零人「ウサギ肉って美味いって聞くけど実際どうなん?」 「「「食うなよ!?」」」
〔ハジメside〕
魔法陣の光に満たされた視界、何も見えなくとも空気が変わったことは実感した。奈落の底の澱よどんだ空気とは明らかに異なる、どこか新鮮さを感じる空気に頬が緩む。
やがて光が収まり目を開けた俺たちの視界に写ったものは……
どこからどう見ても洞窟だった。
ハジメ「なんでだーーー!?!?!?」
魔法陣の向こうは地上だと無条件に信じていたのに、代わり映えしない光景に思わず半眼になってツッコミを入れてしまった。とりあえず、零人にアイアンクローでもお見舞いしておこう。
零人「痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
ハジメ「どういうことか説明しろ」
零人「隠れ家なんだから入り口も隠すのが鉄則でしょうが……!」
ハジメ「あ、そういえばあそこ隠れ家だったな」
そんな簡単なことにも頭が回らないとは、どうやら自分は相当浮かれていたらしい。頭をカリカリと掻きながら気を取り直す。
ハジメ「んで? 出口はどこだ?」
零人「先に俺に謝ってくんない!?」
ハジメ「だが断る」
零人「ひどい! 帰ったら訴訟してやる!」
ハジメ「証拠があればな。ほら、さっさと案内してくれ」
渋々案内を始めた零人の後ろをついていき、途中、幾つか封印が施された扉やトラップがあったが、オルクスの指輪が反応して尽く勝手に解除されていった。一応警戒していたのだが、拍子抜けするほど何事もなく洞窟内を進み、遂に光を見つけた。外の光だ。近づくにつれ徐々に大きくなる光、外から風も吹き込んでくる。奈落のような澱んだ空気ではない。ずっと清涼で新鮮な風だ。喜びのあまり零人の静止を聞かずに走り出す。
そして、俺と香織、ユエは同時に光に飛び込み……待望の地上へ出た。
……はずだった。
零人「あ、そここの前防犯用で掘った落とし穴あるから気を付けてねー」
「「「早く言えー!?!?!?!?」」」
やっと地上に出れたと思ったら直前で馬鹿が作った落とし穴に3人仲良く落ちてしまった。だいたい5mぐらい深いやつ。
零人「ごめんごめんw ロープ下ろすわ」
下ろされたロープを掴み、落とし穴から這い上がる。
まったく……最後の最後まで締まらねぇ。
ハジメ「なんでこんなとこに落とし穴作ってんだよ!?」
零人「だから防犯用だって! 侵入者が勝手に落ちてくれる便利なやつ!」
ハジメ「俺たちも落ちたんだが?」
零人「それは……嬉しさのあまり飛び出した三人が悪い!」
香織「零人くん、開き直らないの」
香織が苦笑しながら服についた土を払う。俺もコートを軽く叩き、ため息を吐いた。
……だが、その時だった。頬を撫でる風。鼻をくすぐる草木の匂い。奈落では決して感じることのなかった暖かな陽射し。
(……ああ)
思わず足が止まる。見上げた先には、どこまでも広がる青空があった。暗闇しかなかった世界とは違う。眩しいくらいの光が、俺たちを包み込んでいた。
零人「……戻って来たんだな」
その一言が胸に染みた。俺は静かに頷く。
ハジメ「ああ……帰ってきた」
隣ではユエが空を見上げている。その金色の瞳は、どこか潤んで見えた。
ユエ「……ん」
自然と腕が伸びる。ユエを抱き寄せると、小さな身体は何も言わず抱き返してきた。温もりがある。鼓動が伝わる。
(生きてる)
それだけで、胸の奥が熱くなった。
ハジメ「よっしゃぁぁぁ!! 帰ってきたぞ、この野郎ぉぉぉ!!」
ユエ「んっ!」
勢いのままユエを抱え、くるりと回る。ユエも珍しく声を上げて笑った。その笑顔を見た瞬間、張り詰めていた何かがぷつりと切れた気がした。
香織「……ハジメくん」
振り返る。香織は少しだけ目を赤くしながら微笑んでいた。奈落へ落ちてから、何度も俺を信じ続けてくれた少女。
俺はユエをそっと降ろし、今度は香織へ歩み寄る。
ハジメ「ただいま」
香織「……うん。おかえりなさい」
胸へ飛び込んできた香織を抱き留める。細い肩が小さく震えていた。
香織「本当に……無事でよかった」
ハジメ「心配かけたな」
香織「いっぱい心配したんだから……あとでちゃんと埋め合わせしてね?」
ハジメ「善処する」
香織「善処じゃなくて約束」
くすりと笑う香織の頭を軽く撫でる。その様子を見たユエが、少しだけ頬を膨らませながら俺の袖を掴んだ。
ユエ「……わたしも」
ハジメ「はいはい」
苦笑しながら今度はユエの頭も撫でる。
全く、二人とも。
(……こんな日が来るなんてな)
奈落に落ちたあの日は想像もしなかった。もう二度と地上へは戻れないと思っていた。だからこそ、この何気ない時間が何よりも尊い。
零人「……青春してるところ悪いんだけどさ」
ハジメ「なんだ?」
零人「後ろ後ろ」
嫌な予感がした。
振り返ると――そこには、谷底の岩陰から次々と姿を現す魔物の群れ。何十という視線が、一斉にこちらを睨みつけていた。
ハジメ「……ったく」
帰還の余韻くらい味わわせろよ。ドンナーを抜きながら、思わず肩を竦めた。そういや、ライセン大峡谷って魔法が使えないんだったか?
ハジメ「ユエ魔法使えるか?」
ユエ「……分解される。でも力づくでいく」
ライセン大峡谷で魔法が使えない理由は、発動した魔法に込められた魔力が分解され散らされてしまうからである。もちろん、ユエの魔法も例外ではない。しかし、ユエはかつての吸血姫であり、内包魔力は相当なものであるうえ、今は外付け魔力タンクである魔晶石シリーズを諸々所持している。つまり、ユエ曰く、分解される前に大威力を持って殲滅すればよいということらしい。
ハジメ「2人はどうだ?」
後ろを振り返って香織と零人にも聞いてみる。
香織「私も同じ感じかな。魔法使わなくても魔力が減ってく感覚があるよ」
零人「俺は慣れたから問題なし!」
……これは慣れるものなのか?まあ、いいか
ハジメ「力づくって……効率は?」
ユエ「……十倍くらい」
効率悪ー。どうやら、初級魔法を放つのに上級レベルの魔力が必要らしい。射程も相当短くなるようだ。
ハジメ「あ~、じゃあ俺と零人がやるから2人は身を守る程度にしとけ」
香織「えっ……でも」
ハジメ「いいからいいから、適材適所。ここは魔法使いにとっちゃ鬼門だろ? 任せろ」
ユエ「ん……わかった」
香織とユエが渋々といった感じで引き下がる。せっかく地上に出たのに、最初の戦いで戦力外とは納得し難いか。少し矜持が傷ついたようだ。唇を尖らせて拗ねている。そこも可愛い。
そんな2人の様子に苦笑いしながらおもむろにドンナーを発砲する。やつらを見もせずに、ごくごく自然な動作でスっと銃口を魔物の一体に向けると、これまた自然に引き金を引いた。
あまりに自然すぎて攻撃をされると気がつけなかったようで、取り囲んでいた魔物の一体が何の抵抗もできずに、その頭部を爆散させ死に至った。辺りに銃声の余韻だけが残り、魔物達は何が起こったのかわからないというように凍り付いている。確かに、十倍近い魔力を使えば、ここでも〝纏雷〟は使えるようだな。問題なくレールガンは発射できる。流石に火薬のみだとあいつらには効かないだろうな。
未だ凍りつく魔物達に不敵な笑みを浮かべる。
ハジメ「さて、奈落の魔物とお前達、どちらが強いのか……試させてもらおうか?」
零人「うわぁ……、スッゲェ悪人顔」
ハジメ「うっせ」
スっとガン=カタの構えをとり、殺意を宿す。俺を見た周囲の魔物達は気がつけば一歩後退っていた。
常人なら其処にいるだけで意識を失いそうな壮絶なプレッシャーが辺り一帯を覆う中、遂に魔物の一体が緊張感に耐え切れず咆哮を上げながら飛び出した。
「ガァアアアア!!」
ズドンッ!!
しかし、ほぼ同時に響き渡った銃声と共に一条の閃光が走り、その魔物は避けるどころか反応すら許されず頭部を吹き飛ばした。
そこから先は、もはや戦いではなく蹂躙と言う名の惨劇。魔物達は、ただの一匹すら逃げることも叶わず、まるでそうあることが当然の如く頭部を吹き飛ばされ骸を晒していく。辺り一面が魔物の屍で埋め尽くされるのに2分もかからなかった。とりあえず合掌しとくか。
その傍に、トコトコとユエが寄って来た。
ユエ「……どうしたの?」
ハジメ「いや、あまりにあっけなかったんでな……ライセン大峡谷の魔物といやぁ相当凶悪って話だったから、もしや別の場所かと思って」
ユエ「……ハジメが化物」
ハジメ「ひでぇ言い様だな。まぁ、奈落の魔物が強すぎたってことでいいか」
香織「かもね。もしかしたらこの峡谷にも裏ダンジョンあるんじゃないかな?」
ハジメ「そうであって欲しいな。そういやあいつは?」
倒した魔物を宝物庫にしまいつつ聞いてみる。そしたら2人同時に憐れみの目で奥の方を指差した。
そっちの方を見てみると俺が作った惨劇よりも酷い有様だった。俺が倒した数よりも少し多いのも相まって血の量も多いのはわかるが問題は作り方だ。目に見える範囲の死体には首から上が無く何体からは倒れずいまだに噴水のように噴き出している。そこまでならいいが何故か死体の山を作ってその上でガッツポーズしながら剣を上に掲げているのでシュールになってやがる。
ハジメ「……何やってんだおめぇは」
零人「おっ、そっちも終わった?いやぁ、作ってもらった剣が使いやすくてさ。張り切り過ぎたぜ」
いや、そうじゃ無くてだな。めんどくさいからこのままでいいか。ちなみにこいつが使っているのは軽量型の蛇腹剣だな。俺が作ったやつ。あいつ筋力が27524あっても何故か握力が弱すぎたからできるだけ軽めで使いやすいやつを考えたらロマン100%で蛇腹剣になった。サブ武器はナイフ2本とストライクウォーリアモチーフの電磁式ハンドガンを一丁持たせてある。
とりあえずドンナーをホルスターにしまって辺りを見回す。
ハジメ「さて、この絶壁、登ろうと思えば登れるだろうが……どうする? ライセン大峡谷と言えば、七大迷宮があると考えられている場所だな。せっかくだし、樹海側に向けて探索でもしながら進むか?」
香織「なんで、樹海側?」
ハジメ「いや、峡谷抜けて、いきなり砂漠横断とか嫌だろ? 樹海側なら、町にも近そうだし」
ユエ「……確かに」
零人「俺もそれに賛成。そろそろちゃんとした食事がしたいし」
俺の提案に、全員頷いた。魔物の弱さから考えても、この峡谷自体が迷宮というわけではなさそうだ。なら、別に迷宮への入口が存在する可能性はある。俺たちの〝空力〟やユエの風系魔法を使えば、絶壁を超えることは可能だろうが、どちらにしろライセン大峡谷は探索の必要があったから、特に反対する理由もないか。
右手の中指にはまっている〝宝物庫〟に魔力を注ぎ、魔力駆動二輪を取り出す。颯爽と跨り、後ろに香織が横乗りして腰にしがみついた。零人も俺のより少し小型の魔力駆動二輪を取り出してユエを後ろに乗せている。
この魔力駆動二輪は普通のバイクと違ってガソリンとかの燃焼を利用しているわけではなく、魔力の直接操作によって直接車輪関係の機構を動かしているので、駆動音は電気自動車のように静かである。俺としてはエンジン音がある方がロマンがあると思ったんだが例との心臓に負担をかけちまうから止めといた。ちなみに速度調整は魔力量次第である。まぁ、ただでさえ、ライセン大峡谷では魔力効率が最悪に悪いから、あまり長時間は使えないだろうがな。
ライセン大峡谷は基本的に東西に真っ直ぐ伸びた断崖らしい。そのため脇道などはほとんどなく道なりに進めば迷うことなく樹海に到着するはずだ。極端の方向音痴でない限り迷う心配が無いので、迷宮への入口らしき場所がないか注意しつつ、軽快に魔力駆動二輪を走らせていく。車体底部の錬成機構が谷底の悪路を整地しながら進むので実に快適だ。もっとも、その間も魔物が襲ってくるから忙しなく武器を動かし続け、一発も外すことなく襲い来る魔物の群れを蹴散らせているんだが。
しばらく魔力駆動二輪を走らせていると、それほど遠くない場所で魔物の咆哮が聞こえてきた。少なくとも今まで相対した谷底の魔物とは一線を画すようだがどうせ瞬殺なんだろうが。もう三十秒もしない内に会敵するだろう。
魔力駆動二輪を走らせ突き出した崖を回り込むと、その向こう側に大型の魔物が現れた。かつて見たティラノモドキに似ているが頭が二つある。双頭のティラノサウルスモドキだ。
だが、注目すべきなのは双頭ティラノではなく、その足元をぴょんぴょんと跳ね回りながら半泣きで逃げ惑うウサミミを生やした少女だろう。魔力駆動二輪を止めて胡乱うろんな眼差しで今にも喰われそうなウサミミ少女を見やる。
ハジメ「……何だあれ?」
ユエ「たぶん兎人族?」
零人「そういや月行き来してるときにちょくちょくいたなー。でも森から離れたここにいるなんて初めてだな」
ハジメ「じゃあ、あれか? 犯罪者として落とされたとか? 処刑の方法としてあったよな?」
香織「タルペーイアの岩だっけ?ローマの」
ハジメ「そうそれそれ」
香織「ってことは悪人うさぎ?」
首を傾げながら、逃げ惑うウサミミ少女を尻目に呑気にお喋りに興じる。助けるという発想はない(断定)。相変わらずの変心ぶり、鬼畜ぶりである。ユエの時とは訳が違う。ウサミミ少女にシンパシーなど感じていないし、メリットが見当たらない以上俺の心には届かない。助けを求める声に毎度反応などしていたらキリがないのである。よくある復讐系バットエンドルートの勇者とかあそこら辺のやつ。
しかし、そんな呑気に話している俺たちをウサミミ少女の方が発見したらしい。双頭ティラノに吹き飛ばされ岩陰に落ちたあと、四つん這いになりながらほうほうのていで逃げ出し、その格好のまま俺達を凝視している。そして、再び双頭ティラノが爪を振い隠れた岩ごと吹き飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がると、その勢いを殺さず猛然と逃げ出した。……俺達の方へ。
それなりの距離があるのだが、ウサミミ少女の必死の叫びが峡谷に木霊しこっちに届く。
???「だずげでぐだざ~い! ひっーー、死んじゃう! 死んじゃうよぉ! だずけてぇ~、おねがいじますぅ~!」
滂沱の涙を流し顔をぐしゃぐしゃにして必死に駆けてくる。そのすぐ後ろには双頭ティラノが迫っていて今にもウサミミ少女に食らいつこうとしていた。このままでは、たどり着く前にウサミミ少女は喰われてしまうだろう。
ハジメ「うわ、モンスタートレインだよ。勘弁しろよな」
ユエ「……迷惑」
零人「処す?処す?」
助ける気は全くない。必死の叫びにもまるで動じなかった。むしろ、物凄く迷惑だ。俺達を必死の形相で見つめてくるウサミミ少女から視線を逸らすと、俺らに助ける気がないことを悟ったのか、少女の目から、ぶわっと更に涙が溢れ出した。一体どこから出ているのかと目を見張るほどの泣きっぷりだ。
???「まっでぇ~、みすでないでぐだざ~い! おねがいですぅ~!!」
ウサミミ少女が更に声を張り上げる。
それでも、全く助ける気がないので、このまま行けばウサミミ少女は間違いなく喰われていたはずだった。そう、双頭ティラノがウサミミ少女の向こう側に見えた俺達に殺意を向けさえしなければ。双頭ティラノが逃げるウサミミ少女の向かう先に俺達を見つけ、殺意と共に咆哮を上げた。
「「グゥルァアアアア!!」」
ハジメ「アァ?」
双頭ティラノが、ウサミミ少女に追いつき、片方の頭がガパッと顎門を開く。ウサミミ少女はその気配にチラリと後ろを見て目前に鋭い無数の牙が迫っているのを認識し、「ああ、ここで終わりなのかな……」とその瞳に絶望を写した。
が、次の瞬間、
ドパンッ!!
ウサミミ少女にとっては聞いたことのない乾いた破裂音が峡谷に響き渡り、恐怖にピンと立った二本のウサミミの間を一条の閃光が通り抜けた。そして、目前に迫っていた双頭ティラノの口内を突き破り後頭部を粉砕しながら貫通した。
力を失った片方の頭が地面に激突、慣性の法則に従い地を滑る。双頭ティラノはバランスを崩して地響きを立てながらその場にひっくり返った。その衝撃で、ウサミミ少女は再び吹き飛ぶ。
???「きゃぁああああー! た、助けてくださ~い!」
眼下の俺に向かって手を伸ばすウサミミ少女。その格好はボロボロで女の子としては見えてはいけない場所が盛大に見えてしまっている。たとえ酷い泣き顔でも男なら迷いなく受け止める場面だ。
ハジメ「アホか、図々しい」
しかし、そこは俺らクオリティー。一瞬で魔力駆動二輪を後退させると華麗にウサミミ少女を避けた。
???「えぇー!?」
ウサミミ少女は驚愕の悲鳴を上げながらハジメの眼前の地面にベシャと音を立てながら落ちた。両手両足を広げうつ伏せのままピクピクと痙攣している。気は失っていないが痛みを堪えて動けないようだ。
「……面白い」
ユエがハジメの肩越しにウサミミ少女の醜態を見て、さらりと酷い感想を述べる。そうこうしている内に双頭ティラノが絶命している片方の頭を、何と自分で喰い千切りバランス悪目な普通のティラノになった。
普通ティラノがその眼に激烈な怒りを宿して咆哮を上げる。その叫びに痙攣していたウサミミ少女が跳ね起きた。意外に頑丈というか、しぶとい。あたふたと立ち上がったウサミミ少女は、再び涙目になりながら、これまた意外に素早い動きでハジメの後ろに隠れる。
あくまでハジメに頼る気のようだ。まぁ、自分だけだとあっさり死ぬし、ハジメが何かして片方の頭を倒したのも理解していたので当然といえば当然の行動なのだが。
ハジメ「おい、こら。存在がギャグみたいなウサミミ! 何勝手に盾にしてやがる。巻き込みやがって、潔く特攻してこい!」
ハジメのコートの裾をギュッと掴み、絶対に離しません! としがみつくウサミミ少女を心底ウザったそうに睨むハジメ。後ろの席に座るユエが、離せというように足先で小突いている。
???「い、いやです! 今、離したら見捨てるつもりですよね!」
ハジメ「当たり前だろう? なぜ、見ず知らずのウザウサギを助けなきゃならないんだ」
???「そ、即答!? 何が当たり前ですか! あなたにも善意の心はありますでしょう! いたいけな美少女を見捨てて良心は痛まないんですか!」
ハジメ「そんなもん奈落の底に置いてきたわ。つぅか自分で美少女言うなよ」
???「な、なら助けてくれたら……そ、その貴方のお願いを、な、何でも一つ聞きますよ?」
頬を染めて上目遣いで迫るウサミミ少女。あざとい、実にあざとい仕草だ。涙とか鼻水とかで汚れてなければ、さぞ魅力的だっただろう。本当に。実際に、近くで見れば汚れてはいるものの自分で美少女と言うだけあって、かなり整った容姿をしているようだ。水色に近い白髪で碧眼の美少女である。並みの男なら、例え汚れていても堕ちたかもしれないな。
ハジメ「いらねぇよ。ていうか汚い顔近づけるな、汚れるだろが」
どこまでも行くのが俺らの鬼畜道。
???「き、汚い!? 言うにことかいて汚い! あんまりです! 断固抗議しまッ「グゥガァアア!」ヒィー! お助けぇ~!」
俺の言葉に反論しようと声を張り上げた瞬間、てめぇら無視してんじゃねぇ! とでも言うようにティラノが咆哮を上げて突進しようと身をたわめた。ウサミミ少女は情けない悲鳴を上げて無理やり俺たちの間に入り込もうとする。
零人「俺ら蚊帳の外だねー」
ユエ「ね」
香織「後ろのティラノモドキどうする?」
零人「とりあえず倒しておこうぜ」
まだ生きている双頭ティラノを香織たちがボコしている。最後の一撃で拳銃を使った。その振動と音にウサミミ少女が思わず「へっ?」と間抜けな声を出し、おそるおそる俺の脇の下から顔を出してティラノの末路を確認する。
???「し、死んでます…そんなダイヘドアが一撃なんて…」
ウサミミ少女は驚愕も顕に目を見開いている。どうやらあの双頭ティラノは〝ダイヘドア〟というらしい。
呆然としたままダイヘドアの死骸を見つめ硬直しているウサミミ少女だがいまだにしがみついたままである。さっきから、長いウサミミが目をペシペシと叩いており、いい加減本気で鬱陶しくなったから遠慮なしに脇の下の脳天に肘鉄を打ち下ろしてやった。
???「へぶぅ!!」
呻き声を上げ、「頭がぁ~、頭がぁ~」と叫びながら両手で頭を抱えて地面をのたうち回るウサミミ少女。それを冷たく一瞥した後、何事もなかったように魔力駆動二輪に魔力を注ぎ先へ進もうとする。その気配を察してきやがったのか、今までゴロゴロ地面を転がっていたくせに物凄い勢いで跳ね起きて、「逃がすかぁ~!」と再び腰にしがみつくウサミミ少女。
シア「先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいますです! 取り敢えず私の仲間も助けてください!」
そして、なかなかに図太かった。しがみついて離れないウサミミ少女を横目に見る。そして、
「「「「うわぁ、図々しい……」」」」
ゴミを見るように呆れてた。
次のも書いてるので今しばらくお待ちください。