ありふれない魔法で炎竜王   作:目指せ焼豚

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 長くなっちゃった(´ω`)


事件の始まり

 翌朝、まだ日が昇って間もない頃、ハジメ達は「オルクス大迷宮」の正面入り口がある広場に集まっていた。

 

 誰もが少しばかりの緊張と未知への好奇心を表情に浮かべている。もっともその中でハジメは複雑そうな、竜騎は眠そうな表情でその場にいた。ハジメが複雑そうな表情をしている理由は、「オルクス大迷宮」の入口を見たからだろう。というのも、ハジメは迷宮の入り口と聞いて定番である仄暗く不気味な洞窟の入口を想像していたのだが、実際にあったのは、まるで博物館のような造りをした入場ゲートに、どこぞの役所のような受付窓口。制服を着たお姉さんが笑いながら迷宮への出入り口をチェックしているのである。なんでも、ここでステータスプレートをチェックしでおりを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控えた現状、多大な死者を出さないための措置なのだろう。

 

 入口付近の広場には露店なども所狭しと並び立っており、それぞれの店主がしのぎを削っている。まるで祭りだ。

 

 浅い階層の迷宮はいい稼ぎ場所として人気があるようで人も自然と集まる。馬鹿騒ぎしたものが勢いで迷宮に挑み命を散らしたり、裏路地よろしく迷宮を犯罪の拠点にする人間も多くいたようで、戦争を控えながら国内に問題を抱えたくないと冒険者ギルドと協力して王国が設立をしたのだとか。入場ゲート脇の窓口でも素材の売買はしてくれるので、迷宮に潜る者は重宝しているらしい。

 

 ハジメは気を取り戻すように頭を振り、竜騎に声をかけて他の生徒達と同じく、お上がりさん丸出しで周りを見ながらメルド団長の後ろをカルガモのヒナのように付いていった。

 迷宮の中は、外の賑やかさとは無縁だった。縦横五メートル以上ある通路は明かりもないのに薄ぼんやり発行しており、松明や明かりの魔法具がなくてもある程度視認が可能だ。緑光石という特殊な鉱物が多く埋まっているらしく、「オルクス大迷宮」は、この巨大な緑光石の鉱脈を掘ってできているらしい。

 一行は隊列を組みながらゾロゾロと進む。しばらく何事もなく進んでいると広間に出た。ドーム状の大きな場所で天井の高さは七、八メートルくらいありそうだ。物珍しげにあたりを見回している一行のなかで一人、竜騎だけが急に戦闘態勢になり右手に炎を灯す。竜騎が戦闘態勢になることを生徒達は首を傾げて見るが、次の瞬間に壁の隙間から大量の灰色毛玉が湧き出て来たことで理解した。ハジメは自分が読んだ魔物の図鑑内容と前に出る魔物を照らし合わせて、銃を構えながら答えを呟いた。

 

 「ラットマン……」

  

 「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ!交代で前に出てもらうからな、準備をしておけ!あれはラットマンという魔物だ。すばっこいが、たいした敵じゃない。冷静にいけ!」

 

 ハジメが呟くのと同時にメルド団長が生徒達に声を掛ける。その言葉とおり、ラットマンという名称に相応しく外見はネズミっポイが……二足歩行で上半身がムキムキだった。八つに割れた腹筋と膨れ上がった胸筋の部分だけ毛がない。まるで見せびらかすように。

 正面に立つ光輝達ーー特に前衛である雫の頬が引き攣っている。やはり気持ちが悪いらしい。

 間合いに入ったラットマンを前衛である光輝、雫、龍太郎の三人で迎撃する。その間に、香織と特に親しい女子二人、眼鏡っ子の中村恵里とロリ元気っ子の谷口鈴が詠唱を開始。魔法を発動する準備に入る。訓練通り堅実なフォーメーションだ。

 光輝は純白に輝くバスターソードを視認も難しいほどの速度で振るって数帯まとめて葬っている。

 彼の持つその剣はハイリヒ王国が管理するアーティファクトの一つで、お約束にもれず名称は”聖剣”である。光属性の性質が付与されており、光源に入る敵を弱体化させると同時に自身の身体能力を自動で強化してくれるという”聖なる”というには実に嫌らしい性能を誇っている。

 龍太郎は、空手部らしく天職が”拳士”であることから籠手と脛当てをつけている。これもアーティファクトで衝撃波を出すことができ、決して壊れないのだという。龍太郎はどっしり構え、見事な拳撃と脚撃で敵を後ろに通さない。無手でありながら、その姿は盾役の重戦士のようだ。

 雫は、サムライガールらしく”剣士”の天職持ちで刀とシャムシールの中間のような剣を抜刀術の要領で抜き放ち、一瞬にして敵を切り裂いていく。その動きは洗練されていて、騎士団員達を感嘆させるほどである。

 他のクラスメイト達が光輝達の戦いぶりに見蕩れていると、詠唱が響き渡った。

 

 「「「暗き炎渦巻いて、敵を尽く打ち払わん、灰となりて大地へ帰れ、”螺旋”」」」

 

 三人同時発動した魔法は、螺旋状に渦巻く炎でラットマンを吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キッーーーー」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。

 気がつけば広間にいたラットマンは全滅していた。他の生徒の出番なしである。どうやら光輝達召喚組の戦力では一階層の敵は弱すぎたらしい。

 

 「ああ〜〜、うん、よくやったぞ!次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

 生徒の優秀さに苦笑いしながら気の抜かないように注意するメルド団長。しかし、初めての迷宮の魔物討伐にテンションが上がるのは止められない。頬が緩む生徒達に「しょうがねえな」とメルド団長は肩を竦めた。

 

 「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も視野に入れておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 メルド団長の言葉達に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめるのだった。

 そこからは特に問題もなく交代をしながら戦闘を繰り返し、順調に階層を下げていった。

 そして、一流の冒険者か否かを分ける二十階層にたどり着いた。現在の迷宮最高到達階層は六十五階層らしいのだが、それは百年以上前の冒険者が成した偉業であり、今では超一流で四十階層越え、二十階層を越えれば十分に一流扱いだという。光輝を筆頭に生徒達は戦闘経験が少ないものの、全員がチート持ちなので割とあっさり降りることができた。

 もっとも、迷宮で一番厄介で怖いのはトラップである。場合によっては致死性の物も数多くあるのだ。

 この点、トラップ対策としてフェアスコープというものがある。これは魔力の流れを感知してトラップを発見することができるという優れものだ。迷宮のトラップはほとんどが魔法を用いたものであるから八割以上はフェアスコープで発見できるただし、索敵範囲がかなり狭く、スムーズに進もうと思えば使用者の経験による索敵範囲の選別が必要だ。

 従って、ハジメ達が素早く階層を下げられたのはひとえに騎士団員達の誘導があったからだとも言える。メルド団長からも、トラップの確認をしていない場所へは絶対に勝手に行ってはいけないと強く言われているのだ。

 

 「よし、お前達。ここから先は一種類の魔物だけではなく複数種類の魔物が混在したり、連携を組んで襲ってくる。今までが楽勝だったからといってくれぐれむも油断するなよ!今日はこの二十階層で訓練して終了だ!気合を入れろ!」

 メルド団長の声がよく響く。

 そして今回訓練に参加している生徒の中でも二人、戦闘に異色なことをしているものがいた。ハジメと竜騎である。

 

 「『火竜の鉄拳』!」

 

 ドォォオン!!

 

 竜騎は一人で大量の魔物と戦い、滅竜魔法で魔物を一撃で屠っていく。流石に二十階層にもなると連携や戦闘の訓練が足りていない生徒達はボロが出てくるのだが、竜騎は一切ない。ハジメと共に図書館で魔物の知識を蓄えており、その知識から魔物の弱点を突くように急所を突き、騎士団のベテラン騎士たちの戦闘訓練で培った体力でまだまだバテる気配はない。

 ハジメは錬成の魔法陣を靴裏に描いて立ったまま錬成を発動し、万が一にも動けなくなった魔物達を銃弾で屠る戦い方をしている。最初は騎士団の者達も予定でも緊急の場合武器の修理をするための支援要員として扱っており、一体二体ほど魔物をけしかけることだけを予定していたが、ハジメが開発した銃がその効果を発揮したことで本格的に訓練に参加させたのである。とりあえず、銃の内容を軽くメルド団長に迷宮に入る前に事前に教えていたこともあり、銃の存在を言及するのは訓練の終わった後にすることになっている。

 

 (竜騎のやつすごいなあ〜……)

 

 ハジメは、竜騎が息切れ一つせず魔物を一撃で屠る竜騎を視界の端で捉えながら銃の様子を観察しながら銃弾を撃って、薬莢を排出し、弾丸をシリンダーに詰めて、また魔物に撃つ。周りの生徒達や騎士達の視線なんて気にしないと言わんばかりに無視を決め込む。

 

 (銃の調子は良さそうだな、ハジメのやつ)

 

 竜騎は竜騎で、ハジメの様子を伺いながら魔物を屠る。時には魔物の頭を爆発させ、時には上半身と下半身を炎で焼き切るように切り離し、時には炎で焼き尽くす。ハジメと同様に周りの視線なんて全く考慮していないので、普段訓練で使わなかった高火力での滅竜魔法を、魔物にぶつけるので大変屠った魔物の死体がグロテスクな状態だ。だが、その割に魔石の部分だけは全く傷つけられてない。みみっちいな、竜騎さん。

 

 「お疲れ、竜騎」

 「ハジメもな」

 

 二人の順番が終わり、他のやつと交代した後の小休憩で二人はお互いに声をかけて先ほどの訓練の評価を言い合っていく。ハジメがふと前方を見ると香織と目があった。彼女はハジメの方を見て微笑んでいる。昨夜”守る”という宣言通りに見守られているようでなんとなく気恥ずかしくなり目を逸らすハジメ。若干、香織が拗ねたような表情になるその行動を見ていた雫が忍び笑いをして、小声で香織に話しかけた。

 

 もちろん、ハジメの視線が香織に向いていたのをバッチリ気がついており、見ていたのは竜騎もだった。ニヤニヤと笑い揶揄うき満々で肩を組んで話しかけた。

 

 「どうしたハジメ〜?昨日の夜何かあったのか〜〜??」

 「なっなんでもないよ……ただ今日のことを話しただけ…」

 「本当かよ〜?」

 

 「香織、何南雲君と見つめ合ってるのよ?迷宮の中でラブコメなんて随分と余裕じゃない?」

 「もう、雫ちゃん!変なこと言わないで!私はただ、南雲くん大丈夫かなって、それだけだよ!」

 「それがラブコメしてるってことでしょ?」

 「…もうっ」

 

 雫と竜騎は自分の相方をいじり倒す。

 そしてしばらくそんな感じで過ごしていたら、ハジメは視線を背中に感じて背筋を急に伸ばす。ねばつくような、負の感情がたっぷりとのった不快な視線だ。今までも教室などで感じていた類の視線だが、それとは比べものにならないくらい深く、重い。

 その視線は今が初めてというわけではなかった。今日の朝から度々感じていたものだ。視線の主を探そうと視線を巡らせると途端に霧散する。朝から何度も繰り返しており、ハジメはいい加減うんざりしていた。

 

 (なんなのかな……僕なんかした?確かに僕がいるから今日はここまでの階層だけど足手まといになるつもりはないのに…もしかして調子に乗ってんじゃねえぞ!的な考えの人が……)

 

 深々とため息を吐くハジメ。香織の言っていた嫌な予感というものを、ハジメもまた感じ始めていた。

 

 

 

 一行は二十階層を探索する。

 迷宮の各階層は数キロ四方に及び、道の階層では全ての探索しマッピングするのに数十人規模で半月から一ヶ月はかかるというのが普通だ。

 もっとも、現在では四十七階層までは確実なマッピングがなされているので迷うことはない。トラップに引っかかる心配もないはずだった。

 二十階層の1番奥の部屋はまるで鍾乳洞のようにツララ状に壁が飛び出していたり、溶けたりしたような複雑な地形をしていた。この先を進むと二十一階層への階段があるらしい。

 そこまでいけば今日の実戦訓練は終わりだ。神代の魔法の一つである転移魔法のような便利なものは現代に名はないので、また地道に帰らなければならない。一行は若干弛緩した空気の中、せり出す壁のせいで隊列を組めないので縦列に進む

 すると先頭を行く光輝達やメルド団長が立ち止まった。訝しそうなクラスメイトを尻目に戦闘態勢に入る。どうやら魔物のようだ。

 

 「擬態しているぞ!周りをよ〜く注意しておけ!」

 

 メルド団長の忠告が飛ぶ。

 その直後今は褐色となり、二本足で立ち上がる。そして胸を叩きドラミングを始めた。どうやらカメレオンのような擬態能力を持つゴリラの魔物のようだ。

 

 「ロックマウントだ!二本の腕に注意しろ!豪腕だぞ!」

 

 メルド団長の声が響く。光輝達が相手するようだ。飛びかかってきたロックマウントの豪腕を龍太郎が拳で弾き返す。光輝と雫がとり込もうとするが、鍾乳洞的な地形のせいで足場が悪く思うように取り囲むことができない。

 龍太郎の人壁を抜けられないと感じたのか、ロックマウントは後ろに下がり仰け反りながら大きく息を吸った。

 

 直後、

 

 「グゥガガガアァアァァアアアア!!」

 

 部屋全体を振動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

 「ぐっ!?」

 「うわっ!?」

 「きゃあ!?」

 

 体にビリビリと衝撃が走り、ダメージ自体はないものの硬直してしまう。ロックマウントの固有魔法”威圧の咆哮”だ。魔力を乗せた咆哮で一時的に相手を麻痺させる。

 あんまと食らってしまった光輝達前衛組が一瞬硬直してしまった。

 ロックマウントはその隙に突撃をするかと思えばサイドステップし、傍にあった岩を持ち上げて香織達後衛組に投げつけた。見事な砲丸投げのフォームで。咄嗟に動けない前衛組の頭上を声て、岩が香織達へと迫る。

 香織達が、準備していた魔法で迎撃戦と魔法陣が施された杖を向けた避けるスペースが地形の関係上心許ないからだ。

 しかし、発動しようとした瞬間、香織達は衝撃的光景に思わず硬直してしまう。

 何と、投げつけられた岩もロックマウントだったのだ。空中で綺麗な一回転をして見事なル●ンダイブだ。しかも、妙なくらい目が血走り鼻息が荒い。香織も恵里も鈴も「ヒィ!!」と思わず悲鳴をあげて魔法の発動を中断し、目を瞑ってしまった。

 

 メルド団長がフォローのために飛んできたロックマウントを切ろうとすると、後ろから何かが頭上を飛んでいく。竜騎だ。

 

 「相手から目を逸らすんじゃねえ!」

 

 竜騎は最後尾から器用に壁を駆けながら先頭まできていたのだ。先ほどのロックマウントと同様に一回転しながら少し苛立ちながら足に炎を纏わせて魔法を発動する。

 

 「『火竜の鉤爪』!!」

 

 計算されたかのようにロックマウントの頭に蹴りを決めると、そのまま投げられた位置まで蹴り飛ばす。そしてそのまま炎を足から噴射させながら今度は腕に炎の牙を形成する。火竜の砕牙をあてて仲間を投げたロックマウントもろともトドメを刺そうとしているのだ。メルド団長はその行動の速さに早くも実戦のなんたるかを理解し始めている竜騎に舌を巻く。だが次の瞬間、その顔は焦りに染まる。正義感と思い込みの塊、正義の味方(笑)天之河光輝である。光輝は竜騎がいるのにもかかわらず魔力を噴き出しながら呼応するように輝き出した聖剣を大上段に構え、詠唱を完了させていた。

 

 「万翔羽ばたき、天へと至れ、”天翔閃”!」

 

 「待て馬鹿者!!」

 

 メルド団長の言葉を無視して、光輝は竜騎がトドメをロックマウントに刺したタイミングに聖剣を振り下ろした。

 その瞬間、詠唱により強烈な光を纏っていた聖剣から、その光自体が斬撃となって放たれた。だが、もうロックマウントは竜騎に倒されてその場にいたのは竜騎だけ。光輝より先に気がついていた雫や龍太郎も止めようとするが遅く斬撃が放たれた後だった。メルド団長は竜騎に声を掛け避けるように叫ぶが、極太で輝く斬撃に逃げ場などはない。

 

 「なっ!?……『火竜の鉄拳』!」

 

 竜騎も斬撃が放たれた瞬間、本能的に危険を察知したのか振り返り一瞬で逃げるのは不可能と判断し、自身も全力で迎撃をするために土壇場で炎を『焔』に変化させて拳を斬撃にぶつける。アニメのような斬撃と拳のぶつかりだったのだが、流石に咄嗟の行動ではうまく威力が乗らなかったのか徐々に押され始めた竜騎は、さらに腕の肘から焔を噴射して勢いをつけて対応する。

 

 「っ……『火竜の炎肘』!!」

 

 しばらく焔を纏った拳と光の斬撃のぶつかり合いが終わったのは5秒以上の時間を要した。

 斬撃が消え去り、竜騎も魔法を解除してぶつけた右手を押さえる。切り傷のようなものが右肩まで上っており血塗れだった。

 

 斬撃と拳の激突で部屋中も破壊されており、ひどい有様だった。あちこちに罅があり外壁が剥がれているものもある。光輝は斬撃が消えたのを確認し、「ふう〜」といった表情でイケメンスマイルで香織達に話しかけようとしたが、メルド団長にゲンコツを受けて、さらに雫、龍太郎も混ざり三人から怒鳴られる。

 

 「この馬鹿者が!竜騎がもう行動しているのになんで攻撃をする必要があったのだ!!」

 「光輝!あなた炎王くんがいたのよ!」

 「おい!周りをよく見ろよ!」

 

 三人から怒鳴られて、一瞬意味がわからないと首を傾げながら斬撃を放った場所を見ると光輝の視線に竜騎が入り、バツの悪そうな顔をして謝る。だが三人はそんなんで許してはくれないのか説教が始まった。竜騎の場所に後衛組は急いで向かい、香織が手動で腕の傷を治療する。

 

 「竜騎!無事!?」

 

 ハジメは最後尾から他の生徒の間を抜けて竜騎に駆け寄り、声を掛ける。

 

 「ああ、何とかな……白崎も治療助かる」

 「ううん、私達がロックマウントに怖がらないで魔法を発動させておけば炎王くんが援護する必要なかったのに……こっちこそごめんなさい」

 

 治療をしながら礼を言う香織。恵里と鈴も香織に倣って竜騎に謝罪する。

 竜騎は治療を受けながら、説教されている光輝の方に視線を向ける。三人から説教をされている光輝はいかにも「不服」といった表情をしておりあまり反省している様子は見られない。『勝手に前に出ていた竜騎が悪い』といった表情だ。確かに竜騎が最後尾からいきなり出たのは悪い部分もあったが、それは仲間であるクラスメイトを助けるための行動である。だが竜騎が前に出た瞬間に、雫と龍太郎は邪魔にならないように警戒をするだけに切り替えることもしていた。そこから分かる通り一応前に出たのが敵と判断できる時間もあったはずなのだ、なのに光輝は竜騎を気にせずに攻撃をしたのだ。三人に怒られているところはそこである。「攻撃する前に余裕があったのだから一旦確認をすることしろ」言われているのに光輝はわかっていないようだ。

 

 

 竜騎の治療が終わったタイミングで説教も終わり、そこからまたしばらく休憩になった。

 ハジメと竜騎は先ほどまで治療をしていた香織達と少し会話をしていると、ふと香織が先程の余波で崩れた壁の方に視線を向けた。

 

 「……あれ、何かな?キラキラしてる……」

 

 その言葉に、全員が香織の指差す方へ目を向けた。

 そこには青白く発行する鉱物が花咲くように壁から生えていた。まるでインディゴライトが内包された水晶のようである。香織を含め女子達は夢見るように、その美しい姿にうっとりした表情になった。

 

 「グランツ鉱石だね…」

 「ハジメは知っていたか。大きさも中々だぞ、珍しい」

 

 答えを出したハジメをメルド団長は褒めながら、その鉱石の大きさに驚く。

 グランツ鉱石とは、いわば宝石の原石のようなものだ。特に効能があるわけではないがその涼やかで煌びやかな輝きが貴族の御夫人御令嬢に大人気であり、加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして送ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石でもトップスリーに入る。

 

 「素敵……」

 

 香織が、メルド団長の簡単な説明を聴いて頬を染めながら更にうっとりとする。そして、ハジメを誰にも気がつかれない程度にチラリと見る。もっとも、雫と竜騎、後一人には気がつかれていたが。

 

 「なら、俺たちで回収しようぜ!」

 

 唐突に、檜山が動き出しグランツ鉱石を回収しようと崩れた壁を登っていく。その行動にまたメルド団長は慌てて追いかける。

 

 「こら!勝手なことをするな!まだ安全確認もまだなんだぞ!」

 

 しかし、檜山は聞こえないふりをして、とうとう鉱石の場所に辿り着いてしまった。

 メルド団長が檜山を追いかけている途中、騎士団員の一人がフェアスコープで鉱石のあたりを確認する。そして、一気に青褪めた。その瞬間に竜騎の頭にヒヤリとして感覚が走り、近くにいたハジメと香織達四人の首根っこをステータスに任せて二人づつ掴んで一気に出口に駆け出した。

 

 「団長!トラップです!!」

 

 「っ!?」

 

 竜騎が掴んで駆け出した瞬間に、騎士団員からの警告が発せられる。だが、全員一歩遅かった。

 檜山がグランツ鉱石に触れた瞬間、鉱石を中心に魔法員が広がる。グランツ鉱石の輝きに魅せられて不用意に触れた者へのトラップだ。美味しい話には裏がある。世の常である。

 魔法陣は瞬く間に部屋全体に広がり輝きを増していった。まるで、召喚されたあの日の再現である。

 

 「総員!竜騎に続いてこの部屋から撤退しろ!!早く!!」

 

 メルド団長の言葉に、いきなり近くの者を掴んで顔を青く染めながら部屋から出ようとする竜騎に理解がいった生徒達は急ぐが……竜騎が後数歩で部屋から出れると言うタイミングで時間が来る。

 部屋の中に光が満ちて、全員の視界を白一色に染め上げる。と同時に、一瞬の浮遊感のが襲った。

 空気が変わるのを感じながら、ドスンと言う音と共に地面に叩きつけられる。

 尻の痛みに呻き声をあげらながらクラスメイトは周囲を見回す。メルド団長や騎士団員、光輝達などの一部前衛組や竜騎、それに掴まれたハジメ達はすでに地面に足をつけて辺りを警戒している。

 どうやら先程のトラップは現代魔法では再現できない転移魔法のようで、場所は巨大な石造りの橋の上だった。長さはざっと百メートルはありそうだ。天井も高くて二十メートルくらいあるだろう、橋の下に関しては底が見えない奈落のようで、真っ暗だ。

 橋の幅は十メートルくらいありそうだが、手すりどころか縁石すらなく、足を滑らせれば掴むものなく真っ逆さまだ。全員はその橋の中央あたりにおり橋のそれぞれには奥に続くと通路と階段が見える。

 それ確認したメルド団長が、険しい表情で指示を飛ばした。

 

 「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 雷の如く轟いた号令にワタワタと動き出す生徒達。

 しかし、迷宮のトラップがここで終わるわけがない。橋の両サイドから赤黒い魔力の奔流と共に魔法陣がに発生した。通路側の魔法陣は十メートルほどのものが一つだが、階段側には一メートルほどの魔法陣が大量に発生した。

 血色に見える魔法陣はドクンッと脈打つと階段側には大量の骸骨の魔物……トラウムソルジャーを吐き出した。しかも数が増殖し続けており、一瞬にして百体ほどを吐き出す。なお、まだまだ余力があるように感じるほど魔法陣は輝いている。

 だが、竜騎とハジメは通路側にある十メートルほどの魔法陣の方が危険だと本能的に察した。明らかに他の魔物とは一線を画している体長数十メートルの巨大な恐竜のような魔物がそこから現れた。頭部にある兜のようなものから生えている角から炎を放っていると言う付加要素を付け足しながら、牙や爪を打ち鳴らしている。

 

 誰もが呆然としている中、メルド団長の呻くような呟きがやけに明瞭に響いた。

 

 「まさか……ベヒモス…なのか……」

 

 

 

 

竜騎・ハジメ側かクラスメイト側の話、どっちが先がいい?

  • 竜騎・ハジメ側
  • クラスメイト
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