もしもオネストが綺麗だったのなら   作:クローサー

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本編「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎(花は咲いた)」のIFルートです。
共通ルートまでは殆ど完成していたので、折角ですし仕上げて投稿。
以降は…書き切るまでメンタルが保てば?(IFルートは大真面目にメンタルがやられる)


番外編:IF
花は咲かず(花は枯れる)


彼女に、妹を切り捨てる覚悟と勇気は無かった。

彼女は、目の前に迫る「死」を受け入れてしまった。

だから、彼女の旅路は此処でお終い。

 

 

だから。

 

 

 

「こっちを見ろ…!」

 

 

 

此処からは、彼女を見つけた彼等の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ザンクは、勝利を確信していた。

スペクテッドの奥の手(幻視)によって、無防備な姿を晒している標的(アカメ)を目の前にして、此処からどうやって敗北の要素を探れば良い?

そう、今眼前に広がっている状況というものは、そういう領域にまで達している。

 

 

その筈、なのに。

何故、横から膨大な殺気が飛んで来た?

 

 

「「──!!」」

 

 

アカメの首を切ろうとしたザンクが、無防備に両腕を広げていたアカメが、同時に殺気の方向に振り返る。それ程に露骨で、しかし反応しない訳にはいかない。

1発の銃弾が、ザンクの首に向かって超音速で飛来する。

 

「ッ!!」

 

それは、正に超反応。

長い時を掛けて限界を超えて研ぎ澄まされたアカメの反応速度と肉体は、瞬時にザンクと弾丸の間に飛び込み、村雨を一閃。

その一撃は、見事に弾丸を切断。2つに割れた弾丸は刃に沿って左右へ分かれ、石畳に着弾した。

僅か一瞬で行われたその行動の反動は、切創から宙へと噴出した多量の鮮血が示している。

 

「…お前か」

 

そして、アカメは見切っていた。弾丸の角度と方向から、狙撃手の位置を。

 

「目標を庇った上に弾丸を叩き斬るってのは、流石に想定の外だったなぁ…しかも目標そっちのけで俺たちを見てる」

「…まずいな。緊急、アルファ4-8より全部隊へ。ミセバヤが目標を庇い交戦状態に突入、幻視の可能性がある」

 

凡そ100m先の建物の屋上。その端に、バイポット(二脚)を立てて伏せ撃ちで構えているアルファ4-7(スナイパー)と、双眼鏡からスコープ付きのバトルライフルに持ち替えながら無線を送るアルファ4-8(観測者)の姿を、完璧に捉えた。

 

「クロメを、狙ったのは!!」

 

アカメとザンクは、同時に行動を開始した。アカメは「幼少期のクロメ(ザンク)」を狙い撃ちして来たスナイパー(特務隊)を殺す為に。ザンクはこの場から逃走する為に。

しかし。アカメは兎も角、ザンクのその行動は既に遅かった。逃げるならば今のタイミングでやるべきでは無かった。

 

ザンクが駆け出した方向の真正面、林の方向から複数の人影が飛び出したと思った瞬間、マズルフラッシュ。

 

(な、あッ…!?)

 

咄嗟に横に飛び、石柱の陰に隠れて弾幕を躱す。

 

「継続射撃!火力を絶やすな!!」

 

現在進行形でザンクに向けて銃弾の弾幕をお見舞いしているのは、隊員8名から構成されるベータ3の面々。

アカメとザンクの発見の連絡以降、特務隊の全部隊ががこの地に向けて全速力で急行している。各隊の距離は開いていたせいで時間は掛かったが、ギリギリの所で間に合ったという訳だ。

 

「────」

 

アカメは銃声に振り向いて状況を把握し、アルファ4-7(スナイパー)からベータ3へと進路を変更。右90度近くに瞬時に曲がり、石畳を破りながら超人的な速度で接敵。

 

「っと!!」

 

ベータ3-6がそれに反応。アサルトライフルを放棄し、剣を抜いてアカメの前に立ちはだかる。

 

「退け!!!!」

「そりゃ出来ない相談だな!!」

 

村雨による一撃。速度が乗ったそれを、剣の腹でしっかりを受け止めるが、余りの威力に数メートルもの距離をずり下がる。

 

(これは…キッツ…!!)

 

さらなる追撃にも対応するが、反撃などとても出来る余裕は無い。それどころか剣に僅かながらも罅が入り始めている。

 

(いやー、一応特級危険種の素材で作った最高級の剣なんけどなー。なのにもう罅入っちゃうの?ヤベー、洒落にならん)

「すまんヘルプ!!」

「もうちょっとだけ頑張れよお前は!!」

 

そう言いながらも、新たに一番近くにいた3-4が加勢。横からアサルトライフルによるセミオート射撃を数発見舞う。アカメはそれを容易に回避し、少し下がって仕切り直す。一瞬で状況を把握し、再突撃。

 

他の者達はアカメに注意を払いながらもザンクに向けて攻撃を継続しており、ザンクも石柱の陰から中々動けない状態になっている。幾ら未来視があったとしても、絶えず飛来する弾幕の中を切り込む度胸と勇気などザンクは持っていない。

 

考えるのは、この場からの有効な逃走方法。

まず、幻視の解除は絶対に無い。幻視のお陰で彼女(アカメ)自身(ザンク)を「一番大切な人物」と誤認し、特務隊と戦闘を開始している。目視出来ない程度に距離を取ってから解除すれば、誤認は解けずに死ぬまで戦闘を続けてくれるだろう。そうなれば特務隊の注意は自然と向こうに向き、此方の逃走の隙は生まれる。

 

(その為にもまずは、奴等の注意を──)

 

 

この時点で、既にザンクは失敗していた。

逃走方法を考える暇があれば、なりふり構わず逃げるべきだった。被弾を覚悟で、彼等に無防備な背中を晒してでも、ひたすらに逃げるべきだった。

 

彼等は帝国特務隊。犯罪者を追い掛ける警察、帝都周辺だけを守る帝都警備隊や近衛兵、「外敵」に特化された帝国軍(国家の軍隊)とは違う。「帝国の平穏」の為に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

そんな集団が、「首切りザンク(帝具使い)」というただ1人を殺す為に全力で動いている。

 

──故に、こうなる可能性は秘められていた。そして今、その可能性は必然へと変わった。

 

 

 

建物にぶつかるか否かという程の超低空飛行で、それは現れた。

 

特級危険種 エアマンタ。

その名の通り空中を高速で飛行出来る陸生のマンタであり、雑食性故に野生のエアマンタは周辺の自然を喰らい尽くしながら世界を飛び続ける暴食者。しかし危険種の中でも調教が容易な類であり、帝国、異民族問わず調教して運用してきた記録がある。

だが、今ここに現れたエアマンタは、()()()()()

 

 

「行くぞ」

 

 

その場にいた者達がエアマンタの接近に気づいた時には、既に戦場の上空に到達していた。

1人がエアマンタの背から飛び降り、少し遅れて4名が飛び降りた。先に飛び降りたのはアカメの方に、遅れて飛び降りた4人はザンクの方に向かって落下している。

幾ら超低空飛行とはいえど、その高さは10mを超えている。そんな高さから飛び降りてしまえば、骨折は確定。下手をしなくても重傷だ。だが、飛び降りた者達はこれに対する対処法を知っている。

 

 

五接地回転法。

略名として「5点着地」や「5点接地」とも呼ばれている着地方法。足、脛横、尻、背中、肩の順番に前転しながら着地し、着地の衝撃を体の各部分に分散。無傷で高所から飛び降りる着地法。*1

 

これを彼等は実践し、結果。

 

 

「死ね」

「お姉ちゃん…ッ!!」

 

 

奇襲に成功する。

 

 

帝国特務隊 アルファ1及びスズラン(クロメ)、戦闘開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

邪魔だ。

 

邪魔だ。

 

邪 魔 だ ! !

 

 

漸くクロメと出逢えたんだ。

会いたかったクロメが目の前に居るんだ。

今度こそクロメを護れるんだ。

私は漸く生きる意味を見つけられた、私は漸く命の捨て場所を見つけられた!!

 

死ね、死ね、死んでしまえ。私達の邪魔をする奴等は全員死んでしまえばいい!!

この瞬間の為に私は生きてきた、この瞬間の為に私は戦い続けてきた!!

今度こそ、今度こそ私は!!

 

 

 

「オォアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

クロメを、護るんだ。

*1
ちなみに、これは実際にパルクールなどでも使用されている。当然だが、素人がやったら普通に怪我…というか最悪死ぬ。




タイトルで既に察している方や、感想返信で知っている方も居るかと思いますが、このIFルートに共通する事が一つ。


このIFルートは以後、細かな差異によって4つに分岐しますが、全てバッドエンドを迎えます。


アカメは完全に発狂し、幻視でない本当のクロメにも完全に敵対。例えスペクテッドを破壊したとしても、彼女の心に根付いた本物の狂気は消える事なく、彼女を突き動かす唯一無二の原動力に変わり果てました。

永遠の狂気に苦しみ続けるか(花は咲かず)永遠にこの悪夢を終わらせるか(花は枯れる)
姉妹に残された最終的な結末は、この二つのみ。

クロメが手を伸ばしたとしても、特務隊がザンクを討ったとしても。最期のチャンスは、永遠に失われてしまったのです。
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