黒い仮面のレユニオン構成員=黒い沈黙説(学会追放)   作:イカ墨リゾット

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お待たせしてしまい申し訳ありません。あまりにも長い間筆を置いていたので完成度がかなりアレです。話自体も大して進んでいないというどうしようもないものではありますが、続けることが大事だと思い書かせていただきました。

投稿頻度、戻ると良いなぁ…


大切な人のために

 

つくづく俺自身に嫌気がさす。結局、壊すことしかできないのかよ……?

 

「お願いだよローラン、ボクのこと嫌いにならないでよ。」

 

「安心しろって……一度も嫌いになったことなんかないからさ。急に、どうしたんだよ?」

 

「本当?ローランには酷い事ばっかりしたんだよ。それでも、嫌いじゃないの?」

 

「だから嫌いじゃないって。なぁ、本当にどうしたんだよ?キミはそんなんじゃ……。」

 

俺が彼女に抱いていた想いは、多分大きく分けて2つある。

一人の少女として幸せに生きて欲しいという想いと、こんな俺をどうか許す事なく裁いて欲しいという贖罪、いや、どうしようもない自己満足の想い。

俺の想いは彼女の意思に委ねなければいけない。俺がこれ以上、彼女に何か影響を与えるのは許されないからだ。

 

「ローランとずっと一緒にいたかったんだよ。けど、気持ちに上手く折り合いがつけれなくて。それで、こんなことに。」

 

いきなり記憶が千切れたように飛んで、気付いたら彼女が見た事もない様子で俺の目の前にいる。

何があったのかは分からない。それでも、確信めいたものがあった。

 

「またかよ。」

 

俺はまた彼女を壊したんだ。間違いない。

そうでなければ、彼女がこんな風になる筈がないんだ。

 

「一先ず、落ち着こうよ。俺はここにいるからさ、ゆっくり話し合おう。」

 

自分にも言い聞かせるがとても落ち着いてなんかいられなかった。

ひしひしと感じる絶望感。この感情の、恐ろしい正体を理解してしまったからだ。

 

(俺がまた彼女を壊してしまったことに絶望している……とは完全に言い切れないのはなんでだ?彼女への俺の仕打ちに絶望しているのではない?)

 

俺がどれほど醜く、救い難い存在であるかを真に理解してしまった。

 

(彼女はもう俺の想いを……願いを叶えてくれないから、俺は絶望しているのか?)

(いつからこんなバカみたいな願いを?)

 

その灰色の瞳にいっぱいの不安と涙を湛える彼女からは、俺を害そうとする気配はまるでない。

 

彼女はもう俺を裁いてはくれない。

 

(……そんなことで?そんなことで俺は絶望してるのか?)

 

「ねぇ、顔色が悪くなってるよ。ボクが傷つけちゃったからだよね。ごめんね、ごめんね。」

 

「ち、違うって。確かに痛くはあるけどさ、今までに受けてきた傷と比べればかすり傷みたいなものだ。それに、俺がキミにしたことを考えればこんな目に遭って当然なんだって!だから、気にする必要は……」

 

彼女が壊れたことよりも、自分の願いが叶わなくなったから絶望してる。あまりにも悍ましい自我に吐き気すら込み上げてくる。

 

俺は彼女が俺を裁いてくれる処刑者であることを望んでいただけで、それ以外は、もっと言えば彼女という人間はどうでも良かったんじゃないか?

彼女という一人の立派な人間を無視して、ただ自分のみっともない悲劇の小道具にしようとしていただけなんじゃないか?

 

「チクショウ……聞きたい事があるんだ、俺の事をどう思ってる?殺したい程憎いか?そうだよな?そうだと言ってくれよ。」

 

「ローラン、ちょっと怖いよ。それに、ボクはローランを殺したくない……どうしてそんなこと言うの?」

 

「どうしても何も、俺は君に、いや駄目だこんな事言っちゃ……ああもう!」

 

抑えなければと思う一方で、どうしてもこの自己嫌悪を解消し、全てが思い通りに行かない事への怒りの矛先を何かに突き立てたいという衝動に駆られる。

そして、その行き先が目の前ではないと理解した今、俺は愚かにも別の場所へと矛先を向けてしまった。

 

「……なぁスカジ。どうしてあんな事をしたんだ?俺はやって欲しいなんて一切頼んでないんだけどな。」

 

自分で友だちと思っている、スカジへと。

 

「ごめんなさい。けれど、これだけは言わせてほしいの。私はローランが傷つけられる姿を見たくなかった。だから……」

 

「そんなことをやれなんて一言も言ってないし、心にも思ってないんだよ!俺はようやくこの時が来たのかと歓喜していたんだ!のらりくらりと生きてきた俺に、意思でも剣先でも、決定的で致命的なところに突きつけられる時が!それなのに君が、君が……台無しにしたんだ!どうしてくれるんだよ!!」

 

体を揺らし、両腕を激しく振り回し、唾が飛び散りそうな勢いでがなり立てるローランをスカジはデジャブを感じながら見ていた。長い間感じる事がなかったものだ。

何かをしていないと頭がどうにかなりそうだという感覚は、スカジにとってもよく理解できるものだ。辺りを歩き回ったり、そこら中の物にあたったり、絵を描いてみたり。何をするかは、かつての仲間によって様々だった。かく言うスカジはよく歌を歌っていたが。

 

そんな行為に一貫して思うことは、とにかく痛ましいということだ。必死に抗うその姿を、これ以外の言葉で表現する事はとてもできなかった。どんなに美しくても、どんなに惨めでも、ああ、本当は今、こんな事をしたくはないんだろうなと思えてしまう。勿論スカジにも、気持ちよく歌っていたつもりでも、後から思い返してみると、どうしてあんなにも沈んだ気持ちで歌を歌っていたのだろうと、首をかしげる事は何度かあった。いつもなら、もっと楽しく歌っているのにと。

 

「自分が何をしたのか分かっていませんって顔か?ふざけるのもいい加減にしてくれよ。」

 

目の前のローランも、本来ならこんな事はしないのだろう。

その証拠に、筋が浮き出た、怒りに満ち満ちていた表情にも陰りが見え始めていた。

 

「その顔をやめろよ。そんな顔で俺を見るな。引き裂いてやりたい思いでいっぱいになりそうだ……!」

 

発散の仕方が下手だと、大抵碌な事にならない。そういう時は、誰かが教え導びこうとした。それでもだめな時は、周囲が辛抱強く付き合う必要があった。

 

「死にたいなんて思っちゃ駄目よ。例えそれが一時の突発的な感情であったとしても、ずーっと続けていればその感情は心を蝕んでしまうのだから。」

 

相手の言葉に頷くのを何度も繰り返すのはスカジには慣れっこだ。

だが、それ以外に相手を立ち直らせる良い手段があるのなら、迷いなくそれをすることを選ぶ。

 

「そんな事、個人の勝手だろ。生きるのも死ぬのも、俺が決めることだ。」

 

「死のうだなんて、いつから決めていた事なの?私が見ていた限りでは、貴方は常にそんな事を考えているような人には見えなかったけど。」

 

「いつだって考えていたよ!一人の時も、誰かといる時も、もちろん君といた時だって!」

 

「考えてはいても、その答えはまだ出ていないのね。」

 

「……だから?そんなの、君に分かる筈がないだろ。」

 

ローラン相手には取り敢えず押してみる。彼の性格から判断した、スカジなりの接し方だ。

 

「今の私たちは色々と焦りすぎていると思うの。お互い別々の組織に属して、何か目標を定めようと必死になっているんじゃないかしら。でも、こういう時こそ落ち着かなきゃいけないのは、ローランだってよく知っているでしょ。」

 

「……。」

 

「今一度、自分の足元をよく見て、そして話し合いましょう。それからなら謝罪はいくらでもするわ。」

 

ローランが反論の言葉を発する事はなかった。ただ口を開き、形を変えようとしたところで閉じてそっぽを向いた。

スカジが回り込んで見てみると、そこにはばつが悪そうに目を逸らす顔があった。

 

ローランが顔を逸らし、スカジが回り込む。そんな行為をしばらく続けていると、意を決したようにローランが目を合わせた。

 

「何かしら。」

 

「その、スカジ。さっきは、あー、なんだ。その……」

 

「うん。」

 

「これで言うの何度目だよって思うかもしれないけど……ごめん、悪かった。あんな事は、間違っても言うべきじゃなかった。」

 

「私の方からも、ごめんなさい。必要以上に彼女を傷つけてしまって……どう?少しは落ち着いたかしら。」

 

「……ああ……改めて思うよ、落ち着くことの大切さをさ。もしあの時こうやってすることができたら、あんなことにはならなかったんじゃないかって考えることが、いくらでもあったんだ。その事を無視して、また過ちを繰り返すところだった。」

 

「私達は生きている以上、常に前に進み続ける事が求められるし、それが強さだと捉えられることもあるわ。けれど、時々立ち止まってみることも必要だと思うの。前に進んでいるつもりでも、本当は大きな流れに流されているだけかもしれない。それでも立ち止まることができるのは、立派な強さよ。」

 

「もしかして褒めてるのか?」

 

「ええ。困難を乗り越えようとしているのだから、当然でしょう?」

 

「なんか子供扱いされてるみたいで嫌なんだけど。まさかとは思うけど、君から見た俺ってそんな子供っぽく見えるのか?」

 

「明るくて、優しくて、変なところで頑固で、なんでも一人でやろうとする。私はローランの事をこう評価しているのよ。」

 

マジかよとでも言いたげに目を細めるローラン。思った通りの反応に、スカジも微笑みを浮かべる。

剣呑な雰囲気もすっかり薄れてしまった。スカジとしてはこのまま親交を深めたかったが、それは眼前の問題を解決してからである。二人でなら、きっと上手くいくだろう。

 

横目でラップランドの方を見遣る。さっきまではローランの怒号に訳も分からず戸惑っていたが、今は不満げにローランを見つめていた。自分が無視されているような状況が気に食わないのだろうか。

ローランが意を決したようにラップランドを見ると、彼女は嬉しそうに駆け寄ってくる。

 

「ボクのローランが戻ってきた!もう大丈夫なんだよね?さっきみたいに怖くないし、ローランは今のままでいてよ。」

 

「うん、そうだよな。さっきはびっくりさせちゃってごめんな?」

 

対してローランは複雑な表情だ。その心中はスカジにも詳しくは分からないが、誰かが支えてあげたほうが良さそうだということは分かった。

 

「ラップランド、これから俺たちは話し合いをしなくちゃいけないんだ。」

 

「何の?あの人も一緒に?」

 

「そうだ。これから俺たちは、キミについて話し合うんだ。」

 

スカジが連れ帰り、ロドスで適切な治療を受けさせるのか。

おそらくラップランド本人が望むであろう、ローランと行動を共にするのか。

 

ローランの苦悩とラップランドの希望、スカジの思惑、立場の違いがねじれて絡み合う、複雑な話し合い。

 

 

 

 

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