問題児たちと正義の味方が異世界から来るそうですよ?   作:ベアッガイ

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プロローグ
終わりの始まり1


(ここまで…か……。)

 

あの二週間の戦い、まさに命をかけた戦いの終結。

七人の魔術師と七人の《サーヴァント》の、願望機をかけた殺し合いーーー正確には八人目の《サーヴァント》がいたりもしたが。

聖杯戦争。

それは確かに、自分の日常を破壊するものでもあり、多くの人が犠牲にもなった。

だがそれでも、あの戦いの中で出会った人たちーーー

 

俺の聖杯戦争のパートナー、剣の英霊『セイバー』。

魔術の師でもあり共に戦争を勝ち抜いた仲間、『遠坂凛』。

黒の聖杯に染まり、俺たちを殺そうとした後輩であり妹分、『間桐桜』。

最強の狂戦士を従えた銀色の義理の姉、『イリヤスフィール・フォン・アインツベルン』。

そして、認めたくはないがある意味で俺に『正義の味方』という理想への思いを再確認させることになった錬鉄の弓兵、己の可能性存在、理想の果てに磨耗し絶望した存在、『英霊エミヤ』。

 

彼女たちが居なければ、そしてあの戦いが無ければ、けして今の自分は居ないだろう。

いや、それ以前に聖杯戦争で生き残れたかも怪しい。

自分自身との戦いでもあった英霊エミヤとの戦い、前回の聖杯戦争のアーチャーーーーギルガメッシュとの戦い、そして切継から続く因縁の相手、言峰綺礼との最後の戦い。

 

そして、全てが終わった後の幻のような『四日間』。

そこで受け継いだ、本来あるハズのない者との平和な日常、そしてこの世全ての悪を背負う一人の男の記憶。

 

あれらの記憶があってこそ、より一層、俺は理想を追い求めた。

 

そして、理想に近付くにつれて、自分の容姿も英霊エミヤに近付いていった。

魔術の酷使の代償であろう、脱色された髪、浅黒い肌、銀の色の瞳。

肉体的な変化だけではなく、黒のボディアーマー、赤い聖骸布で作られた外套。

………何から何までアイツに瓜二つだ。

いやまぁ、アイツが俺の可能性存在なんだから、分かり切ってた事ではあるんだが………なかなか素直には受け入れ難いものだ。

主に夫婦剣、干将・莫耶を使った戦い方までもが同じである。

これに関しては、ヤツの戦い方を参考にした部分があるので仕方ない。

 

そして聖杯戦争から数年、その間にめでたく俺は封印指定を受け、代行者や他の魔術師など、様々な者に命を狙われているーーー狙われていた、と言うべきか。

 

そう、俺はもうじき死ぬ。

既に身体は満身創痍もいいところだ。

内蔵の幾つかは破裂し、骨が折れ身体に突き刺さり、右手は千切れかかっている。

普通の人間なら、とうの昔に絶命していそうなほどだ。

魔術協会や埋葬機関からの刺客との戦いによるものだ。

 

死を目前にして、頭に浮かぶのは彼女たちの事ばかり。

セイバー、遠坂、桜、イリヤ。

 

(ハハッ……最後に思うのが女の人ばっかだなんて…志貴さんの事を笑えないな…。)

 

走馬灯のように彼女たちとの思い出に思いをはせていると、こちらに近付いてくる気配を感じる。

十中八九、俺の命を狙う者だろう。

そして、その予想は違わず、そして僅かに外れていた。

 

「遠……坂…?」

「お久しぶりね、衛宮君。すっかりアーチャーと同んなじ格好ね」

 

そこに居たのは、遠坂凛その人だった。

 

「どうして…ここに……なんて、聞くまでも、ない…か…」

「そうね、貴方も分かってる通り、私は貴方を始末するために魔術協会から派遣された魔術師よ」

 

だろうな。

こと、ここに至っても、彼女に助けて欲しいだとか、助かりたいだとかなんて欠片も思わなかった。

むしろ自分を殺す事で彼女の利益になるのなら、それでいいとすら思っている。

………それがどれほど歪んだ思考かは、今の自分ならなんとなく理解出来る。だか、理解出来るのと、それを正せるのは別問題だ。

 

「….…貴方、自分が死ぬことで私の役に立つならいいとか考えてるんじゃないでしょうね?」

「さすが遠坂…なんでもお見通しか……」

「….…やっぱり、貴方のそれは治らなかったみたいね」

 

それは仕方が無い事だ。

折れにとって誰かを救うということは生きることそのものだ。誰かの役に立つなら自分よりもそちらを優先する。

まぁ、そんなんだからブラウニーとか呼ばれつたんだろうけどさ。

 

 

「…それで、いつまでもこう話しているわけにもいかないだろ。やるなら早くした方がいいぞ」

「貴方ねぇ……」

 

しまった、何やら遠坂の機嫌が悪くなった。

 

「助けてあげようかとも思ったけど、本当に眠らせてあげましょうか?」

 

ヤバイ!

アカイアクマが目覚めた!どうにかしろ衛宮士郎、考えろ衛宮士郎。

流血と同じぐらい背中に冷や汗が止まらない。

 

「す、すまん…遠坂……」

「はぁ……もういいわ。それで衛宮君、貴方に渡すものがあるわ」

「渡す…もの…?」

 

一体こんな死にかけに何を渡すというのだろうか。

 

「そうよ、今……って、あぁ…。置いて来ちゃったんだった…。ちょっと待ちなさい、すぐに来るハズだから」

「来る……?遠坂が持ってるわけじゃないのか…」

「そりゃ、私には出来ないからね」

 

ダメだ。遠坂が何を言っているのかよく分からない。

 

「待たせたな」

 

声のする方を見ると見覚えのない一人の女性がいた。

 

「遅いわよ、他の魔術師が来たらどうするのよ」

「仕方あるまい、その他の魔術師になるべく見つからんように来たのだからな。どこぞのうっかり魔術師が私を置いて先に行ってしまうのでな」

「うっ…悪かったわね」

 

よく分からないが、どうやらまた遠坂のうっかりが原因らしい。

 

「くっ…」

「ちょっと衛宮君?何を笑っているのかしら?」

「いやなに、遠坂が昔と変わらないようで安心したというだけさ。あぁ、無論他意はないぞ?」

「くっ、その言い方、まんまアーチャーみたいね。地味に腹が立つわ」

 

そうだな、自分でもそう思ったよ、ちくしょう。

 

「ところで、いい加減話を進めてはどうかな」

「むっ、そうね。あんまり時間もないようだし」

「……ところで、アンタは一体誰なんだ?遠坂の知り合いみたいだが…」

「私か?そうだな、はじめまして錬鉄の魔術師。私は青崎燈子、封印指定の人形師だ」

「封印指定って……それより青崎!?まさか、魔法使いの青崎青子の…!?」

 

女性のーー青崎燈子の素性と言葉に驚きを隠せない。

だが、一方、青崎燈子の方は俺の言葉に不機嫌そうになった。

 

「まぁ…不本意ながら、姉にあたる。が、私のことは別にいいだろう。私は私の作品を持ってきただけだからな」

「作品……」

 

封印指定の人形師の作品というのだから、当然人形だろうが…。

 

「衛宮君、貴方にはその人形に入ってもらうわ」

「人形に…?」

「そうよ。一応言っておくけど、貴方に拒否権は無いわ。断るなんて言ったら、今度こそ本当に私が殺すわよ。これは桜とイリヤスフィールの願いでもあるのよ」

 

イリヤと、桜の願い……?

どういうことだ。

俺がその人形に入ることが何故、二人の願いなのだろうか。

 

「二人はね、貴方に正義の味方という理想を諦めて欲しかった、もっと言えば貴方には自分たちのそばに居てほしかったのよ」

 

だが、俺はそんな二人の想いを振り切って旅に出た。

そして理想のためにがむしゃらに駆け抜けた。

我が身は勿論、自分の周囲の人たちも顧みずに。

 

「そして貴方は遠からず死ぬ。それは分かり切ったことだったわ。アーチャーの存在がその証拠ね。貴方がアイツと同じように正義の味方という理想を追っている以上、英霊となるかは別として、貴方が命を落とすであろうことは分かっていた」

「だから彼女らは、その時が来た時のため、代わりとなる身体をーーー人形を依頼してきたんだよ」

 

そういうことか。

二人の願いというのがようやく分かった。

 

「そうか……だけど遠坂。俺にそんな資格があるのかな」

「何ですって?」

「俺は結局、二人の想いを振り切って理想を追っていた。それはつまり、大切な人たちよりも、見ず知らずの他人を優先したって事だろう?そんな俺に、二人にそこまで想ってもらうような資格なんて無いんじゃないのかっ……ぐっ」

 

そこまで言って、頬にかなりの痛みがはしり、身体が地に倒れ伏す。

遠坂に思い切り殴られたのだ。

仮にも重傷者になんてことをするんだ。

 

「ふざけないで!確かに貴方は二人の気持ちを踏みにじったのかもしれない…けれどね、だからこそ貴方は二人の願いを叶えるべきなのよ!それが…何よりも桜とイリヤスフィールが望んだことなのよ……貴方は今まで他人のために生きてきた。今度は自分のために生きて欲しいって言ってたわ。だから今度は『貴方の幸せ』のために生きるべきなのよ」

 

俺自身の幸せ……。

俺にはその幸せが分からない。

 

「わからないんだったら探しなさい。探して見つけなさい。二人のために。それが…」

「それが二人の願いだから…」

 

良いのだろうか。

今まで、多くの人を救うという理想の元、少なくない数の人間を殺し、この手を血に染めてきた俺が。

幸せになることが許されるのだろうか。

 

「遠坂…」

「何?」

「俺には分からない。俺みたいなヤツが幸せになっていいのかも、俺自身の幸せとは何なのかも。だから…」

「だから…何?だから断るだなんて言わないわよね?もしそうならーー」

「だから!だから……せめて、桜とイリヤのために、二人が望んでくれたから……探してみようと思う」

 

けれど、どこまで行っても俺は正義の味方という理想を諦めることは出来ないだろう。

新しい身体を手に入れたとしたらまた無茶をするだろう。

 

「それで、この身体…人形だけれど」

「この人形はまぁ、私が作ったものに間違いはないが、素体はイリヤスフィールが提供したものだ」

 

そう言って、青崎さんはアタッシュケースを開く。

その中に人形が入っているのだろう。

そして人形を取り出しーーー

 

「それ……は…」

「そうだ、イリヤスフィールーーー」

「っ!」

「と、同型のホムンクルスが素体になっている」

「はっ?」

 

イリヤと、同型?

えっと、それはつまり、イリヤ本人では、ない?

 

「あぁ、この人形がイリヤ本人が素体になってると思ったの?違うわよ。これはイリヤがアインツベルンの技術で用意したものよ」

「まぁ、生きてはいないがな。ただ器としての身体があれば良かったわけだしな」

 

 

 




大分、中途半端な所で区切りとなってしまいました。
文字数の関係で切りよくすると一話には長くなってしまいますので、ここで区切ります。
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