三玖を愛する転生者の話   作:音速のノッブ

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箸休み的な。星奈さんの過去編から繋がってるからまだ見てない人は見てね。


星と火

星奈side

 

あれから私は使用人として火野家で働く事になった。生きる為にお金が必要なのは分かっていたので、どこか良い働き先がないか探した結果、近場で時給がとんでもない額で最高の環境だった。

 

ご両親も良い人そうで何よりだった。旦那様に『可愛いし、メイド服とか似合いそうだから採用で(笑)』と言ったら奥様にしばかれていたが、まぁ基本的には仲は良さそうだった。

私はお金を稼ぎつつ、そのお金で色々な事に挑戦して経験を積んで行った。

 

「(……………もうここで一生働くのもアリなのでは……………?)」

 

年収はとんでもない事になっていて、普通の生活を送るには十分な額だった。思わずそんな事を考えてしまうのも普通だろう。

 

突然だが、私は読書が好きだ。お父さんが小説を読んでいる姿を見て、何となく読んでみたら本の世界に心を奪われた。趣味を聞かれたら食い気味に読書と答えるレベルだ。

 

そして、私の夢が見つかった。私も小説家として物語を書きたい。多くの人に私の物語を読んでもらいたいと。

 

「お母さん…………………お母さんが命を繋いでくれたお陰で、小説家になるって夢が出来たよ…………まぁ、物語を書くのって結構難しいけど、自分なりのペースで頑張るね」

 

お父さんが作ってくれたお母さんのお墓の前で私はそれを報告した。きっと喜んでいるに違いない。

 

「あとね、旦那様と奥様に子供が産まれたの。もう少ししたら家に来るんだって。どんな子なのか楽しみなんだ。………………よしっ。じゃあ、また来るね」

 

産まれたのは男の子らしい。2人は仕事を続けるみたいなので、私が面倒を見る機会は多いのだろう。きっと可愛らしくて癒されるんだろうな────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────と、思っていたのだが。

 

ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛(藤〇竜也)

 

「(え、えぇ………?)」

 

何か…………………思っていたのとは違った。名前は総悟様。喋りだすのは早くても9ヶ月は掛かると言うのに、1ヶ月で喋りだしたすごい子だった。ただ、少し成長の速度が速すぎる。1歳の時点で『はー………ノゲノラはよ2期放送してくれー………』とか流暢に喋り過ぎる。両親は天才だと言って気にしてもないが、流石にこれはそういう域を超えているのではないだろうか。

 

一度お父さんに相談してみたら、『…………まぁ、そういう子供も中にはいるんじゃないかな』と、何やら複雑そうな表情で言っていたが。そう言うものなのだろうか。

 

「総悟様。どうかされましたか?」

 

「星奈さん、聞いてくださいよ!俺がクッソ楽しみにしてたアニメの最終回が制作の都合上で1ヶ月放送延期になったんですよ!あああああああああああああ、耐えれれない!!タイムマシンくれ!」

 

「そ、そうでしたか…………」

 

これが…………普通なのだろうか。幼い子供が喋る内容なのだろうか。

 

「そう言えば総悟様。そろそろ稽古のお時間です」

 

「おっ、もうそんな時間か。じゃけん、大切な人を守れる男になるために稽古しましょうねー」

 

………………まぁ、いい子なのは間違いない。ちょっと変わってはいるかもしれないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

総悟様も成長して遂に10歳になった。総悟様は私を慕ってくれているようで、弟が出来たみたいで嬉しかった。

 

「いやー、しかし星奈さんの小説面白かったです。あれで落選とか、審査員頭逝ってますね(辛辣)」

 

「いえいえ、私なんてまだまだです」

 

執筆活動は中々上手く行かない。けど、その試行錯誤する過程が私は好きだ。収入はあるので、特に焦りはない。

 

「にしても、俺が星奈さんと出会ってから10年も経つのに全然変わりませんね」

 

「…………まぁ、美容には力を入れていますから」

 

「はえー、すっごい女子力」

 

変わらないのは当然だ。隠してはいるが私には人智を超えた力がある。お父さん曰く、老化しないのは私の生命活動を支える神聖力の作用だそう。ずっと変わらなければ、いつかは怪しまれるだろう。どこかで消えた方が良いのかもしれない。…………………けど、それはとても寂しい。

 

「(私が人ではないと知ったら…………………やはり拒絶されてしまうのでしょうか…………)」

 

「…………………星奈さん?難しい顔をしてますけど、どうかしました?」

 

「!……………いえ。何でもありませんよ」

 

いけない。ネガティブな思考になってしまった。総悟様に余計な心配はさせたくない。まぁ、その時が来たらお父さんとも相談して考えれば良いだろう。そんな事を考えながら歩いていると、総悟様が足を止める。

 

「どうかされましたか?」

 

「…………………あのトラック、何か挙動がおかしいような」

 

そう言われて見てみると、一般道の割にはトラックの速度がとても速い。そして、丁度交差点を渡っている子供の姿があった。まずい!

 

「ちっ、またかよ!」

 

「総悟様!?」

 

総悟様は子供達に向かって走り出す。助ける為なのは言うまでもない。だが、距離がありすぎる。衝突まで恐らくあと10秒。普通に走っていては間に合わない。

 

「(助ける為には明らかに人間離れした速度でないと…………しかし、そんな事をすれば)」

 

私が人でない事が総悟様にバレてしまうだろう。そうなれば全てを失う可能性があった。今の生活も、幸せも全て。…………………けど。

 

「(私よりも小さな総悟様が命を助けようとしているのに…………ここで使わないで何の為の力か!)」

 

1秒でも迷った私が愚かだった。忘れるな、あの日の誓いを。私の手が届く範囲で多くの人を助けるとお父さんに宣言したことを。

 

私は脚に神聖力を集中させ、飛び出す。私は総悟様を右手で抱え、そして交差点を渡ろうとしていた子供を左手で抱える。そして、大きくジャンプして信号機の上に着地。トラックは電柱にぶつかって停止した。

 

「え?…………………え?」

 

総悟様も何が起きているか分からない模様だった。当然だろう、私の一連の動作は2秒で起こった出来事なのだから。

 

「…………ウェッ!?信号機の上!?」

 

「わー、すごーい!」

 

「いや、すごーいじゃないねん!いや、凄いけど!」

 

子供の発言にツッコミを入れる総悟様は続いて私の方に首を向ける。

 

「ちよっ、星奈さんは大丈夫なんですか!?」

 

「ええ。私は何ともありません」

 

「あぁ……………なら…………………一先ず良し…………………で良いか…………うん………あ、ていうか助けてもらってありがとうございます………」

 

「………………いえ。当然の事ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、警察から話を聞くとどうやらあのトラックはブレーキが故障していたそうだった。運転手に故意はなく、奇跡的に軽傷で済んだそう。私達は病院で検査を受けたが、特に何もなかったのですぐに解放された。助けた子供の親からは感謝されてお菓子を貰った。

 

「…………………」

 

「…………………」

 

…………………さて。総悟様はさっきから黙り込んでしまっていた。当然だろう、あんな人間離れの動きを見せてしまっては。

 

「(これは……………今日で退職した方が良いですかね…………………)「星奈さん」………何でしょうか、総悟様」

 

「星奈さん、あなた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カッコよすぎィ!」

 

……………え?

 

「カッコいい…………?総悟様は怖くないのですか?自分で言うのも何ですが……………私は人間離れした能力を持っていまして………………」

 

そもそも人間ですらないのですが。

 

「いや、別に。星奈さんが化け物じみた身体能力等々を持っていようと、星奈さんが優しくていい人だって事は知ってますし。何で怖がる必要があるんですか(断言)」

 

「!」

 

「つーか、むしろ頼もしいです。泥棒が入って来ても、星奈さんならボコボコにして撃退してくれそうですし」

 

…………………総悟様恐らく知る由もないだろう。今の言葉がどれだけ嬉しかった事か。どれだけ私が救われた事か。涙が出そうになるのを必死に堪えるのが大変でした。

 

「(ま、驚きはしたけど流石にこの世界は異能力バトルの世界ではないし、世の中にはフィジギフおじさんみたいな人もいるって事やろ。ま、仮に星奈さんが人間じゃなくても別に気にしないけど)ほら、星奈さん。早く帰りましょ」

 

「……………ええ。そうですね。帰りましょうか」

 

私はまた救われた。この小さな恩人に、感謝を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

修学旅行が終わって総悟が帰って来た直後。お土産を色々と物色していると、星奈が部屋に入って来る。

 

「失礼します。……………総悟様」

 

「言っておきますけど、辞表とか出してもシュレッダーですからね」

 

総悟の言葉に虚を突かれた星奈は辞表を持ったまま言葉を失ってしまう。総悟は立ち上がると星奈の目を見る。星奈の目には迷いが見られた。

 

「星奈さんの過去に何があったかは全て神様から聞きました」

 

息を呑む声がした。星奈が過去に人を殺した事も知っている事を示唆していたからだ。

 

「でも、俺は全部込々で星奈さんにいて欲しいんです」

 

「………良いんでしょうか…………人ですらない私のような者が総悟様のそばにいて………」

 

「隠し事していたのはお互い様ですよ。三玖への告白が聞こえていたとは思いますけど、俺は転生者なんで。それに、俺は例え星奈さんが人間でなくても、過去に人を殺していたとしても、実は男の娘とかだったとしても(?)…………………同じことを言いますよ。一緒にいて欲しいって」

 

「……………!」

 

「って、何か愛の告白みたいですねってわっ」

 

星奈は感極まって総悟に抱き着いてしまう。総悟も星奈の背中に手を回す。

 

「……………総悟様」

 

「何です?」

 

「大好きです」

 

「………俺も大好きですよ」

 

無論、2人の好きは恋愛的なものはない。親愛、友愛、敬愛が詰まったものだ。

 

少しして、星奈は総悟から離れる。もう、星奈の目に迷いはなかった。辞表は握り潰して灰と化した。

 

「……………では、ご飯にしましょうか」

 

「あぁ、いいっすねぇ」

 

総悟にとって星奈は姉。星奈にとって総悟は弟。そんな姉と弟の日々はこれからも続いていく。

 

to be continued…………




ちなみに、星奈さんは一花メイン回の『今日はお休み』の話でお祭り男と化した神様が来た時知らないふりしてたけど勿論演技。バレちゃうからね、しょうがないね。別に変なお祭り男と知り合いだと思われたくないという理由ではない。

作者は弟がいるんですが、親の手伝いもしない可愛げのないクソガキなので、姉や妹が欲しかったです、マジ。

姉や妹がいる生活ってどんな感じなんでしょうね。感想とかで教えてくれる人いたら教えてクレメンス。
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