白兎が精霊に愛されているのは間違っているだろうか? 作:謎の人でなしZ
少し少ないですがお楽しみください
ではどうぞ!
――ロキ・ファミリアの宴会から数日、僕とリリは【ソーマ・ファミリア】のホームの前まで来ていた。リリをソーマ・ファミリアから脱退させるためだ
ホームの近くでリリと考えた作戦を再確認する
「リリ、ソーマ様はあそこにいるんだよね?」
そう言ってベルが指さしたのは柵の向こう側の建物の大きなベランダのある部屋だ。その言葉にリリは頷く
「ええ、間違いありません。ソーマ様は常にあそこで酒造りをしているはずです。そして、そこには必ずあの人がいます」
「・・・・うん。けど大丈夫。そのために今日までに色々な準備をしてきたんだから」
リリの言葉にベルの顔が険しいものになる。今回のリリ脱退計画を考えるうえで一番危険なのはザニスという男だ
――実はソーマ・ファミリアには団長という者が存在しない。それというのもこのファミリアは他のファミリアとは決定的な違いがある。それは、このファミリアの全員が『神酒』のために入っていることである
神酒というのは文字通り神が作る酒だ。神ソーマは自分のファミリアそっちのけで部屋に引きこもり、この神酒を作っているのだ。団員たちはその過程で作られた失敗作の神酒を飲むためにこのファミリアにいるのだ
そう、
このファミリアに絆というものはない。全員が神酒を奪い合う敵同士なのだから。
そして、このようになるように仕向けたのがこのファミリアを纏めているザニスなのだ。この男は神ソーマにファミリアの全てを任せており、好き放題やっているのだ。リリにあのような事をさせた原因も元を辿ればこの男なのだ
「・・・それじゃあ、行くよ。リリ、大丈夫?」
ベルはそう言って、隣のリリに声をかける。リリは小さく震えていた。ここに来ると思い出すのだ。あの苦しい日々を。辛く悲しいかった毎日を
それだけではない。リリは神酒を飲まされたことがあるのだ。その時のことを思い出すだけでリリは足が動かなくなる。もうあんな体験はしたくない。身体がそう拒否反応を起こして
そんな震えるリリをベルが優しく抱きしめた。リリの身体から震えがなくなる
「・・・あっ・・・」
「大丈夫、大丈夫だから」
ベルはそう言って抱きしめたまま、安心させるようにリリの頭を撫でた
「僕がついてる。それに精霊の皆もね?だからきっと大丈夫。リリは一人じゃないよ」
「ベル、様・・・・・」
リリは瞳に涙をためベルに抱き着く。すると白、黒、紅、翡翠、蒼、黄色の光の粒たちがリリを包み込んだ。リリはその光景に言葉を零す
「こ、これ、は・・・?」
「精霊の皆が、リリを応援してくれてるんだよ。頑張れ、って」
ベルの言葉にリリは今度こそ泣きそうになった。しかし、ここで泣くわけにはいかない。リリはベルから離れ、涙を袖でぬぐい、一度目を閉じて深呼吸をする。そして決意の籠った目でベルを見る
「・・・ベル様、行きましょう!!」
「うん、行こうか。じゃあ僕に捕まって?」
「はい!!」
そういってリリはベルの背中におんぶの形でおさまる。ベルはそれを確認すると一直線にソーマのいる部屋を目指した
「『風よ』!」
ベルがそう言い放つと二人を風が包み込んだ。そして、そのまま空中に浮き、ソーマの部屋に向かって空中を蹴り・・・・
――――そして、そのまま部屋に突っ込んだ
窓ガラスは割れたが、難なく着地してリリを下す。部屋を見渡すとそこには眼鏡をした薄い鼠色の髪をした意地の悪そうな男。そして乳鉢で何かを擦り続ける黒髪の長髪の男神がいた。ザニスとソーマだ。ベルとリリは驚き転がっているザニスを無視し、ソーマに訴えかける
「ソーマ様!お願いです、リリを退団させてあげてください!!」
「お願いです!リリは、リリはもうこんな所にいたくないんです!!」
「・・・・・・・」
しかしソーマは二人に見向きもせず擦り続けている。ベルとリリは再び訴えかけようとするが、それをザニスが止める
「き、貴様ら!自分たちが何をやったのか分かっているのか!?」
「ザニス様!リリはここをやめたいんです!お願いです!!リリを退団させてください!!」
「・・・・ん?よく見ればリリルカではないか・・・それで?退団したいと・・・・それは自由だが、金はあるんだろうなぁ?」
ザニスはリリに気づいたのか卑しい笑みを浮かべる。リリが顔を顰める中、ベルがリリの前に立つ
「お金なら僕が払います」
「なんだ?貴様は?」
「僕はベル・クラネルです。それで、リリを退団させるためにはいくら必要なんですか?」
ザニスの問いにベルはそっけなく返す。そんな態度が癇に障ったのか眼鏡を直しながらわざとらしく告げる
「フンッ・・・そうだなぁ、彼女は大切な家族だ。ならば最低でも4000万ヴァリスはもらわないとなぁ?」
そう言ってわざとニヤついた笑みをベルに向ける。そんなザニスにベルは・・・
「4000万ヴァリスですね?はい、どうぞ」
そう言ってザニスに4000万ヴァリス入った袋を渡した
「なっ!?」
受け取ったザニスは驚愕する。ザニスはこんな如何にも駆け出し冒険者のベルに払えるわけないと思いこの金額を要求したのだ。しかしベルはすぐに要求した金額を差し出したのだ
驚愕しているザニスにベルは問いかける
「これでリリは自由の身ですよね?」
「くっ!・・・いや、まだだ。大事な家族を見ず知らずのお前に任せるのは不安すぎる」
そう言ってザニスは、棚から杯を一つ取り出し、部屋の隅にある樽の中の酒を注ぎベルに渡す
「この神酒を飲んだ後で同じことが言えたなら、リリルカをどこへなりと連れて行くがいい。言えたらの話だがなあ?」
「な!?そ、それは!!」
ザニスの言い草にリリは反論しようとする
しかしベルは・・・・
「分かりました」
そう言って神酒を一気に飲み干す。ザニスの顔は狂った笑みに変わり、リリの顔は絶望に染まる
全て飲み干し下を向くベルは・・・・
「リリを、ください」
と、そう答えた
「!?」
「なっ!?」
リリの顔が驚愕に染まり、ザニスは信じられないというように、驚きの声を上げる
そしてベルは、杯を床にたたきつけソーマの方を向く
「ソーマ様、僕は生まれて初めてこんなに不味いものを飲みました」
ベルの言葉に、ソーマの腕の動きが止まる。しかしベルは気にせず話し続ける
「酒は本来人を楽しませるためにあるんだと思います。大事なのは相手を思う心ではないですか?でも、これにはそれが全くない。ソーマ様、貴方は一体何のために酒を造っているんですか?少なくとも、こんなものじゃ、誰一人笑顔にすることは出来ない!」
ベルはそう言い切った。ソーマはベルを見つめる
リリはベルの言葉を聞き、神酒に飲まれず自分を貫き通したベルを見て、決意した。そして、棚に走り、杯を手にし、神酒を注ぎ一気に煽る
その行動にその場の全員が驚く。リリは一瞬ふらついたがすぐに立ち直り、ソーマを見つめた
「ソーマ様!リリは、リリは・・・・ベル様と一緒に行きたいです!!!」
「・・・・・・」
リリの言葉を聞き、ソーマはリリを見つめる
そして・・・
「・・・・分かった。認めよう」
ソーマはそう口を開いた
「「!?」」
「なにっ!?」
それにベルとリリが驚愕し、ザニスが絶句した
「よ、宜しいのですか!?ソーマ様!?」
「黙れ、ザニス。この子供たちは神酒に飲まれなかった。だから要求を受ける」
「しかしっ!!」
「そこまでです。ザニスさん」
反論しようとするザニスをベルが止める。そして懐から一枚の紙を取り出す
「ザニスさん。貴方に捕縛命令が出ています。ギルドまでご同行ください」
「なっ!?ど、どういうことだ!?」
「貴方が今までやってきた悪事の証拠が見つかりました。ギルドで詳しく話を聞き、裁きます。いいですね?ソーマ様」
ベルはソーマにそう問いかける
「・・・・ああ。元はといえば私がこいつに全て任せたことが原因だ。すまない。連れて行ってくれ」
「そ、ソーマ様!?」
ソーマの言葉にザニスは絶望した表情になる。そして逃亡しようとするも僕の中のティナが氷で両手足を拘束する
元々ザニスには色々な容疑がかけられていた。そして、神様やロキ・ファミリアの皆さんと証拠を集め、ギルドに報告し、捕縛の許可を貰っておいたのだ
それを確認したベルはソーマに向き直る
「ソーマ様、リリの退団を認めてくださってありがとうございました」
「・・・気にする必要はない。悪いのは全て私だ・・・・・これからは、少しずつでもこのファミリアをよくしていけるよう、努力する」
ソーマの言葉にベルは頷く
「・・・ソーマ様」
リリの呼びかけにソーマは振り返る
「・・・・今までお世話になりました。ここを抜けても頑張っていきます。いままでありがとうございました」
「・・・・・・・」
リリのお礼にソーマは無言になる
しかし、頭を下げるリリを見て・・・・
「こちらこそ、今まですまなかった」
そういって、謝罪をする。それを聞きリリはハッ、と顔を上げる
「・・・・身体には、気をつけなさい」
「!!」
ソーマの言葉にリリは目に涙をためる。そしてその顔は華やかな笑顔に変わる
「はい!」
笑顔で告げるリリをソーマは、僅かに微笑みながら見つめる
その姿はまさに、本物の親子の様だった
いかがでしたか?
次回から新章に行きたいと思います
出来るだけ早めに更新したいと思います
ではおやすみなさいZZZ
リリ救出後の展開をどうするか?
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