憑依円堂列伝〜TS娘と時々未来人〜   作:花蕾

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駆けるペガサス

 千羽山を破り準決勝に駒を進めた雷門イレブン、彼らは現在グラウンドで各々のズレを修正しつつ技能の向上を図っていた。前回の試合では鬼道のおかげでなんとかパスが通ったが、流石に今後の試合ではそうはいかないだろう。

 半田からボールが染岡に渡り、ドラゴンクラッシュが放たれる。それを俺が熱血パンチで弾く。やっぱり、必殺技を使いながらの練習はやる気が湧くな。

 

「おーい、そのボールこっちにくれないか」

 

 弾かれたボールの先にいたのは一人の男性。俺たちと同じくらいの年齢に見えるが、雷門の制服を着ていないとこを見ると見学者だろうか。

 彼は弾かれたボールを見て、なぜかドリブルを開始する。突然の行動に戸惑っていたとはいえ、レベルで言えば全国レベルの雷門イレブンを次々に抜いていきゴール前へ。そして、彼は逆立ちし回転する。その回転は空気の渦を発生させ、その勢いのまま浮き上がったボールを蹴った。

 

「『真スピニングシュート』!」

 

 打ち出されたシュートの威力は相当なもの。俺はなんとかマジン・ザ・ハンドを使い止めることに成功するが、これゴッドハンドだったら危なかったな。

 

「流石、アメリカ代表候補だな」

 

「あれ、俺のこと知ってるの?」

 

「当たり前だ、鬼道」

 

「ああ、俺も聞いたことがある。将来アメリカ代表入りが確実視されてる天才日本人プレイヤーがいるとな」

 

 彼の名前は一之瀬一哉。最近、日本人ながらアメリカのジュニアユースチームの代表候補に選ばれたフィールドの魔術師の異名を持つ天才プレイヤーだ。

 そんな彼がなぜ雷門に来ているのか、その理由は友人に会いにきたとのこと。

 

「ねぇ、何してるの?」

 

 一之瀬を中心にワイワイしていると、後ろから声をかけられる。そちらを振り向けば、秋と土門がいた。二人はアメリカから友人が来るとのことで迎えのために空港に行っていたのだ。

 そして、それと同時に輪の中心から飛び出し一之瀬が秋に抱きついた。おお、大胆。

 

「お前、何をっ!?って、あっ!?」

 

 土門が急の事態に声を荒げるが、何かに気付き口を止める。

 

「久しぶり、俺だよ」

 

「一之瀬君……!」

 

「ただいま、秋」

 

 このやりとりから分かる通り、一之瀬が待っていたのは秋と土門だ。

 三人は幼馴染だ。しかしながら、秋と土門は一之瀬が亡くなっていると思っていた。それは、一之瀬自身が父親に周りに死んだと伝えるよう頼んでいたからだ。彼は事故に遭い、それが原因でサッカーをすることができないと医師に告げられた。そんな姿は皆に見せられないと考え、いなくなったと思わせていたようだ。現在では、厳しいリハビリを乗り越えサッカーに復帰したそうだ。

 

 色々三人だけで話したいこともあるだろう、と考え俺たちは三人を残し練習を再開した。1時間経ったぐらいでそろそろ大丈夫だろうと思い、一之瀬たちを練習に誘うと快く引き受けてくれた。

 

 一之瀬の実力は相当高く、皆が妨害に入っても全然止めることが叶わない。一之瀬のプレイについていけているのは、鬼道とアフロディぐらいだな。

 

「やるな」

 

「君こそ!」

 

 一之瀬の左右の揺さぶりに、鬼道は惑わされず冷静にボールを追う。一之瀬がヒールリフトで浮かせた瞬間、鬼道も飛び上がる。しかし、ボールには回転がかかっており、鬼道がトラップする前に軌道を変える。すごい対決だ。

 

 

 

「んじゃ次は俺とやろうぜ」

 

 その次にやったのは俺とのPK対決。最初のうちは歯が立たなかったが、回数を重ねるうちになんとか止めれるようになっていく。一之瀬もそれに合わせてギアを上げていく。その結果、1時間もPKを続け15対15となっていた。流石にこんだけやると疲れが酷いな。

 

「この出会いにやりたいことがあるんだ」

 

 休憩をしている最中、一之瀬からとある提案をされる。それは、彼らの思い出の技『トライペガサス』の再現。元々は一之瀬と土門、そしてここにはいないもう一人の幼馴染で完成させた三人技。

 拒む理由もないため、その提案を即座に受け入れた。

 

 それで、早速やってみたのだが。

 

「ま、また失敗か……!」

 

 百回以上の試行を重ねても成功しない。そもそも、トライペガサスはトップスピードで走る3人が1点で交差することで力を集中させることでできる技だ。元々アメリカでこの技を使っていた一之瀬と土門は完璧なのだが、俺がそれに合わせきれていない。

 

「もう一回やろう」

 

「ああ」

 

 さらに試行を重ねていくと、150回目辺りで青いペガサスが現れる。しかし、すぐに消えてしまう。俺のズレがちょっとずつ修正されてはいるが、最後の一押しがまだできていない感じだ。日が暮れるまでやったが、結局トライペガサスが成功することはなかった。

 

 

 次の日、またトライペガサスのために、俺、一之瀬、土門はグランドに立っていた。一之瀬は午後の飛行機でアメリカに帰ってしまう。それまでには完成させないとな。

 

「Go!」

 

 一之瀬の合図と共に走り出す。三人が交わりペガサスが現れる。後は上空のボールを蹴るだけだが、飛び上がっている最中にペガサスはその形を崩し行き場を失ったエネルギーが俺たちを襲う。

 

「これでもダメか……!」

 

 完璧なタイミングだと思ったが、認識できないほどの小さなズレがあったのだろう。

 

「時間はまだある。どんどん行こう!」

 

 何回もやるが、ペガサスが形を最後まで保つことはない。タイムリミットはどんどん近づいてきてる。どうしたものか。

 

「ん、秋?」

 

「私が目印になる」

 

 そんな失敗続きの中、秋が前に出てきてそう言った。

 秋が三人が交差できるようポイントに立つ。確かに効率的なやり方だが危険だ。壁山たちが止めに入るが、秋の意志は固い。いや、どちらかと言うと俺たちの成功を信じてる、そんな気がする。

 

「あのときと同じだな」

 

 一之瀬によると、過去にトライペガサスを習得した際も秋がポイントに立ったことでタイミングがばっちりになったらしい。

 

「チャンスはこの一度のみ……Go!」

 

「「おう!!」」

 

 秋がポイントに立ったのを確認したのち、同時に走り出す。

 

「絶対に成功させる!」

 

 そして秋の隣で交差、その瞬間蒼炎が現れペガサスを形作る。上空に現れたペガサスは鳴き、その姿を霧散することなく存在を示す。

 

「「「うおおおおっ!いっけええええええ!!!」」」

 

 同時に俺たちがボールを蹴り込み、ペガサスは翼を羽ばたかせる。そのまま駆けていきゴールネットを揺らした。

 

「よっしゃ、成功だぁ!」

 

「やったな、円堂、土門!」

 

 成功を喜び抱き合う俺たち。その中には栗松たちもいる。彼らは万一何かあったとき秋を守れるように動いていたのだ。

 彼らだけじゃない、見守っていた鬼道たちも担架や救急箱を準備していた。

 

「このチームは最高だよ……!君たちに会えて本当によかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれじゃないか」

 

 夕日がグランドを照らす中、上空に飛行機を見つける。恐らく、あれが一之瀬が乗る飛行機だろう。

 

「また、一之瀬ともサッカーしてぇな」

 

「ああ、そうだな」

 

「うん、やろう!」

 

 俺の言葉に豪炎寺が返し、続けて後ろからも返事がくる。

 

「ええっ!?」

 

 振り向くとそこにはなんと一之瀬が。本来なら飛行機に乗っているはずの彼がなぜかここにいることに皆は驚きの声を上げる。

 一之瀬曰く、今回のトライペガサスやPKなどを通して雷門でサッカーをしてみたいと思ったそうだ。

 

「なら歓迎するぜ、一之瀬!」

 

「ああ、よろしくな、円堂!」

 

 新しい仲間が増えたことで皆は歓喜する。新加入した一之瀬を中心にワイワイしていると、音無が走ってやってくる。どうやら、準決勝の対戦校が決まったらしい。

 

「つ、次の対戦相手は木戸川清修です!」

 

 その学校は豪炎寺の古巣であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、豪炎寺」

 

「ん?」

 

「木戸川の人たちに転校の理由話しとけ、って言ったはずだけどちゃんとしたか?」

 

「…………」

 

「おいこら黙るな、こっち向け」

 




前回の後書きでコラボのお知らせをしたと思うんですが、なんとウボァーさんがコラボの前日譚を書いてくれました!是非読みに行ってください!
URL:https://syosetu.org/novel/260587/20.html





久しぶりに杯企画をやります!
今回はイナイレ杯です。概要は私の活動報告にありますのでご覧ください!
URL:https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=271320&uid=224876
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