短編初挑戦です。
絵に描いたような天真爛漫さ。
そして、そこからは考えられないほどの、底知れない強さ。
圧倒的な存在感。これが女神パープルハート、ネプテューヌさん。
侮っていたつもりなんて微塵もない。あたしの目標とするお姉ちゃんと同じく、ネプテューヌさんもこのゲイムギョウ界の四女神の一人だから。
でも、変身後の姿ならまだしも普段のネプテューヌさんにはどうしてもだらけているイメージが強い。
だからこそあたしは今、お姉ちゃんとはまた違ったネプテューヌさんの女神としてふさわしい格のある戦い方に魅入られ、ただ立ち尽くしてしまっていた。
「……どったのユニちゃん?どっか痛いところでもある?」
そんなあたしに、ネプテューヌさんはいつものような笑顔で問いかける。
「いえ、大丈夫です」
「堅苦しいなぁ、わたしにもネプギアと話す時みたいな感じで良いのに。何ならタメ口でもいいよ!」
「それはちょっと……」
あ、色々と説明が遅れてしまった。今あたしはネプテューヌさんと2人でダンジョンに来ていて、丁度討伐依頼のクエストが出ていたモンスターを倒し終わったところである。
なぜネプテューヌさんと二人で来ることになったかと言うと……
『いやぁ、今朝ネプギアがビームソードの調整をしてた時にさ、久しぶりのユニちゃんとのクエストだー! って張り切りすぎて出力の桁一つ間違えちゃったらしくて、ビームソードが持ち手部分ごと消し飛んじゃったんだよね』
『何やってんのよネプギア……』
『いーすん曰く新しいのを用意するのに三日かかるらしいし、その間ネプギアは戦闘系のクエストはできないからさ。変身すればいいけど常に変身しているとエネルギー効率が悪いし』
『それを伝えるためにわざわざ来てくれたんですか?ありがとうございます。ネプギアったら連絡ぐらいしてくればいいのに……』
『あ、違う違う! わたしがネプギアにはあえて連絡させなかったんだよー!』
『え?』
『たまにはわたしがユニちゃんと一緒にクエスト行こうかなぁ……って』
『ええー⁉︎』
『そ、そんなに驚く……? まぁユニちゃんが嫌ならいいけどさ』
『嫌じゃないですよ! けど……あたしでいいんですか?』
『わたし一回ユニちゃんと二人で一緒に戦ってみたかったんだよね。だから、今日はよろしくね!』
『は、はい……よろしくお願いします』
……ということがあり、ネプテューヌさんの勢いに押されて二人でクエストに来ることになったわけだ。
ネプテューヌさんとお姉ちゃんはとても仲が良くて、あたしもネプギアと仲が良いから、プラネテューヌかラステイションのどちらかの教会に集まることが多くて、ネプテューヌさんとあたしが顔を合わせることも多いけれど、こうやってネプテューヌさんと2人きりになることは稀だ。
ネプテューヌさんと一緒に戦ったことがないわけじゃない。幾度となくこのゲイムギョウ界の危機が訪れた時には、同じ場所で共に戦ってきた。けど、それはあたしとネプテューヌさん含む女神全員が共にということで、二人きりで戦うのはこれが初めてだと思う。
「これでクエスト完了だね! それにしても中々強いモンスターだったね。ネプギアとユニちゃんはこんなのに挑もうとしてたのかぁ、わたしもうかうかしてられないなー」
「あはは……」
あたしとネプギアは言葉が要らないほど連携の練度が上がってきている。一人では厳しい相手でも二人ならば容易く倒せてしまうほど。だから今回はかなり強いモンスターを討伐するクエストに挑むことにした。
ネプテューヌさんがネプギアよりも強いのは当たり前のことだけど、あたしはネプテューヌさんと二人で戦ったことはないから、ちゃんと連携ができるか不安だった。連携が上手くいかないせいで負けてしまう可能性もあるのではないかとすら思っていた。
が、それは杞憂だった。確かに連携の練度はネプギアとの方が上。でも、ネプテューヌさんの動きに合わせようとしたら、自然とあたしは動きやすい戦い方をすることができていた。
ネプテューヌさんは上手いんだ、他人と一緒に戦うのが。戦いだけじゃない、他人と一緒に何かをするのが。だから女神とか教会とか信仰とかそういうこと無しに友達が多いのだろう。……お姉ちゃんを『ぼっち』っていじるだけのことはある。
それはあたしの理想とする女神像じゃないけど、それもまた確固たる女神の資質。いや、理想とする女神像じゃないんじゃない。あたしにはこの人の生き方は真似できない。
お姉ちゃんのような女神にはあたしもすごく時間をかければなれるかもしれない。でも、あたしがネプテューヌさんのような女神になることは不可能だろう。
ネプギアが気の毒だ。この人を間近で見続け、目標としなければいけないんだから。あたし、お姉ちゃんの妹で良かったなぁ……
「あのさ、ユニちゃん!」
「は、はい! 何ですか⁉︎」
「……わたしそんなに怖いかなぁ。ゲイムギョウ界で最もフレンドリーな女神って言われてるんだけど……」
「違うんです……その、ネプテューヌさんがいつもの姿から考えられないぐらいかっこよかったから驚いちゃって……」
「……ユニちゃん可愛いね。わたしの妹にならない?」
「え⁉︎ それは無理ですよ!」
「あはは、冗談だよ冗談……話を戻すけど、ユニちゃんに頼みたいことは別にあってね」
「あたしにできることなら、何でも言ってください!」
「そんな堅苦しいことじゃないよ。ええと、それはね………………」
*
ネプテューヌとユニが共にクエストに行ってから数週間後、プラネテューヌとラステイションの国境沿いに突如として大量のモンスターが発生したという緊急報告が入り、それぞれの国の守護女神と女神候補生の四人が共同で討伐にあたっていた。
「雑魚ばかりだと思っていたけれど、そこそこ強いのも混ざっているわね!」
「少しでも倒し漏らしたら……」
「ええ、国民を危険に晒すことになるわ!」
「だから、私たちがここで殲滅します!」
いつも以上に真剣に戦う女神たちにより、みるみるモンスターの数が減っていく。しかし、先程ブラックハートの言っていたような強力なモンスターはまだ多数残っていた。
(私のこの位置……そしてユニちゃんの位置……そうだわ!)
何か思いついたようで、ブラックシスターに視線を送るパープルハート。
(ネプテューヌさんから視線……? あたしたちの位置……あっ! わかりました、ネプテューヌさん!)
ブラックシスターはその意図を理解し、パープルハートに視線を返して頷く。
(気づいてくれたようね……行きましょう、ユニちゃん!)
「「『ブラストコンビネーション』‼︎」」
ネプテューヌとユニの連携技『ブラストコンビネーション』。数週間前まではこんな技は存在しなかった。その数週間前、ネプテューヌとユニが共にクエストに行った際の……
『そんなに堅苦しいことじゃないよ。ええと、それはね、わたしとユニちゃんの連携技を作ろうってこと!』
……というネプテューヌの提案により、クエスト終了後に二人で練習し編み出した技である。
その連携技の秘訣は、姉妹や親友同士とは異なる『友達の姉妹』という『適度な距離感』。ネプテューヌの得意とする近距離攻撃とユニの得意とする中遠距離攻撃を
「やったわね、ユニちゃん!」
「えへへ、そうですね、ネプテューヌさん!」
笑顔でハイタッチする二人。しかし、その後ろから迫り来る影があった。
「ネプテューヌ……っ!」
「どうしたの、ノワール?」
「何よ今の技……っ! ユニは……ユニは私の大事な妹なのよ……! 人の妹を誑かして……許せない!」
「えぇっ⁉︎」
「……どうやら倒さなきゃいけない敵が一人残っていたようね……っ!」
「ちょ、ノワール、落ち着いて!」
「ネプテューヌぅう! 覚悟ぉおお‼︎」
その心に嫉妬の炎を燃やし、さっきまで共に戦っていたパープルハートに襲いかかるブラックハート。
「お、お姉ちゃん……」
突然に謎の醜態を晒す姉に狼狽つつ、それを止めようとするブラックシスターであったが、そこにはもう一つの影が迫っていた。ドス黒いオーラを纏ったネプギア、パープルシスターである。
「……ユニちゃん」
「ネプギア?」
「ねぇ、何今の? いつからユニちゃんはお姉ちゃんとそんなに仲良くなったの? お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなんだよ? 私からお姉ちゃんを取るつもりなの?」
(目に……ハイライトがない‼︎⁇)
「あはははは……なんだろうこの気持ち。ユニちゃんにお姉ちゃんを取られたから? それともお姉ちゃんにユニちゃんを取られたから⁇ わからないや! あははははは‼︎」
「お、落ち着きなさいネプギア!」
「ユニちゃん、ちょっと向こうで『おはなし』しようよ」
「剣を構えながら何が『おはなし』よ! ていうか何その禍々しい紫の剣⁉︎ どっから出したのよ⁉︎」
「ユニちゃん!」
「ネプテューヌさん⁉︎」
「ネプギアとノワールが落ち着くまで逃げるわよ!」
「は、はい!」
「待ちなさいネプテューヌぅううう‼︎」
「あはははは! 待ってよユニちゃーーん‼︎」
「「ひぃぃぃっ!」」
こうして、四人の女神によりそれぞれの国の危機は去った。しかし、その内の二人に迫る新たな危機がどうなったかを、当事者以外に知るものはいない。
ネプユニの適度な距離感が好きです。ネプCPを導くのはネプノワでもネプブラでもなくこのネプユニです(開戦の合図)。