問題児たちと正義の味方が異世界から来るそうですよ?   作:ベアッガイ

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リーダーの名前を売り込むみたいですよ?

本拠の最上階にある大広間に引きずってこられた私と十六夜。

私達を前にジンは大声で叫んだ。

 

「どういうつもりですか!?」

「“打倒魔王”が“打倒全ての魔王とその関係者”に変わっただけだろ」

「キャッチフレーズなんかも考えないといけないわね」

「そんなことはどうでもいいですし、笑い事じゃありません!魔王の力はこのコミュニティの入り口を見て理解したでしょう?!」

「まぁ、理解はしたわよ」

「勿論。あんな面白そうな力を持った奴とゲームで戦えるなんて最高じゃねぇか」

「バトル・ジャンキーねぇ…」

 

大広間の椅子に座り、踏ん反りかえるように十六夜は言った。

あくまで自分は魔王との戦いを所望するのだと。

 

「お、面白そう…?い、十六夜さんはご自分の趣味の為にコミュニティを滅亡に追いやるつもりですか?」

 

ジンの口調が自然、厳しくなる。

自分の快楽のためだけにコミュニティを振り回すようなら、大戦力であろうと、コミュニティから追い出さなければならない。そんな風に決意をしているようだ。

とはいえ、だ。

 

「ーーーだから、貴方はリーダーとして力不足なのよ。ジン坊っちゃん?」

「……貴女も十六夜さんと同じように面白そうだから、などという理由で魔王と戦うつもりですか?」

「お生憎様。私はバトル・ジャンキーじゃないわ。確かに十六夜の理由だけでは賛成出来ないでしょうけど、そう簡単に反対する物でも無いと私は思うのだけれど?そもそも、こんな落ち目のコミュニティなんだから、多少のリスクは無視しなさいよ」

「た、多少のリスクでは済まされないものです!そんな」

「第一、貴方達は私達を騙くらかしてコミュニティに入れようとしていたじゃない。そんな事をした貴方が文句を言えると思っているの?もしくは私達が、その腹いせにこのコミュニティを潰そうとしてたかもしれないでしょう?随分な事を言っているけれど、もう少し自分の立場というものを考えたらどう?」

「それは……」

「それに。十六夜の話はこのコミュニティに必要な物なのよ」

「どこが必要な物なんですか?ただ無用な危険を呼び込むだけでしょう?!」

「十六夜、説明」

「ここまで来て俺に丸投げすんな!」

「貴方発案でしょう。貴方が説明しなさい。言い出しっぺの法則よ」

「うわムカつく。……いいか、御チビ?先に聞くが、お前は俺達を呼び出してどう戦うつもりだったんだ?あの廃墟を作った奴や白夜叉みたいなのが“魔王”なんだろ?」

 

ここに来ての十六夜からの質問に、逆に黙り込むジン。

おそらくは明確な方針があったわけでは無いのだろう。

 

「まず…水源を確保するつもりでした。新しい人材と作戦が的確ならば、水神クラスは無理でも水を確保する方法はありましたから。けれどこれに関しては十六夜さんが想像以上の成果を上げてくれたので素直に感謝しています」

「おう、感謝しつくせ」

 

何故こうも十六夜は態度が大きいのか。

 

「ギフトゲームを堅実にクリアしていけばコミュニティは必ず強くなります。たとえ力の無い同士が呼び出されたとしても、力を合わせればコミュニティは大きくできます。ましてやこれだけ才有る方々が揃えば……どんなギフトゲームにも対抗出来たはず」

「期待一杯、胸一杯だったわけか」

「だけどコミュニティはいっぱいいっぱい」

「いや、上手くはねぇよ」

 

………我ながら下らない事をいってしまった。

 

「それなのに……それなのに、十六夜さんはご自分の娯楽の為だけにコミュニティを危機に晒し陥れるような事をした!魔王を倒すためのコミュニティなんて馬鹿げた宣誓が流布されたら最後、魔王とのゲームは不可避になるんですよ!?そのことを貴方方は分かっているのですか!?」

 

ジンが叫びながら壁を強く叩く。

よほど腹に据えかねているのだろう。

それに対して十六夜は、今度こそはっきりと侮蔑の視線を彼に向けている。

その気持ちも分からなくはないが。

 

「呆れた奴だ。そんな机上の空論で再建がどうの、誇りがどうのとか言っていたのかよ。失望したぜ御チビ」

「失望は間違いじゃない?そもそ大しても期待なんかしてなかったでしょう?」

「な、」

「ギフトゲームに参加して力を付ける?そんなもんは大前提だ。俺が聞いてるのはどうやって魔王に勝つかだ」

「だ、だからギフトゲームに参加して力を付けて」

「だからそれは大前提だって言ってるでしょ」

「そもそも前のコミュニティはギフトゲームに参加して、力を付けていなかったのか?」

「……それは」

 

言葉に詰まったジンに、間を置かず畳み掛ける十六夜。

 

「加えて聞くが、前のコミュニティが大きくなったのはギフトゲームだけだったのか?」

「……。いえ」

 

コミュニティを大きくするのは、強大なギフトとそれを持つプレイヤー。つまりは人材だろう。

 

「俺達には名前も旗も無い。コミュニティを象徴する物が何も無いわけだ。これじゃコミュニティの存在が口コミですら広がらない。だからこそ俺達を呼んだんだろ?一人余計なのも着いて来たけどな」

「悪かったわけね。余計なのがいて」

「気にすんな。俺は、お前がいて面白い。ともかく、今のままじゃ物を売買する時に、無記名でサインするようなもんだ。“サウザンドアイズ”が“ノーネーム”を客として扱わなかったのも当たり前だ。“ノーネーム”ってのは所詮、名前の無いその他大勢に過ぎない。だから信用すると危険なんだ。そのハンディキャップを背負ったままで、お前は先代のコミュニティを超えなきゃいけないんだぜ?」

「先代を……超える…?!」

 

ジンが衝撃を受けている。

どうやら本当に何も考えていなかったようだ。

というか、先代のコミュニティが倒された相手から旗と名を取り戻すのだから、先代を越えなければいけないのは当たり前ではなかろうか。

 

「その様子だと、ホントに何も考えてなかったんだなオマエ」

「……っ」

 

呆れた口調でジンに追い打ちをかける十六夜。

けれど。

十六夜はジンを追い込みながらも新たな道を示す。

たとえその口調が悪戯っぽく、楽しそうだったとしても。

 

「名も旗も無いとなるとーーー後にはもう、リーダーの名前を売り込むしかないよな?」

 

ハッとしたように十六夜を見上げるジン。

十六夜が侵入者達に対して、妙にジンの名前を強調していた理由がここにある。

 

「僕を担ぎ上げて……コミュニティの存在をアピールするつもりですか?」

「ああ。悪くない手だろう?」

 

これでもかと言うほど得意げな顔で言う十六夜を今までとは違った視線で見つめるジン。

 

「た、確かに…有効な手段かもしれません…。リーダーがコミュニティの顔役となってその存在をアピールすれば……名と旗に匹敵する信頼を得ることも…」

「けどそれだけじゃダメ。噂を大きく広めるにはインパクトが足りない。だからこそ、ジン=ラッセルという平凡で地味でイマイチパッとしない何だか頼りない感じの少年が“打倒魔王”を掲げ、彼ら魔王に一度でも勝利したという事実があればーー」

「ーーそれは必ず波紋となって広がるハズだ。そしてそれに反応するのは何も魔王だけじゃない」

「そ、それは誰が?」

「同じく、“打倒魔王”を胸に秘めたヤツらに、だよ」

 

話を聞く限り、魔王とはほとんど娯楽のために力のあるコミュニティに闘いを挑み、弄ぶのだという。

そんな魔王によって、コミュニティを崩壊させられた者達は少なくないハズだ。

だからこそ、“打倒魔王”という指針は、大きく広まる。私達のコミュニティの存在と共に。

 

「僕の名前でコミュニティの存在を広める…」

「そういうことだ。更に言えば、今回の一件は絶好のチャンスだ。相手は魔王の傘下。ほぼ勝ちが約束されたようなゲーム。その被害者は数知れず。ここで御チビの名前を売れば…」

 

少なくとも、この外門付近のコミュニティへは広まるだろう。

そしてそれは時間が立てば、更に広まる。

まさに千載一遇のチャンスだ。

 

「まぁ、ジン坊っちゃんの言うように他の魔王を呼び寄せる可能性は大きいけれど。魔王自体は別に絶対に倒せない存在というわけでは無いのでしょう?」

 

たしか黒ウサギが言っていたハズだ。“魔王を倒せば魔王を隷属させる事ができる”と。

この言葉が、過去に魔王を倒した者がいる事の証明であり、何よりも。

 

「今のコミュニティに足りないのは、1に人材。2に人材。3、4も人材。5も人材。俺並みとは言わないが、俺の足元並みのヤツは欲しい。ま、伸るか反るかは御チビ次第。他に良い作戦でもあるなら、協力は惜しまないぜ?勿論エミヤもな」

「勝手に巻き込まないでくれる?まぁ、今回の件は別に構わないけれども…というか人材足りなさ過ぎるでしょう、ソレは」

 

じっと十六夜を見つめていたジンは、十六夜に対して逆に条件を出す。

 

「一つだけ条件があります。今度開かれる“サウザンドアイズ”主催のゲームに、十六夜さんとエミヤさんのお二人で参加して下さい」

 

十六夜に対してではなく、十六夜と私に対して、だった。

 

「要するに、俺達の力を見せろってことか?」

「当然のように私も参加が決定してるのね…」

「それもあります。ですが、それだけでなく、このゲームには僕らがとりもどさといけな、大事なモノが出品される」

 

大事なモノ?

名と旗印は魔王に奪われた。

ならばそれと同等に大事なモノとは何か?

 

「まさか……昔の仲間か?」

「はい。それもただの…という言い方は変ですけど、重要な…元・魔王の仲間です」

 

その言葉に、軽薄な十六夜の顔が一瞬で変わる。

その笑みは凄絶なものになり、一気に危険な雰囲気を漂わせる。

 

「へぇ?元・魔王様が昔の仲間か。コレの意味する物は多いぜ?」

「先代のコミュニティは、魔王と戦って勝利している、ということね?」

「はい。その通りです」

「そして、魔王を隷属させていても勝つことの出来ない」

「仮称・超魔王とも呼べる超素敵ネーミングの奴も存在しているって事だな?」

「そんなネーミングで呼んでいるのは貴方や飛鳥達ぐらいでしょうよ…」

「えぇと……魔王にも力関係はありますし、十人十色です。白夜叉様のように“主催者権限”を持っていても、今はもう魔王とは呼ばれていない者も居ます。あくまでも魔王とは“主催者権限”を悪用する者達の事ですから」

 

“主催者権限”自体は、ただのゲームを盛り上げる要素でしか無かった。

だが、それを悪用する者が現れ、“魔王”という言葉が生まれたのだとジンは語った。

 

「ゲームの主催者は“サウザンドアイズ”の幹部の一人です。僕らのコミュニティを滅ぼした魔王と何らかの取引の結果、仲間の所有権を手に入れたのでしょう。“サウザンドアイズ”は商業コミュニティ。ですので金銭で手を打てればと思ったのですが…」

「水も買えないほどの貧乏コミュニティですものね…」

「世知辛いなぁオイ。とにかく俺達はその元・魔王様の仲間を取り戻せばいいんだな?」

「そうです。お願い出来ますか?」

「分かったわ。まぁ、最大限努力はさせてもらうわ」

「はい。仲間を取り戻せれば、対魔王の準備も可能となりますし、十六夜さんの作戦も支持します。ですから黒ウサギにはまだ内密に……」

「あいよ」

「了解したわ」

 

そのまま十六夜は席を立ち、大広間の扉を開けて自室へと戻ろうとする。

その去り際、ふと閃いたように言う。

 

「明日のゲーム、負けるなよ」

「勿論です。ありがとうございます」

「負けたら俺とエミヤ、コミュニティ抜けるから」

「「は……?」」

 

何で負けたらコミュニティを抜けるの?

しかも何で私まで?

 

ジンと私の疑問をよそに、そのまま自室へと戻っていく十六夜だった。

 

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