エーリカ・ハルトマンのD-DAY~個人の戦闘力で戦争を終わらせる方法~ 作:両生金魚
短編集としてこういう形式なら気軽に書きやすい感じですね。この形式+補足として短編みたいな形もいいかも知れません。
「大戦が始まった時、戦争からきらめきと魔術的な美が奪い取られてしまったかの様に思われた。だが、それは間違いだった。新たに始まってしまったのだ。いまだかつて神話の時代でしか見たこともないような、英雄と魔術の時代が。世界が、英雄を欲する時代が」
ウィンストン・チャーブルの回顧録より。戦後に書かれたこの書には、彼の絶望と後悔が滲み出ている。
「ドーヴァー海峡は、連合軍の屍で舗装されり……か。あぁ……神よ……どうか彼らが安らかに御前に旅立てたことを願います」
連合王国海軍大将、戦後でサルベージ事業を視察しての言葉。駆逐艦から戦艦まで全ての船は二度と再利用が出来なく、また輪切りにされた船は下手に火災や爆発などが少なかった分内部の光景は酸鼻を極めていた。
「それで、また無茶苦茶された死体か」
「もう何件目でしたっけか……」
「忘れた。そしてまたまた『上の』案件だとさ」
戦後の連合王国各地で起きた連続殺人事件の一幕。もはや情報部員はまともに暮らす事すらままならない事もまま有った。
「今こそ我々植民地の人間が団結をして白人から故郷を取り戻す時だ!」
戦後、各地の植民地より。あの大戦で国力を使い果たした国々では最早独立を止める手立ては何一つ無かった。
――この先飛び降り禁止。神は見ておられます最期まで人に迷惑をかけるのは止めましょう――
合衆国で一番高いビルの屋上に貼られている張り紙。大戦以降あまりにも多くの飛翔者が出るので最近はあまり人が近寄らなくなってしまったのだった。
尚連合王国や合衆国の他ビル等にも似たような場所は多数存在する。
――ご自由にお使い下さい――
モスコーのとある広場、拘束された秘密警察の人員達の横に置かれた様々な工具に添えられた看板。
「それでは全員の賛成を持ちまして、『毎年度魔力検査義務化法案』と『魔力保有者の訓練義務化法案』を可決致します」
大戦後、あらゆる国家が死に物狂いで『英雄』を求めるようになった。魔力を持つ者は老若男女関係無く、可能性が有るならば誰もが訓練を施される様になった。
「――あの姉妹を墜とせる兵器を作れ。最優先で、だ」
世界各国の研究機関に出された最優先目標。これにより世界中で対魔導師戦術が洗練されていき、正面戦力としての魔導師の価値は著しく下がっていった。そう、「正面戦力」としての価値は。
「はっはっはっはっは!温い温い温い!」
「まだまだ照準が甘いですね」
なお帝国で新たに開発された対魔導師も想定されたCIWSの攻撃を事もなげに弾くなり避けるなりする姉妹の姿がそこに有った。そしてそれを見て某MADは燃えに燃えていた。
「こんな物騒な物が全基地に配備されるか……世も末だな……」
基地に配備された地対魔導師用小型追尾核ミサイルを見てのとある合衆国高級将校の呟き。これらを使用する想定は勿論彼女達であり、またいつか出てくるかも知れぬ新たなる英雄であり、連合王国も同様に各基地に似たような物を配備している。彼らは、陸海空全ての軍が骨の髄にまでトラウマを刻み込まれていた。
「此度の大戦は、彼女たちのお陰で勝てた。――だが、彼女らが居なくなった時、ライヒは果たして勝てるのか?」
戦後、独り思索に耽るゼートゥーア大将の独白。帝国は大陸における絶対的な覇権国家として君臨した。だが、そこにはあまりにも自明な危うさが存在した。
「……そしてまた一つ、帝国は神話を手に入れ誇示するようになってしまった、か」
外務省のロビーの中央に大きく掲げられた三姉妹の絵を見たコンラート参事官の嘆き。嗚呼我らが無敗の帝国よ、永遠なれ――
勝利の伝説は、未だに終わらない。
「あのねパパ! 私大きくなったらなりたいものが有るの!」
「なんだい?」
「ターニャさんやエーリカさんやハンナさんみたいな魔導師!」
「……そ、そうか……」
戦後、大きくなった娘と会話するウーガ准将の家庭の一幕。三姉妹は最早生ける伝説では有るのだがあの様になりたいと言われると何とも言えなくなるのは本人たちを知っている故だった。
「君とハンナが生きている間に戦争をふっかけてくる馬鹿は居まい。そして我々が居なくなった後もまあ核と大陸間弾道ミサイル、ついでに戦略原潜さえ有れば次の大戦は防げるだろうが……」
「問題はテロですよね。魔導師がテロリストにとか頭が痛いって問題じゃないですが……まあ魔導師利用した不正規戦とかテロの方法とかちょっとレポートにして出してみましょうか」
ターニャとエーリカの会話。似たような世界の未来を知る故に、大国のぶつかり合いよりもむしろテロリズムを驚異に思っていた。
『……………グフッ』
ターニャとエーリカの二人が執筆した非正規戦・テロリズムのレポートを読んだ参謀本部の面々の反応。あまりの悪夢に皆の胃が盛大な悲鳴を上げたのだった。
「まあ原発だろうとダムだろうと中央金庫だろうと白い家だろうと一度入り込めちゃったら私一人でどうにか出来るよねー」
戦後より時間が経った後、ハンナ・ルーデルの独白。事実上、ハンナとエーリカにとって一度入り込めば地上のどんな施設であろうとも一人で破壊出来るし船舶や何ならジャンボジェットや大統領専用機に至っても飛んで追いついて取り付いてハイジャックすることすら出来た。
「……ちなみに、対処法は有るのかね?」
「私達が突っ込む以外の対処方法はもう徹底的に輸出製造を監視するなり技術流出を防ぐなりですかね」
「恐らく技術流出が発生してしまった場合は防ぐのは事実上不可能です。なにせ懐中時計サイズですので分解すれば髪留めにだって隠せますからね、部品」
レポート提出後の参謀本部での雑談。自爆テロを防ぐのはもう事実上不可能であるという救いようの無い、しかし確実に訪れるであろう未来の想像に精神的ダメージは甚大であった。
「あの✕✕✕✕野郎共がっ!!!!!!!」
しばしの後、アルガニスタンに合衆国が懐中時計を持ち込んだと聞いた時のレルゲン大将の叫び。彼の、そしてひいては彼女達の懸念通りに合衆国がばら撒いてしまった火種は十数年後に世界中で盛大に発火する羽目になった。
「こちらNYTリポーターのリンダです。ワールドトレードセンタービルをテロリストが占拠してもう2週間になりましたが今だに膠着状態であり、当局は有効な手をまるで打てていない模様で――」
発火してしまった最初の火種。世界は、この時初めて魔導師テロリストの驚異を知った。
「一体どうしろと!? 国の全ての重要機関に魔導師を常駐させておけとでも言うのか!?」
合衆国の情報部や軍部や警察の上層部の合同会議での一幕。アルガニスタンに流れてしまった懐中時計はよりによって頑丈さに定評のある連邦系――つまり88mmを直撃させても下手をすれば落とせない様なシロモノ――の物だった。
「小型核が流出してただとぉ!?」
連邦某基地より。世界が魔導師のテロの驚異を知り慌てて自国の基地の総点検を始めた所、よりによって夏期の恒例である「倉庫爆発」により消失した機材の中にとてつもない物が紛れ込んでいたのだった。
「あっすみません、私は主では無く天照大御神様を信仰しておりますので……」
「……か、過分にお聞きしませんが一体どの様な存在で……」
「秋津島の神話にの最高神にあらせられます」
とある式典で主への祈りを薦められた時の一幕。直後辺りに悲鳴や怒号が鳴り響いた。だがしかし常に身につけている斬艦刀が天照大御神を祀った神社に秘蔵されていたものであり国を救った刀なので誰も表立って文句を言えなかった。そしてついでとばかりにターニャもカミングアウトしたので辺りが大混乱に陥った。
「エーリカせんべいにエーリカまんじゅうにエーリカの絵馬に……」
「いやー流石世界は違っても日本?人、商魂逞しいよねー」
久々に秋津島に来訪したエーリカと初めて訪れたターニャ達がお忍びで刀が奉納されていた神社に来た時の反応。物凄い観光資源にされていたがまあ、秘蔵の刀を譲ってもらった立場なので文句も言えないし言うつもりも無いのだ。そしてこの神社は度々聖地として巡礼されることになる。
「た、大佐、それって生卵では……」
「エーリカ大佐!? その豆は腐ってますよ!?」
「魚を生でなど食中毒の心配が!」
『やかましい!黙って食わせろ!』
久々の和食を堪能している二人を見た副官達の反応。よりによって上級者向けの物をチョイスした二人だった。
「戦略ゲーなのに個人がユニットになって最強の戦闘力持ってるとか草生える」
「残念でも無く当然なんだよなあ……」
「アンサイクロペディアのどんな嘘記事より公式記録の方が嘘っぽいのが大草原不可避」
とある○aradox社製のゲームプレイヤー間での一コマ。彼女達にはどんなユニットをぶつけても薙ぎ払われるが史実通りだから仕方ないとプレイヤーは諦めているし、嫌なら彼女達抜きの設定でゲームをするしか無いのだ。そうすると大体ライヒが負けるのも史実通りだろうなとプレイヤー達はおろか殆どの歴史家も納得する。
「やっぱりハンエリをだな」「いやエリハンも良いぞ」「ここはあえてヴィシャタニャをひとつ」
オタク間で永遠に終わらない論争の一コマ。可能性は無限大……だが例の三姉妹が汚いおっさんに負ける系の薄い本はほぼほぼ無い。本人たちが強すぎるからね、仕方ないね。あと何故かAIに書かせようとしても強すぎるからその展開は有りえませんとか拒否されるともっぱらの噂。
「はぁ~……極楽極楽。夜桜見ながら温泉で月見酒とか贅沢の極みだわ」
エーリカ・フォン・ハルトマンの余生の一コマ。証拠が一切出ないのに物凄いインサイダーっぽい取引で資金を荒稼ぎするとそれをかつての部下達と分かち合ったり奨学金を設立したりライヒに神社を建てたり秋津島に温泉付きの別荘を買ったりと。帝国でやれる事を一通り終えたエーリカは姿を変えのんびりと余生を過ごしたようだ。そしてだからこそ他の国は畏れている。いつ何処でまた、あの三姉妹が現れるか分からないのだから。
「さあ、かつての伝説よ……我らが前に今一度姿を現せ!」
恐らく世界中で秘密裏に作られるであろう、クローン実験施設。
というわけで、世界各国の様子でありました。当然の如く、世界はハンナとエーリカ並の魔導師を血眼になって求めるようになりそれこそ人口的な交配や後世になると帝国でもクローンが試みられたりと倫理観とかどっかに置いていった様な事が試され続けます。
しかし魔導師って考えれば考えるほどテロで使われると厄介過ぎる代物ですよね……下手すりゃ88mmでも使わないと落ちない装甲を歩兵が持ってるってなんだよ……しかも道具は懐中時計サイズ、燃費も水と食料さえ有れば長時間活動可能と。もう後世で合衆国はずっとずっと罵られ続けることになるでしょう。
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