白兎が精霊に愛されているのは間違っているだろうか? 作:謎の人でなしZ
今回遠征編二話目です
どうなるんでしょうね?
では、どうぞ!
――遠征が始まって数時間
始まり当初は意気込んでいた僕だったが――
「……何もすることがない」
さすがはオラリオ最強の一角であるロキ・ファミリアの団員たち。上層などでは止まりもしない。何度かモンスターにも遭遇したが、難なく撃退していた。そして気が付けばもう16階層まで来ていた。もしかして僕必要なかったんじゃ?と考え始めていると、突然ガレスさんが肩を叩いてきた
「ガハハハ!!どうしたんじゃ、ベル?難しい顔をしおって」
「ガレスさん……ちょっと僕の存在意義について考えてまして」
「なにをいっとるんじゃ、お主は」
僕の悩みを聞いたガレスさんは呆れた顔をする。意外と真剣なんですよ?
「大体まだ遠征は始まったばかりじゃ。そんな初っ端からお主の力を借りるほど落ちぶれとらんわい」
「はぁ、そんなもんですか?」
「そんなもんじゃ。まあ、お主は18階層を過ぎたころからじゃな」
――だってさ皆。もうちょっと我慢してね
『……暇』
『暇ね』
『暇ですね』
『ひーま…』
『だ~~!!!!』
――僕もそう思うけど、あと少しだから。それに18階層は綺麗な場所って話だし、着いたら皆で見て回ろうか
『『『『『賛成!!』』』』』
僕の提案にユキたちは声をそろえて喜んだ。そんな会話を交わしていると僕たちは、17階層【嘆きの大壁】に突入した。ガレスさん曰く、上層の階層主ゴライアスは、数日前に討伐されたらしいので今回は心配しないで大丈夫だそうだ
全員が17階層に着いた瞬間、僕は階層の雰囲気が変わったことに気づいた
「これは……ガレスさん、ティオナさん」
「ん?どうしたんじゃベル」
「どうしたの~?早く行こうよ~」
ガレスさんとティオナさんが振り向く
「すぐに皆さんを退避させてください。それか、急いで18階層に!!」
「だから、どうしたというんじゃ、さっきから」
「何かあったの~?」
「早く!!」
必死に説得するが、二人は首を傾げながら動こうとしない。不味い!もう間に合わない!!
「皆さん、伏せてください!!」
突然のことに、ロキ・ファミリアの団員たちは戸惑っていた。中には怪しげなものを見るような目で僕を見ている
「……来ます!!!」
僕が叫びをあげた瞬間、大壁に亀裂が走った。その亀裂はどんどん広がっていき、壁が崩れた。すると崩れ去った壁の中から巨大な人の顔が現れる。それは先日倒されたはずのモンスター、階層主のゴライアスだった
「なに!?ゴライアスじゃと!!?」
「嘘でしょ!?出現間隔は過ぎてないはずなのに!!」
二人がゴライアスの出現に困惑していた。階層主とは他のモンスターとは異なり、一度討伐すると次に出現するのに数週間の時間を必要とする。逆にいうとそれ程の時間を要するので他のモンスターよりも格段に強いので、討伐には大人数の冒険者で挑まないといけないのだ
ゴライアスは壁から出ている首を動かし、僕たちを捉えた。そして威嚇するように叫びをあげる
「グウォオオオオォオオオオオオオ!!!!!!!」
ゴライアスの叫びが階層中に響き渡る。するとロキ・ファミリアの団員たちは大半が倒れ込み、辛うじて意識を保っている数人も膝をついていた。そんな団員たちを見てガレスとティオナは苦虫を嚙み潰したような顔になる
「おのれ!ハウルか!!」
「どうしよう!?ほとんど気絶してるし、こんなに守りながらじゃちょっとキツいかも!!」
二人は悪態をつくが、ゴライアスはそんな二人を気に留めることなく、壁から這い出る。そして目の前に巨人がその全容を明らかにした。ガレスとティオナが武器に手をかけたその時……
「ルナ!!気絶してる人たちを!!」
『任せて!お兄さん!!』
僕がそう叫ぶと気絶している団員たちの前に土の壁が出現する。土の壁は団員たちを取り囲み、それを確認した僕はガレスさんたちに向き直った
「ガレスさん!ティオナさん!今のうちに皆さんを連れて退避を!!」
「じゃがお主はどうするんじゃ!!」
「アイツを倒します」
「何言って……一人じゃ無茶だよ!!?」
「大丈夫ですよ」
僕はゴライアスと対峙する。ゴライアスは僕に気づき、拳を振り上げる
「白兎君!!」
「くそ、間に合わん!避けろベル!!」
ティオナさんとガレスさんは、焦りの声を上げる。しかし僕は動こうとしない。ゴライアスはそんな僕に拳を振り下ろす。地面が激しく揺れ、土煙が舞い上がる
ガレスとティオナは突然の土煙に目を覆う。やがて土煙も晴れてきた。そこには――
「僕は、一人じゃありませんから」
「フフフフフ……やっと私の番ね!この時をずっと待ってたんだから!!!!」
ゴライアスの拳を片手で受け止めるベルと、その隣で満面の笑みを浮かべ、やる気満々な紅髪の美少女リディヤがいた。ベルはゴライアスの拳を受け止めながら、リディヤにジト目を向ける
「………リディヤ、もうちょっと早く来てくれても良かったんじゃない?」
「分かってないわね。こんな時はピンチの時に颯爽と現れる、って相場が決まってるのよ!!」
「よ~~く今の状況を見てみようか?ゴライアスの攻撃を防いでるのって僕だy「さあ行くわよ!いっつも先を越されてたんだから!!」誤魔化した!?」
僕はとりあえず拳を押し返す。するとゴライアスは、後ろに倒れた。少し強すぎたかな?と思いながらリディヤに問いかける
「一応聞くけど、どうやって倒すの?」
「燃やす」
「却下」
「!?」
やっぱりそんなことを考えていたのか。大体燃やすっていっても、リディヤがやったらティオナさんたちにも被害が出るじゃないか。動けない人も多いんだし、燃やすのは無しにしよう
そう決意した僕は、目の前でいじけているリディヤの説得を試みた
「リディヤ」
「……何よー」
これは相当いじけてるなーと思いながらも話を続ける
「確かに君の魔法は強力なんだけど、今は動けない人たちがいるんだ。だから出来るだけそっちに被害がいかないようにしてほしいんだけど」
「……私が加減を間違えるって?」
「まさか。そんなことは微塵も思ってないよ。でもやっぱり万が一はあると思うんだ」
「………分かった」
そう言って、僕に近づき腕を引っ張てくる
「?どうしたのリディヤ?」
「後で、頭撫でる!!」
リディヤの突然の要求に、僕は苦笑しながら頷く。まあ、今回はリディヤも不満だろうからこれくらいはしてあげないとね
「分かったよ。僕も手伝おうか?」
「……ベルがどうしてもって言うなら………」
チラ、チラ、と僕の右手を見ているリディヤ。仕方ないな、と思いながらリディヤの左手を握る
「どうしても、だよ。手伝わせてくれる?」
「し、仕方ないわね。さあ、殺るわよ!!」
「字が間違ってるよ、リディヤ」
僕と繋いでいる手を幸せそうな顔で見つめながら、とても物騒なことを言ってくる。手加減してね?
「ウォオオオオォオオオオオオオオオオ!!!!!!」
どうやらゴライアスは僕たちを止めようとしているみたいだ。起き上がり僕とリディヤの方に雄たけびを上げながら向かっている
―――だが、遅い
僕とリディヤは、ゴライアスにそれぞれ繋いでいる手とは逆の手を向ける。そして同時に言葉を紡ぐ
「「【灰燼と化せ】」」
するとゴライアスの頭上に紅い魔法陣が現れる。その魔法陣はだんだん増えていき、ゴライアスを取り囲んだ
「「【メテオ】」」
そう唱えた瞬間、魔法陣から巨大な炎の塊が出現しゴライアスに襲い掛かる。四方八方から放たれる炎の流星群に、ゴライアスは断末魔のような叫びをあげる
「ウグォオオオァアアアアアアアアアアアアアァアアアア!!!!!??????」
しかしすぐに燃え尽き、ゴライアスが燃え尽きた場所には巨大な魔石が転がっていた。僕は一息つくとリディヤにお礼をいう
「ありがとう、リディヤ。助かったよ」
「どういたしまして……約束、忘れないでよね」
「分かってるよ」
「ん」
リディヤは返答を聞くと僕の中に戻っていった。僕はもう一度リディヤにお礼を言うと、ガレスさんとティオナさんの所に戻った
「こっちは、終わりましたよ……って、どうしたんですか?」
僕が戻るとそこには信じられないものを見るような目で僕を見ているガレスさんと、なぜか、ポ~っとこちらを見つめるティオナさんがいた。はて?僕何かやったっけ?
「あの~」
「し、信じられん……ゴライアスを倒すとは……お主本当にLv2なのか?」
「?はい、そうですよ??」
ガレスさんの問いに僕は答える。どうしたんだろう?と不思議に思っていると、今度はティオナさんが僕に近づいてきた
「あ、ティオナさん。大丈夫でしたか?」
「…………………」
だが、ティオナさんは僕の言葉に答えることなく、無言で歩いてくる。そして僕の目の前で止まった。いつもと様子が全く違うティオナさんに僕が戸惑っていた次の瞬間――
「むぐっ!?」
――キス、をされていた。それも口に、である。ベルは突然のことに現状を理解できなかった。ティオナが近づいてきたと思ったら、いきなりティオナが顔を上げ、唇を奪ってきたのだ。もうベルは何が何だか分からず、頭の中はグチャグチャであった
どれ程時間が経ったであろうか、ティオナがようやく離れる。二人の唇の間を唾液の線がひいていく。ベルは口を拭いながら、パクパクと口を開く
「な、ななななななななにを………!?」
ベルの問いにティオナは頬を真っ赤に染め、うっとりとした顔でベルを見つめる
「………ずるいよ、白兎君…ううん、ベル」
「へ?」
いきなり、ずるいと言われたベルは何のことか分からず間の抜けた声を出す。だがティオナは構わず続ける
「せっかく抑えてたのに……あんな戦いを魅せられたら、我慢なんて出来っこないよ………」
ベルは未だにティオナの言っていることが分からない。絶賛混乱中のベルであったが、まだこれで終わりではなかった
「………ねえ、ベル」
「は、はいぃ!?」
ティオナのただならぬ雰囲気に、ベルは姿勢を整えながら答える。そんなベルにティオナは――
「私、キミのこと好きになっちゃった」
「…………………………へ?」
17階層にはベルの間の抜けた声がやけに大きく響いた
いかがでしたか?
ティオナがついにベルに惚れてしまいましたね~
これからどうなるのか、ぜひお楽しみに!!
……大丈夫ですよ!アイズもしっかりヒロインとして出します!!
出来るだけ早めに更新したいと思います
ではまた!!!