問題児たちと正義の味方が異世界から来るそうですよ? 作:ベアッガイ
呼ばれてないのに来ちゃいましたよ?
そして再び目を開けると、そこは空中だった。
「って、なんでよ!!?」
ざっと上空4000mといったところに、突如として放り出されていたのだ。
落下の際の圧力を感じながらも、どうにか周囲を見回す。
眼前には見たことの無いような景色。
視線の先に広がる地平線は、世界の果てのような断崖絶壁。
眼下に見える、縮尺を見間違うほど巨大な都市。
………遠坂は、並行世界と言っていたが、目の前の光景は明らかに異世界と言っていいほどのものだ。
それはともかく、本来だったら、このような上空から落下しては、例え落下地点が水面だったとしてもバラバラに砕け散ってしまうだろうが、途中に幾重にも用意されていた緩衝材のような薄い膜があったために無傷で湖に落下する。
「きゃっ!」
「わっ!」
ボチャン!と、大きな音を立てて着水する。
どうにか湖から這い出し、周りを見ると、何故か一匹の三毛猫が少女に助け出されていた。あの子の飼い猫なのだろうか。
「し、信じられないわ!まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場で即ゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「……いえ。石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「仮に動けたとしても呼吸が出来なくて、すぐに死んでしまうでしょ…」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
「身勝手というか、化け物じゃない」
二人の男女は互いに鼻を鳴らして、服の端を絞る。
その後ろに続くように、先ほどの三毛猫を抱いた少女が続く。そして同じように服を絞っている。
「此処……どこだろう?」
「さぁな。まぁ世界の果てっぽいのが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねぇか?」
私も適当に服を絞り終え、改めて周りを見渡す。
どうやら私と同じように落下してきたのが三人いるようだ。
ヘッドホンをつけた、学ラン姿の少年。
大きな赤いリボンをつけた、どことなくあかいあくまを連想させる少女。
そして三毛猫を抱いた小柄な少女の三人だ。
まぁ、イリヤと同じ身体になった今の私が一番小さいだろうが。
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前達にも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。ーーー私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「……春日部耀。以下同文」
「そう。よろしく春日部さん。次に、野蛮で凶暴そうなそこの貴方は?」
初対面の相手にここまでとは。なんという高圧態度。
「高圧的な自己紹介をありがとうよ。見たまんま野蛮で凶暴な逆廻十六夜です。粗野で凶暴で快楽主義者と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背けるあかいあくまーーーではなく、久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
(見るからに問題児ばっかりみたいね……)
「それじゃ、最後に、そこの貴女。お名前は?」
と、ここで私に注目してくる三人。いや春日部耀はあまり注目していないようだが、残りの二人は中々に興味を持っているようだ。
「私はーーー」
名乗ろうとして、そこで思いいたる。
今の姿で衛宮士郎と名乗るのは如何なものかと。
そう、今の自分は見るからに日本人離れした外見の少女だ。
そんな人間が、衛宮士郎などと名乗ろうものなら、不可思議な顔をされること間違いないだろう。
仕方ない。
ただ、エミヤ、とだけ名乗ろうか。
それも不審に思われそうだ。
ではどうするか……そうだ、私はこの身体になって文字通りイリヤの妹になったのだ。
折角なのでアインツベルンを名乗らせて貰おう。
「私は、エミヤ、エミヤスフィール・フォン・アインツベルンよ。エミヤでもアインツベルンでもアーチャーでも好きに呼んでちょうだい」
「エミヤスフィール?変わった名前ね」
まぁついとっさに思いついた適当な名前だしね。それにしたってそれは無いだろうと、我ながら思うけれどさ。
こんな適当な名前を思いついた数秒前の自分を殴りたくなる。
「お前、随分と変わってるな」
「そうかしら?私としてはそこまで変わってるとは思わないのだけれど」
「ハッ、そりゃどんな冗談だ?お前ほど変わったヤツはそう見たことないぜ?」
「……そうね、まぁ、本当の事を言うと、すくなからず心当たりはあるにはあるけれど。それと、久遠飛鳥さんも言っていたように、私の事も“オマエ”なんて呼ばないでくれる?」
「了解したぜ、お嬢様二号」
「エミヤって呼びなさい」
「だが断る!」
「断るんじゃないわよ、このバカ!」
「ヤハハハ、そう褒めるな」
「褒めてないわよ……ハァ」
彼と話していると頭が痛くなりそうだ。
「あぁ、そうそう、言い忘れていたけれど、私は貴方たちみたいに変な手紙に呼ばれてここに来たわけじゃないのよ」
「あら、そうなの?それじゃぁ、どうやってここへ?」
「実は…元の世界で正義の味方をやっていたら、色々と問題になってしまって、世界中から追われて、死にかけていたから魔法使いの友人にこの世界に飛ばして貰ったのよ」
「「「…………」」」
私の言葉に三人共に微妙な顔して黙り込む。
久遠飛鳥の視線に至っては、明らかに可哀想なモノを見るソレだ。
逆に逆廻十六夜はこちらを値踏みするかのような視線を向けてくる。
「ま、まぁ、とにかく。私は自分の意思でこの世界に来たわけじゃないから、此処がどういう場所なのか知らないのよ。だからもし良ければ、この世界事を教えてもらえる?もしくは貴方たちを呼んだと思われる人の所に私も連れて行って貰えないかしら?」
「……此処は、箱庭、っていうらしいぜ」
「箱庭?それで、箱庭とはどういった場所なのかしら?」
「さて…な。俺たちもここに来たばっかで詳しくは知らないんだよ。招待状が来たからには案内人がいると思っていたんだが…」
「そうね、何の説明もないままでは動きようがないもの」
「……。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思うけど」
確かに。
冷静なのはいいことだが、この状況に適合するのが早すぎるだろう。この二人。
と、そこで気配を感じ、つい以前の癖でとっさに弓と矢を投影し構えてしまう。
警戒は微塵も揺らいではいないが、私はかすかに驚いていた。
(投影の負担がえらく軽いわね……)
そう、何故か魔術を使った際の魔力の消費などがすごく軽いのだ。
このあたりの違いからも、この世界が、少なくとも私が元いた世界とは大きく違う世界だということが分かる。
「って、貴女!?その弓と矢はどこから…」
「そこに隠れている者。五秒数える。その間に出てこないのならば、敵対する者と見なし排除する」
「オイオイ、見かけによらず随分と物騒なヤツだったんだな、お前」
「5…4…3…2…1」
そのまま矢を射かけようとした、その直前。
「ま、待って欲しいのです!私に貴方がたと敵対する意思はありませんですヨ!?」
声とともに、茂みからウサギの耳を生やした少女が出てきた。
ふむ、普通の人間ではないのは確かだが、彼女は一体どのような存在なのだろうか。
「敵対する意思が無いのなら、なんでさっきからずっと隠れてたんだ?」
「あら、貴方も気付いていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの猫を抱いてる奴も気付いてたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でも分かる」
「……へぇ?面白いなお前」
弓に矢をつがえたまま、警戒は最低限にする。
軽薄そうに笑っている逆廻十六夜の彼女を見る目は全く笑っていない。
どうやら上空4000mから湖に落とされた事が気に入らなかったようだ。他の二人も殺気の篭った冷ややかな視線を彼女に向けている。
さてさて、ようやく士郎さんことエミヤさんが箱庭の世界に来ました。士郎の名前は超適当に決めました。
だっていい名前が思いつかなかったんですよ!
なんでまぁ、無難にエミヤをもじりました。
誤字脱字など、あればご指摘ください。