白兎が精霊に愛されているのは間違っているだろうか? 作:謎の人でなしZ
今回決着です
次回から新章に本格的に入っていきます
では、どうぞ!
僕は三属性複合魔法【嵐の狂王】を発動して、嵐をその身に纏った。この魔法はミノタウロス戦の時に思い付きで僕が創った魔法だ。【嵐の狂王】は相手に暴風、黒雷、蒼氷で攻撃できるだけでなく、それらが自動的に相手の攻撃を無効化してくれる。生半可な攻撃では僕には届かない。まさに攻守ともに優れた魔法なのだ
僕はネメシスをアイズさんたちに向ける。すると僕の周りから黒雷、暴風、蒼氷が四人に向かって襲い掛かり僕はそれに追随する。アイズさんたちは黒雷たちからの攻撃を防ぎ続けているが、やはりネメシスのせいもあって全ては防げないようだ
黒雷たちの攻撃を防ぐ瞬間を狙い、僕は四人に斬りかかった。本来なら、返り討ちにあうだろうが今のアイズさんたちはネメシスによって弱体化している。ここで一気に勝負を決める!!
「ハアッ!!」
ネメシスとクラウでアイズさんたちを薙ぎ払う。吹き飛ばされる四人だがすぐに反撃してきた
「グア!?・・・クソが!!!」
「こっの~~!!!」
「ウオらあああああああああ!!!」
そう言ってベートさん、ティオナさん、ティオネさんが僕を攻撃してくる。しかし、それも無駄に終わる。攻撃が僕に迫った瞬間、三人の武器が氷漬けになり暴風によって粉々に砕け散る
「「「なあ!!??」」」
砕け散った武器に気をとられ、完全な隙ができた。僕はネメシスとクラウに黒雷を纏わせる。やがて黒雷は剣全体を包み込み、二本の巨大な黒雷の剣が完成する。僕はそれを三人に向けて振り下ろす
「
この技は巨大な剣では考えられない程のスピードを持って、相手に連撃を叩き込み、薙ぎ払う。そして、上空から黒雷が相手に降り注ぎ敵を殲滅する
ベートさんたちは剣撃をまともに食らい、黒雷に飲み込まれた。僕は黒雷を解除し、息を吐いた。しかしここで予想外のことが起こる
黒雷が消え、戦闘不能になったと思っていた三人は立ち続けていた。そして僕を睨みつけている。あれでもダメなのか!、と僕が追撃をしようとすると三人は静かに倒れこんだ。もう限界だったのだろう。一応息はしているようなので命に別状はないと思う。僕はそんな三人に敬意の念を込め一礼する。この人たちはLv1であるはずの僕と真剣に戦ってくれたから
――さて、残るは・・・
「貴方だけですよ」
そう言って僕は背後を振り返る
「アイズさん」
そこには暴風を身に纏い、デス・ペレートを僕に向け突撃の体勢をとったアイズさんがいた。どうやら僕は、まんまと時間稼ぎひっかかったらしい。僕がアイズさんたちを吹き飛ばした際、アイズさんは魔力の
ここで僕がするべきなのは回避だ。そうすれば僕は絶対に勝てる。Lv5に勝つことができるのだ
――ふざけるな!!!!!!!!!!!
頭によぎった選択にベルは心の中で絶叫する
――ふざけんなよ!?確かにここで回避すれば勝てるかもしれない。でも!それは僕が欲しい勝利じゃない!!僕が欲しいのは本気でぶつかり合って手に入れる勝利だ!!ここで迎え撃たないで何が男だ!何が英雄だ!!!僕は!アイズさんたちの本気に答えないといけないんだ!!!!!!!!!!
ベルはアイズに向き直り、ネメシスとクラウに黒雷、暴風、蒼氷を纏わせる。嵐を纏った剣を構えながら僕も突撃の体勢をとる
「アイズさん・・・・・これで、終わらせます」
「・・・うん・・・・・終わらせよう」
僕たちは、静かに向かい合う。そして同時に駆け出した
「「【
同時に詠唱をし、お互いの纏う嵐と暴風がぶつかり合い、結界内を蹂躙する。しかし、僕とアイズさんは構わずスピードを加速させ、相手に最後の最強の技をぶつける
「せあぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
「リル・ラファーガァァァァ!!!」
剣と剣が交差した瞬間吹き荒れていた嵐と暴風が霧散した
結界内に見えるのはそれぞれ剣を突き出した状態で固まっているベルとアイズだけだ。結界内を静寂が支配した。だが、それはすぐに終わった。ベルとアイズの間に何か小さいものが突き刺さった
それは剣身だった。よく見るとアイズの剣が半ばから折れている。そして折れた剣を持ったまま、アイズは前に倒れこんだ。だが、疾風のようにアイズの前に移動したベルによって抱き留められ、地面に倒れこむことはなかった
ベルはアイズを抱きしめたまま、笑顔で語り掛ける
「ありがとうございました、アイズさん・・・ゆっくり休んでください」
お疲れさまでした、そう言ってベルはアイズを抱えた。俗にいうお姫様抱っこで。そして小声で何かをつぶやくと、どこからか優しい風が吹き倒れていたベート、ティオナ、ティオネを包み込みベルの傍に連れてきて、ベルはそのまま結界の外で待つフィンたちのところに向かった
~~~
決着がつき、ユキたちが結界を解いた瞬間ロキファミリアの団員たちが僕の方に向けて走ってきた。否、僕ではなくアイズさんたちにだろう。すぐに囲まれたがとりあえずリヴェリアさんにアイズさんをを預け、ベートさんたちを他の団員さんに任せ僕は人混みの中から抜け出した
すると抜け出した先にはロキ様とフィンさんがいた。僕は直ぐに立ち上がり、服装を整えた
「フィンさん、そしてロキ様も一体どうしたんですか?」
僕の問いにフィンさんは苦笑いを、ロキ様は何かお腹を抑えながら答えた。そんな二人に僕が首を傾げていると、フィンさんが一度咳払いをして話し始めた
「いや、なんでもないんだ。気にしないでくれ‥‥それよりもお疲れ様だったね、ベル。まさかあの四人に勝ってしまうなんて、正直予想外だったよ。君は本当にLv1なのかい?」
「ありがとうございます‥‥僕はLv1ですよ。まだ冒険者になって一か月も経っていません」
僕の言葉にフィンさんは目を見開き、ロキ様の方を見る。ロキ様はお腹を抑えたまま片膝をつきながらフィンさんに答える
「ほ、ホンマやで・・・ホンマにベルたんは冒険者になって一か月も経っとらんし、Lv1や・・・・」
そう言ってまたお腹を抑えてうずくまったロキ様。大丈夫だろうか?と僕が心配していると、フィンさんが片手で頭を抑えながらも僕に確認を取ってくる
「・・・・・・分かった。いや、理解できないけど理解しよう。・・・それよりもベル、君に話が合ったんだが・・・」
フィンさんは人混みに囲まれながら治療を受けているアイズさんたちの方を向く
「幹部全員も含めて話したい。アイズたちが回復するまで待っていてほしいんだが‥‥」
「急ぎの話なんですか?」
「?・・・あ、ああ。出来るだけ早めに話したいんだが……」
「分かりました」
フィンさんの返答に頷くと、僕はこちらに歩いてきている精霊たちに目を向ける。そしてその中に目的の人物を見つけると声をかける
「おーいユキ、ちょっといいかな?」
「・・・・どうしたの?ベル」
話しかけられたユキは首を傾げる
「ちょっとお願いがあるんだけど……」
「・・・なに?」
「アイズさんたちを回復してほしいんだ」
「・・・・・えー」
僕のお願いにユキは露骨に嫌そうな顔をする。まぁ、予想はしてたけど……ここまで嫌がるかなぁ?
そんなユキに僕は必死に頼み込む
「お願い!ユキにしか頼めないんだ!!」
「・・・ベルがやれば、いいと思う」
「僕、戦った後で結構疲れてるんですが・・・・」
「・・・ベルならできる。私は、信じてる」
「・・・いい感じにいっても、つまりは丸投げだよね?」
「・・・・・・・めんどくさい!!」
「開き直った!?」
ついに本音を暴露したユキにツッコむ僕。このままでは埒が明かない。フィンさんたちも待たせているし・・・仕方ない。
そして、僕は最終奥義を発動させる。これを発動させるとユキはもちろん他の精霊は僕の頼みを必ず聞いてくれるだろう。しかし、これには大きな代償が伴う。まさに諸刃の剣なのだ
僕は顔をそらしているユキに向けてわざとらしく声を上げる
「そっかーなら仕方ないね。僕がやろうかなーー」
ユキはまだこちらを向かない。だが僕は構わず続ける
「それにしても残念だなー・・・もし僕の代わりに回復してくれたら、どんなことでも一つだけお願いを聞いてあげようと思ったんだけどなー」
「!?」
僕の言葉にユキが慌てて振り返る。そんな姿に内心ガッツポーズをとりながらも反応はしない
「それじゃあ僕は回復に・・・・」
「・・・待ってベル。ステイ」
歩き出そうとした僕をユキが手を握って止めてきた。僕はわざとらしく振り返り不思議そうに問いかける
「ん?どうしたのユキ?早くアイズさんたちを回復させないと・・・」
「・・・よく考えたらベルは疲れてる。ここは私に任せて、ゆっくりしてて」
そう言って数歩前に出て人混みに右手を向ける。するとアイズさんたちを仄かな光が包み込み、淡い光を放っている。その光がおさまると、そこには無傷のアイズさんたちがいた。周りが愕然とする中、一仕事終えたように息を吐いたユキが僕のもとにやってくる
「・・・終わった。疲れた。だから撫でる」
そう言って頭を僕の方に擦り付けてくる。ベルは苦笑しながらユキの頭を撫でる
「ありがとうユキ。約束通り、僕に出来ることならなんでも一ついうことを聞くよ」
「・・・考えとく。楽しみ。覚悟してね?」
「ハ、ハハ・・・お手柔らかにね?」
ユキの言葉に僕は顔を引きつらせながらお願いするが、ユキはただ微笑むだけである
一体僕は何をさせられるの?と、とても不安になるベルであった
ベルはそんな気持ちをいったん置いて、フィンに話しかける
「フィンさん、とりあえず傷は治してもらいました。多分完治したので直に目を覚ますと思います」
「・・・・・・・・・・・・・」
だがフィンは動かない。そんなフィンに、ベルは首を傾げながら話しかける
「?フィンさん?」
「・・・・・ベル、今のは一体何だい?」
ベルが話しかけるとやっと回復したフィンがそんなことを聞いてくる。ベルはなんでそんなこと聞くのかと疑問に思ったが、とりあえず答えることにした
「あ~今のはユキの魔法ですよ」
「・・・・・それは分かる。しかし今の魔法は前に見た彼女の魔法とは違うと感じたんだが・・・」
フィンの返答にベルは合点がいった
「あ、そういうことですね。実はユキは闇属性の魔法以外にも光属性の魔法も使えるんですよ。今のも光属性の回復魔法でして・・・・」
「・・・・・・待ってくれ」
ベルの説明にフィンが待ったをかける。フィンはベルに確認を取るように問いかける
「・・・・君は、いま、なんて言った?」
「え?だからさっきのは光属性の回復魔法だと・・・」
「違う、そこじゃない」
「え、それじゃあ・・・・ユキが闇属性の魔法だけじゃなく光属性の魔法も使えるっていう・・・・」
「それだよ!」
フィンが声を上げる。しかしベルには何のことか分からない
「・・・・彼女は二つの属性を操れるのかい?」
フィンはベルにそう聞いてくる
「?はい、そうですよ。この前の宴会の時に言いませんでしたっけ?」
ベルは口を開く。それがどんな意味を持っているかもわからず
「ユキは闇と光、二つの属性を統べる大精霊ですよ?」
ベルの言葉にフィンは固まる。ベルは固まったフィンに気づき肩を揺らすがフィンは反応を示さない
「え、フィンさん?どうしたんですか!?フィンさん!!??」
ベルの必死の呼びかけにより、フィンは早々に復活した。そして、深々と息を吐く
「・・・・・・・よく分かったよ。ああ、分かったとも。ベル・クラネル、君がどんなに非常識かってことをね」
「非常識!?」
突然のフィンからの罵倒にベルは混乱する。しかし、そんなベルに構わずフィンは話し続ける
「本当ならもっと詳しく話を聞きたいんだが・・・こちらも何かと限界でね」
そう言ってフィンが見つめる先には安らかな顔でお腹を抑えたまま倒れ逝っているロキがいた。そんなロキを一瞥したフィンはベルに向き直る
「だから、ベル。今日はこれだけを伝えておく。詳しい話は後日になると思うから、またここに来てほしい」
そして、フィンは告げる。おそらくそれはこれからのベルの冒険者人生に大きな影響を与えることになる
「僕たちの遠征に参加しないかい?」
ベルの冒険者としての初めての『冒険』が、いま始まろうとしている
いかがでしたか?
次回から新章に入ります
早めに遠征に行きたいと思いますので、あと2,3話ほどで遠征に入ると思います
出来るだけ早めに更新したいと思います