ありふれない魔法で炎竜王   作:目指せ焼豚

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少しオリジナル要素を加えました。

なんとか形にできたので投稿。やっぱりオリジナルの話を作るより、二次創作にオリキャラを組み込んで話を変えるのは辻褄合わせが大変です。( ^ω^ )タノシインダケドネ


悪意と黒

 ベヒモスを下し、無事に生き残った竜騎とハジメ。

 場面は変わって、階段側へと撤退を続けている他の生徒達とメルド団長率いる騎士団員達に移る。

 

 ♢♢♢

 

 トラウムソルジャーは以前増加を続けていた。すでにその数は二百体入るだろう。階段側へと続く橋を埋め尽くしている。

 だが、ある意味それでよかったかもしれない。もし、もっと隙間だらけだったなら、突貫した生徒が包囲されて惨殺されていただろう。実際、最初の百体くらいの時に窮地に陥っていた生徒は結構な数いたのだ。

 

 それでも、未だ死人が出ていないのは、ひとえに騎士団員達のおかげだろう。彼らの必死のカバーが生徒達を生かしていたといっても過言ではない。代償に、彼らは満身創痍だったが。

 

 騎士団員達のサポートがなくなり、続々と増え続ける魔物にパニックを起こし、魔法を使いもせずに剣やら槍やら武器を振り回す生徒がほとんどである以上、もう数分もすれば完全に瓦解するだろう。

 

 生徒達もそれをなんとなく悟っているのか表情には絶望が張り付いている。いくら自分から戦争に参加することを選んだもの達でも怖いようだ。先ほどハジメが助けた女子生徒の呼びかけで少ないながらも連係をつり奮戦していた者達も限界が近いようで泣きそうな表情だ。

 

 

 誰もが、もうだめかもしれない、そう思ったとき……

 

 「”天翔閃”!」

 

 純白の斬撃がトラウムソルジャー達のド真ん中を切り裂き吹き飛ばしながら炸裂した。

 橋の両側にいたトラウムソルジャー達も押し出されて奈落に落ちていく。斬撃の後は、直ぐに雪崩れ込むように集まったトラウムソルジャー達で埋まってしまったが、生徒達は確かに、一瞬空いた隙間から上階へと続く階段を見た。今まで渇望し、どれだけ剣を振るっても見えなかった希望が見えたのだ。

 

 「皆!諦めるな!道は再び俺が切り開く!」

 

 そんなセリフと共に、再び”天翔閃”が敵を切り裂いていく。光輝が発するカリスマに生徒達が活気づく。

 

 「お前達、今まで何をやってきた!訓練を思いだせ!さっさと連係をとらんか!馬鹿者どもが!」

 

 皆の頼れるメルド団長が”天翔閃”に勝るとも劣らない一撃を放ち、敵を次々と打ち倒す。いつも通りの頼もしい声に、沈んでいた気持ちが復活する。手足に力が漲り、頭がクリアになっていく。実は、香織の魔法の効果も加わっている。精神を鎮める魔法だ。リラックスできる程度の魔法だが、光輝達の活躍と相まって効果は抜群だ。

 

 治癒魔法に適性がある者がこぞって負傷者を癒し、魔法適正の高い者が後衛に下がって強力な魔法の詠唱を開始する。前衛組はしっかり隊列を組んで倒すことにより後衛の守りを重視し堅実な動きを心がける。

 

 治癒が終わり復活した騎士団員も加わり、反撃の狼煙が上がった。チートどもの強力な魔法と武技の波状攻撃が、怒涛の如く敵目掛けて襲いかかる。凄まじい速度で殲滅していき、その速度は、遂に魔法陣による魔物の召喚速度を超えた。

 

 「皆!続け!階段前を確保するぞ!」

 

 光輝が掛け声と同時に走り出す。

 ある程度回復した龍太郎と雫がそれに続き、バターを切り取るようにトラウムソルジャーの包囲網を切り裂いていく。

 

 そうして、ついに全員が包囲網を突破した。背後で再び橋と通路が肉壁ならぬ骨壁により閉じようとするが、そうはさせないと光輝が魔法を放ち蹴散らす。

 

 クラスメイト達が訝しそうな表情をする。それもそうだろう。目の前に階段があるのだ。さっさと安全地帯に行きたいと思うのは当然である。

 

 「皆、待って!南雲くんと炎王くんを助けなきゃ!二人であの怪物を抑えているの!」

 

 香織のその言葉に何を言っているんだという顔をするクラスメイト達。竜騎はともかく、ハジメは参加組では”無能”で通っている。

 いくら今回の訓練で銃を開発し、活躍しても「流石にあの化け物を抑えるのは無理だ」と思っているのだ。

 

 だが、困惑するクラスメイト達が、数の減ったトラウムソルジャー越しに橋の方を見ると、そこには確かに竜騎の隣にハジメがいた。

 竜騎と少し会話をした様に見え、次の瞬間にハジメはベヒモスに近づいて拘束を開始した。

 

 「なんだよあれ、何してんだ?」

 「あの魔物、上半身が埋まってる?」

 

 次々と疑問の声を漏らす生徒達にメルド団長が指示を飛ばす。

 

 「そうだ!今竜騎とハジメが二人で抑えているから俺達はこっち側まで来れた!前衛組、ソルジャーを近づけるな!後衛組は魔法を準備!あの二人が戦いをやめてこっちまで来たらーー」

 

 メルド団長の指示が通り切る前に、ハジメの後ろにいた竜騎から階段側まで来るほどの熱気が発せられた。

 全員、自分の指示されたことをやりながらもそちらの方を見る。目に入ってきた光景は、竜の形をした焔が雄叫びを上げながら竜騎の両手に収束していく光景だった。

 

 そこからは早かった。

 

 ハジメが下がり、ベヒモスが拘束から脱出してハジメに突進をしようとした瞬間に、竜騎が放った強力な一撃……滅竜奥義『紅蓮爆炎刃』が直撃。ベヒモスを動ける状態じゃないほどにした光景を、騎士団員、クラスメイト達は理解が追いつかないのかただ見ていた。

 

 「ベヒモスを、倒した……!?」

 

 ただ一人、メルド団長だけが竜騎とハジメがやった偉業を理解していた。

 

 

 

 だが、一人だけ竜騎ではなくハジメに注目していた男子がいた。檜山である。

 彼は自分が今回の騒動を起こしたことを自覚しながらすぐにでも逃げ出したかったが、階段に到着し、ハジメが竜騎と共にベヒモスに立ち向かう光景を見て心にドロドロとした感情が溢れているのを自覚していた。

 

 (なんで……)

 

 『なんであいつが』

 

 檜山の中でその考えが一瞬で巡る。

 少し前まで、クラスでは竜騎以外ほぼ味方がいなかった地味なやつが、今自分より勇敢に魔物に立ち向かう姿を見て、自分の中にハジメに対しての嫉妬が溢れる。

 

 ふと、昨日の情景を思い出す。

 それは、昨日ホルアドの町で宿に宿泊していた時のこと。緊張のせいか中々寝付けずにいた檜山は、トイレついでに外の風を浴びに行った。

 

 涼やかな風に気持ちが落ち着いたのを感じ部屋に戻ろうとしたのだが、その途中、ネグリジェ姿の香織を見かけたのだ。初めて見る香織の姿に思わず物陰に隠れて息を詰めていると、香織は檜山に気がつかずに通り過ぎて行った。

 

 気になって後を追うと、香織は、とある部屋の前で立ち止まりノックをした。その扉から出てきたのは……ハジメだった。しかも、同室である竜騎はすぐに部屋を出た後に部屋に入って行ったので二人っきりだ。

 

 檜山は頭が真っ白になった。檜山は香織に好意を持っている。しかし、自分とでは釣り合わないと思っており、光輝のような相手なら、所詮住む世界が違うと諦められた。

 

 しかし、ハジメは違う。自分より劣った存在(檜山はそう思っている)が香織のそばにいるのはおかしい。それなら自分でもいいじゃないか、と聞けば頭大丈夫?と言われそうな考えを檜山は本気で思っていた。

 

 

 唯でさえ溜まっていた不満は、既に憎悪にまで膨れ上がっていた。香織が見蕩れていたグランツ鉱石を手に入れようとしたのも、その気持ちが焦りとなってあらわれたからだろう。

 

 

 その時のことを思い出した檜山は、竜騎と二人でベヒモスと戦ったハジメを見て、竜騎とともに勝利したハジメを見て、生還していることを安心した表情で見ている香織を視線に捉えて……仄暗い笑みを浮かべ、自分の周りにいるクラスメイト達に話しかけた。

 

 

 

 ♢♢♢

 

 

 その頃ハジメと竜騎は、心身ともに限界を迎えながらも少しずつ光輝達が保ってくれている階段側の方に向かって走り始めていた。

 

 「とりあえず、なんとかなりそうだな……」

 

 「急ごう、みんな待ってくれてる」

 

 走りながら二人は言葉を交わす。

 クラスメイト達は竜騎がベヒモスを倒し、その光景に唖然としていた状態から持ち直し現在光輝達とともに通路を死守してくれている。魔法が得意な物達は詠唱をしながら魔法を発動する準備をしている。メルド団長率いる騎士団員達もそれぞれに指示を出したり、クラスメイト達と魔物達を抑えてくれているので、だいぶ安全のようだ。

 

 二人とも、もう流石に安心だとホッと息を吐く。だが、二人の背中に悪寒が走る。

 咄嗟に足を止めて、振り返るともう行動もままならないベヒモスのちょうど真上に、黒い魔法陣が発生した。

 

 そこから黒い()()()が溢れ出し、粘液のような感じでベヒモスにたれて包み込んだ。

 包み込まれたベヒモスはそのナニカを吸収し、無傷の状態でまた立ち上がる。二人は顔が引き攣るのがわかった。

 

 「おいおい……あの黒いのはなんだよ」

 

 「冗談でしょ……復活?」

 

 二人はすぐに戦闘体制に入ろうとするが、竜騎は先ほど放った滅竜奥義で魔力はすっからかん、ハジメの銃も弾丸がもう一回装填できる六発だけだ。錬成を使って足止めをしようとしても魔力も竜騎同様に空になったハジメでは何もできない。

 

 対抗する手段がほぼなくなった二人に緊張が走るが、メルド団長から声がかかった。

 

 「竜騎!ハジメ!こっちに急げ!魔法で足止めする!!」

 

 二人はその言葉を聞いた瞬間、残りの力を振り絞って全力で駆け出す。

 それと同時にメルドの団長の「放て!」という大声とともにあらゆる属性の攻撃魔法が二人の上を通り過ぎて反対側の離れた位置にいるベヒモスに殺到する。

 

 夜空を流れる流星の如く、色とりどりの魔法がベヒモスを打ち据える。竜騎のようにダメージを与えられているわけではないが、しっかり足止めになっている。

 

 いける!と確信し、転ばないように注意しながら、二人は頭を下げて全速力で走る。すぐ頭上を致死性のある魔法が次々と通っていく感覚は正直生きた心地がしないが、チート集団がミスをするはずがないと信じて駆ける。ベヒモスとの距離はかなり広がった。

 

 思わず、頬が緩む。

 

 その直後、二人の表情は凍りついた。

 空を駆ける数多の魔法の中で()()の一つが明らかに()()()に軌道を逸らしてハジメに向かっていく。

 

 (なっ…)

 

 竜騎は咄嗟にハジメの襟を掴んで動きを止めるが、二人の眼前に風球は突き刺さる。着弾の衝撃波を二人ともモロに浴びて、来た道を引き返すように吹き飛ぶ。

 

 なんとか直撃は避けたし、内臓などにはダメージもないが、三半規管をやられたようで平衡感覚が狂ってしまった。

 二人してフラフラしながらも立ち上がり少しでも前に進もうとするが……

 

 魔法を食らってばかりではないベヒモスが咆哮を上げながら赤熱化をしながら散々邪魔をしてくれていた二人の元へ迫ってくる。魔法で足止めをしようとしているが、関係ないとばかりに魔法を跳ね除け始めた。

 

 そして、赤熱化した頭部を盾の様にかざしながら二人に向かって突進する。

 

 フラつく頭、霞む視界、迫り来るベヒモス、遠くで焦りの表情を浮かべ悲鳴と怒号を上げるクラスメイト達。

 二人は力を振り絞り、必死にその場を飛び退いた。直後、怒りの全てを集束したような激烈な衝撃が橋全体を襲った。

 

 ベヒモスの攻撃で橋全体が震動する。着弾点をを中心に物凄い勢いで亀裂が走る。メキメキと橋が悲鳴を上げる。

 そして遂に……橋が崩落を始めた。

 

 度重なる強大な攻撃に何度も晒され、ハジメが錬成で何度も橋で錬成したこともありだいぶ脆くなっていたのだ。そして先ほどのベヒモスの一撃で耐久限度を超えたのだ。

 

 「グウァアアア!?」

 

 悲鳴を上げながら崩落し傾く石畳を爪で必死に引っ掻くベヒモス。しかし、引っ掛けた場所すら崩壊し、抵抗も虚しく奈落へと消えていった。ベヒモスの断末魔の叫びが木霊する。

 

 二人もなんとか脱出しようとするが、しがみつく場所も次々と崩壊していく。

 

 (せめてハジメだけでも……)

 

 竜騎はハジメの方へ近寄り、ステータスの高さに任せてクラスメイト達の方へ投げようとする。

 だが、近づこうとした竜騎の足元に風球が飛んできて、足場が崩れた。

 

 「!?」

 

 咄嗟に竜騎は、奈落に落ちながら風球が飛んできた方向であるクラスメイト達の方へ向く。

 そこには、クラスメイト達の陰で一人の男子が黒い笑みを浮かべていた。『檜山』だった。

 

 檜山はわざと竜騎に風球を放った。()()()()()()()()()()()竜騎に向かって……

 

 

 「っ……檜山ぁーーー!!!

 

 

 

 

 竜騎は檜山を睨みつけて、叫びながら奈落に落ちていく。それと同時に、すぐ近くにいたハジメも奈落に落ちていった。

 竜騎は自分と友をわざと落とした者への怒りを叫び声に乗せて上げながら、ハジメは落ちていく恐怖に歪んだ表情をしながら、奈落に落ちていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして………物語が始まる。





ちょっとこれからの話の展開的に、檜山とわからないと困る部分があったので普通の風球に変えます_:(´ཀ`」 ∠):
感想で指摘してくれた『MSTSM』ありがとうございます。

♢♢♢

ちょっと身の回りが忙しくなってきましたので、しばらく期間が開くかも。
その間は、他の作者さんの作品でもみて気長に待っててくだせえ。

竜騎・ハジメ側かクラスメイト側の話、どっちが先がいい?

  • 竜騎・ハジメ側
  • クラスメイト
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