白兎が精霊に愛されているのは間違っているだろうか? 作:謎の人でなしZ
あの事件後のロキ・ファミリアの視点です
精霊たちからの言葉に彼らは何を思ったのでしょうか?
では、どうぞ!
【豊穣の女主人】の一件からしばらくして、ここは、ロキ・ファミリアの
しかし、その場にいる全員は一言もしゃべらず、重苦しい空気が場を支配している
そんな時間がどれ程続いたかは分からない。すると朱色の髪で細目の女性が口を開く。主神のロキだ。その顔は苦虫を噛んだようになっている
「……そんで?ウチらが気絶しとったんは精霊の殺気のせいで、ウチらがその精霊が契約しとる奴を馬鹿にしたから報復にきて、その馬鹿にしとった奴が止めへんかったらウチらは皆殺しになっとったと……そういうことでええんやな?フィン」
「ああ、その通りだ、ロキ。彼…あの精霊たちの契約者であるベル・クラネルが止めてくれなかったら僕たちは全員殺されていた。それも跡形も残らずに、ね」
フィンの言葉にロキは大きく息を吐きながら天井を見上げる
「……なんで精霊がおるねん…もういないはずやろ?それも1人だけならまだしも5人やと?……アカン、ウチもう頭が痛いで……」
「無理もないよ。僕も初め聞いたときは耳を疑ったからね。けど、彼女らは《Lv:5》や《Lv:6》の僕らを拘束した。僕たちが本気を出してもビクともしなかった。それとこれは僕の予想だけど、彼女たちは全然本気じゃない。おそらく一割も力を出していなかっただろう」
その言葉に場が静寂に包まれる。《Lv:5》や《Lv:6》の冒険者はこのオラリオに数えるほどしかいない。そんな自分たちを彼女たちは難なく拘束したのだ。自分たちが振りほどけない程の拘束を。オラリオでは最高峰に近い実力があると自他ともに自負していた。しかし、今この場にいる全員(ロキを除く)の心に残るのは白髪の精霊の言葉だった
『自分たちのミスでモンスターを逃がし!それを他の者に始末させたのにも関わらず勘違いで笑い話にし!挙句の果てには周りも一緒に馬鹿にし、責任を押し付けるななどとほざく!!貴様たちは理解しているのか?今回は運がよかっただけだ。私たちの契約者がいたからな。下手をしたら誰かが命を失っていたかもしれない。死人が出なくて良かったというのは結果論だ。貴様たちがやったのは命への冒涜だ。そんなことも分からないのなら、もういいーーーーここで死ね』
その言葉を聞いたとき誰も言い返せなかった。言い返せるわけがなかった。彼女の言葉は何一つ間違っていなかったからだ。今回は本当に運が良かっただけなのだ。ミノタウロスに出会ったのがベルだったから
しかし、もしも出会ったのがベルではなかったら?ベルではなく他の駆け出しの冒険者がミノタウロスに出会っていたら?
ーーーー決まっている。殺されただろう。それも必ずと言っていい。ミノタウロスはそれ程のモンスターなのだ。もしもベルが倒していなかったら一体何人の死者が出ただろうか?考えるだけで恐ろしい。もしもそうなったら、ロキ・ファミリアはどうなった?きっと解散とまではいかないが相応の罰が下ったはずだ。それだけではない。もう今の地位にいることはできず、最悪オラリオ中から白い目で見られ、迫害を受けることになったかもしれない
自分たちは、ロキ・ファミリアはベルに救われたといっても過言ではないのだ
ーーーその恩人に自分たちは一体何をした?
自分たちの勘違いでその少年を嘲笑して、酒の肴にし、挙句の果てには皆で大笑いしたのだ。彼女たちが怒るのも当然だ。自分たちの大切な人を馬鹿にされ、嘲笑され、笑われ、自分たちの失敗を押し付けるなと言われたのだ。救われた側の自分たちに
幹部たちはそのことに気づき、絶望した。自分たちはとんでもないことをしてしまったのだ。それこそ冒険者以前に、人として最低なことを。幹部たちの心はもう後悔と罪悪感で満たされている。それこそ、そのまま精霊たちに殺されても仕方がないと思うほどに。自分たちはそれ程のことをしてしまったのだ
そうして、全員が死を受け入れようとした瞬間。目の前の精霊の少女の手を握り止めた人物がいた。その人物は自分たちが馬鹿にし、嘲笑していた少年ーーベルだった。ベルはその後、精霊たちに魔法を消すように頼んでいた。魔法の拘束を解かれた自分たちのもとにベルがやってきた。幹部たちは何も言われても、殴られても、殺されても仕方ないと、ベルの方を見つめた。ベルは団長が誰かを聞き、フィンが答えるとフィンの方を向きーーー
ーーーーー頭を下げて、謝罪をしてきたのだ
その瞬間幹部たちの頭の中は真っ白になった。なぜベルが謝っているのか分からなかった。ベルが頭を下げる理由はないはずだ。悪いのは全て自分たちなのだから
ベルは謝罪した。やりすぎだと。しかし彼女たちの行動は自分を思ってのことだと。そして罰は全て自分が受けると
ベルの言葉を聞きフィンは思った
ーーーああ、なんと真っ直ぐで優しい少年なのだろうか。この状況でこちらに非はなく、むしろ悪いのは自分だと言い切っている。それこそ、本当にこちらは悪くないのだと思っているように
それと同時に大きな後悔と羞恥心がフィンを襲う。こんな少年に僕たちはなんということをしてしまったのだ、と。目の前の頭を下げている少年に比べ僕たちはどうだ?本当なら頭を下げるべきなのはこちらなのに
目の前で今も頭を下げ続ける少年に僕たちは何をするべきだ?少年に甘え続けることか?それが僕たちのやるべきことなのか?
ーー違う・・・
フィンの心に小さな感情の火が灯る
ーーーー違う
その火はだんだん大きくなる
ーーーーーー違う!!!!
火は大きくなり、それはフィンの心を埋め尽くした
ーー違う!僕たちは彼に、彼女たちに謝罪をしなければならない!!それがどうだ?なぜ彼に謝罪をさせている!?恥に恥を重ねて
フィンの心は決まった。周りの幹部も同じことを思ったのか覚悟を決めた顔をしている
その後はベルに謝罪の機会を得ることに成功し、現在に至る
あの場ではベルたちにも店にも迷惑がかかると思い、ホームに帰ってきたがフィンの決意は変わっていない。ベルが訪れたときは、自分の全てをかけて謝罪し償おうと。もし、死ねと言われたらその場で自害する覚悟も持って
それからロキと話し合い、後日ベルたちが【黄昏の館】に訪れ自分たちが謝罪をすること。そしてベルのファミリアのことを伝えた。ヘスティアの名前に驚き、嫌がってはいたが今回は完全にこちらが悪いので渋々だが了承した。その後ベルへの謝罪が終わるまでロキ・ファミリアは外出禁止が決まった
話し合いも終わり幹部たちはそれぞれの部屋に戻っていった。ちなみに話し合いの結果ベートは2ヶ月の謹慎で、ベルが訪れたときに謝罪することが決まった。そしてベルにベートの処遇を決めてもらい、それに従うということも
ベートはその全てを了承した。今回の件はよほどこたえたようだ。静かに部屋に戻っていく
しかし、ベートよりも暗い顔をしている人物がいる。アイズ・ヴァレンシュタインだ。アイズは今回の件は自分がベートの勘違いを止めることができなかったからと責任を感じているのだ。だが、アイズの表情が暗い理由はそれだけではない。
それは・・・
(……あの子、精霊と、契約…してた………)
そう。アイズはベルが精霊と契約していることに驚いているのだ。実は彼女には精霊の血が流れている。それにはアイズの両親が関係しているのだが今は話すべきではないだろう。だが、1つだけ伝えるとアイズは両親についての情報を求めている。彼女は5人の精霊と契約しているベルなら、自分の両親について何か知っているはず、と話をしたいと思ったのだが今回の事件である。ベルは自分のことを許さず、話を聞いてくれないかもしれない
そう思うとアイズの心に鋭い痛みが走る
(……もしも、話を聞いてくれなかったら、どうしよう?)
ーーズキッ
(……嫌われてたら、どうしよう?)
ーーーズキッッ!!
今までで一番の痛みがアイズの心を襲う。アイズは胸を抑え苦しそうにうずくまる。しばらくして落ち着いたのか壁に背を預けながら座り込む。荒くなった呼吸を整えながらアイズは思う
(……い、今のは?)
アイズはこの痛みが何なのか分からなかった。しかし、ベルに嫌われる、と想像した瞬間、胸にあの痛みが走ったのだ。アイズは痛みに疑問を持ちながらも呼吸が落ち着いたのか、壁を支えにして立ち上がり自分の部屋に戻っていった
ーーー【
いかがでしたか?
これからのロキ・ファミリアにも注目してください
それと一つご報告があります。私の一身上の都合によりしばらく更新ができないかもしれません。できるだけ毎日投稿したいと思っていますが少し難しいかもしれません
2週間ほどそのようになるかもしれませんが頑張りたいと思います
本当にすみません
しかし出来るだけ早めに更新したいと思います
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