白兎が精霊に愛されているのは間違っているだろうか?   作:謎の人でなしZ

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遠征回です

これからしばらくは遠征回が続くと思います

頑張って更新したいと思います

では、どうぞ!


白兎と遠征

 地獄のような説教から無事生還してから二日後。僕ベル・クラネルはバベル前の広場に来ていた。まだ朝方なのもあり人はあまりいない。なぜ僕がこんな時間に広場にいるのか

 

 それはロキ・ファミリアの遠征に参加するためである。フィンさんからは前もって集合場所と時間を教えてもらっていたが、遅れてはいけないと思い、予定の時間よりも大分早く来ていたのだ

 

「ふぁ~・・・・早く来すぎたかな?」

『・・・ベル、眠い・・・・』

『早く来すぎなのよ、アンタは~』

『しかし、遅れるよりかはこちらの方が良いかと思いますが・・・』

『・・・ムニャ・・・あ、お菓子がいっぱいある~♪』

『・・・ちょっとティナ、私にも頂、戴・・・ニャム・・・』

 

 いつもよりも大分早起きしたせいか、ユキたちは眠そうだ。ティナとルナは未だに夢の国におり、ユキも旅立とうとしている。リディヤとリンネはしっかりと目が覚めており、リディヤがユキを、リンネがティナとルナをそれぞれ膝枕しながら頭を撫でていた。頭を撫でる二人とくすぐったそうに身をよじる三人の姿はまさに仲のいい姉妹のようだった

 

 ベルはその光景に微笑み、眠っている三人に軽く謝罪する。なにせ昨日は丸一日を使って僕のために装備を創ってくれたんだから。原理は精霊武装と同じで自分たちの力を具現化させたらしい。武器だけでなく武具も創れるなんて、やはり精霊とは特別な存在なんだろう

 

 ベルはユキたちがこんなにも疲れている原因は自分の装備を創ったからと思っている。しかし、実際は全く違う。ユキたち精霊にとって武具を創るのはそんなに難しいことでもない。やろうと思えばいつでも創れるのだ。ではなぜ、疲れているのか。それは武具のデザインが中々決まらなかったからである

 

 ユキ、リディヤ、リンネ、ティナ、ルナ、それぞれが一番ベルに似合う装備を出し合い、誰もが一歩も譲らず実力行使の一歩前まで来ていた。だが、そこでリンネが妙案を出した。それぞれのいい所を一つにまとめたらどうか、と。そこからの行動は早かった。それぞれが入れたいところを一つにまとめ、世界にただ一つのベルのための武具が完成したのだ

 

 今のベルは淡い黒の戦闘衣に不思議な紋様が刻んである胸当てと腰布を装備しており、あまり体の動きを妨げない構造になっている。さらに、ユキたちがお守りの意味を込めて創った紅色のマフラーを巻いている。この装備はどれも最高峰の性能を有しており、マフラーさえもどんな攻撃でも破れないように出来ていることをベルは知らない。身に纏っているもの全てに見た目からでは想像できない程の加護が付与されていることさえも

 

 

 ベルは、ユキたち精霊の過保護さを知らないまま、リディヤとリンネと会話をしていると、約束の時間になったのか大勢の冒険者たちが広場に集まってきた。ロキ・ファミリアである。集まった団員たちがそれぞれ荷物や装備の確認を行っているのを眺めていたベルに、ロキ・ファミリア団長のフィンが声をかける

 

 

「やあ、おはよう。ベル。大分待たせちゃったかな?」

「あ、フィンさん。いえ、僕が早く来すぎちゃって・・・・」

「なに、悪いことじゃない。逆に待たせてしまったことを謝罪したいくらいさ・・・皆の準備が終わり次第、君のことを紹介しようと思う。大丈夫かい?」

「は、はい。分かりました・・・」

 

 ベルは緊張気味に答える。そんなベルの肩にフィンは手を置いた

 

「楽にしてくれ、そんなに緊張することじゃないさ。軽く自己紹介をしてもらうだけだからね」

 

 フィンの言葉で落ち着きを取り戻し、ベルは大きくうなずく

 

「フィンさん、ありがとうございます」

「うん。いい顔になった。よろしく頼むよ?【最速の白兎(ホワイト・ラビット)】」

「うっ!?・・・・フィンさん・・・出来ればその名前は・・・・・」

「ハハハ、僕は君にぴったりだと思うよ?」

「・・・・全然嬉しくありませんよ・・・・・・」

 

 

最速の白兎(ホワイト・ラビット)

 

 

 それはベルの二つ名である。ベルがそれを知ったのは、エイナからの説教が終わりホームのベッドで横になっていた時に、何やら慌てた様子で帰ってきたヘスティアに教えてもらったのだ。親指を立てながら、無難だ!と喜びを見せるヘスティアにベルは期待を大にした

 

 しかし決まった名前はこの【最速の白兎】だった。ベルはもっとカッコイイ名前が良かったと落ち込んだが、精霊たちはこの名前を気に入り、ヘスティアを褒めたたえていた。こうして、ベル自身としては不本意ながらも、【最速の白兎】に決定したのだ

 

「それじゃあ、僕はそろそろ行くよ。ベル、頼んだよ」

 

 そう言ってフィンはベルのもとを去った。ベルが深いため息を吐いていると今度はアイズがやって来た

 

「…ベル、今日は……っ!?」

「?どうしたんですか、アイズさん?」

 

 ベルのもとにやってきたアイズは、足を止め、目を見開いた。ベルが首を傾げていると震える声で聞いてきた

 

「……その、マフラー………」

「え?あ、これはですね、ユキたちがお守り代わりに使ってと言われたんです。これがどうかしたんですか?」

 

 ベルの答えにアイズは、そう…なんだ、と呟いてうつむいてしまった。ベルはアイズのそんな姿に慌てるが、アイズはすぐに顔を上げると、ベルを見つめる

 

「……これから、よろしくね?ベル。ベルがいたら私も心強いから…」

「は、はい……頑張ります」

 

 アイズはベルの返事を聞くと、じゃあね、と言って去っていった。ベルはアイズの後姿を見つめていた。そして、言葉を零す

 

「………どうして、あんな顔を……」

 

 ベルは今にも泣き出しそうな、寂しそうなアイズの表情を見て、なぜそのような表情になるのか分からなかった。遠征中に少し気にかけておこう、そう決意して

 

 

 ~~~

 

 それから、ベートさん、ティオナさん、ティオネさんとも挨拶を交わして、フィンさんより集合がかかった。その後、遠征の目的と事務連絡が終わり、僕の紹介となった。ロキ・ファミリアの皆さんからの視線が凄まじかったが、自己紹介と意気込みを無事に言い終えることができた。僕が達成感と無事に終わった安心感に包まれていると、僕の中から、ユキたちが出てきた。そして一言

 

『次ベルのことを傷つけたら、必ず殺す』

 

 ユキたちは五人とも同時にそう言って僕の中に戻っていった。どうやらまだ完全に許したわけでは無かったようだ。ユキたちの言葉に場が凍りついたが、フィンさんやリヴェリアさんら幹部の皆さんが凍り付いていた団員たちの行動を促していた。僕はそんな皆さんに謝りながら、精霊たちになぜあんなことをしたのかを問い詰めた。するとどうやらユキたちは、アイツらは、一度キツく言っておかないとまた同じことをするから、と答えた。よほど、前の件を根に持っているらしい。しかしそれも僕のことを考えてのことだったので怒るに怒れなかった

 

 やはり、僕はユキたちには少し甘いのだ

 

 その後すぐに団員たちは復活し、隊列を組み、二部隊に分かれてダンジョンに潜っていった。僕は二部隊目の最後尾でガレスさん、ティオナさんと一緒に潜ることになっている。なんでも、緊急事態時に対応してもらうためだそうだ。迷宮に潜る前に、僕は澄み渡った青空を見上げる

 

必ず、もう一度この空を

 

 そう決意して。僕は首を戻し、迷宮に潜った

 

 

 ―こうしてベルの初めての遠征が始まった

 

 

~~~

 

 

???

 

 そこは静かで暗い森の中だった

 動物の鳴き声や小鳥のさえずりも聞こえず、静寂がその場を支配している。だが、そこで有り得ないことが起こった

 

 ()()()()()()()()()のだ

 

 捻じ曲がった空間の中心に小さな穴が開き、その穴はだんだん大きくなっていく。するとその穴から全身を黒い鎖に拘束された一人の少女が現れた。その少女は淡い桜色の長髪で、純白のドレスのような服装をしていたがドレスにしてはスカートの丈が短く、胸元をはだけさせていた。更に不思議なことに、少女の首には千切れた鎖のついた首輪が付いていた

 

しかし何より注目するべきなのはその頭部だろう。拘束されている少女の頭部には普通の人間にはない狼人(ウェアウルフ)のような耳があった。よく見ると、髪と同じ色の尻尾もみられる。少女は黒い鎖に拘束されたまま地面に降り立ち、少女が現れた穴は徐々に小さくなり、やがてきれいに無くなった

 

 少女はしばらく動かなかった。だが、すぐに変化が現れる。少女を拘束していた黒い鎖が一本、また一本と音を立てて砕け散ったのだ。やがて拘束する鎖が無くなり、少女は解放された。鎖から解き放たれた少女は身体を僅かに震わせ目を開いた。綺麗な翡翠色の瞳で辺りを見渡す

 

「……やっと、出ることができました」

 

 少女は立ち上がり、無表情のまま未だに手首と足首に残る短い鎖を見つめながらなぜこのようになったのかを思い出していた

 

「……まさか、私までジュピターと一緒に封印されるなんて思いもしませんでした……」

 

 すると少女は、目を閉じた。しばらくして、目を開くとある方向に顔を向けた

 

「……反応があるのは、あっちですね………」

 

 少女はそう呟くき、上を見上げた。すると少女の背中に白い光が集まり翼を形成した。少女は静かに浮かび上がり、森の上空で静止した。そして、下を見つめる

 

「……さようなら。ジュピター。どうせ無理だと思いますが、貴方も頑張って脱出してください」

 

『―――!』

 

「……嫌です。そんなんだから、あの子たちに封印されるんですよ」

 

『―――!?――!』

 

「……なにを言っているのか理解できません。では、私は行きますね」

 

 そう言って少女は飛び去って行った。その速さは音を置き去りにし、まさしく光のようだった

 光速で移動する少女は誰にも聞こえない中首輪に手を添え、こう囁いた

 

 

 

 

「……待っていてください―――私の主(マイ・マスター)

 

 

 

 

 その日、一つの流星が夜空を駆けた。その流星に旅人が、動物が、大自然が魅了された。流星はある方向に向かっていた

 

 

 そこは世界の中心、英雄が生まれる街―――オラリオ

 

 

 そんなオラリオに更なる嵐が迫っているのを、今は、誰も知らない

 

 




いかがでしたか?

ベルの二つ名はまだ神々に精霊のことが伝わってないので、今回は別の二つ名にしました。一応、兎のラビットと敏速という意味のラピッドをかけています


……すいません。中々いい名前が思いつかなかったんです!!


新しい人物も登場しました。彼女は一体何者なんでしょうね?


では、また次回に

出来るだけ早めに更新したいと思います
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