「「「「「「ハッピーバレンタインデー!」」」」」」
勇者部の部室に明るい声が響く。
今日は2月14日。
バレンタインデーだ。
天の神の襲来から1年。私たち勇者部は天の神を撃退した後、勇者としてのお役目が終わったことを大赦から知らされた。
私、結城友奈は中学3年生の1年間、勇者ではなく、ごくごく普通の中学生としての生活を送ることができた。今日も勇者部で集まってバレンタインのパーティーをしている。
「去年は色々ゴタゴタしててできなかった分、今年は盛大にやろうじゃないの!高校生であるアタシの奢りよ。バンバン食べなさい!」
風先輩がテーブルの上に数えきれないほどの種類のチョコレートを広げていた。
「こんなに沢山食べられないわよ!鼻血が出るわ!」
夏凜ちゃんのツッコミが入る。
「じゃあ、ぼた餅もどうぞ」
東郷さんがぼた餅の入った箱を開けた。
「こ、こんなに食べたらお腹が…心配です…」
樹ちゃんはお腹周りが気になるらしい。
「いっつんは今、上の方が成長期だから、気にしなくてもいいんじゃないかな〜」
園ちゃんが樹ちゃんを励ます。
「そうそう。いっぱい食べて、大きくなろうよ!それに、東郷さんのぼた餅は別腹だから!」
私も一緒になって励ます。
「そ、それは友奈さんだけですよ〜。でも、せっかく作って頂いたんだからきっちり食べます」
「それでこそ勇者部の部長だわ」
勇者部部長として、樹ちゃんは順調に成長している。精神的にも、肉体的にも。
「しょうがないわね。じゃあ、お腹壊さないようにサプリ、キメときなさい」
「こら夏凜、あんたまた樹にサプリを!」
「いただきます」
「ちょ、樹!?」
チョコを食べる前にサプリを食べるという、ちょっと不思議な光景だった。
「まあでも、安心したわ。樹が部長としてうまくやれてるようで。今日は来れなかったみたいだけど、新入部員も入ったし、勇者部は安泰ね」
「よく言うわ。暇さえあれば顔出してたくせに」
風先輩は高校ではボランティアの部活に入ったらしい。基本的な活動内容は勇者部と同じで、よく暇を見つけては勇者部に来てくれる。
「フーミン先輩はほんとに人助けが好きなんだね〜」
「まあね。アタシも色んな人に助けてもらったし、恩返しって言うとなんか照れ臭いけど……まあ似たようなもんね」
風先輩は中学1年生の時にご両親を亡くしてから、樹ちゃんと二人きりで生活してきた。だけど、きっと多くの人たちから支えられてきたんだろう。
「風先輩!私も高校生になったら同じ部活に入ります!」
「友奈ッ……!さすがアタシが見込んだ勇者だわ!……って、受験の方は大丈夫なの?」
「友奈ちゃんはやればできる子ですから、心配ありません。私も付きっ切りで勉強しているので」
東郷さんは勉強では結構厳しい。でもそのおかげで私の成績もかなり上がった。
「まあ、状況は良くなってるとはいえ、まだまだどうなるか分からないからね。しっかり合格して、充実したJKライフを送るのよ!」
「おー!」
天の神を退けた後、神樹様は散華して消えてしまった。最後の力を振り絞って私たちに資源を残してくれたけれど、神樹様の加護を失って、状況は厳しかった。しかし、元に戻った四国の外で、西暦の時代に北海道・長野・沖縄と呼ばれていた場所からも資源が見つかった。これによって、人類は当分の間は資源に困ることはないだろうとのことだった。
「東郷さん、ちょっといいかな?」
私は東郷さんに問いかける。少し、顔が熱い。
「なあに、友奈ちゃん?」
「渡したいものがあるんだけど、一緒に屋上に来てくれない?」
「えっ?ゆゆ友奈ちゃんそれってもしかして…」
「ムムッ!?なにやら怪しいにほひがするんよ!」
園ちゃんの眼がキラリと光る。
「こら園子!ったく。友奈、園子は私たちが抑えとくから、早く行ってきなさい」
「甘いぜにぼっしー!その程度じゃ私の創作意欲は……へぷッ!?」
夏凜ちゃんを躱そうとした園ちゃんはビタン、と音を立てて倒れた。見ると、足が紐でテーブルに括り付けられている。
「こんなこともあろうかと、あらかじめ手を打っておきました」
「う、腕を上げたね……いっつん。ガクッ」
「えーと、じゃあ、ちょっと行ってきます」
そう言って私は東郷さんを連れて部室を出た。心臓が高鳴る。耳が熱い。
階段を上る。いつの間にか東郷さんが手をつないでいた。じんわりと熱さが伝わる。東郷さんも緊張……してるのかな。
ガチャ。
屋上へのドアを開けた。時間は夕方。空の色が、私の頬をより一層赤く染める。
ごくり。唾をのみこむ音がとても大きく聞こえた。
大きく息を吸ってから、私は言った。
「あのね、東郷さん」
「……うん」
「私、東郷さんに出会って、3年間一緒に過ごして、とっても楽しかった。お役目で辛くて、大変な時もあったけど、東郷さんやみんながいてくれたから。助けてくれたから。私は今とっても幸せだよ」
「……うん」
「東郷さん、いつもありがとう。東郷さんは私の大親友で、それで……」
私はもう一度息を大きく吸い込んだ。
「大好きだよ、東郷さん。これからもずっと、ずーっと一緒にいてほしいな」
私はそう言ってチョコを差し出した。東郷さんのためだけに作った手作りのチョコだ。
「あ、あ、あ……」
東郷さんは俯きながら肩を震わせている。
「どうしたの東郷さ……」
「ありがどう友奈ちゃん!どっても、どっっっっても嬉じいわ!!!わ、私も、パーティーが終わったら渡そうと思っでて。い、家にある、等身大友奈ちゃんチョコレートを!!!」
東郷さんが大号泣だ。涙で顔がぐしゃぐしゃになっている。私はそれをハンカチで拭った。
「あはは、東郷さんは凄いなあ。等身大チョコなんて、私食べきれるかなあ」
「一緒に食べよう、友奈ちゃん。これからも、ずっとずっと一緒よ」
お互いに顔を見合わせて微笑む。
「「ハッピーバレンタインデー!!!」」
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
スマホゲームの結城友奈は勇者である花結いのきらめきのバレンタインイベントを読んで、久しぶりに小説を書きたくなりました。ゆゆゆを書くのは初めてですが、これからも少しずつ書いていきたいと思います。
ありがとうございました。