異世界から帰ろうとしたら病んだ女の子達に執着された男の末路 作:コーカサスカブトムシ
バイオ4reもとってもおもしろ……なんじゃあこのクッソ強いガナード達は
「ブビャアアアアアア」
「ビュブゥウウウウウ」
「シンプルに鳴き声がキショい……」
『リグルカイト』、エイのような姿をしながらも海上を群れで飛び、海面近くにいる魚群や船に乗っている『肉』を捕食する魔獣だ。平たくはあるがそこそこのサイズで、黒い皮に覆われてヌメっとした身体を持っている。エイとは言ったが何処か虫っぽくもある不気味なフォルム、それがうぞうぞ蠢きながら群体で飛翔している光景はちょっとキツイ。発される鳴き声のような何かも、不快音以上に的確な表現は無いと言える物だ。
しかしこいつらがどうやって空を飛んでいるのかは判明していないらしい。体重が軽いから風に乗っている、という訳でもなくそこそこずっしりしているという話だ。生態、繁殖方法も判明しておらず、魔獣じゃなくて低位の悪魔なのではとも噂されているが、当の悪魔達は同じ括りにするなと否定しているとの事。
一個体としては特別強力な魔獣という訳では無いが数の暴力、何より食欲だけに従って襲いかかって来る様は船乗りにも恐れられている。上手く食餌にありつけた群れは規模が大きくなり、まるで竜巻のように大挙して船へと襲い来るそれは時として黒い渦、嵐の獣とも呼ばれる程だ。
「落ちろ、蚊トンボ」
よし、お話終わり。寝て良いよ。重力魔法を用いた擬似ファンネル、それが万全な操作精度を保って使用が出来るのは現段階では直径20Mの円形程だ。船の後方から襲来しようとするリグルカイト、船尾の出っ張りに飛び乗って杖を展開した俺は魔力弾でそれらを撃ち落としていく。
土手っ腹に青緑色の光弾が命中するとカイトはしめやかに爆発四散、バラバラと内容物とかをばら撒きながら海の藻屑になっていく。しかし的がある程度デカいから面白いように撃墜出来るとはいえ、こんなツキジめいたシューティングゲーム嫌だよ俺。
「ビブォオオオオオ!!」
ご馳走にありつけそうだった所を邪魔されたからか、リグルカイト達が怒気を含んだような叫びを上げる。口と思しき部分からネッチョリとした唾液を撒き散らしながら、標的を俺に定めて突貫してくるようだ。キモすぎる…キモさの次元が違う。確かにこの生物は魔獣の範疇には収まらない魔獣…まるで悪魔だ。
「お、おい大丈夫か?! 狙われてるんじゃ……」
「問題ありません。撃ち漏らしは出さないようにしますが万が一もありますので備えておいてください」
始めは数十はいたリグルカイトだったが、俺の放った魔力弾の雨に晒されてめっきりと数を減らしていく。うーむ……なんかカモ撃ち感がある。上手く行っているに越した事はないし、レベル上げて蹂躙プレイはわりと好きなところではあるが、実戦と言うには些か緊迫感が無い。ただの魔力放出では消耗も知恵熱も大した事にならんからただの作業になってしまう。
お冠なリグルカイト達の様子に船員の人が俺を心配してくれているようだが、ある程度の余裕を持って捌けるぐらいの相手なので問題ない。イザベラはもっと速いし頑強にして屈強、あのチャンバラもあながち無駄な物では無いどころか重要な経験になったのだと思う。まぁ二度と彼女とはやりあいたく無いのが本心ではあるが。
「amābam」
「バプラァアア!?」
詠唱、魔力弾から氷柱へとチェンジ。射出された氷柱はリグルカイトを数匹纏めて串刺しにし、\ボナーン/と落下していった。質量がしっかりあるから結構派手に行ったな。
毛色の変わった魔法に連中も狼狽えるが、今更引き下がる事も出来ないのか或いは飛び方を変える事が出来ないのか、これまたきっしょい悲鳴を上げながらもふらふら船へと突っ込んで来る。
「やっぱり魔力弾よりもちゃんと魔法を使う方が消耗は大きいか。めんどくせーこの仕様」
魔力の方にはまだまだ余裕があるのだが、テストの残り時間が短い時に間違いがある事、解答欄がズレていた事に気づいた時のようなあの感覚……頭だけがブワッと熱くなる、知恵熱の影響ばかりは軽視できない。
今更だが知恵熱とかいうのはこの異世界ヤーラカムの住人が備えてしまっている欠陥……X系列のガンランスに搭載されていたクソを超えたクソ仕様、ヒートゲージのような物である。
クソが…あの仕様…威力が上がるだの管理すればだの言ってた奴が…あれ…最大効率で大体4G、従来通りの威力なのかよ…てめぇ相当弱ぇだろ...火力が出ねぇよ...お前は本当に面白い武器だった。
竜撃砲ってロマンがあって...3G時代のズヴォルタは本当に頼りになって...マルチでダウン時にフルバしちゃって悪かった...とか思ってたっけ...
なぁヒートゲージ、今お前がどんな顔してんのか知らねぇがお前ら本当にクソ要素だよ。多分...モンハン史上こんなに悪いことした奴はいねぇよ。消さなきゃ...てめぇはガンスにいちゃいけねぇ奴だ。
一体何考えて実装したんだ? 本当に気持ち悪いよ。お前の簡悔精神に溢れたあの面構えを思い出すだけで...吐き気がしてくんだよ。
「このでけぇ害虫が、オレが今から駆除してやる」
「ビィイ!?!?」
おれたちのこの怒りはリグルカイトにぶつけよう。散らばって動いていた杖を3本ずつ、二つの塊に纏めてそこから横向きの重力波を放って挟み込むようにリグルカイト達目掛けて放つ。
見えない力押し込まれて一つの団子にされたリグルカイト達は混迷の中でうぞうぞと身動ぎするもこの拘束からは逃れられない。自分でやっといてなんだけど、このリグルカイト饅頭あまりにも気持ち悪すぎる……
「ボンファ!」
「「「ピッギャリィイアアアアア!!??」」」
「ヴェ……」
炎に包まれて大炎上するリグルカイトの塊、この世の生き物から発せられてるとは思えない程に悍ましい断末魔……聞いてるだけで気分悪くなってきたんですけど。
火の着いたリグルカイト溜りがメラゾーマみたいになってから数十秒、声とかも出なくなったようなので諸々の魔法を解くと黒焦げになったカイト達がドボドボと海面へと落下していく。モクヒョウ タッセイ。
「貴様らには水底が似合いだ」
あーキモかった、メンタル部門においては異世界で一番のダメージ……いやメンタルの方は親のアストラとリンデがうまぴょいしてんの聞こえるのが一番……いや乳幼児の時に授乳されたのが……大も小も漏らさなきゃいけない頃……おおっ、碌な思い出がない。
周囲に生き残ったリグルカイト、また他の魔獣が来るような感じもない。終わりねー、撤収。杖を手元に戻して回収、中々俺TUEEが出来た所だと思いたい……がやっぱり数の脅威だったからな。やってる事はそれなりに凄かったのかもしれないが、どうも手応えは感じない。いやじゃあ今から強いのと戦ってもらおうとか言われたら勘弁して欲しいが。
「お、終わったのか……?」
「はい、全て倒しきりました」
「あれだけの、カイトどもを……」
リグルカイトが嫌われる要素の一つに肉は便所どころじゃない臭さ、皮もどれだけ洗っても無尽蔵にヌメると使い道という物が皆無だというものがある。なので海中に投棄させてもらったが問題はないだろう。
「腕に自信はありますので、ここからもバエルニアまでよろしくお願いします」
「お、おう……」
なんだコイツ、ってめっちゃドン引かれてる。正直メンタルに来ないこともないが、他の子ども達に仲間外れにされたイザベラはこれ以上に悲しい気持ちだったんだろうな。それを偏見なく受け入れた俺に対して好意が向くのもさもありなん……まぁそれぐらいの事は現代で生きてりゃ、俺じゃなくたってそうして当たり前なんだが。それならイザベラは……
それはそうと、船員さん達も話つける時にはランク①……言わば新人のペーペーですけどその条件で乗せて貰えないかって頼んだんだ。蓋開けたら一人で見たことない魔法を使いながら大量のカイトをコロコロしてたんだ、逆ランク詐欺なんよ。
船は止まる事なく海路を進んでいく。ほかほかになった頭を潮風で冷やしながら、俺はアリカルアレ……新天地バエルニアがある方角を眺めた。
「……」
えっここでも視線感じんの?
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