ヤンデレの友人に監禁されて墜とされた   作:ふぅん

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六日目 最終日

「ハァ、ハァ、ハッ……うぐ、は……ううぅぅぅっ……。」

 

 夜もとっくり更けた中、今日に限って一人で就寝させられた八重は悪夢に魘されるようにガチャガチャと手錠を鳴らしながら身を捩っていた。

 どういうわけだか、赤く色染まった肌を大粒な汗がだらだらと流れ落ちていく。熱い熱いとうわ言を呟いて泣く彼女は冷気を求めるように大きな息を何度も吸い込んでいる。

 悶える度にベッドがギシギシと軋んで騒音を立てるせいか、扉を開けてあやせが様子を見に来た。

 

「熱い、熱いよぅ……助けて、誰かぁ……!」

 

 震える琴のような声が響く度にぷるぷると乳房を揺らして胸が上下する。水の入ったグラスをサイドテーブルに置いたあやせは汗でてらてら妖しく光る肢体を品定めして唾を飲んだ。

 弓なりにしなって浮いた腰を掬うように捕まえると、あやせは八重の汗に濡れた前髪を退けて頬を優しく叩いた。八重にだけ使う甘く蕩ける声音で名前を呼んで起こそうとする。

 小さな唸り声が二、三。ぱちりと目を開いた八重は僅かに視線を乱してあやせに擦り寄った。

 

「熱くて堪らない! 体が燃えそう……死にたくない。死にたくないよっ……!」

 

「私がいなくなった途端に……。一緒じゃないとおねんねもできないんだね。はい、お水飲んで?」

 

「んっ、んくっ、こく……。」

 

 炎のように熱が荒ぶる体を冷たい水が滑り落ちて八重の様子が少し平時のものに近付いた。

 小さな金属音がして八重の両手が自由になり、あやせは下から抱き竦められて八重に被さった。空になったグラスが嫌な音を立てて床に落ちたが、二人の意識には入らない。

 

「怖かったの……凄く怖かった……。」

 

「うんうん。私がいるからもう大丈夫。私が来て八重は安心できたでしょ? ちゃぁんと幸せにしてあげるからね。」

 

「うん、うん……!」

 

 手櫛で髪を後ろへ流し、両手で八重の頭を抱えたあやせは枕に押し付けるようにして押し当てた唇から早速舌を差し出した。

 夕刻とは打って変わって性急な様子だが、変わったのはあやせだけではなかった。押し返すほど荒々しく噛み付くように接吻を返し、ひやりと冷たいあやせをきつく抱く。

 

「んっふ……ぁう、冷たくてきもちいっぅむう……。」

 

「(水浴びてきたんだから。もっと求めて、もっと私を感じて、八重……。)」

 

 二人は互いの体を蠢かせて肌を重ねることで心を交える。淫靡な交わりを彷彿とさせるそれはやがてあやせによりそのものと化しつつあった。

 唇を食みあっていたはずが、八重の首筋にやわく歯を立てるあやせの手はいつの間にか乳房を慰みものにしているではないか。

 

「あや、せぇ……そういうことしないって、ひぐっ!」

 

「ふふふ、やぁえ? 私たち結婚したじゃない。夫婦が初夜を迎えるのは淫らじゃない。神聖なことなんだよ。」

 

「あぁっ? そんなっ、やっ……。」

 

 そう溜息混じりに囁きかけたあやせは八重の頬をベロリと舐めあげると、八重の腿を膝で割って手を潜らせた。足首をベッドに繋がれた八重に拒むことはできず、痛切とも愛悦ともつかぬ面差しに顔を歪めて顎を反らせる。

 

 

 

 

 

着信履歴

1件アリ

天海八重:###-✕✕✕✕-△△△△

 

「嫌な予感がする……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 六日目の朝、カーテンの隙間から刺した陽の光に催促されてあやせが瞼を開き、息苦しさに視線を下げれば愛らしいつむじが呼吸に合わせて上下していた。よほど疲れたのか涎を乳房に垂らして熟睡している八重を認めたあやせの頬が緩む。

 背中を摩ってやりながら頭を横に倒したあやせは床に転がる欠けたグラスに微笑んだ。

 ふと、むず痒いようなチクリとした感覚に目を戻せば、八重は赤子の様に乳房の先を口に含んで吸っていた。時折幼児退行の気が見られたのは間違いではなかったらしい。

 

「もう……可愛いなぁ。おっぱいおいしいかなぁー?なんて。」

 

 くすくすと含み笑いが抑えられないあやせは八重一人抱えたまま軽々とベッドから起き上がった。ちらりと、血の斑点が着いたシーツを見るが、流石に抱えきれない。ちゃんと八重の口に乳房を寄せながら横抱きにして、昨夜の最中に足から外して放り出した手錠を踏まないように部屋から出たあやせは風呂に向かった。

 あやせ自身は気にならない、むしろある意味では好ましいくらいだが、二人から立ち上る汗諸々の匂いは鼻を突く。折角結ばれたのだからデートに行こうと画策しているあやせは身奇麗にしておきたかった。

 脚を運ぶ度に股から走るズキズキとした痛みを是としながら闊歩して、風呂に到着したあやせは温かい程度の湯を八重の脚から掛けていった。それでもまだ目覚めず、八重はまるで乳飲み子になったようだ。

 

「真面目な八重だもん。きっと疲れてたんだよね? 一杯甘えていいよ。」

 

 あやせの子守唄とシャワーの湯が肌を叩く音が浴室に谺する。丁寧に丁寧に体を洗い続けて半時くらいは過ぎただろうか、不意に視線を感じたあやせは八重の顔を見返した。いつの間にか目覚めていた八重の甘ったるい眼差しに微笑みを返す。

 

「おはよう。」

 

「ん。」

 

 ボディソープに塗れた腕があやせの体を這い上って肩に回ると、八重はのろのろと体を動かして向き合う形で腰に跨った。

 遠慮なく預けられた体重を受け止めながら八重の小さな背中にもボディソープを塗りたくっていると、あやせは肩にちくりと痛みを感じた。確認すれば八重が噛み付いている。宥めるように背中を摩ってやれば、八重は何事か唸って力を抜いた。

 

「あやせも洗ってあげる。」

 

「やだ、ちょっと! くすぐった……あはは!」

 

 文字通り体を使って擦り始めた八重に捕まったまま、あやせはこそばゆい感触に悲鳴を上げる。脇やうなじをぬるぬるとした八重の指が擽ってくるのだ。

 脚をバタバタさせて悶えるあやせの敏感な場所が容赦なく蹂躙される。

 

「やめっ、やっえ! はひぃ、くふぅふふっ!」

 

「夜の仕返しー。もっと酷いことしてあげるんだから。」

 

「きゃああッ!? どこさわっ、だめだめだめ! あぐっ……ちょっ、はいっ……。」

 

「ふーんだ。」

 

 何のかんのと楽しそうにじゃれていた二人はのぼせるまで風呂場にいてしまい、いくらかげっそりした面持ちで上がってきた。

 

 六日目にして、新垣宅で監禁されてからほぼ初めて二人揃って服を着たままの生活である。八重も拘束具を一切着けずに動き回っている、普通の光景だ。

 敢えておかしなことを挙げれば料理の最中に味見を口移しでしたりと、同性同士で距離が近いことだろうか。

 そんな至極一般的な様子を装った新垣家の前に、高坂桐乃は顔を険しく歪めて立っていた。傍らには兄と友人が二人。

 

「ちょっと? 何なのよ。急に呼び出したかと思えば。」

 

「新垣氏の家でござるなぁ。」

 

「何も言わずに着いてきて、何かあったら助けて。」

 

 桐乃らしからぬ殊勝な物言いに眉を顰めた黒髪の少女は口を噤み、やたらと背の高い眼鏡の女性は頭を掻いた。

 ずかずかと門扉を開いて玄関前に行った桐乃は“外側”に取り付けられたドアチェーンを見て確信する。中で異常な事態が起こっているのだと。

 

「…………なるほど。大体の所は把握したわ。」

 

 振り返った桐乃は画面の割れた携帯電話を見て目を細めた友人に頷く。携帯電話は数日前に着信を残してから消息を絶った天海八重のものに違いない。

 ドアチェーンを外した桐乃はバタバタと家の中に上がり込んだ。不法侵入だとかそういうことは今この時は考えから捨てた。スピーカーを通したテレビのものであろう声を聞いてリビングの扉を開け放つ。

 刹那、人影を探して左右に揺れた瞳がテレビの前にあるソファーに固定された。

 

「あれ、桐乃。来れないんじゃなかったの?」

 

 きょとんとしたあやせが桐乃を見て首を傾げている。そのあやせの膝に座って抱き締められている誰かを確認すると、桐乃は自身でも驚くほど低い声が出ていた。

 

「あんた、何やってんの?」

 

「何って、八重とテレビ見てるだけじゃない。ねー、八重。」

 

「んぅ?」

 

 後ろから抱かれて影になっていた八重がコテンと前に屈んで顔が見えた時、桐乃は見た情報と聞いた情報が噛み合わずに首を傾げた。

 “あの娘は誰だ?”と。

 天海八重は少し癖っ毛で、目はぱっちりとした猫目、意志の強さを感じさせるピンと張った声がチャームポイントの格好のいい少女だ。

 しかし、目の前の子は絹を連想する直毛に目尻は垂れ下がった優しい瞳、声はのんびりとした柔らかい声音で、香り立つような色気を放つ正反対の少女だ。

 

 何故新垣あやせはこの子を天海八重と呼称している?

 

「……堕ちる所まで堕ちたってわけね、新垣さん」

 

「う、そ……」

 

 にこにこと見たことのない笑顔を浮かべている――――は天海八重だった者なのだと、そう理解してしまった桐乃は頭が白亜に染まった。

 目の前であやせに撫でられた――――が無邪気に笑う。

 二人は幸せそうに接吻を交わして戯れ始めた。まるで二人しかいない世界を画面越しに見ているかのように、彼女たちは隔てられていた。

 

 

 

 

 

 

「大好きだよ、ヤエ」

 

「えへへ、私も!」

 

 

 

 

 

 悪夢ならば早く醒めてと、高坂桐乃は祈りながら涙を零す。








これまでご愛読頂きありがとうございました。
作中についての質問があれば感想ついでにお聞き頂ければお答えします。
次は何を書くか決めていないのでしばらく投稿はないのですが、また御贔屓にして頂ければ嬉しいです。
これにて新垣あやせと天海八重の純愛ラブストーリーは閉幕。
めでたしめでたし。
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