巡らせていると、別の呪力を感じた。宿儺の呪力に惹かれて来た呪霊だろうか、しかし、この呪力は今まで感じてきた中でも極めて異質なものだった。
受肉した宿儺もその存在に気づいたのか目を向ける。しかし、そこに呪霊はおらず、怪訝に思った宿儺の腹から銀色の刃が突き出していた。刃渡りは短く、滑らかに曲がったものだ。宿儺の後ろから刺したのは鎧を着込んだ呪霊だった。いや、呪霊では無く人だった。それは特級呪霊である宿儺よりも醜悪で、歪で、全てに忌み嫌われる様な、尋常ではないほどに呪われた一人の人間だった。
「貴様ぁぁぁ!!!」
宿儺は怒りに任せた右腕で裏拳を繰り出す。それだけで強い風圧が襲い、触れたものを木っ端微塵に吹き飛ばしてしまうだろう。しかし、奴に当たる瞬間、宿儺の腕は逆へと弾かれ、大きく姿勢を崩される。先程の曲刀のように曲がった短剣を今度は喉に突き刺す。抜きだす時にもより傷口を拡げるために、抉るように抜き出す。宿儺を蹴って自分との距離をとる。
宿儺は怪我の治療に専念していたが、起き上がる事は無く、それどころか宿儺の呪力は感じなくなり、受肉する前の虎杖に戻った。そのことに安堵したが、直ぐに意識を謎の人物に向ける。ほんの一分ほどの行動だけで、指を一本しか取り込んでいないとはいえ、呪霊の王と畏怖される宿儺を倒したのだ。警戒しないはずがなかった。しばらく睨み合いが続くと、虎杖が意識を取り戻し、起き上がろうとする。それに反応した奴は何処から取り出したか分からない、先程の短剣とは違う、刃渡りが長い直剣を振りかぶる。
「待ってく「はいストッープ」」
目を黒い布で隠した白髪の男が、直剣を止めていた。
「先生!」
「そう!君の大好きな五条先生だよ。元気?」
直剣を止めたのは呪術師最強の男であり、自分の先生だった。