異世界から帰ろうとしたら病んだ女の子達に執着された男の末路   作:コーカサスカブトムシ

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よしっ、新作を投稿してやったぜ。これでエタり作者なのも終わりだ
先行きがどうなってるのかは自分でもわかんねぇんだぜェ〜? なんたってプロットなんてモンまるでねぇんだからよォ〜


この幼馴染の力に一番戸惑ってるのは俺なんだよね

 その場その場で最適な選択肢を選んだつもりでも、結果的には最悪な道に進んだりすることはある物だ。とりわけフロムゲーでは親切心をコケにしてきやがる事がままある。市民たちをヨセフカの診療所に避難させるとか、いやあれは悪意無しとはいえオドンもオドンで二択どっちにしろクソだったし間違いとも言えないか? オーベックから魔術全部習うとか、も違うか。

 そんなことはいいんだよそんなことは。この異世界に転生して十数年、俺は間違いという間違いを犯さずに過ごしてこられた。前世の記憶、知識がこの異世界において全て通用する訳ではないが、常識を学び知識と擦り合わせ、高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に日常を過ごしてきた。

 畑仕事も勉強も鍛錬も、驕った言い方をすれば天才であるという自負があった。子どもらしい言い方になるが、この歳になるまで親や大人に怒られるということは一度も無かった。身体能力や勉学に関してはクライス先生のお墨付きだ。

 無論、それを自分の長所であるなどと思うことはない。精神は、魂は依然として平々凡々、いやそれ以下の劣等であることは十分に理解している。全ては偏にこの素晴らしい才覚のあるバルトという身体あってこそ。ハイスペのPCにオンボロのソフトが入っているような物ではあるが腐っても鯛、間違いなく上澄み側の人間である。この村でクライス先生以外に自分と比肩する人間など、既に大人達を含めていないだろう。

 

そう思っていたのだ。

 

「すごい、すごいすごいすごい!! これは!? これはどうなの!? これは!?」

 

 幻視したのは……台風に棒切れ一本でなんとかなれーっ! と挑んでいるちいかわ。無論ちいかわとは自分の事で台風とはこの幼馴染、可愛らしく儚げだと思っていたイザベラちゃんのことである。

 

異常火力者。

 

 ガオン、ガオンと空間が揺らいでいるようにさえ見える暴威が乱雑に振るわれる。俺はその一つ一つに全身全霊を以て受け流し、或いは避ける、直撃すれば一発で昏倒するか骨がへし折れるだろう。それでもこれ自体は折れたりしない枝どうなってんだよ。

 俺がストイックに時間と労力と知恵と愛情をかけて築き上げたものをグチャグチャに崩壊させられるんだ。これはもう銃デブが5セットも形変せずようやく出た放射型が温かいだった時くらいのダメージだッ。

 取るべき選択肢を間違えた。何となく、どうとでもなりそうだと心の何処かで嘗めていた異世界という理不尽。幼馴染がたまたま領域外の化け物だったという考慮が出来なかったが故に、俺はこのクソゲーを押し付けられたのだ。彼女にとって、『遊び』に過ぎないというこの蹂躙を。

 

 

 

 

 

「それで、どう言われたんだって?」

 

 なんて事も無いように、こそこそ隠れて盗み見てた私を受け入れて、話を聞いてくれたバルトに……話したくは無かった、そうなりたくは無かった話を打ち明けた。もしバルトにさえ拒絶されて見放されたら、そう思う恐怖とバルトなら私を助けてくれるんじゃないかという希望が胸の中で綯い交ぜになってはいたけれど。

 久しぶりに、バルトの顔を正面から見た。いつもは逸らされてしまう、それがこうして私に向き合ってくれているんだなと考えたら、なんだか不思議な温かさが湧いてきた。頭の中でぐちゃぐちゃな想いをなんとか纏めて、その感覚に背を押されるように言葉にしてみる。

 

「結構前からなんとなく、なんとなくは感じてたんだ、みんなが私を見る目が変だなって。気づいてなかったんだけど、私……誰よりも足が早くて力が強くて、そんなつもりも無かったのに、みんなが手加減してるんだって思ってて……」

 

 感情を抑えきれず、要領を得ない言葉だけが溢れ出てくる。私は、ただみんなと一緒であれたら良いとは思っていた。特別意識して好きだと思っているのはバルトだけど、パーチやマイヤー、遊ぶみんなの事も変わらないくらいに好きだった。だけどいつからか私だけが除け者にされてるような気がして、遊びに入れてはもらえるけど誘ってもらえなくなって……どうして……

 

「私だけ、みんなと違うみたいで……」

「みんなと違うのは、嫌か?」

 

 間を置かずに返された言葉に顔を上げる。そんなの、そんなの当たり前に決まってる、そう言おうとした時にバルトのその目を見てハッと気がついた。彼は、バルトはずっとそうだった。初めて会った時から今に至るまで彼はいつもみんなとは違う事を、違う目で物を見て行動してた。私自身がバルトはみんなと違うと思い続けてたんだ、それを嫌だって言うと……まるでバルトを否定するような感じになっちゃう。

 

「まぁ確かに今まで仲良くしていたところから疎外されて、っていうのは嫌かもしれないがな。それは何も悪い事じゃない、第一になイザベラ、この世にみんなと同じなんて事がある筈がないんだ」

「え、え? どういう、事なの」

「自論だけどな」

 

 彼はそう前置くとそこらへんに転がっていた石ころを摘み上げ、それを掌で弄んだ。何をするつもりなんだろうと思ってそれを見ていると、不思議な投げ方でバルトは石を放った。そうすると勢いよく投げられたのにも関わらず、その石は落とされた場所に止まったままぐるぐると回転し続けていた。

 

「え、ええっ!? なぁにこれ!」

「こういう石の投げ方がある、というだけのことだ。いいかイザベラ、これは何もおかしかったり特別な事なんかじゃない。ただ、こういう場合もあるというだけのことなんだ」

「これが? ……これが、何か関係あるの?」

「本質的に他人と全く同じなんて人間は存在しない。普通だとか同じだとかって言う中にも個性がある。この石も傍目にはおかしいように見えただろう? だけど、これはどうしてそうなるかさえ理解していれば誰にでも出来る事。イザベラ、別にお前だって本当に何処かがおかしいから皆んなにそう言われた訳じゃ無い」

 

 今度は木の方へと歩いていった彼は、根本に堕ちていた程よい枝を2本掴むとそれを片方私にふわりと投げた。それをキャッチしてバルトの方を見ると、枝の先をくいくいと動かして立ち上がれと促しているようだった。

 

「イザベラ、お前は化け物なんてものじゃない。俺がそれを教えてやる、だからお前はいつも通り遊ぼうとしてくれればいい」

「あ……いい、の? 私、でもバルトにだって……」

「そこまで舐めるなよ。安心しろ、間違ってもお前を失望させるようなことにはならないだろうさ」

 

 ばくんばくんと胸の内が高鳴った。バルトでも、と考えると不安が募ってはくるけれど、バルトなら、という期待の前にはそれもかき消されてしまった。枝を握りしめて立ち上がり、目の前のバルトと向かい合う。思えばバルトが私の相手を、遊んでくれるのなんてはじめての事で……ずっと前からこうしたかった。それが遂に叶う上にこんな……

 

「うん、それじゃあ……やるよ?」

「あぁ、来────」

 

 駆け出して横薙ぎに枝を振るう、バルトの目線は動かないまんま。このままじゃ当たっちゃう……そう思った瞬間するりと突き上げられた枝が私の攻撃を阻んでて、防いだバルトは枝を振り払って私ごと吹っ飛ばしちゃった。

 今のだって、誰にも防がれたことは無かった。なのにバルトはさもあれが当たり前みたいに、呆然としたような顔のまま対処してしまった。やっぱり……バルトは凄いんだ。私よりも、ならああするのはどうだろう、どうやったら彼に届くかな、色々な考えが浮かび上がってくる。そうしてその悉くを、バルトは当然打ち破ってきた。

 

「すごい、すごいすごいすごい!! これは!? これはどうなの!? これは!?」

(無理無理無理無理、無理というのはですね、嘘吐きの言葉なんです。いや普通に無理久保なんですけど!)

 

 力一杯、最速で枝を振り下ろす。バルトはそれを見切って横を向くだけで、最低限の動きでそれをかわした。前髪を掠めただけで不発に終わったところに、切り返して斜めに振り上げるそれも予期していたかのように弾かれる。後ろに下がって腕を引き絞り、跳ねるようにしながら放った突きもすらりともたげた左足が枝の先端を踏み躙り、地面へと縫い付ける。

 届かない、届くかと思った一撃も誘い込まれていただけで対処される。全力で挑んでそれでも敵わないのが、はじめての事でとても楽しかった。もっと長く、この時間がずっと続いていたらいいのに……

 

 

 

 

「はぁーっ、はぁーっ……は、あはははははっ!! ほんと、ほんとに……すごいや……」

「ゼェーッ、ゼエーッ、ウップ、キッツ……」

 

 体力を使い果たすまで、バルトは自分から打ってくる事は無かったけど……もしその気ならいつでもやれたんだろう。ところどころ当てられそうな瞬間はあったけれど、その時のバルトはビュンと一気に動きが速くなって捉えられなかった。

 手足を地面に投げ出して赤みがかった空を仰ぐ、大きく息を吸って酸素の足りなくなった身体をどくどくと満たしていく度に、不思議なまでの満足感が満ち広がっていった。

 

「ッ、フーッ……どうだイザベラ、同じ歳の子どもに枝一本当てられない、それでもお前は化け物なのか?」

「あ……んん、そうだね。そんなんじゃないんだろうなあ、私は」

「(いや実際化け物じみた強さではあったけどもね)みんなもいつかわかってくれるだろう。実は男の子よりも女の子は成長が早いって特徴があるんだ」

「ええっ、そうなの!?」

「そうだ(絶対それだけじゃねぇけどなこれぇ)だからほら……数年もすればみんなイザベラと同じくらいには、なるんじゃないか」

 

 私の側に座り込んだバルト。私と違って汗を少し掻いてるくらいで全然息も切らしてない、もしかしたらバルトの方がとも思ったけど彼の言う通り……ただ違いがあるだけなんだろうなって、実際に彼と遊んでそう思えた。得意な事があれば苦手な事もあるし、ただみんな必ずしもおんなじ訳じゃないんだって。

 

「ただそれでもこの村のみんなと馴染めないと思うような事があるならな。外を、世界を見るんだイザベラ」

「……この村の、外?」

「ああ、もしお前がこの村の中では収まらない程の人間だったとしても、やっぱり異端だと思われたとしてもなんて事はない、世界は広いんだ。イザベラが世界中の女の子の中で一番強い訳でも、俺だって世界中の男の中で一番強い訳でもない。必ず隣になって生きていける場所も人もいる」

 

 まるで想像はつかない異邦の景色を彼は語る。見回す一面が凍った水に囲まれた白銀の街に、一本も木が生えてないような砂だけの荒野、燃え盛る山に黄金の都市……そこに住む人達もまた、私たちの常識では考えもつかない暮らしをしている。それは違いではあるけれど、何もおかしい事ではないんだと、彼はそう言った。

 

「俺はいつかこの村を出る」

「え……そう、なの?」

「あぁ……俺には、やるべき事があるからな。産まれた時から俺はそうだ、だけどお前はそうじゃない。お前は自分にとって最良の未来を想い選択していけ。自由に生きる権利は……まぁ両親とも話し合いはするべきだが、この村の中しか知らずに窮屈に生きる事もない」

 

 衝撃を受けた私は返す言葉を失った。まさかバルトがこの村からいなくなってしまうなんて、考えた事も無かった。それにやるべき事があるなんてちっとも……もしかしたらクライスさんは何か知っているのかな。

 バルトと二人でいつも魔法の練習をしているし、内容は理解は出来ないけど凄い事をしていることだけはわかる……あんなのが必要になる事をバルトはしようって、しなければならないって感じているんだ。

 

「わ、私、だったらバルトに着いて……」

「それは……駄目だ。理由は、言いたくないだけだが……それでもな」

 

 突き放すその言葉にも、心が少しずきっとしたけどよく考えてみて納得した。バルトがしようとしていることは、私よりも強い彼が更に魔法まで必要にしてそれでもまだ足りないと思っているようなこと……つまり強さが必要なことなんだろうね。

 今の私はバルトよりもよっぽど弱いから、着いて行ったら足手纏いになっちゃうから……なら、ならそうならないようになれば、それならみんなに化け物なんて呼ばれたって構わない。バルトが必要とするだけの、いても邪魔にならないだけ強くなれば。

 バルト、あなたはああ言ったけど、私が隣にいたいと思ってる人は決まってるよ。私にとってただ一人、バルト・グリコスっていう男の子だけだから、だから絶対……私は『そう』なるから、その時は……




感想とか評価とか貰えるとありがたいです、ここすきもどういう描写が受けがいいのかわかるので助かります。あいも変わらずおっそい更新ですが楽しんで貰えたなら幸いです。
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