異世界から帰ろうとしたら病んだ女の子達に執着された男の末路   作:コーカサスカブトムシ

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禁断の横になる事態二度打ちと繁忙期でかなり遅れがでましたが投稿していきます


こんなものを浮かべて喜ぶ変態

「こっちの方がいいかな? これもいいなぁ、これか? これかぁ?」

 

 一本数千エディーで売られている安価な杖、適当な木材に粗悪な触媒を嵌め込んだくらいのそれは黄穿と比べれば遥かに劣る物。だが考えようによっては使いようがあるのだと、俺は冒険者協会の近くにある魔法道具の店で雑に扱われているそれらを見比べていく。

 魔法使いと呼ばれる人間が使う得物については前にも語った事はあるが、その中でも最もポピュラーな物は杖と言えるだろう。持ち手となる木の枝や金属棒、そこに魔力を帯びた触媒(主に天然石、宝石の類い。たまに魔獣の素材や植物も使われる)を嵌め込む事で使用者の力量をより引き出してくれる代物だ。

 一般的に掌から魔法を出そうとすると指先などから余計な魔力が放出されてしまい、その分無駄が発生してしまう。魔法使いが使用する杖や本にはそれを抑制する効果があるという訳だ。

 ホースのように魔力の流れを整えた杖が先端にある触媒へと流れていき、触媒が流し込まれた魔力量を増幅、或いは質を向上させて魔法を発露させる。他に指輪や本を使うタイプの魔法使いもいるが、冒険者……荒事に向いているとされるのは杖であるという声が大きい。

 

「蛍石、アンバー、アゲート……このラピスは、あぁパイライトが多いのか」

 

 宝石や天然石は前世の時から割と好きだった事もあり、専門家とまではいかないが質が少しでも良さそうな物を見分けていく。バイオ4の宝システムが脳に植え付けられているのだ、スピネルって普通に高価な宝石なんだからな!

 ゲーム脳だからすんなりと理解出来ることだが、触媒の質とは別に種類毎に発露させるのを得意とする魔法が違ったりする。まぁ大体は石の色と近しい物、赤い石は炎魔法に補正を掛けたり青は水をと安直なものだが。

 ちなみにこの黄穿に使われている触媒は『メテオハート』と呼ばれる希少鉱石。この世界で『降る星』と呼ばれる石……つまるところ隕石の中心から見つかる事があるという貴重な物だ。前世にはそんなもん無かったのできっとヤーラカムの隕石特有の素材なんだろう。

 加工された後もほんのりと熱を持っている赫いそれは、わかりやすく炎の魔法を補正してくれる。らしいが、俺はそれが本来のメテオハートの特性だと思っていない。

 この世界重力に関する研究が進んでないっぽいから重力の魔法も無いみたいなんだけど、隕石って事で重力魔法使おうとしたらめちゃくちゃ楽に大岩浮かせられたから多分そっちなんだよな。

 

「お客さん、商品を好きに見てくれるのはいいんだけど……そこからどう探しても持ってる杖以上の物は出てこないと思うよ?」

「いえ、持ち替えようという訳ではなく……これら6本をお願いします」

 

 この中で特に触媒の質が良いだろうという物を6本選んで購入する。こういった杖に使われる石は含まれている成分、純度が効果に大きく影響する。割って詳しく調べられる物でも無いし、専門家でもないので結局は雰囲気で選んでいる訳だが、せめて少なくない金を払う以上は悔いを残したくない。という貧乏人の性根であった。

 纏め買いした杖を縄で纏めさせてもらい、小脇に抱えて店を出る。この杖で何がしたいかって言えば……重力魔法でこれら六本の杖を浮かせて、黄穿越しに魔力を流す事でファンネルのような運用が出来ないかと考えていたのだ。

 イザベラが途轍もなく強いという事はあの村の中だけ、井の中の蛙……という話では無い筈だ。少女としては、という域ではなくこの年代の子どもの中では最高峰くらいであると思いたい。

 何せ先ほどの冒険者協会でこの槍、黄穿を見て心当たりがありそうな人がいたぐらいだ。クライス先生の現役時代なんてもう数十年は昔の事。だと言うのに未だこれがどういった物かを知っている人がいる……それだけ往時のクライス先生が凄い人物だったと言う事の証左で、そのクライス先生が太鼓判を押したのが俺、そしてそれをぶっちぎる身体能力の持ち主がイザベラだ。

 

「さて、どうなるかな」

 

 だがそれでも俺は自分の能力を信じない、慢心しない、過信しない。何せ異世界ヤーラカムはゲームや漫画、小説のファンタジーとは異なる物。『最初の村』も無ければ『最初の敵』のような、進行度に応じて何かが変わってくれるということはない。神出鬼没な高危険度の魔獣は何時如何なる状況でも現れかねないし、人を襲うという悪魔も此方が駆け出しだからといって忖度してくれる事は無い。

 コンティニューという機能もないのだ。金を節約するに越した事は無いが、墓場に入ってしまえば節制も意味がない。持てる武器、使える術に関しては金をはたいて開拓するべきだろう。

 

「ファング!」

 

 ドラムジェラの湾岸、船も着いておらず荷物も無い少し開けた場所に移動する。そうして抱えていた杖の縄を解き、宙に放り投げた後に黄穿を通して重力の操作……杖をその場に静止させるように魔法を掛ける。

 ぴたりと止まった六本の杖、杖を一振りしてそれらを扇状に展開されるように操作する。更にもう一振り、黄穿からそれぞれの杖に魔力を流して……よし、あの辺を狙って放出させる!

 揃えられた杖の先端からそれぞれ6つの光弾が放たれる。続いて杖の位置を変え、輪を作るようにして光弾を放たせる。円形に展開された杖から内側へ集中するように魔力の弾丸が発射された。

 

「はっ、あっ!」

 

 それぞれの杖が独立するように自由に動き、凡その目標として定めた海面をばしゃばしゃと光弾が叩く。俺の新しい攻撃手段、黄穿を主軸とした6本の杖によるファンネルだ。お試しだったから純粋な魔力の塊を放たせるだけに留めていたが、次はこうだ。

 

「amābam」

 

 炎の塊、水のレーザー、雷の一閃、氷の礫、刺すような突風、押し潰す重力。並行して別の魔法を放つ事は……出来るな。色とりどりの魔法が放たれていく、それを自分がやってのけているのだと思うと全能感が凄まじい。気分はアルバトリオンだ。

 しかし複数の魔法を同時に行使するとそれだけ魔力の消費が激しい。ごっそりと身体からエネルギーが奪われる感覚……それに加えてカッと頭が湯立つように、一気に熱が溜まってきた。

 

「ぐっ……ヤバ……」

 

 だが黄穿というフィルターを通し、その上でまた別の杖を通して魔法を使っているのだ。素手で魔法を使うよりも格段に魔力効率は良かった事だろう。複数の杖をファンネルにして運用するという考えは悪い物でも無さそうだ。

 正面から、一発ずつしか放てないとされるヤーラカムの魔法。だがこうして杖を使って杖を操り、杖を通して杖に魔法を使わせる。これが可能なら杖に金を掛ければ掛けるだけ出来る事も増えていく筈だ。イザベラのように一瞬で距離を詰めて来られるような猛者が相手では却って足を引っ張るだろうが、全体的なステータスは向上したと言える。

 杖が一人でに束ねられていき、目の前にまで近づいてきたのを再び縄で纏める。軽量化やらを考えると触媒と最低限の杖部分、まんまファンネルくらいのサイズに出来たらいいのだがまだ試したい事もあるからな。明日は早い、取っておいた宿に行って早いところ寝て明日の朝に備えるとしよう。

 

「……?」

 

 そんな事を考えながら支度をしていると、何処からかじっと視線を向けられている気配を感じる。別に猫付けてる訳じゃないが、村の中ではイザベラがいっつも邪悪ゲージ溜めてたからこういうのに敏感になっちゃったんだよな。

 今使ってた魔法が奇特な物だったから誰かしらの目は引いたんだろうか、まぁ気にする事でも無いだろう。見ただけで魔法の仕組みを解明されるなんて事は無いようだし、真似されるもんでもあるめえ。撤収じゃ撤収。

 

 

 

 

 

 

 出航じゃーい。ざっぱざっぱと波を掻き分け、大海原を突き進んでいく商船。遠ざかっていくドラムジェラ、ローゲル大陸……前世の頃は日本から出た事無かったし、外国に行くって体験をしなかったから何だか感慨深いものがある。

 俺は船に乗るに当たって空、海に棲息する魔獣の相手をするという契約を船員の方と結んでいる。節約はしっかりな、こっちも早々出て来るもんでもないらしいが万が一というのがある。何事も無ければ俺も楽ではあるが……どうやらそうじゃないらしい。

 

「冒険者、魔獣だ! 助けてくれ!」

 

 東の方角から黒い影、空を飛ぶエイのような魔獣達が積み荷や『肉』を狙っているのだろう。ちょうど良い、新兵器であるファンネルを実践で使ってみる時だ。黄穿を手にして一振りし、昨日買った杖達を浮遊させる。扱いづらい魔法とかって話だが、才能チートの転生者が負ける訳ねえだろ! 行くぞおおぉぁああ!!




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