新作、書きましたよ!
最近は待望の鬼武者WSと三国無双2リマスターに夢中で執筆をサボってました⋯
現在、鬼殺難易度に苦戦してます⋯(笑)
・刀鍛冶の里 森林地帯
鉄珍の屋敷付近の森林で高等幻魔ゴルドーと戦闘していた甘露寺蜜璃だったが戦況は苦戦を余儀なくされていた。ゴルドーの怒嵐剣から放たれる斬撃を掻い潜りながら接近し素早く攻撃してから距離を取る一撃離脱の戦法で攻めていた。
「恋の呼吸 弐ノ型・懊悩巡る恋!」
「ぬんっ!」
蜜璃の攻撃はゴルドーの身体に命中し血飛沫が飛ぶもやはり攻撃はその筋肉の鎧に阻まれ決定打になっていない。すでにゴルドーは身体中血塗れになっているがその攻撃は激しさを増していた。
(⋯くっ!駄目だわ⋯どれだけ斬ってもあの筋肉を斬り裂けない⋯すっごく力を込めて技を繰り出してるのに!)
対する蜜璃は身体のあちこちに斬撃の掠り傷が刻まれているが無傷であり戦況は優位に見えたのだが⋯
(ど、どうしたらいいの⋯!こっちの攻撃がほとんど効いてないのに、あの化け物の攻撃は一撃必殺⋯私一人じゃ勝てないかも⋯!)
どれだけこちらが隙を付いて攻撃を加えてもほとんど効果がないのに対して相手の攻撃は一撃でも当たれば致命傷の威力なのだ。僅かな集中力の途切れも死を招く状況に蜜璃の精神力は確実に疲弊し始めており次第に呼吸に乱れ始めていた。
「どうした!もっと打ち込んで来い、甘露寺蜜璃!その程度の斬撃ではオレの筋肉の鎧は貫けんぞ!」
「馬鹿にしないで!あなたなんかに絶対に負けないわ⋯!」
(もっと心拍数を上げなくちゃ⋯!もっと血の巡りを速く⋯強く⋯もっと強くッ!!)
しかし、蜜璃は再び奮起し闘志を昂ぶらせさらに苛烈に攻め立てる。しかし、それと同時に蜜璃の身体に変化が起こり、戦況が変わったのだ。速さで劣るゴルドーは蜜璃の動きを野生の勘と二刀流の手数の多さで何とかそ対応していたのだがゴルドーの攻撃はまったく命中しなくなったのだ。
(むぅ⋯!速い⋯この女、さっきよりも動きが速くなっている。斬撃の威力も増しているな、まだ底力を隠していたか?)
この時、蜜璃は気づいていなかったが彼女の胸元には杏寿郎や無一郎たちにも現れた痣が浮き上がっていたのだ。痣の効果によって蜜璃の身体能力と動きは大幅に強化されその速さはゴルドーであっても捉えるのは困難だった。
「恋の呼吸 陸ノ型・猫足恋風!」
身をひるがえしつつ突風の如き速さで斬撃を加える技であり、ゴルドーの攻撃をすり抜けながら腹部にめがけて放つ。すると、今までとは異なりその攻撃には効果があったのかゴルドーが僅かに怯んだのだ。
「⋯ぬぅ」
(やった⋯!効いたわッ!このまま攻め続ける!!)
だが、ゴルドーはそれも意に返さず呼吸を入れ直すと怒嵐剣の構えを変え前にクロスするように構えた。
(どうしたの⋯?化け物の構えが変わったわ!)
「見事だな!甘露寺蜜璃!よい筋肉と闘志を持つ戦士との命のやり取りはオレの血を滾らせる!だが、力任せに攻めるだけが怒嵐剣二刀流ではない」
構えが変わったことに警戒する蜜璃だがそれでも続けて目にも止まらぬ速さの斬撃で追撃を繰り出すが、先ほどとは異なり蜜璃の攻撃がゴルドーの怒嵐剣によって弾かれてしまっていた。
(嘘⋯!全然、攻撃が当らないわ!さっきとは違って守りが固い⋯!)
「これが怒嵐剣二刀流の"不動の構え"だ!ダンテス殿の防御術にはまだまだ及ばぬ上に防御に頼るのは好かんが⋯そうも言ってはいられん!」
本人はゴーガンダンテスの防御術より劣っていると言ってはいるが二刀流による固い防御力と怒嵐剣による回転する刃も加わってその守りは並の者には破れないほど堅牢だ。
それでも蜜璃のほうが速く、肩や脚など斬られ徐々に小さなダメージを食らっていた。しばらく、蜜璃の疾風怒涛の攻めに対して不動の構えで防御しつつ反撃する攻撃の応酬が続くがそんな中でもゴルドーはじっと蜜璃の身体とその身体捌きを見極めていた。
(ふむ⋯呼吸の速さと身体の赤み、そしてあの血管の浮き上がり⋯あの女の身体の温度はおそらく四十度ほど⋯人間がそれほどの高温に耐えられるか?どちらにせよ実に興味深いものだ⋯!まさに森羅万象⋯すべての筋肉には無限の可能性が秘められている!)
ここまでの思考時間は約数秒でゴルドーも幻魔の科学者であるバルドスタンの腹心ということもあって頭の回転が速い。しかし、追い詰められているようにみえてこんな思案ができるほどの余裕がまだゴルドーにあったのだ。
「もう少し観察していたかったが⋯そろそろ決着をつけるか」
「えッ⋯!!?」
頸を狙った蜜璃の日輪刀の刃がゴルドーに命中する瞬間、なんとゴルドーは片方の怒嵐剣を手放し蜜璃の日輪刀の刀身を鷲掴みにして攻撃を止めたのだ。ゴルドーの頸元から血が流れ落ち少しでも遅れれば致命傷になっていたはずだった。
(そ、そんな⋯!?日輪刀の刃を掴まれちゃった⋯!)
握っているゴルドーの手から大量の血が流れるがまったく気にせず握力を強めていく。それと同時に自身の刀を掴まれた蜜璃の表情は完全に青ざめていた。
「なるほど⋯面白い刀だ、まるで紙のような薄さだがそれでいて刀としての硬度もある⋯だが、このような複雑な造りの刀は大抵脆い」
それと同時に蜜璃の日輪刀は鈍い音を立て始めていた。このままでは日輪刀を破壊されてしまうと焦った蜜璃は必死で日輪刀を取り戻そうと引くがビクとも動かない。
「わ、私の日輪刀が⋯!!」
「どうした?刀を壊されたくなけばもっと強く引け!オレの手から引き抜いてみろ!」
「この⋯!!離しなさいよッ!」
「やれやれ⋯修行が足りんな、オレが手本を見せてやる!」
「きゃぁッ!!?」
生温いとばかりにゴルドーは日輪刀を力強く引くとその凄まじい剛力に蜜璃の手から日輪刀が引き抜かれてしまったのだ。日輪刀はゴルドーの足元まで吹き飛び蜜璃は完全に丸腰の状況になってしまっていた。
「獲物は戦士の魂、それを手放すとは情けない奴だ」
(ど、どうしよう⋯どうしようッ⋯!!)
武器がない蜜璃にはもはやゴルドーを攻撃をする手段はなくできるのは回避しつつ武器を取り返すか逃げるかの二択だけだ。この状況に蜜璃は完全に落ち着きを無くしていた。
(なんとか化け物の攻撃を掻い潜って日輪刀を取り戻すしかないわ⋯!で、でも⋯失敗したら間違いなく死んじゃう⋯!それじゃ里のみんなが⋯!!)
必死に打開策を考えていた蜜璃だったが目の前のゴルドーは誰もが予想もしない行動を起こしたのだ。
「何をぼーっと突っ立っている甘露寺蜜璃!!武器がないのならやるべきことはただ一つだろう!己の拳で戦うのだ!」
「⋯⋯へっ!?」
「心配するな、武器を持たぬ者に武器を使うなどつまらん。ここからは殴り合いで決着をつけようか、最後に信じられるのはやはり己の肉体⋯つまり筋肉だッ!!」
「⋯え、え〜と⋯」
なんとゴルドーは怒嵐剣を地面に突き刺して蜜璃と同じく丸腰になるといわゆるファイティングポーズのように両手を上げて構える。このゴルドーという幻魔は考え方はかなりズレているが生粋の戦士であり、命のやり取り⋯つまり自身が強者と認めた相手との勝負においては正々堂々かつ対等で戦うことを信条としておりここだけはあのゴーガンダンテスと共通していた。
もちろん、武器を失って死を覚悟していた蜜璃はゴルドーの予想外すぎる行動に唖然とした表情で固まっていた。
「どうした、早くかかって来い!」
「ほ、ホントに拳で勝負するの⋯?」
「当然だ、お前ほどの戦士と戦える機会はそうあるものではない。対等な条件でなければ不公平だろう」
(な、なんというか、この怪物ってそんなに悪い奴じゃないのかな⋯?)
そんなやり取りをしていた時、蜜璃がいた側面の森林の中から疾風のような勢いで何者かが現れゴルドーに向かって斬りかかった。
「おらァッ!!」
「ぬうッ!?何者だ!」
驚くもゴルドーは瞬時に反応し刃を両手を使って白刃取りで止めていた。突如として現れた乱入者の正体は⋯
「待たせたな!祭りの神⋯宇髄天元様のお出ましだぜ!!」
「う、宇髄さん!」
なんと援軍として現れたのは音柱・宇髄天元だった。鎹鴉から里の襲撃を聞き大急ぎで駆けつけたのだ。自身の担当区間と刀鍛冶の里の距離はかなり離れていたが蜜璃や左馬介たちの奮闘で天元の到着が間に合ったのだ。
その直後、ゴルドーは白刃取りの体制のまま力任せに天元を引き離すが空中で回転しながら蜜璃の元まで跳躍し側に着地する。
「無事か?甘露寺」
「あ、ありがとうございます!」
「ほら、お前の日輪刀だ。もう落とすんじゃねぇぞ」
いつの間にか天元はゴルドーの足元に落ちていた蜜璃の日輪刀を拾い上げていたのだ。それと同時に何かの書物のような物もどこからか手に入れており片手に持っていた。
「何ッ!?き、貴様⋯いつの間に!!」
「おお?その反応、よっぽど大事なモノらしいなあ」
「し、しまった⋯オレとしたことが"作戦指令書"を奪われるとは!」
天元はゴルドーに刃を止められた一瞬の間にゴルドーの懐にあったこの書物をこっそり奪っていたのだ。
作戦指令書と呼ばれる物を盗まれて明らかにゴルドーは動揺しており、拳で戦おうとしていたことも忘れて側に突き刺してあった怒嵐剣を抜き天元と蜜璃に向かって斬撃の嵐を繰り出した。
「おっと、図体の割にはなかなかの動きじゃねえか!」
「気をつけて宇髄さん!あの化け物の攻撃は一撃必殺よ!当たったら致命傷だわ!」
それでも天元はゴルドーの斬撃の嵐をギリギリで回避しながら少しずつ距離を詰め、一定の距離まで到達した時に一気に加速しゴルドーの懐に入り込む。
「ぬぅ⋯速いなッ⋯!」
「どんな強力な一撃も当らなきゃ意味ねぇだろ!」
潜り込みながら天元は横薙ぎの一撃をゴルドーの腹部に繰り出す。すると怒嵐剣での防御は間に合わないと読んだゴルドーは片手の怒嵐剣を手放して腕に装着している手甲部分で天元の日輪刀を受け止めた。
「へっ!やるじゃねえか」
「いい一撃だ⋯鍛え上げられた筋肉から繰り出される技、見事なり!」
その一撃を止めてから両者の動きが止まり互いにその体勢のまま力づくで押し返そうとするが天元のほうが徐々に押し戻され始めたのだ。
(クソっ⋯!なんて馬鹿力だ、この野郎ッ…!悲鳴嶼さんと互角かそれ以上の怪力だぜ⋯!)
「このオレと力比べか?フッ⋯面白い!力でこのゴルドーに勝負を挑むとは命知らずな奴め」
ゴルドーはどこか嬉しそうにさらに気合い入れると筋肉に無数の血管が浮かび上がりその力が増し始めた。完全に天元が力負けしており、その並外れた剛力で状況は瞬く間にゴルドーに傾き始めた。
「クソッ⋯!!この筋肉野郎がァ…!」
「どうした!そんなものか!久しぶりの力比べ⋯もっとオレを楽しませろッ!!魂を燃やせッ!!」
「宇髄さん!援護するわ!」
(刀の先端は壊れてるけど⋯まだ使えるわ!)
天元を援護しようとゴルドーの背後から破損した日輪刀蜜璃が背中に向かって斬撃を繰り出すが、今のゴルドーの筋肉は最大出力に近くその鍛え抜かれた筋肉の鎧には斬撃はほとんど通じず何度攻撃しても効果は薄かった。
「キャーー!!?う、嘘ッ⋯全然効いてない⋯!」
「フッ⋯今のオレの筋肉は最高の状態だ!その程度では極限にまで鍛え上げたこの筋肉の鎧は貫けんぞ!」
(畜生ッ⋯!ビクともしねぇ⋯!このままじゃド派手にマズいぜ⋯!)
自信満々に言い放つゴルドーに天元は体勢を完全に崩され窮地に立たされていた。この密着した状態では回避も困難で相手の攻撃は一撃必殺だ。それでも、必死に呼吸を使いつつなんとかギリギリで体勢を維持していた天元だったがこの戦いは意外な形で決着を迎えることになった。
『ゴルドー!もうよい、退け!』
「⋯!!バルド様?しかし⋯」
『貴様はよくやった、我らの目的は達成された。直ちに全軍を撤退させよ』
「⋯承知しました。バルド様の仰せのままに」
なんと総大将バルドスタンから全軍撤退の命令が下されたのだ。するとゴルドーは怒嵐剣を薙ぎ払いながら天元と距離を取ると再び両者が睨み合う。
「残念だが勝負はここまでだ、久しぶりに戦い甲斐のある戦士との死合だがバルド様の命は絶対だ。ここは退くとしよう」
「ああ?逃げるつもりか?」
「おい、忍びのお前。名をなんと言う?」
「⋯俺は派手を司る神、祭りの神であり鬼殺隊の音柱⋯宇髄天元様だ!よく覚えておけよ!」
「宇髄天元か⋯その名、その顔覚えたぞ。オレはバルドスタン様の腹心、最高の肉体を持つ戦士ゴルドーだ!いずれまた心ゆくまで死合おうぞ!ふんッ!!」
「へえ⋯化け物の割にはなかなかセンスがある野郎じゃねぇか」
(え、え〜と⋯私はどう反応したらいいのかなぁ⋯)
ゴルドーのマッスルポーズに感じるものがあったのか天元は感心したような表情をしていた。するとゴルドーの背後に時空の裂け目が発生しそこを潜るとゴルドーの姿は跡形もなく消えており追跡する暇もなかったのだ。
「あッ⋯!逃げられちゃった」
「⋯⋯」
「宇髄さん?どうかしたの?」
「あのゴルドーって野郎⋯とんでもねぇ化け物だぜ、単純な"力"なら今まで戦った相手の中じゃ間違いなく最強だ」
天元の両腕が筋肉疲労によってブルブルと震えており、天元ほどの恵まれた肉体を持つ剣士でもこの状態だ。先ほど戦ったゴルドーの剛腕の凄まじさを物語っていた。
(多分、一対一じゃ柱でも手に負えねぇ強さだな。アイツも上弦の鬼に匹敵する化け物ってワケだ。また、明智たちと情報を共有したほうがよさそうだな)
「まあ、こっちも収穫はあったし良しとするか」
「宇髄さん、その本ってなんなのかしら?」
「さあな?アイツは作戦指令書って言ってたな」
その後、天元と蜜璃はその場を後にすると未だに激戦が繰り広げられている里の中央部に向かって駆け出していった。
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同じ頃、別のエリアで一騎打ちを続けていたゴーガンダンテスと煉獄杏寿郎だったが引き続き一進一退の攻防が続いてた。
「うぉぉぉぉ!!!」
「ハアァァァァ!!!」
突如、発現した痣によって強化された杏寿郎はダンテスに力負けしておらず防御術の隙を突きながら、必死に攻め続けていた。対するダンテスの鎧には無数の斬撃の跡が刻まれており防御術を潜り抜けて自身に攻撃を命中させる杏寿郎に驚いていた。
「見事だ!鉄壁の守りを誇る拙者にこれほどの猛攻⋯実に素晴らしい!!」
「炎の呼吸⋯参ノ型・気炎万象!!」
「だが、すべて掠り傷だ。まだまだあまいな!」
だが、杏寿郎もダンテスの反撃による斬撃で身体のあちこちに刀傷を負っており徐々に動きが鈍り始めていた。痣による身体強化を持ってしても限界があり杏寿郎の呼吸も乱れ動きが単調になりつつあったのだ。
「はぁッ⋯!⋯はぁッ⋯!」
(くッ⋯!やはり決定打を与えられない⋯!このままではいずれやられる⋯!)
「⋯ふむ」
死にもの狂いに攻め続る杏寿郎に対してダンテスは未だに余裕を見せており、これまでの戦いの中でじっと杏寿郎の動きを観察し続けていたのだ。
そんな時、どこからか聞き覚えのある声がダンテスに向かって言い放った。
『ダンテス!貴様も退け!作戦は上手くいった』
「⋯!?」
「⋯やれやれこれからがお楽しみだったと言うのに」
すると杏寿郎と距離を取るべく斬撃の応酬の隙を突いて目にも止まらぬ蹴りを放つとその勢いのまま跳躍し両者は大きく距離が離れた。
「はぁ⋯はぁ⋯」
「杏寿郎、この短期間でここまで強くなるとは驚いたぞ。だが、まだだ!お前はもっと強くなる、次に会う時はその技を極めておけ」
「何故だ⋯何故、俺を殺さない⋯?」
「お前を殺すにはまだ早い、拙者の望みは強者との勝負⋯我が命を脅かす戦士との死合こそが至高の喜びなのです!」
「⋯⋯」
自信満々に言い放つダンテスを見ていて杏寿郎は不思議な気分だった。今の自分の全てをぶつけてもこの幻魔の剣士には届かなかったがそこには絶望も敗北感もなかった。杏寿郎の心の中には再び自身を鍛え直し、彼の言うとおり自身の技を極めもう一度戦いたいという強い想いだった。
「それにお前のおかげで拙者もまた新たな境地に達した!礼を言うぞ!」
「⋯?」
「お前たち鬼狩りの剣士が使っていた"全集中の常中"とやら⋯学ばせてもらいましたよ!」
「何ッ⋯!?」
するとダンテスは力一杯に空気を取り込み出し、次第にその音は杏寿郎にも聞こえるほどに大きくなり独特の呼吸音を響かせ始める
「ヒュオォォォォ⋯」
(信じられん⋯俺との戦いの最中に見ただけで全集中の常中を習得したのか⋯!?)
「ほお⋯これは悪くない。確か左馬介もやっていたが、まかさ呼吸一つでここまで身体能力が向上するとは⋯人間の知恵には時折驚かれます」
柱の剣士でさえも数年の過酷な修行の末にやっと身につけることができる全集中の常中をこのゴーガンダンテスは見ただけであっという間に習得してしまったのだ。それを見た杏寿郎は動揺を隠しきれず目の前の剣士との圧倒的な力と才能の差を実感してしまったのだ。
「ご安心を!この力を使うのはお前や左馬介と決着をつける時だけだ」
「⋯⋯」
「また会おう杏寿郎、さらばだ。ハッハッハ!!」
杏寿郎に向かってウインクするとダンテスは高笑いを上げながら背後に発生した時空の裂け目に向かって歩き消えていった。その後、一人残された杏寿郎は激しい疲労とダメージも重なって片膝を付いたまま動けなくなってしまった。
(あのまま続けていれば負けていたのは間違いなく俺だった⋯)
薄れゆく意識の中、杏寿郎の頭には様々な想いと感情が渦巻いていた。
(俺は⋯勝てるのか⋯あの剣士に⋯)
その胸中の想いを最後に杏寿郎の意識は途絶えた。
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・刀鍛冶の里 里長の屋敷付近
同じ頃、双頭獣ガートルードと戦っていた胡蝶カナエと時透無一郎だったが苦戦を余儀なくされており戦況は不利だった。しかし、その最中に戦死したはずの伊角静音が突如として左馬介と同じ鬼武者として覚醒し復活したのだ。
「⋯⋯」
「どういうことなの⋯?」
(この気配⋯間違いなく鬼だ⋯!!でも、僕の知っている鬼とは違う)
すると鬼武者の気配を察知したガートルードは標的をすぐさま変更し虹色の光を身体にまとって静音に向かって突進する。
「グォオオオオオン!!」
「⋯⋯」
ギリギリまで引きつけると静音は鬼之鞭を振り頭上の樹木の枝に鞭を巻きつけて飛び上がって回避する。そのまま背後を取った静音は鬼之鞭による連撃をガートルードに繰り出すが虹色の光に阻まれて効果がなかった。
今度は先ほどの戦闘でも見せた金色の稲妻による攻撃を繰り出そうと上空に無数の球体が飛び上がると戦場全体に稲妻の雨を発生させた。だが、稲妻を発生させた影響で今度は身体を覆っていた光が解除されガートルードの守りが解除された。
「⋯⋯」
「グォオオオオオ!!」
上から降り注ぐ稲妻を最低限の動きで身体を捻りながら回避しじっとガートルードを捉えていた静音は鬼之鞭を構える。すでに眼前にはガートルードが迫っており突進攻撃が静音に命中する直前、その姿が一瞬にして視界から消えたのだ。
(消えた⋯!?)
「ギャウッ!!?」
なんとガートルードの左頭部の甲冑に大きな鞭による打撃痕が残されており、それと同時に凄まじい威力の攻撃と衝撃によってガートルードは大きく怯んだ。
同じ鬼武者である左馬介も使える一閃の一撃であり、一瞬の隙を狙って強烈な一撃を繰り出す技で幻魔を瞬く間に屠る技だ。その直後、いつの間にか静音はガートルードの背後におりそのまま静音は再び鬼之鞭を使って上空に飛び上がると狙いをガートルードの右頭部に定め、鬼の籠手を構える。
「ハァァァァァ!!」
静音の鬼の籠手がガートルードに触れた瞬間、そこを中心に地面から紫色に光る巨大な柱状の光線が無数に発生しガートルードに凄まじいダメージを与えたのだ。
この技は鬼の力を解放した状態でのみ使用できる"戦術輪・鬼"の奥義であり鬼の奥義の中でも最強の威力を誇る大技だ。
「グオォォ⋯!!?」
(なんて強さだ⋯!あの獣の化け物をたったの数発で!)
あまりの威力にガートルードの右頭部の甲冑は粉々に砕かれ、弱点である頭部が露わになっていた。戦術輪の奥義によって転倒していたガートルードはよろめきながらも立ち上がるとまだまだこれからだと言わんばかりに咆哮を上げる。
「グォオオオォォォ!!!」
『ガートルード!退け!命令だ!』
「グルルル⋯」
その時、他の幻魔たちと同じくガートルードにもバルドスタンから撤退命令が下されたのだ。戦闘を継続しようとしていたガートルードは目の前に立つ静音をじっと見ながら唸り声をあげた後にすぐさま背後へ首を向けると里の外に向かって猛スピードで走り去っていったのだ。
「くっ⋯!逃げられたか⋯!」
「速い⋯!あの速度じゃ追い付けないわ」
こうして、ガートルードは逃亡しその場には無一郎とカナエ、そして鬼武者の姿となった静音だけが残された。その後、静音はその場に立ったままじっと動かずにおり、声をかけようと無一郎が近づこうとするが⋯
「待って!無一郎くん」
「え?ですが⋯」
「油断しないで、今の静音は鬼よ⋯最悪の場合は、私たちが彼女の頸を斬らなきゃいけないわ」
「⋯⋯」
鬼になってしまった数々の人たちを見ている二人は目の前の静音が正気を失っているのか判断ができず警戒していたのだ。すると、静音が全身にまとっていた禍々しい鬼の闘気が消え白髪だった髪は元の色に戻り肌の色も人間と同じになったのだ。
鬼の気配が完全に消え元の静音の姿に戻っていた。すると、糸が切れた人形のように気を失ってその場に倒れてしまった。
「し、静音!大丈夫か!」
「⋯⋯」
(欠損した下半身が再生している⋯信じられない、いったい何が起こったんだ?)
無一郎は倒れた静音を抱き起こすがガートルードによって負傷していた傷は完全に治っており、欠損したはずの下半身も元通りに再生していたのだ。
続けてカナエが静音の首元に手を当てて脈を確認すると静音の脈動はしっかりと動いており、間違いなく彼女は生きている。
「大丈夫、脈はあるみたい」
「カナエさん⋯静音はどうしたんでしょうか?」
「私にも分からない⋯鬼になった人たちは何人も見てきたけど今回の静音のような鬼は初めてよ」
こうして、突如鬼武者に覚醒した伊角静音の活躍によって強敵であるガートルードを退け、里を守ることに成功したのだった。
ーーーーーーーーーーー
場所は移り、里の外れにある崖付近では黒死牟と明智左馬介の激戦が続いていた。二人の鬼武者による洗練された高威力の技がぶつかり合い、周辺の地形が倒壊するほどの激しい戦闘が繰り広げられていた。
「壱ノ型⋯闇月・宵の宮」
「ぬぅぅん!!」
黒死牟の真一文字に振り抜くシンプルな居合斬りに対して左馬介は雷斬刀に蒼い稲妻を宿し、同じ横薙ぎの一閃を繰り出し迎え撃つ。両者の刃がぶつかった瞬間、周辺に大地を揺るがすほどの衝撃が発生し勝負を見守っていた炭治郎たちも吹き飛ばされるほどの威力だった。
(こんな次元の戦いを続けて二人とも息一つ切らしていない⋯!この勝負はいったいどうなるんだ⋯!)
(鬼の力を解放した左馬介相手にここまで戦えるなんて⋯!この強さで上弦の壱ってことは、この鬼の頭領である鬼舞辻無惨はどれだけ強いの⋯?)
炭治郎たちはただ勝負の行く末を固唾を呑んで見守ることしかできなかった。その後、激しい鍔迫り合いから再び激しい剣戟の応酬が繰り返されるも両者は一歩も譲らない。
どちらかが斬撃を与えても再生され、すぐさま反撃して攻撃を与えてもそれすら瞬く間に再生する⋯鬼同士の戦いの間には人間が入り込む余地はなく二人はただ無言で刃を振るい続ける。
(⋯有り得ぬ⋯明智左馬介⋯これほどまでとは⋯)
(継国巌勝⋯何故、畜生の如き存在に成り果てた。それほどの腕があれば多くの力なき人々を守れたはずだ!)
(⋯私は技を極めねばならぬ⋯そのような事を考えるなど⋯時間の無駄だ⋯)
(⋯どこまでも哀れな奴だ、そうまでして手に入れた強さに何の価値がある!そんなくだらねぇことのために人間であることを捨てたのか!)
(⋯黙れッ⋯!!)
戦いの中で両者は刃を通じて互いの信念をぶつけ合って語り合っていた。だが、二人の鬼武者が相容れることは決してない⋯この戦いはどちらかが倒れるまで止まらない。
しかし、永遠に続くとも思われたこの異次元の一騎打ちは突如として終わりを迎えることになった。何処からともなく黒死牟にむけて何者かが語りかける。
『黒死牟様、時間切れです。夜明けでございます』
「⋯!」
気がつけば暗闇だった周辺が明るくなり始め、丘の影から太陽の陽が少しずつ顔を出し始めていた。左馬介と黒死牟の勝負に夢中で夜明けに気づかず炭治郎と禰豆子は日陰がない開けた場所にいることを忘れていたのだ。
(し、しまった⋯!この場所はまずい⋯!!)
「ギャッ⋯!?」
「ね、禰豆子ッ!!身体を縮めろ!俺を身体の陰にするんだ!」
陽の光が禰豆子の顔を僅かに照らしただけで瞬く間に身体を焼き焦がしていく。同じ鬼である黒死牟も同じく太陽の光を浴びては禰豆子と同様に身体を焼き尽くされ絶命してしまう。
黒死牟は左馬介との戦いを放棄し声のする方向へ疾走する。すると、その先に半天狗を逃がした時と同じように何もなかったところへいつの間にか四角い空間が発生し襖のように開かれた。
「待て!黒死牟、逃げるつもりか!」
「⋯貴様は何故逃げぬ⋯我ら鬼は太陽の光の元では生きられぬ⋯」
「手前ェのような化け物と俺と一緒にするな」
その直後、太陽が丘の陰から完全に顔を出し全体が陽光によって照らされる。黒死牟は必死に走り陽光から逃げながら目の前の四角い空間に向かって走り続ける。しかし、左馬介は太陽の光を浴びても何も起こらず逃げる黒死牟の後ろ姿をじっと見ていた。
そんな太陽の光を浴びても消滅しない左馬介の姿に黒死牟は驚きを隠せなかった。
「⋯!!?」
(⋯信じられぬ⋯何故、太陽の光を浴びて消滅しない⋯我らと同じ鬼でありながら太陽を克服しているのか⋯!?)
「太陽の元では生きられない身体か⋯つくづく哀れな存在だな。手前ェの望んだ強さとは所詮その程度の物でしかない。手前ェはいったい何なんだ?何のために生まれ、何のために存在する?」
「⋯ッ!!」
左馬介の言葉を聞くたびにまるで臓腑が煮え滾るような怒りと憎悪が黒死牟の中に湧き上がるも太陽の光の前では鬼殺隊に上弦の壱と恐れられる鬼もただ逃げることしかできなかった。
四角い空間を潜る直前、黒死牟は振り向き凄まじい殺気と憎悪で左馬介を睨みつけながら言葉を放つ。
「⋯明智左馬介⋯お前だけは⋯必ず俺が殺す⋯!」
「それはこっちの台詞だ。次に会った時が手前ェの最期だ、黒死牟」
その言葉を最期に黒死牟は四角い空間と共に消え、完全に気配はなくなっていた。すると、左馬介の鬼の闘気が消え頭髪も黒髪に戻り姿はいつもの状態に戻っていた。
「左馬介ッーー!!だ、大丈夫ッ!?」
「ああ、心配するな阿児」
「あの鬼⋯黒死牟だっけ?とんでもない奴だったね」
「いずれまたあの鬼と戦うことになるな」
(黒死牟⋯貴様だけは俺が倒す!)
強さに溺れ化け物に成り果てた哀れな鬼であってもその剣技と実力は紛れもなく本物であり幻魔王にも匹敵するものだった。いずれ必ず自分の手であの鬼を斬ると左馬介は心に強く誓っていた。
その頃、必死に禰豆子に覆いかぶさり陽光から守っていた炭治郎だったが禰豆子の身体に異変が起こっていた。
(あれ?禰豆子の様子が変だ⋯?)
身体を焦がしていた煙が徐々に収まり陽光が身体を照らしても平気になっていたのだ。すると、禰豆子は全身を陽光に照らされても消滅する兆しがなくなりその場にゆっくりと立ち上がった。
「ね、禰豆子⋯お前⋯」
「⋯お、おはよう⋯」
「う、うわああぁぁ!!ね、禰豆子ッ!無事でよかったぁぁ!!」
「⋯よ、よかったねえ」
「嘘ッ!?禰豆子、太陽の光を浴びても平気じゃない!」
「何はともあれ、よかったな」
実は協力者である珠世に炭治郎が禰豆子や十二鬼月の血を送って鬼の研究に密かに協力していたのだが、珠世からは近い内に禰豆子は太陽を克服する可能性があると伝えられていたのだ。
こうして鬼殺隊は幻魔と鬼の魔の手から刀鍛冶の里の危機を救い見事守り切ることに成功したのだった。そして、竈門禰豆子の太陽の克服を期に事態は大きく動き出すことになる。
これで刀鍛冶の里編は完結です!
次回からは柱稽古編に加えて回収した作戦指令書から得た情報による幻魔の目的解明が主な話になる予定です
引き続き不定期更新ですがのんびり楽しんでもらえると嬉しいです!