あまりありふれていない役者で世界逆行   作:田吾作Bが現れた

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ようやく仕上がりましたぁ!! では改めまして読者の皆様への惜しみない感謝を。

おかげさまでUAは268982、しおりも547件、感想数は853件に。お気に入り件数も1050件(2026/9/9 21:53現在)を維持することが出来ました。ひとえに皆様のおかげです。


そしてAitoyukiさん、拙作を再評価してくださり感謝いたします。また書き進める力をいただきました。

今回の話を読むにあたっての注意点として少し短く(8000字足らず)なっております。では上記に注意して本編をどうぞ。


百十八話 冒険譚は今、クライマックスへと向かう

「いやー壮観だねー」

 

 恵里達が魔人城に招かれてからほぼ半日。アワークリスタルを酷使するなどして装備を調えた後、恵里達は夜明け前に王国の平原へとゲートで移動していた。そんな折、一緒に来ていたミレディが普段の軽い調子でつぶやく。

 

「ま、そうだね」

 

 恵里は平原をながめながら軽い調子で相づちを打つ。その視線の先にはハジメ謹製の武具を身につけ、ライフルを抱えた無数の兵士達や冒険者達の姿があった。いずれも量産したアワークリスタルを使ってこの半日――約五日に引き延ばされた時間を使って訓練し、いつでも戦えるよう列を組んで待機している。

 

(どうにか竜人族を引っ張ってこれたのはありがたいね。打ち合わせはあっちに任せるとして……ハウリアとかの亜人はあっちの方だったっけ)

 

 その戦列の一角にはティオに招かれた竜人族の一団もおり、その多くが竜の姿で待機していた。また和装に酷似した格好をした人の姿の竜人族もいたが、それらはメルドやトレイシー、銀髪の偉丈夫らと話をしている。部隊の指揮について話でもしてるんだろうと思いつつ、恵里は数日前まで平原になかった岩の要塞に目を向けた。

 

(シュラーゲン、ってことは……あ、狙撃の得意な奴らを集めたってメルドさんが言ってた。あと広範囲のデバフ担当も――)

 

 健太郎が造ったと報告があった要塞、そのスリット越しに対物ライフルを持ったハウリアや他の亜人族の姿を恵里は見つける。すると脳裏に昨晩の会議のことが浮かび上がり、そのことについて何の気なしに恵里は思い返していた。

 

「前々から戦力を集めてたのは聞いてるけど、半日でここまで仕上げたんだからね。これで負けたら承知しないよ」

 

「わかってるよそれぐらい」

 

 そんな時、不意にミレディがいつもの調子でこちらを煽ってくる。恵里も軽く口元を緩め、振り向いて憎まれ口を叩きながら返した。するとミレディは顔のパーツを半笑いに変えて無言になってしまい、思わずイラッとした恵里は軽くメンチを切った。

 

「二人とも相変わらずだな……わかってますよミレディさん。これもハジメと永山、いや皆のおかげですから」

 

「そうね。私達だけの力じゃ決して――あ、イナバくんもうちょっとだけモフらせて!」

 

 恵里がしばしミレディをにらんでいると、近くにいた光輝も苦々しい声で二人のことについて触れてきた。そうしてからどこか感慨深げにつぶやいたのが恵里の耳に入る。イナバをモフりながら一緒に来た雫もまた光輝の言葉に同意し、他の皆もクスクスと笑ってから相づちを打つなりその通りだと述べるなりしていた。

 

「うん。とりあえず僕らの分も含めて間に合ってよかったよ」

 

「ハジメくんがしくじるはずなんてないよぉ~」

 

 そこでふとハジメがどこかホッとした様子で言うと、恵里は軽く肩をすくめてから彼の方を振り返る。そしてハジメの腕に自分の腕を絡めながら彼を見上げ、その理由を甘ったるい口調で述べていく。

 

「あ・た・ら・し・い、技能があるんだしさぁ~」

 

 その正体はハジメが新たに手にした二つの技能、“複製錬成”と“自動錬成”である。魔王城から戻った後、ハジメが自分のステータスプレートを確認したことでそれは判明した。そのおかげで兵士達に提供する武具類も最高のモノを提供でき、また恵里達の武装も更に強くなったのである。

 

「流石ハジメくんだよねぇ~」

 

「ふふっ。そうだね」

 

 恵里は自分の右中指にはまった宝物庫に視線を落とし、愛おしげに見つめてからハジメを上機嫌で持ち上げる。そして反対側で彼と腕を組んでいる鈴とも顔を合わせた。鈴もしょうがないなぁと言わんばかりの顔つきになったものの、結局は微笑みながら同意してくれた。そのことで恵里はますます上機嫌となった。

 

「え、えっと、その……し、城のお針子さんや錬成師の人たちだってそうでしょ!」

 

 するとほほを赤らめたハジメがちょっと上ずった声で、軽く言葉を詰まらせながら他の功労者のことを挙げてくる。恥ずかしがるハジメを可愛いと思いながらも恵里は自分の服へと視線を落とした。

 

「まー、そうだねぇ~」

 

 今恵里が着ていたのは、オルクス大迷宮攻略以降身につけていたノースリーブのシャツに魔物の革のパンツでは無い。かつていた世界で“降霊術師”として王国で活躍してた頃のものとよく似た格好だ。

 

(まさか、皆でこの格好になるなんてね)

 

 それはハジメや鈴、ほ(・)と(・)ん(・)ど(・)の(・)メ(・)ン(・)バ(・)ー(・)も同様であった。流石に素材の違いか所々で色使いやデザインが違ったものの、恵里はひどく懐かしさを感じている。そのせいか自然と口元が緩んでしまっていた。

 

「確かにな。あの人達のおかげで俺達も訓練に費やせる時間が増えたんだ。ちゃんと会ってお礼を伝えたいな」

 

 そしてどこか感慨深げにつぶやいた光輝に恵里もただうなずく。ハジメと光輝が述べたように、今の自分達の装備は城のお針子と筆頭錬成師達がアワークリスタルを使って仕上げてくれたものだからだ。

 

(ま、そうだね。そうじゃなきゃボクらでまた針仕事しなきゃいけなかったし。そこは感謝してやってもいいかな。うんうん)

 

 サウスクラウド商会で彼らが販売する武具の作成を担っていたこともあり、突貫作業でやってくれた。その分時間が出来たことに恵里も目(・)を(・)つ(・)む(・)り(・)な(・)が(・)ら(・)も、心の中でお針子達のことについて考える。

 

「ま、本物の勇者君が不審者ルックなのはどうかと思うけどねぇ~」

 

「ブフッ」

 

 そこでミレディがクスクス笑いながら言及してきたせいで、恵里は思いっきり吹き出してしまった……重吾が勇者であると喧伝してしまったせいで、本物の勇者である光輝はそれがバレないように大きなコートを羽織らなければならなくなったのだ。

 

「ご、ごめ……考えないようにしてたんだけど……」

 

 鎧ごと覆うコートなせいでパッと見では不審者か、漫画やアニメで出てくる四天王や敵の幹部が姿を隠してるようにしか見えないのだ。それをミレディが言ったせいで光輝を笑わないでいる努力が水の泡となってしまう。しかし恵里は口元に手を当てながら笑い声を上げないようにするのでいっぱいであった。

 

「わ、悪い光輝、スマン……ぐ、ぐふっ」

 

「ほ、ホントごめん……悪いのはわかって、ふふっ」

 

「もう恵里っ! 皆も!」

 

 ちなみに吹き出したり腹を抱えて笑っているのは恵里だけではない。彼女が笑いを堪えながら周りを見れば、ハジメ達も口元を押さえてぷるぷる震えたりしているのがわかる。暴れるイナバを抱えながらぷりぷり怒った雫や笑われた光輝には悪いと思いつつも、恵里はどうにか笑いをかみ殺そうと必死になっていた。

 

「「「ミレディぃ~」」」

 

「ご、ごめ、謝るっってばぁ~! 緊張をほぐそうと思ったんだよぉ~!」

 

 案の定、光輝と雫が恨みがましい声で、愛子が怒りをにじませながらミレディの名前を口にして追いかけ始めた。ミレディも雫の放つクナイや愛子の初級魔法から逃げ回り、情けない声で言い訳を垂れ流している。

 

「ひどい! ひどいよ! これからが本番だってのにミレディちゃんの一張羅が泥まみれになったじゃん!」

 

「自業自得よ」

 

 そんなコントのような逃走劇は愛子が作ったぬかるみにミレディがはまったことであっさり終わった。そうして泥まみれとなったミレディは雫に片手だけ掴まれたまま宙づりにされてしまっている。つるしている雫も鋭い目つきのまま鼻で笑うだけであった。

 

「あー、ゴホン!……ともかく、俺達は予定通り夜明けと共に神域に突撃。ミレディさんと幸利、優花、奈々それと愛子先生、イナバとユグドラシルはここで待機。永山達と一緒に神の使徒の迎撃に移る。それでいいよな?」

 

『了解』

 

 せき払いの後、どこかばつの悪い様子で光輝は最後の戦いの予定について確認してきた。恵里も笑うのを我慢しつつ、皆と一緒に返事を返す。何か別のことを考えて笑うのを堪えようとし、恵里は再度周りや上空へと“遠見”の技能も使いながら色んな場所へと目を向ける。すると遙か上空、雲の切れ間から見慣れた白い竜がたたずんでいるのを恵里は見かけた。

 

(ウラノスはいたけど、他の魔人族どこだろ。雲の上かな)

 

 恵里の脳裏にまたしても作戦会議の内容、魔人族と亜人族についてのものがぱっと浮かぶ。魔人族はテイムした魔物を引き連れて空中戦を、狙撃手にならなかった亜人族は人目につかないよう別働隊として働いてもらうことを取り決めたのを思い出したのである。

 

 これにはフリードも真剣な表情で『私に任せろ』と言い放ち、カムもまた亜人族へのメッセンジャーとして役割を果たす意気込みを熱く語っていた。

 

(で、他の魔人族の奴らも空中で戦うって話だし、亜人族は……うん。負けるはずがないね)

 

「っ!――空が!」

 

 それらが成功したとの報告も既に聞いており、ここまで戦力をかき集められたことに恵里は満足して笑みを深くする。その時であった。夜明け前の空がいきなり赤黒く染まって鳴動したのである。ハジメは真っ先に気づいたらしくそのことを端的に叫んだ。

 

「うわ、自分で言っといて約束破るとかダサッ」

 

「それだけ向こうも余裕がないってことだよね。勝てるよ」

 

「だね」

 

 恵里は速攻を仕掛ける予定の自分達のことを棚に上げ、思いっきり顔をしかめてエヒトをこき下ろした。すると鈴が小馬鹿にしながらつぶやき、恵里は自分達が改めて優位な状況にあると確信する。そして表情を愉悦とあざけりに満ちたものに一転させてからうなずいたのであった。

 

「各員、迎撃態勢! これより偽りの神を滅ぼす!」

 

『おー!!』

 

 そうしている内に空に不自然な亀裂が入っていく。どこから来るかと目を皿のようにして恵里が空を見つめていると、後ろから重吾が勇ましい声で号令をかけたのが耳に入った。兵士や冒険者達の張り上げた声が力強いこともあり、これならやれると恵里は一層口元をつり上げた。

 

「来たっ! あっちの方向!」

 

 空のそこかしこがヒビまみれになっていき、遂にそれが割れる。代わりに出てきたのは深く濃い闇であり、そこかしこから無数の神の使徒が現れてきた。“遠見”の技能でその光景を見た恵里は、軽く息を吐くと緊張でかすかに体を震わせていた。

 

「始めましょう、皆さん。私達の復讐を」

 

「言うことがそれですか畑山先生!?」

 

 念のためにと恵里は杖を宝物庫から取り出した直後、愛子の怨嗟にまみれた声がその場で響く。即座に光輝がツッコミを入れてハジメや鈴に香織達がそうだそうだと声を上げるが、恵里は軽く鼻を鳴らして彼(・)ら(・)の言葉を聞き流す。

 

「そうだね。あのクソ野郎のせいで散々不幸にさせられたんだし。しっかり復讐してやろうじゃんか」

 

 恨み辛みがこもった愛子の言葉に恵里は心からうなずいていたからだ。忌々しげに上空の神の使徒の群れを一度にらむと、亀裂のような笑みを浮かべながら恵里はそう言い放つ。

 

「だな。先生達はマジメすぎんだよ。それで十分だろ?」

 

「……そう、だね。今すぐにでもエヒトを殺したくなってきた」

 

「「ハジメくん怖い怖い怖い」」

 

 すぐさま大介が皮肉げに笑ってハジメ達をたしなめるも、恵里は訂正する気も大介を恨む気も起きなかった……代わりに隣にいたハジメがいきなり能面みたいな顔つきとなり、殺気を垂れ流し始めたせいで鈴と一緒に心底怯えてしまう。

 

「……やっと、やっと殺せる。お爺ちゃんとお母さんの仇」

 

「あぁ、本当に……ッ」

 

「雫も光輝も落ち着けって! 鷲三さんと霧乃さんも!」

 

「――見つけたぞ貴様ら」

 

 雫や光輝らも臨戦態勢どころか尋常じゃ無いまでの敵意と殺気を漏らし出し、龍太郎が泡を食った様子で彼女達をたしなめようとする始末。これは“鎮魂”使った方がいいかもと恵里が怯えながらも考えた矢先、憎悪と恨みに満ちた声が背後に響いた。

 

「全員警戒っ!!」

 

 光輝が号令をかけると同時にハジメ達から漏れっ放しになってた殺意がピタッと消えた。立ち直ったハジメ達と共に恵里は振り返ると、波紋を浮かべた空間へと杖を構える。恵里が軽く息を吐いてすぐ、一層揺らいだ空間からアルヴと数十の神の使徒が姿を現す。

 

「不意打ちも満足に出来ないのぉ~? 相当頭回ってないんじゃな~い?」

 

「……貴様らのせいでエヒト様はご乱心召されたのだぞ」

 

 鼻で笑いながら恵里は嫌みを口にするが、アルヴは心底不機嫌そうに顔をゆがめたままであった。もしかして思ったより冷静なのかと恵里は一瞬思うも、アルヴの吐いた恨み節を聞いてそうでもなさそうだと半笑いを浮かべる。

 

「一刻も早く私を送ってくださったエヒト様のために神子を届けねば。そうしなければ次は私が死ぬのだッ!」

 

(さ~て、どうしよっか)

 

「あー、悪い皆」

 

 続けてアルヴが焦燥と逆恨みに満ちたセリフを吐いたのを聞き流しつつ、恵里は考える。予定では神域でエヒトと一緒にコイツを倒すつもりだったからだ。警戒は解かないまま、どう対処しようかと悩んでいるといきなり大介がこちらに声をかけてきた。

 

(なーに思いついたんだか。下手なのだったら後でぶっとばして――)

 

「せっかく来てくれたんだしよ、ラ(・)ス(・)ボ(・)ス(・)の相手は俺とアレーティアでやるわ」

 

 しかもいたずらか何かを思いついた時と同じ声色であったため、恵里は軽く眉間にしわを寄せながら大介を流し目で見やる。すると大介がそのまま軽い調子で妙なことを口にした。そのせいで恵里はしばし頭が真っ白になってしまう。

 

「「だ、大介?」」

 

「言ったろ。ラスボスは俺とアレーティアが倒すってな。だからよ――中ボスの方、お前らでやってくれよ」

 

 アレーティアと光輝が困惑しながら大介に問いかければ、あちらはやれやれといった調子で返してきた――ほんの一秒にも満たない沈黙の後、平原で恵里達の大きな笑い声が木霊(こだま)する。

 

「く、はは、あっははははは!! 最高じゃん! 最高だよ檜山君!」

 

「もう、もうっ! 大介君ここで笑わせないでよ!」

 

「ほ、本当だよもうっ! 流石に笑っちゃうってば!」

 

「わ、悪口を言うのは、TPOをわきまえない発言は大人としてどうかと思いますけど……で、でも、無理です。あはははは!!」

 

「ふ、くくっ……流石大介。私の、私の最高の人っ」

 

 倒し損なったエヒトをただの中ボス扱い。そしてアレーティアのことを考えればアルヴの方がラスボスに相応しい。そうだと端的に伝える皮肉を言った大介に、恵里も上機嫌になって彼を褒めちぎってしまう。お腹を押さえてヒィヒイ言いながら恵里が周りを見れば、ハジメや鈴達はもちろん、愛子やアレーティアまで愉快げに大笑いをしているのがわかった。

 

「……何を言っているのだ、貴様ら」

 

「そ、そうだな! ラスボスの相手は頼むよ大介!」

 

「そう、そうね! 中(・)ボ(・)ス(・)のエヒトは私達に任せなさい!」

 

 光輝と雫はゲラゲラ笑いながらも大介の頼みを快諾していく。龍太郎達も笑うのを我慢しながらも受け入れ、恵里もまたそれに応じた。

 

「ぷ、くくっ……でもよぉ、大介君とアレーティアだけじゃやられるんじゃねぇのぉ~? しょーがねぇから俺も戦ってやるぜぇ?」

 

「『俺ら』も、じゃろう。礼一?……ま、悪意に塗(まみ)れた言い方じゃったが、妾も嫌いでは無い」

 

 だがここで礼一が笑うのを堪えながらも、ティオが涼やかな声で待ったをかけてきた。そこで冷静さを取り戻した恵里は考え直す。いくら武装した兵士達がいるといえど、何十もの神の使徒とアルヴを大介とアレーティアだけで戦わせるのは流石にまずいと思ったからだ。

 

「く、ふふっ。ったく、水臭ぇな~大介も礼一もよぉ~。信治サマが露払いぐらいやってもいいんだぜ?」

 

「そ、そうですよ。私と良樹さんも頼ってください!」

 

「おいおい俺のセリフ盗るなよシア……ってぇ訳だ。貸し借りなしで手伝ってやってもいいぜ?」

 

 すると信治と良樹が下卑た笑みを、シアが笑いで口元をヒクつかせながらも微笑みながら大介達に助力を申し出てきたのである。これだけ戦力が集まればどうにかなると恵里は確信しつつ、大介の方に視線を向ける。

 

「ったくよぉ~。だったら足引っ張るなよお前ら……ありがとよ」

 

 大介も軽く鼻を鳴らして礼一達の方を振り返り、やれやれといった様子で言い返していた。なお小声で感謝の言葉を述べたのに恵里も(・)気づき、礼一達と同様に軽く吹き出してしまう。

 

「黙って聞いていれば貴様ら……下賤な言葉でエヒト様を愚弄したな!!」

 

 そうして場違いな空気に浸っていられるのもこれまでだった。アルヴが敵意に憎悪、殺意がダダ漏れになった言葉を吐き、金色の魔力をその場で叩きつけるように噴射したのである。それと同時に控えていた神の使徒達も一斉に武器を構えて突っ込んできた。

 

「皆さん行ってください! ここは私達が!」

 

「――オッケー!」

 

 その直後、アレーティアがこちらを振り向き、やる気に満ちた表情でこの場は任せろと伝えてきた。今までで一番頼れる顔つきをした彼女に恵里も笑みを浮かべ、しっかりと返事を伝えた。

 

「ハジメくん、皆、行こう!」

 

「行ってこい! 皆!」

 

「うん! 中ボス退治に、決着をつけに!」

 

 そして恵里はハジメの方を向き、不敵な笑みを浮かべながら声をかける。幸利達の声援を受けながらハジメも意気揚々といった様子でクリスタルキーを取り出した。そしてそれを虚空に向かって差し込んでいく。

 

「逃がさん! エヒト様の御前に近づけさせは――」

 

「何抜かしてやがんだテメェ。こっから先は俺達が相手だ」

 

 すぐに空間はグニャリと歪み、いびつな半円の穴が開く。アルヴの焦りと怒りのまみれた声にも、大介の頼もしい宣言にも恵里はハジメ達と一緒に振り返らずに先に進んでいく。そして恵里達は一本の白亜の巨大な通路が伸びる極彩色の空間へとたどり着いた。

 

「皆、予定が狂ったけどここで武装を!」

 

『了解っ!』

 

 着いてすぐにハジメが声をかけてきたため、恵里は皆と一緒に返事をする。そうして本来は神域に行く前に身につけるはずだったアーティファクトを取り出そうとした。

 

「っ! アイディオン展開!」

 

「「“聖絶”」」

 

 その瞬間、方々から銀の砲撃が迫ってくる。しかしハジメが可変式の大盾を展開し、鈴と香織が最強の結界魔法を即座に張ってくれた。だから恵里は焦ること無くヘカトンケイルⅡを背負い、金属製の義肢と自分の両手それぞれに兵器を握る。

 

「よし。皆、装備は出来たみたいだな」

 

「みたいだね。じゃ、アレ使ってから突撃しよっか」

 

 恵里が準備を終えて見渡せば光輝もコートを脱ぎ捨てており、ハジメ達も鋼の多腕を身につけていたのがわかった。そしてハ(・)ジ(・)メ(・)以(・)外(・)の皆が首元に紅い宝珠のついたネックレス――“覇潰”が付与されたアーティファクトをつけているのもちゃんと確認する。

 

「うん、行こう! せーのっ」

 

『“覇潰”ッ!!』

 

 そしてハジメが号令をかけると同時に、恵里も皆と一緒に限界を超える。超えるや否や、導越の羅針盤とクリスタルキーを手にしたハジメが再度ゲートを開く。再度ゲートに飛び込めば、見覚えのある景色が恵里の目に飛び込んできた。

 

『な、なぁっ!? も、もう来たというのかッ!』

 

 そこかしこに亀裂が入った白亜の空間。崩れたひな壇の上で地団駄を踏んでいたエヒトが驚愕に満ちた声を上げる。魔王城で見た時よりも薄ぼけたそれを見て、恵里は残忍な笑みを浮かべながら返事をする。

 

「そうだよエヒト――じゃ、今度こそ死んでね」

 

 恵里が声をかけるとほぼ同時、神域に殴り込みをかけた全員が一斉に引き金を引く――かくして、偽りの神との最後の戦いが始まったのであった。

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