見知らぬ場所、見知らぬ身体。記憶と違う性別。
服はボロボロで、身体は薄汚れている。そんな崖っぷちから始まった彼/彼女の物語。
その僅かな一幕。
※展開が飛び飛びなのは純粋に私のモチベの問題です。
・書きたい部分だけ書いていこうのスタイル。
・その為非常に短くなっています。ご容赦下さい。
せや、だったら自分で書いたろ。
尚、中身はくっそしょうもないただの妄想。或いはオ◻️ニー。
────あぁ……私は馬鹿だった。
辺りに広がる今まで人だったものの残骸。超常の力で破壊された家は笑ってしまいそうなほどボロボロで、彼女はその光景を見ながらうつろな笑みを浮かべる。
────自分が特別な人間だと思っていた。もしかしたら、救えるのかもしれないと自惚れていた。その結果がこのザマか。
優しい人達だった。暖かな人達だった。どこから来たのかも分からず、容姿は外国の血を色濃く受け継いでいるとひと目で分かるような、そんな信用するには足らない人物を疑いもせず受け入れてくれた人達だった。
右も左も分からない、住む場所も帰る場所もなくなってしまった彼女を笑顔で迎え入れてくれた人達だった。
だから、助けたいと思った。助けられるかもしれないと思ってしまった。自惚れてしまった。故にこの人達は死に、彼女も異形の血を入れられ適応出来ず死にかけている。
────すみません、炭治郎。ごめんなさい、葵枝さん。禰豆子、花子、茂、六太……炭十郎さん……。救ってくれたのに、助けてくれたのに、私は恩を仇で返してしまった。取り返しのつかない、酷い事をしてしまった……。
────だから、償わなくてはならない。罪を、罰を、自分に課さねばならない。背負わなければならない。だから、だからどうか──力が欲しい。人を守れる力を、大切なもの助けられる力を。今後、私がどうなってもいいから、だから──力を──
初めて神に祈る。そして、彼女の願いを聞き届けたかのように、彼女の体が光り────
☆
気が付けば、彼は彼女となって、見知らぬ場所に佇んでいた。
陽の光が木々の隙間から射す、排気ガスなどに汚染されていない清涼な空気。舗装されておらず草は生い茂り、恐らく獣くらいしか通らないのであろう文字通りの獣道。
そんな場所で汗と泥に汚れた、元々白かったのであろうワンピースを着て佇んでいたのだ。ついでに裸足で。
いやもう意味がわからない。理解不能どころの話ではない。彼の記憶ではいつも通りの生活を送り寝て起きたらこれなのだから分かろうわけもない。
一つだけわかることがあるとすれば、今の状況が最高にヤベェということだけ。
スマホもない、靴もない、地理も分からない、方位磁針など方角がわかるものもない。さらに言えば太陽が木に遮られててどこにあるのかすらも分からない。見えたところで方角がわかる訳でもないが。ぶっちゃけで詰んでる。よくある転生とか憑依物かと浮かれる隙すらない。
そんな希望の見えない今と未来に、もうほとんど半泣きになりながら彼────彼女は歩き出した。取り敢えず動かないと、と考えたからだ。
勿論、遭難した時に無闇に動き回るのは愚策であるということくらい彼女自身も理解している。しかしだからといって動かないことが今の状況では正しいとも考えられなかったのだ。何せここは舗装されていない、恐らく森の中。車や街の喧騒などの音が聞こえないということはかなり奥深くであり、そんな所に人が来るとも限らない。いや、来ない確率の方が高いまである。
無謀であると分かっていても、動かざるを得ないのだ。彼女が彼であった記憶の通りであれば、今は夏であるが……こんな異常で摩訶不思議な今に彼だった頃の四季があてになるとも思えず、たとえ夏であろうと夜の森の中は中々冷える。そんな中薄着で、下着すらなく、ともすれば暴漢に襲われた後のような姿でその場で待機しているのも……と考えたのだ。
とはいえ、右も左もわからぬ森の中を裸足で歩くのだから、その足取りは亀の如く。恐る恐る、しっかり目を凝らして足元を見ているのだから然もありなん。
────と、彼女がそんな亀の如き歩みを進めている最中、近くの草からガサリ、という音がした。
「────ぴっ!?」
……彼女がこの状況に陥って初めて発した記念すべき言葉がまるで死にかけの鳥があげる断末魔の鳴き声のようだったことには目を瞑るとして。
草の擦れ合う音は風によって揺れたようではなく、明らかに何者かの意図によって掻き分けられたものだ。音は断続的に響き、彼女へと徐々に近付いている。
元々彼女は男だった。その頃であれば、多少脅えこそすれ暴漢や多少の獣程度に動けなくなる程ではなかったであろう。だが今は女になっている。そして今の彼女は、襲われたら抵抗することなど出来ないのだと余す所なく理解していた。
だからこそ恐怖する。足がすくみ、身体の力が入らなくなり、無様にもその場にへたり込む。
そして────
☆
「あの、本当に良いんでしょうか……?」
茂みから現れたのは空の籠を背負った額にある痣が特徴的な少年だった。
少年はへたり込んだ彼女を見るなり酷く心配したように声を掛け、服装や靴を履いてないことを確認すると
流石に背負って運んでもらうことに加え、自分自身、なぜこんな森の中にいたのかも定かではない、そんな疑わしい者を疑うことなく招いてくれる少年の善性に罪悪感を覚えたのか、彼女は道中何度も同じ問いを投げかけている。
「大丈夫ですって、気にしないで下さい! それに、困ってる人を見捨てるのなんて出来ないですから!! 父も母も、それに妹や弟もきっと同じことを言うと思うから、安心して下さい!」
「うぅ……すみません……ありがとうございます……」
すると、決まって少年は気にするなと言い、最後には励ますような言葉を投げかける。
彼女自身嘘は吐いていないし、実際自分がなぜ森にいるのかすらも把握していないが……だからといって無条件に信用され、心配され、剰え自身より身長が低いとは言えそれなりの体重の人一人を背負ったまま移動するという迷惑もかけているのに、それを気にしていないかのような無償の善意を施されて感謝よりも戸惑いや不安を抱えてしまっていた。
そして、それ以上に。
彼女になる前、彼はオタクと呼ばれる部類に属していた。と言っても重度のソレではなく、比較的ライトな……有名な作品だったら知っている程度のものでしか無く、細部を覚えている訳でもない……のだが、彼としての直近の記憶の中に、一人の少年が鬼と戦う物語がある。
鬼滅の刃という作品だ。ある時主人公である竈門炭治郎と言う一人の少年が町へ炭を売りに行き、そして家に帰った頃には家族を殺され、妹を鬼に変えられていた……そんな始まりから進む物語。
その竈門炭治郎という少年と――――目の前の、今彼女を背負っている少年の姿が、特徴が、重なる。
特徴的な額の痣。日輪を模した花札のような耳飾り。まるで昭和以前の……現代では一部の地域、もしくはイベントなどでしか見ることの無いような服装。声。その全てが彼の知る作品の主人公の姿と。
ならば少年について行かなければいい……という訳でもない。
少年が本当に竈門炭治郎で、彼女の知る世界なのであれば、鬼という異形の存在が跋扈していることになる。鬼という存在は凶悪だ。日輪刀と呼ばれる特殊な鉱石から造られる武器でなければ殺しても死なず、その力は個体によって様々だが普通の人間より遥かに強い。
唯一陽の光が弱点ではあるが、当然それは鬼も警戒しているし、知覚面でも優秀な彼らは人よりも早く、そして敏感に日が昇るのを察知する。また、もし仮に察知されなくとも、見つかれば圧倒的な身体能力の差で殺され食われるのが落ちだ。日が昇るまで逃げ切るなど、到底出来る話ではない。
行くも地獄、留まるも地獄。留まれば土地勘もない森の中で彷徨い続ける可能性があり、もしかすれば鬼にみつかり抵抗するまもなく食われるかもしれない。であれば少しでも生存確率の高い方に縋るのは至極当然と言えよう。少なくとも、竈門炭治郎の家族が死ぬまで彼と一緒に行動していれば死ぬことは無いというのは確定しているのだから。
「そういえば、名乗ってませんでしたね。俺の名前は炭治郎って言います。竈門炭治郎。あなたの名前を聞いてもいいですか?」
「……あぁ、はい。名前……」
ふと、自分の名前を言おうとして言葉に詰まる。想像していた通り少年の名前が炭治郎だったから────では無く、思い出せなかったからだ。自分の名前が。
彼として過ごしていた記憶はある。それは妄想などではなく事実なのだという感覚もある。なのに、名前や地名、家族などの情報がゴッソリと抜け落ちていた。まるで誰かに奪われたかのように。
どう答えたものか、と思案する。名前を思い出せない事くらい、この状況になった時にある程度想定していたからそこまで精神的負荷にはなっていない。今ここで重要なのは、名乗られたのに名乗り返す名前が無いということ。今すぐ名前を決めたとて、それが馴染まなければ呼ばれても咄嗟に反応できないかもしれない。故に彼女自身に馴染む名前を考えなければいけないのだが……あまり長考していては炭治郎に不信感を与えてしまうかもしれない。
彼としての知識で、炭治郎が底抜けのお人好しであることは知っているが、この“炭治郎”がそうであるとも限らない。あの作品の平行世界という位置付けの可能性もあるのだから、慎重を期して答えるべきだろう、と。
そうして数秒悩んでいると、ふと頭に浮かぶ名前があった。しかもそれは不思議と彼女自身に馴染むような、前から呼ばれていたような親しみを感じるもので──
「アル、トリア……アルトリア・ペンドラゴン。私はそう、呼ばれていた気がします」
「あるとりあさん、ですか?」
「ふふっ、いえ。発音が少し違いますね。アルトリア、です」
「あるとりあ……あるとリア……アルトリア、さん?」
「はい、その発音であっていますよ。……もし貴方が良ければ、私のことはアルトとお呼びください。それと、敬称も敬語も不要です。命の恩人に畏まられるのは、その……」
「わかりま……分かった。じゃあ、俺のことも炭治郎って呼んで欲しい」
「えぇ、分かりました。ありがとうございます、炭治郎」
他愛ない会話をしながら彼女────アルトは思考を巡らす。
嫌にあっさりと脳内に浮かんできた名前。彼だった頃は日本人で、外国の血は全く入っていなかったのに
しかもその名前が記憶の片隅にある、フィクションの中の存在の名前なのだから、少しばかり困惑していた。
初めは性転換系の転移物かと思っていたら、まさかの憑依物で、しかもその憑依先は非常に有名な作品のメインヒロインと来た。状況が状況であるが故に感覚も麻痺して、大抵の事では驚かないと思っていたがこれは予想外だった。
なんとか声や表情には出さなかったが、
それに、もし仮にこの名前のキャラクターに憑依しているのだとしたら、今のアルトはひ弱に過ぎる。なにせこのキャラクターは生身で馬鹿げた身体能力を発揮し、魔力と呼ばれる超常の力を扱う存在なのだ。決してそこらの野獣や暴漢程度に勝てないと思うことすらないだろう。
であれば、この名前は偶然の一致で、たまたま全く同じ名前だったのだ、とも考えられるが、それも
「……なんて、考えてもキリがないか」
「えっ? 何か言いましたか?」
「あぁ、いえ。気にしないでください。少々考え事をしていただけなので……」
とはいえ、そんなことを考えていてもキリがない。
なってしまったのだから、なるようにしかならないのだろうとアルトは自分に言い聞かせる。どうせ学のない自分があれこれ考えたところで答えなどでないのだから。
それよりも今は、この後のことを考えよう。炭治郎に運んでもらってそれなりに時間も経っている。そろそろ竈門家に着く予感がするから、そこでどうするかを考えなければ。
☆
などと考えていたのが今や昔。
アルトはちゃっかりと竈門家に居座り、平穏な日々を享受していた。
あの後、聞こえるか聞こえないかの瀬戸際程の声量でブツブツ呟くアルトを心配した炭治郎は、自身も疲れているであろうに、アルトを抱えたまま走って森を抜け、家に帰宅した。
そのままの足で母──竈門
ちなみにその時の
そんなこんなで一晩を明かし、翌朝自己紹介と
手当もされて命も助けてもらい、あまつさえ寝床も借りたというのに、更に迷惑をかけるのは悪いと断ろうとしても、このまま素知らぬ顔してさよならして、もし貴女が死んでしまったら寝覚めが悪い……とまで言われ、断ることも出来ず、断りたい理由も言えるわけがなく、こうして竈門家に居座ることになってしまった。
しかもそれから既に数ヶ月程の月日が経っている。アルトが竈門家に身を寄せた少し後に、まるで枯れた木に最後に着いた枯葉が舞い散るかの如く静かに息を引き取った炭十郎を看取り。落ち込んでしまった彼ら彼女らを励ましてる内に炭治郎や禰豆子、葵枝は勿論のこと、
なにせ、中身は男であるが、外見上どこからどう見ても美少女という他ないアルトは、同じ同性ということで禰津子や花子とも良く話すし、元々男だったから炭治郎や茂ともよく話す。現代日本人だったからか、料理に関しても手馴れているのか葵枝の手伝いも良くするからだ。更に言えば、見境のないお人好しであるアルトが、好かれないように生活するというのは無理があった。
そうして、最早竈門家にとってもアルトは掛け替えのない家族となっていた。──勿論、アルトにとっても竈門家は家族も同然と思えてしまう程。
故に。だからこそ、アルトは考えてしまった。どうにかして未来で起こされるであろう悲劇から、彼ら彼女らを救うことは出来ないだろうかと。
自身に力がないことは既に理解している。身体能力は相も変わらず低いし、ともすれば禰豆子に負けてしまう程度の体力しかない。悲劇の元凶──
そして記憶とは摩耗するものだ。ぬるま湯につかっていれば、それは尚更危機感の欠如と伴って忘れていってしまう。
ないものばかりで何も出来ないということはわかっている。けれど助けたいと思ってしまった。
なにより。
こんな特殊な状況に陥った自分に、もしかしたら眠っている力や才能があるかもしれないと期待してしまった。そして気持ち悪い程当たる直感も、それを肯定してしまった。……それが悲劇の始まりだとも知らずに。いや、直感によって危険だとわかっていても、それを捩じ伏せて選んだのだ。
────そして、運命の日が訪れた。
ある冬の日の事。禰豆子と一緒に六太を寝かしつけていると、炭治郎と葵枝の何気ないやり取りが微かに聞こえた。
どうやら、炭治郎がこの雪の中木炭を売りに行こうとして、葵枝が心配しているようだ。顔も見えないというのに、葵枝が炭治郎に投げ掛ける声音は感謝と申し訳なさ、そしてそれ以上の心配に溢れているのだとわかる。
いつもの事だ。炭を売りに行こうとする炭治郎を、葵枝は何時も心配していたから。だと言うのに、どうしてか今日はそれがなんとなく気になった。
「……すみません、禰豆子。少々六太の事は任せてしまっても良いですか?」
「え? それは大丈夫だけど……どうしたの?」
「あぁ、えっと……炭治郎がまた無茶をしようとしているみたいで、様子を見ようか、と」
予想だにしていなかった問いかけに、アルトは苦し紛れに言い訳をする。
いや、勿論言った言葉が嘘という訳ではない。冬になり、寒さで道は凍るかもしれない。それに先日は雪も降っていて、多少足が埋もれるくらいは積もっている。心配だというのは本当に嘘ではない。
だが、それ以外の事がないわけでもない。朝起きた時からどうしてか焦燥感に駆り立てられている。何かしなければいけないと、どうしてか胸騒ぎが収まらない。とはいえ、それを禰豆子に伝えられる訳もない。アルトには尋常ならざる直感があるとは言え、それを上手く説明できるわけでもないし、例え説明できたとして、無駄に心労を掛けるのは憚られた。
「そうなんだ……ふふっ、アルトは本当にお兄ちゃんが好きだね」
「そっ?! なっ、違います! そういう意図はなくてですね! 純粋に私は心配していて……!!」
「わかってるわかってる。六太のことなら任せて。それにほら、早く行かないとお兄ちゃんが行っちゃうよ?」
「うっ……くぅ……。……後ほど、その勘違いは絶対に訂正させますからね……!!!」
アルトはいつも禰豆子に口では勝てない。生来のコミュ力の差なのか、或いはアルトが元は男性で、禰豆子が生まれながらにして女性だからなのか。
その度にアルトは躍起になって言い負かそうとしてみるのだが、そうしてまた負けるのだから学習能力というものが備わっていないのかもしれない。
そんな一幕を経て、彼女が外に出ると、葵枝が炭治郎の顔に付いた炭を拭ってあげていた。声だけでも分かっていたが、酷く優しげな顔で、心配そうに見つめながら。
「――――に腹いっぱい食べさせてやりたいし、少しでも炭を売ってくるよ」
「……ありがとう、炭治郎」
申し訳無さそうに笑みを浮かべながら礼を言う葵枝の姿に、そして炭治郎の姿に、ふと既視感を覚える。焦燥感はますます強くなり、今すぐ駆け出して何かをしなければ行けないという強迫観念すら訴え始めた。
アルトはそれをぼーっと見詰めながら、この世界で過ごすようになって増えた自問自答を繰り返す。
なぜ既視感があるのか。どうして見覚えがあるのだろうか。もしかしたら、これは原作で出てきた一場面の、その最中なのではないだろうか、と。
考えて、考えて、うっすらと答えのようなものが見え始めた直後に、竹雄達の大声が思考を逸らす。
「えーっ!?」
「兄ちゃん今日も町に行くの?」
「私も行くっ!」
また既視感。
「だめよ、炭治郎みたいに速く歩けないでしょう?」
「でも、母ちゃん! いーき-たーいー!」
「だぁめ」
また、既視感。
徐々に強くなる既視感に焦燥感。気持ちだけが強くなって、思考が回らなくなる。
何かしなければいけない。何をすればいい? どうしよう。頭の中でぐるぐると回る言葉。答えの出なかった自問自答。
その後も続く葵枝達のやり取りが終わるまで、アルトはただぼーっと眺めていた。
そして、禰豆子が六太を背負ったまま家から出てきて、炭治郎に話しかけた所で漸く気付いた。
――――あぁ、今日がその日なのか。
ずっとこの日に備えて来たつもりだったのに、いざその日になるとこの体たらくとは情けない、とアルトは自嘲しながら炭治郎の元へそっと歩みを進めた。
「――炭治郎」
「ん? アルト、どうした?」
「……。……いえ、その。……凄く、胸騒ぎがするんです。だから……気を付けて下さい」
「そっか。アルトの胸騒ぎはよく当たるから、気を付けていってくるよ」
「はい。どうか、お気を付けて」
そうとしか言えなかった。
早く帰ってきてくださいとも、家族の事は任せてくださいとも。
炭治郎はお人好しだ。それも超が付くほど。そして家族というものを非常に大切にしている。
アルトが直感のことを胸騒ぎとして伝えて、疑うことも無く信じる程に。だから、胸騒ぎがすると伝えて、家族は任せてくださいとは言えなかった。
この日の為に出来ることは何でもした。走り込みもしたし、炭十郎が死ぬ前に、ヒノカミ神楽────日の呼吸も見せてもらった。炭十郎も家族だけでなく……いや、その時点で既に彼はあるとの事も家族だと思ってくれていたのだろう。快く見せてくれた。
それを見て、原作の虫食いのような記憶も使い、呼吸法を試して見た。毎日ずっと、走り込みもした。
今の時代にはない、現代の知識もフルに使って筋トレなんかもしてみた。
直感のおかげで何がダメで何が行けるのか、すぐに分かるから呼吸法も少しは形になった。ヒノカミ神楽だって、この身体になった後に見たものはよく覚えられるから、直感と記憶だよりに多少見れる程度には形になった。
それでも、直感はまだだという。この程度ではダメだと。
そも、アルトは日輪刀を持っていない。いくら見様見真似で真似したとしても、それがなければ意味もない。でもやらないよりはマシとなんだってやった。
……なんだってして、何度も試して。それでも、全然ダメだったから。
諦めた訳では無い。死ぬ気は毛頭ない。けれど、自分の身は犠牲にしてでも守ろうという気持ちはあった。だからこそ、早く帰ってきてとは言えないのだ。
男としての見栄……とはちょっと違う。アルトにとっても炭治郎は陽だまりだったから。
矛盾しているなと、破綻しているなと理解していても。
歩いて町へ向かう炭治郎の背を見ながら拳を握る。
────それが結局、自己満足で、無意味であるのだと気づきもせずに。
☆
「よっし、アルトー! 一緒に薪割りしようぜ!」
「えぇー! アルトは私たちと一緒に家事するの!」
「……」
「なんでだよっ、たまにはいーじゃんか! アルトもたまには外で仕事したい日もあるだろ?」
「ダメだよ! 竹雄兄ちゃんとは違ってアルトはひりき? なんだよ!」
「そりゃ、確かにそうだけど……って、アルト? どうしたんだ?」
「……えっ? あ、はい。……えぇっと、すみません、ぼーっとしていて……」
「だからさ、一緒に薪割りしようぜ!」
「違うの! アルトは私達と一緒に家事しよ?」
「……ふふっ、そうですね。では、手早く家事を済ませてくるので。その後、一緒に薪割りでもしましょう」
「本当に!? よっしゃー!!」
「むぅ……アルトって、兄ちゃんみたい」
「ほら、みんな。ずっと外で話してると体が冷えるわ。中へ入りましょう? 竹雄も、お願いね」
☆
血溜まりの中で、虚空を見つめていた。
何も出来なかったから。ただ、無駄に抵抗して、さらに状態を悪化させただけだった。
ひび割れた笑みを浮かべながら、アルトは自嘲する。
力は手に入った。トリガーになったのは、祈りでも、奇跡でもない。鬼の血だった。鬼舞辻無惨の血だった。
抵抗して、怒らせて。ゴミ屑のように地べたに這いつくばった。
誰も助けられなかった。みんな死んでしまった。──いや、禰豆子は生きている。だが、他のみんなは死んでしまった。
『北欧の血筋の者か。……外国の血を引く者を鬼にしたことは無かったな』
彼はそう言って、アルトに自身の血を入れた。まるで実験でもするかの如く、徐々に量を増やしていき、痛みに悶え痙攣し、泡を吹いて苦しむ姿をゴミのように見つめながら、その体の力が抜けるまで。
アルトの記憶はそこまでだ。ただ痛みに悶えながら祈り、体の力が抜け、目に光が入らなくなり、冷たい感覚が足先から徐々に体へと侵食していくのを感じながら、ただ祈ることしか出来なかった。
そして気付けば、日が昇っていた。周りには壊された家具に、死体。血の海。
直感的に今までの自分とはかけはなれていることが理解できた。鬼になった、という訳ではなく、根本から
──だから、なんだと言うのだ。
「……はは」
今更力を得ても、守りたかったものは手のひらから零れ落ちた。いや、そもそも掬えてなどいなかったのだ。手のひらの上には何も無かったのだから。
元々決められていたことなのだろう。鬼の血がトリガーだと言うのなら。こういう結末しかありえなかった。
「……ごめん、なさい。ごめんなさい、ごめんなさい……私は、何も出来なかった。私は、私は……結局、何かをなすことも出来なかった」
「ずっと、こうなる事が怖くて。貴方たちから逃げようなんて考えてた、そんな臆病で、傲慢で、どうしようもない
「────」
「……だから。だから。俺は、私は────」
こんな中途半端な終わりですが、続きは無いです。申し訳ありません。
この後の展開として想像してるのは、偽アルトリア(以下アルト)が復讐の
そこまで書くモチベが保てませんでした。
あと、折角考えたのに消すのは勿体ないので、供養として、こちらの方にアルトのステータスを載せておきます。
鬼の血による変化前
真名 アルトリア・ペンドラゴン
クラス
筋力 E
耐久 E
敏捷 E
魔力 E
幸運 C
宝具
保有スキル 直感:A++
変化後
真名 アルト◻️◻️・◻️◻️◻️◻️◻️◻️
クラス セイバー
筋力 B+
耐久 D
敏捷 C+
魔力 C
幸運 C
宝具 A++
保有スキル 対魔力:E- 直感:A++ 魔力放出:D 騎乗:C
宝具:約束された勝利の剣
アルトリア・ペンドラゴン――――の、紛い物。何の因果か隕石が降って来て気付かぬ内に死んでしまった◻️◻️◻️◻️(生前の名前)が、バグで生まれたアルトリアの転生体(?)に変な感じで憑依してしまった存在。鬼滅の刃と言う作品を知っている上位世界から落っこちてきたからか、鬼の血に強い耐性を持っている。元々万全の状態のアルトリア・ペンドラゴンが生まれるはずだったのだが、魂が違うためあらゆる所で劣化。それが鬼の血によって外部刺激された結果ちょこっとだけ本家に近付いたよ、っていう感じ。直感だけは上位世界からの来訪者だからかブーストされている。それでも本家には全く届かないほど全体的に劣化しているけど……。約束された勝利の剣を担い手として使えていたのはほぼ奇跡。アヴァロンが無いため治癒能力は普通の人間並み。
また、頭に隕石が当たって一度パーンッとなったためか、思考回路がちょっと不具合起こしてる。具体的には非常に自罰的。明るい方向に考えることが出来ない。……のだが、炭治郎というやべー太陽に触れてちょっと明るい思考を取り戻す。
恋愛感情があったのかどうかは定かではないが、炭治郎に、というか竈門家に対し依存に近い感情を持っていたため、自身の自己満足と諸々で何も出来ず目の前で殺されてしまったが故にネガティブ戻り。めんどくせーやつ。
約束された勝利の剣で自滅したのは、自身の耐魔力が約束された勝利の剣の出力に耐え切れなかったこと、元々本当の担い手の魂ではなかったこと、竜の心臓がなかったことが原因。そうでなくても少ない魔力を垂れ流しにして生きていたので、結局無限城編で生き残れたとしても先は長くない。
作者としては、作者の妄想と性癖のミックスの所為で絶望の先に絶望しか待ってない可哀想なキャラになってしまった。
そんな感じです。
中途半端でフラストレーションの溜まる終わり方ではありますが、ちょっとでも皆様の暇つぶしになったのであれば幸いです。