数百年生きる妖怪がVtuberになった件   作:鬼怒藍落

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収益化記念雑談枠&凸待ち その参

 やってきた……というよりやってきてしまったのは奴良瓢鮎先輩。

 とりあえず彼女が来た以上何かを喋らないといけないのだが、混乱が大きすぎるせいか何を話せばいいか分からない。

 

「ッすぅー……いい天気、ですよね?」

 

 だから儂はとりあえず、さっき変化した幼女のままで俺は当たり障りのない天気の話題で乗り切ろうとした。

 

[混乱しすぎてて草]

[今日は全国的に雨なんですけど……]

[豪雨定期]

[台風ですよ?]

[何が見えてるのこの鴉]

 

 言ってから気付いたからツッコまないでほしい。

 確かに今雨じゃん? なんなら豪雨というか台風直撃で外が悪天候極まってるけどさ……もうちょっとなんか話題あったよなぁとか遠い目になりながらも俺は反応を待つことにする。

 

「バーチャル江戸は今も晴れてるからな! 改めてだがオレは妖ぷろ百鬼夜行の主、奴良瓢鮎だ。よろしく頼むぞ、浮世鴉!」

 

 フォローをしてくれるどころか、さりげなく自己紹介にまで繋げる手慣れた感じ。

 初の凸待ち……それも推し達との配信上での初絡みという限界状況で会話デッキすら組めてなかったが、その姿勢で儂の意識が切り替わる。

 

「――あぁ、よろしく頼むのじゃ奴良先輩」

 

 緊張がなんだ。

 相手は何年も配信をしているプロであり、胸を借りるつもりでやればいい。

 今の儂は配信者、一挙一動一言で視聴者を楽しませなければいけない。慌てふためいてるだけの姿だけを魅せるだけでは飽きも来るだろう。

 

「確かに先輩なんだけどよ、それじゃあ距離感じるから呼び捨てでいいぜ?」

「…………たいむ貰っても良いか?」

「おう? いいぞ」

 

 とりあえずタイムを貰う。

 もう既に負けている気がするが、推しに呼び捨てでいいぞはなんかあれじゃん? 感情がぐちゃぐちゃになるというか、ぱないじゃん。

 

 消える語彙に荒れ狂う感情。

 冷や汗を流すわけではないが、色んな物が混ざって凄いというかやばいというか。

 ミュートしてマヨイビト達に助けを求めたいが流石に凸待ちでミュート芸するのは間違っているだろう。

 

 考えろ浮世鴉。

 あいきゅーごせんの儂の頭脳を全て活かして、この場を乗り切れ……頭を使うんだ。前へ進め、諦めるな。儂は大妖怪であり、すぐ負ける即落ち鴉ではないのだ。

 回る思考に過ぎる時間。

 神の一手を探りながらも儂が選んだ手段は……。

 

              【助けてマヨイビト】

 

 字幕を使って、視聴者に助けを求めるという最善手だった。

 

[くそざこ]

[ざーこ]

[気持ちは分かるけどw]

[お労しや、鴉殿]

[源鶫:過去一弱いですね!」

 

 仕方ないじゃん鶫。

 儂じゃ答えでなかったんだもん。

 ずっと会話を続けるためにも、何より彼女に楽しんで貰うためにも儂は全力で立場を利用する。

 

 俺に儂に、浮世鴉という名のあやかしに、再び熱を与えてくれた彼女が来てくれたんだどうせならこの配信を全て使って、一つのライブを完遂する勢いで――。

 

[アンケート使おうぜ]

[呼び捨ては入れよう]

[これだから鴉は]

[今回だけなんだからね!]

 

 そういえば配信してるのに最近追加された機能にアンケートなる物があった。

 それに助けられた俺は、すぐさまその機能を使い三つの選択肢を視聴者の皆に与えることにした。

 

 選択肢は呼び捨て、このまま先輩呼び、そして決めて貰うの三択。

 最後の一つはほぼ天恵だが、これが選ばれることはないだろう。だってさ、あれだぜ? 先輩は呼び捨てを希望しているわけだし、俺としては先輩と呼びたい。

 三択目を選ばれたとしても、呼び捨てが選ばれるという実質二択の高度な作戦。呼び捨てならばめっちゃ超ギリ許容範囲だし、少し遊びを加えたこれならば……。

 

「あれぇ、なんで三択目が多いのぉ?」

「ん? どうした浮世鴉、なにかあったのか?」

「なんでもないのじゃ……のう、先輩。他に呼んで欲しい呼び方とかあるか?」

「それならひょうちゃんで頼むぞ?」

「オッケー待ってくれ先輩とてもウェイトじゃ」

「……ん?」

「その何言ってるか分からないみたいな間は止めるのじゃぁ……」

 

 え、どういう状況これ。

 流石先輩予想を超えてくるって褒めればいい?

 それとも齎された選択肢に噎び泣けばいいのか? 

 パソコンの前、非常に混乱した俺は何度か変化を繰り返し……最終的に元の姿に落ち着いて……そのまま彼女に訳を聞くことに。

 

「呼び捨ての話はいずこに?」

「そいつならさっき山に帰ったぞ?」

「それなら仕方ないのう……でもなにゆえひょうちゃんなのじゃ?」

「鴉の配信見てて思ったんだよな……ひょうちゃん呼びで甘やかしてほしいってさ」

「――へ?」

「あ?」

 

 絶句、後に混乱。

 これは、試されているのか? 

 やれというフリなのか? でもそれは、何だろうか距離感バグってね? 流石にあれじゃん、どういう状況なの? 欲望過ぎないか?

 

[首塚から出れない生首:こいつやりやがった]

[フルスロットルで草]

[いつになくバグってて笹]

[弟子とは良いものだ:流石ぬらりひょん汚い]

 

 横目でコメント欄を見てみれば、そこには酒呑童子と鞍馬天狗のニックネームが、此奴等も先輩の配信見てるんだなとか思考が逸れながらも、俺は他のコメント的に望まれてるのが分かったので……。

 

「やるかのう、いつにするのじゃ?」

 

 ……にしても甘やかすって何だ?

 前のホラーゲーム配信みたいにママ化すればいいのかとも思ったが、それはなんか違う気がして、でも即興でやるには難しく……そこで俺が決めたのは次の配信に回すという事だった。

 

「駄目元だったけどいいのか! なら今度コラボしよぜ!」

「駄目元ならやめるのじゃ……まぁともかく甘やかす配信決定じゃな。自分で言って何言ってるか分からないのじゃが責任とって欲しいのう」

「ん、そんなのいつでもとるぞ?」

 

 言動がスパダリ過ぎて笑う。

 いつも見ていた頃から思うが、奴良先輩……ひょうちゃんは精神性がイケメンすぎる気がするのじゃ。

 

「まぁそろそろ二時間経つし、今日凸する奴らはもういないだろうから帰るんだが……浮世鴉、妖ぷろに来てくれてありがとな! これからも一緒に頑張ろうぜ」

 

 そして、最後に彼女はそう言った。

 笑って、心の底からの本音で……浮世鴉という妖怪が受ける感情を理解できるという特性を持つからこそ、その言葉が嬉しくてさっきまでの全てが吹っ飛ぶような衝撃を受けて。

 

「あぁ、そうじゃな……よろしく頼むぞ、ひょうちゃん」

 

 そして、楽しかったなと儂も心から思えて……この配信を終えた。




お久しぶり過ぎますがお久しぶりです。
この作品を更新しない間に、別作品の書籍化が決まったりと大学があと一年で終わったりと色々ありましたが、半年ぶりくらいなのにもかかわらず読んでくれて感謝です。
それと一つお願いなんですが、今カクヨムで開催されてるGA文庫大賞に妖怪Vのカクヨム版を応募してまして、どうかそちらの方も読んで応援してくれると嬉しいです。
一応下にURLを貼っておきますので、気になったり頑張れー的な想いがあったらどうかお願いします。
https://kakuyomu.jp/works/16816700429574799900
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