異世界から帰ろうとしたら病んだ女の子達に執着された男の末路   作:コーカサスカブトムシ

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アーマードコアの新作が出るということ、アーマードコアの新作が出ると言う事です。何が何でも現代に帰る理由が主人公に本当に生えてきた……
大変お待たせしました


アーマードコアの新作が出る

 魔法使いの武器、と聞いて連想する物はなんだろうか。大多数の人がイメージする物としてはまず杖が挙がるだろう。しかし一言に杖と言ったってハリポタに出て来るような『ワンド』タイプのやつか、ドラクエに出て来るような『ステッキ』タイプのやつ。大体の創作じゃどっちかがメインで使われるもんだがこのヤーラカムではどうかって言うと……どっちも使われる。

 杖だけじゃ無い。なんか小難しい事がめちゃくちゃ書いてありそうなガッシュで見る『魔本』、或いは『魔導書』。『指輪』なんかに加えて、魔法の力を馴染ませた剣やメイスなんかもイメージしやすいところではあるだろう。

 

「amābam」

 

 呪文を唱えながら槍を振るう。黄金の残光を放ちながら空を切ったその穂先から、肌身を切り裂くような冷気が飛び出した。これまでに俺が素手で、何も持たずに魔法を使っていた時よりもその温度は低く、勢いよく、そして魔力の消耗が少ない。

 アイテムの有無でステータスが変わるなんてのはゲームで言えば至極当然な事なのだが、魔法や怪物の存在はあれども特別な力を持った道具に触れるのはこの人生初めての事で。目に見えて変わった自分の能力というのを体感すると……凄い全能感を感じる。今までにない何か熱い全能感を。

 

「amābam」

 

 風…… なんだろう吹いてきてる確実に、着実に、俺のほうに。腰だめに槍を構え、続け様に炎の弾丸を五発、六発と岩壁へ射出。反動もそれなりだが撃ち出された火球の威力はこれまた素手の時とは比較にならない。フィンガーフレアボムズもどきをやった時は火が壁にぶち当たって弾けただけなのだが、今度の火は岸壁で爆ぜた場所を黒く焼き焦がし一部をボロボロと剥離させる程の物に。

 

「これは……良い物だ」

 

 かつてのクライス先生はこの槍と杖が一体となった物を武器としていたようで、遠中近の全距離に対応した行動が可能となる優れ物。だがこう言った武器は使い手の技巧や判断力を要求する物。

 また学問畑の人間が多い魔法使いは身体を鍛える者が少ない。近寄られた時にナイフなどを護身として使う、のとは違って専門に武器として槍を扱うクライス先生のスタイルは珍しい物だったそうだ。そんな武器を引き継ぐ事になるだろう俺は、きっと特別な存在なのだと感じました。今では私がおじいさん、孫にあげるのは勿論ヴェルタースオリジナル。

 

「驕るようですが……まるで自分の為にあるような、これほどしっくり来るとは」

 

 無論杖としての性能が高いだけじゃない。槍なんて穂先以外ただの棒みたいなもんだとすら思っていたが、握りやすい振りやすいと持っていてしっくりくる。当然俺には名槍だのなんだのの心得がある訳ではない。それでも俺の、いやバルト・グリコスという人間の身体がこれこそはとビンビンに伝えてくる。

 ズムンと地を踏み、一突き。魔法に引き続きまたしても練習台となっている岩壁を、あたかも豆腐のように軽々貫いてしまった。そうはならんやろと言いたいところだが、前世における固定観念というものはまるでアテにならんことを再認識させられた。

 

「そうも簡単に取り回されては、最早何も言えんわ。振りこなしがとうに熟達の域にある」

「先生がそう仰るのなら、烏滸がましくもそうだと思わせてもらいましょう」

 

 俺という人間は、謙遜というものが嫌いだったりする。いやわかるんだよ自惚れたりしてないっていう意味合いなのは、しかし過ぎた謙遜は傲慢になるとも言うだろう。何の才も無い、何も持たない俺にとって謙遜というのは威張られる事よりも余程頭に来る。いや寧ろ自分こそは天才だと威張ってくれた方が内心穏やかだ。

 だからこそ、俺はクライス先生の言葉を受け入れる。穏やかで優しい人ではあるが、この人は世辞を言ったりはしない。本人の能力を等身大に評し、公正な言葉をくれる。そのクライス先生が熟達と言うのだからその評価には間違い無い筈だ。その俺よりも遥かに強いだろうバグ枠のイザベラの事とかもう気にしてたって仕方ねぇや……

 

「銘は【黄穿】、名槍や名杖となれば更に上のものはままあったが……少なくとも儂の使うておった頃に、これ以上の『混ざり物』はあらなんだ」

「自分の身長がまだここから伸びるとしても、扱うのには問題無く……いや今が少し長いのか。しかし、こんな代物を本当に受け取って宜しいのですか」

「……なあバルトや」

 

 あまり高価な物を貰うのも現代から持って来た倫理観的には気が引けるところだが、クライス先生が今このタイミングでこの話を持ち出した事には勿論意味があるんだろう。初めて獣狩りをするようになった段階からでもなく、この村から外界へと旅立つ直前に餞別としてでもなく、何でも無い日に思えるこの瞬間であるということに。

 前世を含めても俺より遥かに長い年月を生きている……言い方は悪いがただ漠然と月日を過ごしただけの老人ではなく、様々な見聞を収めたクライス先生だからこそ、何かを感じ取っているのかもしれない。

 

「お前さんに指導をつけるようになってもう暫く経った。若い頃、多少周りに優れているとされておった儂が……この暫く、程度の月日でお前さんに教えられる事も無くなった。それはお前さん自身にもわかっておるじゃろう」

「……ええ、『そうですね』」

 

 俺は、というよりもバルトの身体がクライス先生から習得出来る物はそろそろ無いんだろうと感じだしていた。無論先生の身体能力は全盛期を遥かに過ぎ去っているし、老いてもなお修練を極めて技術を練り上げた……という人でもない。それは昔取った杵柄と言うべき物で、先生自身もやはり俺の感じていたことを悟ったのだろう。何とも、師匠を超えた!と無邪気に喜ぶには何処か苦しいものがある。

 

「となればお前さんには最早この地に、この村に長く留まり続ける理由はあるまいて。今は確か13だったか……独り立ちするのもそう遠くなかろう」

「今は、路銀を貯めている段階にあります。まずはバエルニアで……より先鋭的な魔法を経験しようかと」

「そうか、お前さんの実力をより高めるならそれ以上の道は確かにあるまい。儂も嘗てはそうしたものよ……だがくれぐれも探求する事だけに呑まれぬようにな」

 

 

 

 

 バルト・グリコスという人間について考える。少なくともあれをただの天才と言う言葉で括るには大き過ぎる。人間も一つの生物であり、親が優れていれば子はその優を引き継ぐ……無論全てがそうではなく逆もありうる事だが。

 同じ村の者を悪し様に言うつもりはないが、バルトの両親であるアストラとリンデは特に優れたというところもない凡庸な村民だ。畑仕事と村で生きる以上の事は彼らにする必要がなく、学ぶ必要もない。魔法の素質も皆無ではないが、目のある者は他にいくらかいる。

 だからこそ、そこから産まれてきたバルトの異端さは計り知れない。いったい誰があの子に目上の者への礼節を教えた。まるで何処かの誰かがそっくりそのままあのバルトという子どもに宿ったかのようで、そしてそれは……きっとそうなのだろう。

 

「懐かしいなゴーン、キアル、トリアス……」

 

 遠い昔に自分を残し、この世を去っていった仲間達の事を思い返す。あの話を、選ばれし勇者の話をしたのは……正に彼らと死に別れるすぐ前だったか。

 魔王と呼ばれる者、デスティーノ率いる悪魔の軍勢。人の街や村を滅ぼし、しかし人類を滅亡させる事が目的なのかと言えばそうでもない……思惑すら人には知れぬ、破壊と殺戮『のみ』を振り撒く世界の災害のような存在。

 勇者というのはそれを討ち滅ぼす為に産まれる、唯ならぬ力を持った人間とあの頃は話されていた。明確に何処かへ現れたそれを語ったものではなく、きっとそれは悪魔により追いやられた誰かが祈り縋った作り話なのだろう。

 

『俺がそうなんじゃないか?』

『馬鹿言え、こんなに品性のない英雄がいるもんか』

『なんだとぉっ……』

 

 当時はそれなりの実力者達として名を馳せていた自分達。そんな流行りの噂話をしていたちょうどその時だった、滞在していた村を悪魔の軍勢が襲撃したのは。特に腕の立つ自分達は町民達を守りながら魔の手勢と戦い、そうして……

 

『おいオースタン、残ってる人達はお前に任せる』

『何を……言っているんだトリアス。お前達を見捨てるような……』

『そんな話がしたいんじゃないわ。魔法も使えて一番この役割に向いてるのは貴方でしょ』

『だ、だからといって……俺達はいつだって』

 

『お話が長いなあ、それとも君達は無視してしまってもいいのかなあ』

 

 多くの悪魔を屠りながらも、それを率いていた首魁は恐ろしく強かった。まるで敵わないという程ではないにしろ、周囲への巻き添えを出さずに戦おうとする自分達と構う事のない相手ではコンディションがあまりにも違った。無論、四対一でその有り様ではあったのだが……

 

『躊躇うなオースタン! 今お前がすべき事はなんだ!』

『っ……すまん、すまんっ……』

『おおさっさといけ!! ……また、後でな』

 

 後に知る事になったが、自分達が対峙した悪魔は尋問官とも呼ばれるデスティーノ直属の配下であったのだという。強い訳だ、そして……ただあの魔王の部下にすぎない存在があれ程までに強いのかと、絶望した。勇者と呼ばれる者に縋りたくなる気持ちもわかる。そもそも悪魔達は、人間に対して圧倒的に生物として強いのだ。都合よく、奴らを討ち滅ぼしてくれるような存在を望むのだろう。

 心折れた俺は、逃げ帰るように故郷へと戻った。皆は変わらず受け入れてくれて、そうして長い月日を怠惰に過ごしたと思う。だがそんな中でも黄穿を手入れし続けたのは、みっともない何か未練があったのか……或いは。そんな折だった。

 

『……俺には、為さなければならないことがあるのです。その為に俺は産まれたと言っていいし、そうでなければならないという確信があります』

 

 バルトという、異端なる麒麟児。その存在の、あり方はいつだかの噂話を思い起こさせた。まるでそれは……いつかの勇者の話を思わせるもので、問いただした際に聞かされたその言葉は俺に確信を持たせた。仲間を犠牲にし、生き恥を晒しながらもこのような老骨がこれまで生きてきたのは、運命としてこの者に託せるだけの物を託してやる為だと。

 あの悪魔が今も生きているのかも知る事は無いが、もしもバルトが悪魔共と戦うとなった時に……俺の託した者が奴に届くのかもしれないと考えると、何か浮き足立つような心地になった。勿論それまでにより強い武具へ持ち変える事もあるだろうが、少なくとも俺達の意志は……彼が連れて行ってくれる。

 

「そう思えばなんとも……」

「クライスさん」

 

 ふと掛けられた外から声に浮ついていた意識を呼び戻す。戸を開けるとそこにはアンスリウムのところの、バルトをよく遠巻きに見つめているイザベラがいた。こうして直接話しに来た事はこれまでに無かったと思えるが……

 

「ううむ、今バルトはおらんが……」

「バルトのことじゃない……です」

「ならば、どうしたというんだ」

 

 その胸中にはきっと、言葉にし尽くせない想いがあるのだろう。その歳らしからぬ、何かの覚悟を決め切った顔の少女は自分の思いの丈を真っ直ぐに伝えてきた。バルトの力になりたいのだと、その為に彼と同じように鍛錬をつけてほしいのだと。

 

「わたしは……何でもいいから、彼の隣にいたい……だからっ」

「なるほど、なぁ」

 

 思い残す事も最早無いと思っていたが、まだ自分の役目は残っていたらしい。人生も締めくくりに掛かろうという歳月に、自分が未来を担う若人の力になれるというのはやはり……悪くない。




この後イザベラの異常性をこれでもかと見せつけられて(バルト本当に勇者やったんかなぁ……)とか思い始めるクライスさん。そいつ勇者でも何でも無いですよ

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