白兎が精霊に愛されているのは間違っているだろうか?   作:謎の人でなしZ

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謝罪回です

少し短めです

他の話に比べて少し暗い話になりました

そして精霊の会話はあまりありません

次回からガンガン精霊たちを出していきたいと思っています


白兎と道化の謝罪

「・・・こ、こちらでお待ちください・・・っす・・・」

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

 

 そう言って黒髪の青年は部屋を出ていく。僕は居心地がとても悪かった。左隣には神様が座っている椅子や部屋の大きさになにやら愚痴を言っている。右隣にいるリリは緊張でガチガチだ。精霊たちは僕の中で豪華な部屋の作りにはしゃいでいる

 

 

 ここは、オラリオ最強の一角である【ロキ・ファミリア】の本拠地(ホーム)『黄昏の館』。なぜ僕たちがこんな所ににいるのかというと謝罪を受け取るためだ。先日の酒場での事件後、フィンさんと日程を話し合い、今日来るようにお願いされていた。それを抜きにしてもロキ・ファミリアには用があったので今回は都合が良かった

 

 

 率直に言うと、僕たちはルナの案を採用した。僕的には少し気が引けたのだが神様と精霊の皆から「これくらいどうってことはない。むしろこれくらいで許すことを感謝してほしいくらいだ!」と押し切られてしまった。そして、リリもいた方が説明もしやすいとのことでついて来てもらっている

 

 

 決して大手ファミリアに行くことに緊張して少しでも犠牲者(なかま)を増やそうとしたわけではない。ないったらないのだ

 

 

 そして今日昼頃にここを訪れた。しかし、ここからが僕の居心地の悪さの原因だ。まず門番の人に会ったのだが、この人は前に僕を門前払いした人たちだった。少し気まずさを覚えながらも声をかけた。門番の人たちは僕の方を見ると目を見開いて固まっていた

 

 

 僕は不思議に思いながらも門番たちに訪れた理由を話し中に入れてもらった。なぜだか絶望に染まった顔をしていたが・・・

 

 

 その後はホームの中に入り黒髪の青年が案内してくれた。しかし少し怯えているような感じだった。どうしたんだろう?と思ったが青年が歩き出したのでついていく。

応接間につれてこられる道中、ロキ・ファミリアの団員たちが僕たちを見てひそひそと何かを話していた。中には涙目で見てくるものもいたが、僕たちには訳が分からず混乱するばかりだ

 

 

 そんな視線に晒されながらも、応接間にたどり着いていまに至る。僕が部屋を落ち着きなくキョロキョロと見渡していると、応接間の入口の扉が開いた。僕がそちらに顔を向けると、フィンさんと何やら暗い顔のリヴェリアさん、そして朱色の髪をした女性?が入ってきて僕たちの前のソファに座った

 

 

 リリには、大事な話ということで別室に移動してもらった

 

 

 場に緊張感が生まれる。そんな中初めに口を開いたのは意外にも神様だった

 

 

「・・・・呼び出した相手を待たせるなんて、どうなっているのかな?ロキ?」

 

 

 そう朱色の女性?に問いかける。どうやら彼女が主神のロキのようだ。神様にそう言われたロキ様は顔を歪ませ反論しようとする

 

 

「な!?・・・ドチビぃ~~・・・あんま調子にのんなや・・・」

 

「調子に乗る?なにを言ってるんだい。僕たちは今日君たちの謝罪のためにここに来てあげてるんだ。それなのに待たせたのはそっち。どっちが悪いのかなんて一目瞭然じゃないか」

 

「こ、この!!」

 

 

 神様の言葉にロキ様は怒りをあらわにし神様に飛び掛かろうとする。しかしその寸前でフィンさんが止めに入った

 

 

「ロキ、落ち着いてくれ。今回の件は完全にこちらに非がある」

 

「やけどフィン!!」

 

「ロキ、私からも頼む。落ち着いてくれ」

 

「・・・・・」

 

 

 リヴェリアさんからの言葉でロキ様は唇を噛みしめながら座られた。しかし神様を睨みつけたまま。フィンさんはそんなロキに苦笑するとこちらに顔を向け姿勢を正した

 

 

「神ヘスティア、そしてベル・クラネル。今日は僕たちのためにここに来てくれたことに感謝を。そして謝罪を。僕たちの不手際で逃がしたミノタウロスを君は討伐してくれた。それだけでなく、そんな僕たちの信頼をも救ってくれたんだ。君が倒してくれなかったら、もしかしたら死者が出ていたかもしれない。いや確実に出ていただろう」

 

「もし、そうなってしまえば僕たちロキ・ファミリアは今の地位にいることができなくなり、最悪ファミリアの解散まで追い込まれていたかもしれない。君は他の冒険者だけでなく僕たちのことも救ってくれたんだ。なのに、こちらの愚かな勘違いで勇気ある君を嗤い、貶めてしまった。許してくれ、とはいえない。僕たちはそれ程のことをしたのだから。だが、どうか謝罪させてほしい。本当にすまなかった」

 

 

 そう言って、フィンさんは頭を下げる。それに続いてリヴェリアさん、ロキ様も頭を下げる。僕と神様はそんな3人を見つめる。どれ程時間がたったのかは分からない。ただ室内を静寂が支配する。そして神様が3人に告げる

 

 

「・・・・・正直に言って僕はまだこの件を許していないし、納得もできていない」

 

 

 そんな神様の言葉に3人は顔を上げ、神様を見る

 

 

「だってそうだろう?どんな理由があろうと、君たちはボクの眷属(こども)を命の危険に晒した。ボクのたった一人の眷属(こども)を。あ~ベル君が強いからとかぬかすなよ?そんなものは結果論だ。それに君たちはベル君を笑いものにしたそうだね?ふざけるのも大概にしろ。もしもベル君がミノタウロスに殺されていたら君たちはどう責任をとるつもりだったんだい?」

 

 

 神様は3人に問う。しかし口を閉ざしたまま3人はうつむいている

 

 

「・・・・・ねえ、ロキ」

 

「・・・・・なんや」

 

「君なら分かるだろう?眷属を失う悲しみが。自分の子供を嗤われる怒りが。僕はたった一人の、初めてボクの手を取ってくれた心優しい眷属(こども)を失っていたかもしれないんだ。君はもしそうなったらどうする?」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 ロキ様はうつむいたまま答えない。そんなロキ様を見て神様は告げる

 

 

「ボクはそんな君たちを許すことなんかできない。もしもベル君が死んでしまっていたなら、ボクはロキ・ファミリア(きみたち)を全員殺していただろう。どんな手を使ってでもね。君たちの地位や信頼なんかどうでもいい。いまでもこんなファミリアは無くなってしまえばいいって思ってる」

 

「でも今回はベル君のために、君たちの謝罪を受け取ろう。だが、もし次があったらボクは君たちを許さない。誰がなんと言おうと必ず君たちを殺す。それを忘れないでくれ」

 

 

 そう言い切った神様は僕の方を見る。僕は神様に頷き3人の方を向く

 

 

「・・・・僕としては言いたいことは全て精霊の皆や神様が言ってくれたのでありません。でも一つだけ伝えるとするなら、こんなことはもう二度と起こさないでください。力は自分自身のためだけにあるわけじゃないんです。僕は助けを求めている人を救い、皆のために力を使う。この世界に弱い人なんて一人もいません。だって力だけが強さじゃないと、信じているから」

 

 

 ベルはそう3人に伝える。3人はベルの顔を見つめ笑みをこぼす

 

 

「ああ、【勇者】(ブレイバー)の名に誓おう。こんなことは二度と起こさないと」

 

「私もアールヴの名に誓おう。己の力を助けを求める者たちのために振るうと」

 

 

 そんな光景を見てロキ様は微笑みを浮かべる

 

 

「・・・なあ、ヘスティア」

 

「・・・なんだい?」

 

「ええ眷属やんか・・・・ホンマにすまんかった」

 

「ああ、僕の自慢さ・・・・次はないからね?」

 

 

 そう言って二人の女神は笑いあう

 

 

 その後は色々なことがあった

 

 

 精霊の皆がいきなり出てきて、僕を門前払いした門番たちにも罰をと訴えてきたのだ。これにはフィンさんやリヴェリアさんに加え、ロキ様も驚いていた。ロキ・ファミリアでは新人が来たときは必ずフィンさんたちに報告がいくようになっているらしい

 

 

 報告がいっていないということは、あれは門番たちの独断だったのだろう。怒りをあらわにする精霊たちにフィンさんは、後日本人たちに詳しく話を聞き、重い罰を与える、という言葉と僕の説得もあり不満そうにしながらも了承して僕の中に戻っていった

 

 

 そして、フィンさんが今回の事件に対する償いの印として自分たちに出来ることなら何でもすると言われた。そして今回の事件の原因ともいえるベートさんへの処遇も決めてほしいといわれた。ロキ・ファミリアへのお願いは決まっているが、ベートさんへの処遇は決まっていない。僕としても彼には思うところがあったが、精霊たちのおかげでもうなんとも思っていない

 

 

 どうするべきか悩んでいると、僕の中で精霊たちが自分たちに決めさせて欲しいと言ってきた。僕としては、何も思いつかなかったので彼女たちに任せることにした。それをフィンさんに伝えると問題ないよ、と了承してくれた

 

 

 だが、この選択があんな恐ろしいことになるなんて僕はまだ知らなかった

 

 

 ベートさんの問題も片付き、いよいよ本題のリリのことである。僕はリリを連れてきてもらい、フィンさんたちにリリのことを伝えた。彼女がずっと苦しんできたこと。ダンジョンで囮にされ死にそうになったこと。そして、退団するには多額のお金が必要だということ

 

 

 話を終えると目のまえの3人は苦しい表情をしていた

 

 

「・・・そんなことがあったとは・・・・・ベル、改めて礼を。同胞を救ってくれてありがとう」

 

「い、いえ・・・当然のことをしたまでです」

 

「しかし、【ソーマ・ファミリア】か・・・まさかそのようになっていたとは・・・」

 

「リヴェリア君、何か知っているのかい?」

 

 

 ベルの話を聞き、リヴェリアが考え込む。そんなリヴェリアにヘスティアが問いかける

 

 

「はい。【ソーマ・ファミリア】は冒険者の中でもよくない噂を耳にします。なんでも盗みや強盗、果てには殺人もおこなっている、と」

 

 

 リヴェリアはそう答える。その言葉にベルはリリがどんなところにいたのかを知った。ベルが歯を食いしばり、拳を震わせているとフィンがうなずく

 

 

「安心しておくれ、ベル。彼女の退団金はこちらで用意しよう。もちろん上限はつけない。いくらでも持っていってくれ」

 

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!!」

 

「リリからもお礼を!本当にありがとうございます!!」

 

「いや、気にしないでくれ。むしろまだまだお詫びとして足りないくらいだ。これからも困ったときは言っておくれ。ファミリアとしてでは難しいかもしれないが、僕個人としては全力で君たちに力を貸そう」

 

「私も同じだ。分からないことがあったらなんでも聞いてくれ。力になろう」

 

「はい!!」

 

 

 フィンとリヴェリアの言葉にベルは勢いのある返事を返す。その後はロキ・ファミリアの幹部の皆さんと面会し、幹部一人一人から自己紹介と謝罪を受け取った。中でもアイズさんとベートさんは僕に東方に伝わる最終奥義(神様が言っていた)土下座で謝罪をしてきた。僕は慌てて二人を説得した。そんな光景を見て周りから笑いが漏れる

 

 

 そして僕と神様とリリが帰ろうとすると、フィンさんとロキ様に呼び止められた。夕飯を食べて行ってくれないか、ということだ。僕は申し訳ないと思ったが、これも償いだと思ってくれ、と言われたのでいただくことになった

 

 

 僕は神様とリリと、そしてどんな料理が出るのかと僕の中でワクワクしている精霊たちと一緒にフィンさんとロキ様についていった

 

 

 

 




いかがでしたか?

次回は一息入れようと思ってベルと精霊たちがロキ・ファミリアで夕飯を食べます

精霊たちをいつもより多めに入れていきたいと思っているのでお楽しみに!


出来るだけ早めに更新したいと思います

リリ救出後の展開をどうするか?

  • 満を持しての怪物祭
  • ベルのランクアップ→黒いゴライアスの討伐
  • アポロンファミリアとの戦争遊戯
  • 劇場版ダンまち オリオンの矢
  • ロキ・ファミリアとの遠征と新しい精霊の登場

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