魔法少女リリカルなのは サイヤの魂を受け継いだ戦士    作:飴玉ベジット

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無印編、完結!


第27話 名前を呼んで。またねは再会の約束

 龍也とリュートによってテスタロッサ家の問題が解決した。そこでなのははここに来た時から気になることがあったので、それを聞くことにした。

 

「ところで龍也君、なんで病室から抜け出したの?」

 

 そう問われた龍也が振り返るとギョッとして後退る。なのはの表情は笑顔ではあったものの、その目と纏う何かからは怒りを感じていた。

 

「リハビリを兼ねて歩いてたらたまたまリュートとプレシアさんの話が聞こえて……、それでこの機に……」

 

 なんとか弁明しようとする龍也だが、なのははそれを言い訳と解釈したのが、その表情は一切変わることはなく、むしろ強まったようにも感じた。

 

「……誠に申し訳ございません」

 

 なのはの圧に負け、これ以上の弁明は不可能だと悟った龍也は、素直に土下座する。

 

「失礼します。艦長、報告したいことが……」

 

 その時、室内に入ってきた局員ががリンディの元に駆けつけると、手に持っていた書類を渡し、何かを報告し始めた。

 

「そう、わかったわ。2人には私から伝えておくわ」

 

「はっ!」

 

 局員は敬礼するとすぐに退出する。資料を一通り確認した後、リンディはまるで何かやらかした夫とそのことを叱る妻のような雰囲気になってる龍也となのはの方を見る。

 

「なのはちゃんと龍也君、2人に朗報よ。地球に戻れる目処がついたわ」

 

「……えっ?」

 

「それって……」

 

 その報告を聞いたなのはと龍也は困惑する。

 

 その反応を見たリンディは、ずっと寝ていた龍也と、その横で付き添っていたなのはにはまだ話していないことを思い出し、先ほど受けた報告も加味して、現状を説明する。

 

「実は、動力炉を封印した状態で無理にアルハザードへのゲートが開いたこと。そしてボージャックとの戦闘による影響で時の庭園内の次元空間がかなり不安定になっていたの。それが少し収まって、ミッドチルダへ行くことは無理だけど、地球までならなんとか行けるところまで安定してきたわ」

 

 地球に帰れることがわかり、龍也はなのはと共に喜ぶ。しかし、その為にはある条件があることをリンディの方から伝えられる。

 

「とは言え、なのはちゃんは問題ないけど、今の龍也君は重傷者、その姿をご家族に見せて心配させるわけにはいかないわ。だから、地球に送るのはある程度怪我を治してからよ。それと、なのはちゃんには龍也君の怪我が悪化しない為にも、彼の監視兼お世話係を任せてもらってもいいかしら?」

 

「うぃーす……」

 

「はい!」

 

 厄介者扱いされた気もするが、監視がないと特訓で悪化させてしまうかもという自覚はあったので渋々ながらも了承する龍也。一方のなのはは、快く引き受けた。

 

 幸いにもサイヤ人特有の高い自然回復力に加えて、医療部隊とユーノが時間と魔力がある時に治療魔法をかけてくれたおかげで、リンディの想定より早く全快し、その結果予定より早く地球に帰ることになった。

 

 久々に兄と再会した智樹が嬉しさの余り龍也に飛びついたことで彼に大ダメージを与えたり、アリサに質問攻めされたことでなのははどう答えて良いか迷ったり、騒がしくも懐かしさすら感じる日常を送る。

 

 そして、その日常が続いてから数日たったある日、龍也となのはは海鳴臨海公園に来ていた。

 

 理由は、今日フェイト達が本局へと向かうからと、その前にフェイトがなのは達に会いたいと懇願したからだそうだ。

 

 臨海公園に着くと、フェイトとリュートの姿があった。そして少し離れたところにはクロノやアルフ、ユーノの姿があった。

 

「申し訳ないが、話せる機会こそ作れたものの、その時間は短い。だから早めに話をするようにしてくれ」

 

「あぁ分かった、なのは、今のうちに言いたいこと、全部言っとけよ?」

 

「うん!」

 

「……フェイト、行ってこい」

 

「……うん」

 

 龍也とリュートも2人から離れた後、なのはとフェイトは策の方へ向かい、海を見る。やがて、なのはが口を開く。

 

「なんだか話したいこといっぱいあったのに、変だね、フェイトちゃんの顔見たら、忘れちゃった」

 

 ようやく言葉を出したなのは。

 

「私は…そうだね。私も上手く言葉に出来ない…だけど、嬉しかった」

 

「え?」

 

「酷いことをした私に、まっすぐ向き合ってくれて…」

 

 フェイトのその言葉を聞いたなのはの表情が少し和らぐ。

 

「フェイトちゃんと友達になれたらいいなって思ったの。……でも、これから出かけちゃうんだよね…?」

 

 そう。今日はフェイトと別れる。その為になのはは少し暗い顔になっていた。

 

「そうだね。少し、長い旅になる」

 

 

「でも、また会えるんだよね?」

 

 なのはの願いとも取れる質問にフェイトは小さく、それでもはっきりと頷く。

 

「…少し悲しいけど、やっと本当の自分を始められるから。……実を言うと今日、なのはに来てもらったのは、返事をするため」

 

「えっ?」

 

 なのはは驚き、フェイトの方を見る。そして、フェイトもまた、なのはの顔を見る。

 

「君が言ってくれた言葉…友達になりたいっていう、答え。… 私に出来るなら…私でいいならって」

 

「……うん!ありがとう!フェイトちゃん!」

 

 フェイトも笑うが、すぐに困った表情になる。

 

「だけど私、どうしていいか、わからない。アルフは友達になるっていう契約だったし、リュートも、気づいたら仲良くなって、一緒にいるようになったから……だから教えてほしいんだ。どうしたら友達になれるのか…」

 

「…簡単だよ。友達になるの、凄く簡単」

 

 なのはは一呼吸置き、とびっきりの笑顔でフェイトの質問に答える。

 

「名前を呼んで。初めはそれだけでいいの」

 

「……そ、それだけで、いいの?」

 

 思ったより簡単な答え。それ故にフェイトは軽く驚く。

 

「うん。でも、君とかあなたとかそういうのはダメ。ちゃんと相手の目を見てはっきりと相手の名前を呼ぶこと。そこから始まるの」

 

「名前を……」

 

 フェイトの呟きを聞き取ったなのはは頷き、改めて自分の名前を教える。

 

「私は、高町なのは…なのはだよ!」

 

「なの…は?」

 

「うん!そう!」

 

「なのは…」

 

「うん!」

 

「なのは!」

 

「うん!」

 

 なのははフェイトの手を取る。

 

「ありがとう…なのは」

 

「うん…!」

 

 なのはは瞳に涙を滲ませる

 

「…君の手は暖かいね、なのは」

 

 なのはは堪えきれず、とうとう泣き出してしまう。

 

「フェイトちゃんの手も……暖かいよ」

 

 その言葉はフェイトは微笑むも、その瞳は少し潤みがあった。

 

「少しだけ、わかったことがあるんだ。友達が泣いてると、同じように自分も悲しいんだって」

 

「フェイトちゃん!」

 

 感極まったなのははフェイトに抱きつく。突然のことにフェイトは驚くも、こらえきれなかった涙を流しながら、なのはを抱き返す。

 

「ありがとう…なのは。今は別れてしまうけど、きっとまた会える。もしその日が来たら、また君の名前、呼んでいい?」

 

「うん!…うん!いっぱい、……いーっぱい呼んで!」

 

「会いたくなったらきっと名前を呼ぶ。だから、なのはも私を呼んで。なのはが困ったことがあったら、今度は私が助けに行くから…」

 

 抱き合いながら、少女たちは泣きあう。

 

 

 その光景を横目で見ていた龍也。ふと視線を感じたので振り返るとリュートが立っていた。

 

「……なんでだろうな。お前とは今までそこそこ戦ってきたってのに、まだ戦いたいって思うんだよな」

 

「奇遇だな、俺も同じことを考えていた」

 

 そう答えたリュートは組んだ腕をそのままに、真剣な眼差しで龍也を見ながら宣言する。

 

「暫しの別れになる。決着をつけるのはそれまでお預けだ。だからせいぜい首を洗って待っていやがれ。次に会った時は、お前を地べたに叩き落としてやる!!」

 

 リュートの宣戦布告ともとれる発言に龍也は一瞬呆然とするも、すぐに二っと笑って拳を突き出す。

 

「だったら、俺も今よりもっともっと強くなるさ。そんでもって、また戦う時が来たら、お前をコテンパンにしてやるよ!」

 

 その言葉を聞いて満足したのか、リュートは口角を少し上げるとすぐに自身の拳を龍也に合わせる。そして、お互いに一言だけ告げた。

 

「「またな」」

 

 戦士の、男の別れに涙はなかった。

 

 

 

 もうそろそろ時間ということで、なのはとフェイトはクロノに呼ばれ、戻ってくる。

 

「フェイトちゃん…思い出にできるもの…こんなものしかないんだけど…」

 

 なのはが自分のくくっていた白いリボンを外し、フェイトへと手渡した。

 

「じゃあ…わたしも…」

 

 フェイトもくくっていた黒いリボンをなのはへと手渡した。 

 

「……ありがとう……なのは…………きっとまた……ね…」

 

「うん…!フェイトちゃん。きっとまた……!」

 

 なのはとフェイトはお互いの手を取りながら、再会の約束をする。

 

「2人は交換とか、そういうのはしなくて良いのかい?」

 

「良いんだよ、俺達は。再戦の約束があれば、それだけで充分だ」

 

 アルフの問いに対して龍也の返答する。それに同意してるのか、リュートも頷く。

 

 アルフとユーノは2人らしいと思ったのか、呆れたように苦笑いする。すると、それがトリガーと言わんばかりのタイミングで、フェイト達の足元に魔法陣が展開される。

 

 それはつまり、お別れの時が来たということだった。

 

「フェイトちゃん!リュート君!アルフさん!ユーノ君にクロノ君!また……また会おうね!!」

 

「こっちに来る機会あったら連絡しろよ!オススメの飯屋とか、色々紹介するからさ!!」

 

 なのははまた会おうと龍也は街の案内をすることを約束した。

 

「うん……またね、なのは、龍也」

 

「フン……じゃあな」

 

「不味い所だったら、カブッていくからね!」

 

「なのは!龍也!2人に会えて、本当に良かったよ!」

 

 フェイトとリュート、アルフ、ユーノも別れの言葉を告げる。

 

「2人とも、本当にありがとう。この恩は一緒忘れない、そしていつの日か、必ず返す」

 

 相変わらず真面目なクロノのその言葉を最後にフェイトやリュート達の姿は光に包まれ、魔法陣と共にその場から消えていた。

 

 先ほどまで賑やかだった公園は静寂に包まれ、龍也となのはだけが残り、2人の耳には風や波の音が響く。

 

「また、みんなに会えるかな?」

 

 フェイト達が消えたところを見つめながら、なのははフェイトから貰った黒いリボンを握る手を胸に当てながら、ふとこぼす。

 

「会えるさ。絶対にな」

 

 その問いに確信をもって答えた後、だってと、龍也はなのはの方を見る。

 

「なのはとフェイトはもう友達だろ?それに、俺とリュートはライバルなんだ。ここだけの話、俺はあいつに勝たないと気が済まないし、向こうだってそう思ってるぜ?」

 

「ふふっ、そうかもね!」

 

 なのはを元気づける為に最後だけ少しおどけた感じで答える龍也。その答えになのはは笑みをこぼし、同意する。その後、2人は別れの寂しさを吹き飛ばすように談笑しながら、それぞれの家族が待つ場所へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なのはと別れた後、1人で家に向かって歩いていた龍也。その時、優しい風が吹いた。

 

 龍也はその風を浴びながら、足を止めて澄み切った青空を見上げた。

 

 態度や顔には出さなかったものの、龍也も別れの寂しさ感じていた。だが、これは一時的なものだと言うのも分かっていた。

 

 いつか、そう遠くないうちにリュートやフェイト達に会える日が必ず来る。

 

 そう信じて龍也は再び歩み始めた。




これにて無印編は終了です。長期の休止期間もあって時間がかかりましたが、大変お待たせしました。次回からはちょっと日常編をいれてからA's編に突入します。

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