心を閉ざした少年と少女 ANOTHER STORY 作:お風呂場の蓋
第1話 新しい家族
お姉ちゃんが扉を開くと、その向こうには全身を黒色で包んでいる人間が立ってた。
私達はお姉ちゃんを先頭にして仕事部屋へ入ると、人間は私達を光が無い目で1人ずつ見た。
…あれ、もしかして私のことが見えてる?
人間は私の方にも視線を移したけど、私は気のせいかなと思って部屋の中をフラフラと歩いた。
でも、お燐とお空はすぐに自己紹介を終わらせちゃったから、一応私も人間の目の前に立って自己紹介を始めたんだけど…
こいし「私は「以上が私の家族です」ってちょっと!お姉ちゃん!?」
お姉ちゃんが急に割り込んできて、強制的に私達の自己紹介を終わらせちゃった。
一応見えなくても自己紹介だけはしようと思ってたのに…なんて思ってたら、人間は私の方を一瞬だけ見てお姉ちゃんに声を掛けた。
?「…なぁ、さとりさん、1つ聞いていいか?」
さとり「はい、なんですか?」
?「なんで、2人なんだ?」
…あれ?もしかして、私の姿が見えてる?
そんなことはあり得ない筈…なんだけど、さっき人間は確実に私を見てきた。
それに今、人間はお姉ちゃんに何故ペットの2人だけに自己紹介をさせたのかと疑問に思っている感じだった。
さとり「え?だってここには私と黒夜さんとお燐とお空しかいませんよ?あ、ちなみに燐のことはお燐、空のことはお空と普段は呼んでいます」
しかし、お姉ちゃんは人間が疑問に思っていることに気付いていないのか、普通に人間が投げかけられた質問に答えていた。
すると、人間は完全に私のことを指差してお姉ちゃんに訊いた。
?「いや、呼び方は別にいいがこいつは?」
その瞬間、私は今まで感じたことのない驚きを味わった。
だって、どんな人間にも認識されなかった私が初めて認識されたんだから。
さとり「え!?黒夜さん、こいしのことが見えるんですか!?」
?「ん?あぁ、見えるが?」
すると、お姉ちゃんも私が認識されたことに驚いていたみたいで、人間に私が本当に見えていることを確認してた。
だけど、人間は状況が理解できていないのか「何を当たり前のことを言っているんだ?」みたいな様子で首を傾げてた。
燐「嘘、こいし様が見える人間なんて初めて見たよ」
そして、お燐もお姉ちゃんと同じように驚いていていたんだけど、お空は驚かないで首を傾げてこんなことを言い出した。
空「ん?いや、見えるでしょ?普通」
はぁ…またお空は私が人間には見えないことを忘れてるみたい。
何でお空はこんなにも忘れっぽいんだろう?なんて呆れていると、お燐も呆れた様子だけどちゃんと説明してあげてた。
?「名前はなんて言うんだ?」
すると、人間はお燐とお空のことは気にしないで私に名前を聞いてきた。
そうだ、ちゃんと私も自己紹介をしないと。
私は一瞬そう思ったけど、ただの自己紹介は面白くないだろうし、私は人間を少し驚かそうと思って自己紹介をした。
こいし「ふふ、私は古明地こいし さとりお姉ちゃんと同じ妖怪だよ よろしく、お兄ちゃん」
?「あぁ、俺は…」
あれ?お兄ちゃん呼びに驚かなかった…
私は驚かすためにわざと人間のことをお兄ちゃんと呼んでみたんだけど、人間はそれも気にしないで自分の自己紹介をしようとしていた。
それならこれならどうだろうと、私はわざと人間の自己紹介を遮ってみた。
こいし「黒夜夜見でしょ?お姉ちゃん、ペットと私に言ってたもん」
夜見「…そうか」
…全然気にしてない。
夜見っていう人間は特に気にしない性格なのか、何に対しても反応が薄くてあまり面白くなかった。
お姉ちゃんはよくこんな人間と家族になろうとしたなと不思議に思いながらも、私は夜見に本当に私達の家族になるのか質問した。
こいし「ねぇ、お兄ちゃんがここに住むって本当?」
…あれ、私は何でまた夜見のことをお兄ちゃんって呼んだんだろう?
でも、何故かわからないけど私はお兄ちゃんという呼び方に違和感は感じなかった。
燐「そういや、さとり様そんなこと言ってたね 黒夜さんを誘ったら、その誘いを受けたとかって」
空「えっと?そんなこと言ってたっけ?」
燐「お空、はぁ、なんでいつも物事をすぐに忘れちゃうかなぁ?」
お空はまた話したことを忘れており、お燐はまた呆れた様子で部屋の前でお姉ちゃんがそういう話をしたでしょって教えてあげてた。
そして、お姉ちゃんはお兄ちゃんの目の前に立って小声で何か言うと、お兄ちゃんはため息をついて私達に言った。
夜見「黒夜夜見だ、今日からここに住むことになった よろしく」
こうして、お互いの自己紹介が終わるとお姉ちゃんは時計を見て慌てた様子を見せた。
さとり「あ、もうこんな時間!ご飯作らないと」
そう言ってお姉ちゃんは部屋から出て行ったんだけど、私はお姉ちゃんの行動の意味がわからなかった。
だって、お姉ちゃんは料理が苦手で、いつもはお燐にご飯を作ってもらってるから。
いつもご飯を作ってくれるお燐はどうするのかな?
私はそう思ってお燐の方を見てみるとお兄ちゃんに部屋を案内するって話して、お兄ちゃんと一緒に部屋を出て行っちゃった。
もしかして、私が居ない間に練習をしたのかな?
…正直あまり期待はできないけど、私はお空に私が居ない間にお姉ちゃんが料理を作ったことがあるかを聞いてみることにした。
こいし「ねぇ、お空?私が居ない間にお姉ちゃんがご飯を作ったことってある?」
空「え?ううん、いつも通りお燐が作ってくれたよ 確か昨日は魚の塩焼き…じゃなくて煮付けだったかな?」
良かった、お空はご飯を作ってくれたのは誰なのかはちゃんと覚えてて、やっぱりお燐がご飯を作ってくれてたみたい。
でも、だったら何で今日はお姉ちゃんがご飯を作るんだろう?
こいし「そっか、お燐が作ってくれたんだ 教えてくれてありがとう、お空」
空「うにゅ、どういたしまして」
私はお空にお礼を言うと、どうして今日はお姉ちゃんがご飯を作るのかを知る為に部屋を出てキッチンに向かった。
そして私はキッチンの前に着いて早速扉を開けると、キッチンでは何故かお姉ちゃんとお兄ちゃんが台所で並んで料理を作ってた。
さとり「え、わぁ、上手ですね もしかして、料理が得意なんですか?」
夜見「まぁ、大体の料理は作れるよ そういや、これは何を作ってるんだ?」
さとり「えっと、肉じゃがです」
何でお兄ちゃんがキッチンに居るのも気になったけど、まずは何で今日はお姉ちゃんがご飯を作るのかを聞かないと。
そう思って私はキッチンの扉を閉めてゆっくり近付いたんだけど、お兄ちゃんがお姉ちゃんに向けてこんな質問をした。
夜見「え?じゃあ、なんでニンジンを千切りに?」
さとり「え?えっと、肉じゃがのニンジンって千切りじゃありませんでしたっけ…」
え?ニンジンを千切りにしてるって嘘でしょ!?
私もお姉ちゃんと同じで料理は作らないけど、肉じゃがのニンジンは乱切りにするのは私でも知ってるよ!?
お姉ちゃんがまさかここまで料理が苦手だったなんて…と驚いてるとお兄ちゃんが更に質問をした。
夜見「作ったことか、作ってるの見たことある?」
さとり「い、いや、ありませんが」
夜見「なんで、肉じゃがを作ろうとしたんだ?」
さとり「えっと、それは…その…」
お姉ちゃんはお兄ちゃんに質問されると手を止めて答えに困ってもじもじとしてたら、お兄ちゃんはお姉ちゃんが普段から料理を作ってないことに気付いたみたい。
夜見「まさかとは思うけど料理作ったことないのか?」
さとり「い、いや、そんなことは「ピンポーン、せーいかーい」って、こいし!?」
お姉ちゃんは何か言い訳をしようとしてたけど、私はお姉ちゃんの言葉を遮ってお兄ちゃんにその答えは正解だと教えてあげた。
そうすると当然、お兄ちゃんは私にある質問をしてきた。
夜見「なぁ、こいしさん 料理はいつも誰が作ってるんだ?」
さとり「ちょ、ちょっと!黒夜さん!?」
こいし「お燐がいつも作ってくれてるよ」
さとり「あ、こ、こいし!」
私はお兄ちゃんの質問に正直に答えてあげるとお兄ちゃんは頷いて、お姉ちゃんはお兄ちゃんと私の間であたふたしていた。
すると、私がさっき入ってきた扉が開いてお燐が入ってきた。
燐「あの、さとり様 やっぱりあたいが料理作った方がって、あれ!?黒夜さん!?」
さとり「ちょっと!?なんでそのままこっちに来るのよ、お燐!部屋で待っててと言ったでしょ!」
夜見「おい、ちょっと、皆落ち着け」
お燐がキッチンに入ってくるとその場は更にうるさくなって、お兄ちゃんは私達を落ち着かせようとしてたけど、私達にお兄ちゃんの言葉は届いてなかった。
燐「いや、だってさとり様 料理したことなかったじゃないですか」
こいし「そうそう、なんで急に自分で作ろうとしたんだろ?」
さとり「ちょ、ちょっと私だって料理位できるわよ!」
夜見「お、おい、だから落ち着けって」
それでもお兄ちゃんは私達を落ち着かせようと声を掛け続けたけど、言い合いに夢中な私達はお兄ちゃんの声に気付けなかった。
だけど、急に床に何かを叩き付けるような音が鳴って、驚いた私達は体がビクッてなって言い合いをやめた。
夜見「はぁ、とりあえず落ち着け」
私達は恐る恐る音が鳴った方を見てみるとお兄ちゃんが腕組みをしてて、見下ろされている私達はお兄ちゃんが怒ってるように見えた。
すると、お兄ちゃんは怯えている私達に淡々と声を掛け始めた。
夜見「まず、さとりさん」
さとり「は、はい!」
夜見「まぁ、今回はさとりさんが料理を作ってくれ」
さとり「え、は、はい?」
まず最初に声を掛けられたお姉ちゃんは緊張してるのか咄嗟に大きな声で返事をしたけど、お兄ちゃんの意外な指示を聞くと疑問形だったけど何とか返事をした。
夜見「次に燐さん」
燐「は、はぃ」
夜見「さとりさんの料理のサポートを頼む」
燐「え、う、うん、わかったよ」
次に声を掛けられたお燐は怯えた様子で返事をしたんだけど、お兄ちゃんはお姉ちゃんの時と同じように意外な指示をすると、お燐は疑問形と怯えが混ざった返事をした。
夜見「最後にこいしさん」
こいし「...」
そして、最後に残った私にお兄ちゃんは声を掛けた。
お兄ちゃんに私は何て言われるんだろうって思っていると、お兄ちゃんはこんなことを言ってきた。
夜見「まぁ、悪意はないんだろうが、言葉には少し気を付けろ さとりさんと同じサトリなんだから相手がどう思ってるかわかるだろ?」
それを聞いた瞬間、私はお兄ちゃんに対して怒りだと思う感情を抱いた。
心を読む能力を持ってたせいで、私が昔にどんな目に合ったのかも知らないくせに…そう思うと私の感情を忘れちゃった心の奥が沸騰しているように感じた。
こいし「...わかんないよ」
夜見「ん?」
こいし「わかんないよ、人の思ってることなんて」
夜見「こいしさん、何を言ってるんだ?」
私はそれだけ言うとお兄ちゃんを無視してキッチンを出て、自分の部屋に戻るとベットの上にうつ伏せで寝っ転がった。
私がどんな目に合ったか知らないくせに…って何度も思ってたけど、よく考えたらお兄ちゃんが知らないのは当たり前だって気付いた。
私だってお兄ちゃんのことよく知らないや、なんて思ってると心の奥が沸騰してる感じは既に無くなってた。
そして、私はお兄ちゃんは一体どんな人間なんだろうって考えてると、扉がノックされたのでベットから下りて扉を開けるとお姉ちゃんが立ってた。
さとり「こいし、ご飯が出来たわ 黒夜さんを呼んで、食堂に案内してくれないかしら?」
こいし「うん、いいよ でも、お兄ちゃんは何処にいるの?」
さとり「こいしの部屋の向かい側にある部屋よ、それじゃあ私は先に行って待ってるわね」
お姉ちゃんはそう言うと足早に食堂に行ったから、私はすぐ目の前のお兄ちゃんの部屋の扉を開けた。
すると、お兄ちゃんはベットに寝っ転がってたけど体を起こして、私はご飯が出来たことをお兄ちゃんに伝えた。
こいし「お兄ちゃん、ご飯出来たってよ」
夜見「あぁ、わかったよ すぐ行く」
お兄ちゃんはそう言うとゆっくりとした動作でベットから下りているので、その間に私はお兄ちゃんの側に近付いた。
夜見「ん、どうしたんだ?」
こいし「ふふ、早く行こっ」
夜見「おわっと」
そして、お兄ちゃんの手を取って走るとお兄ちゃんは少しよろけたけど一緒に走って、私は食堂の扉を走ったまま開けるとお姉ちゃん達は既にいつもの席に座っていた。
こいし「呼んで来たよ~」
さとり「ありがとうね、こいし...あら、どうしたんですか?手なんか繋いじゃって」
夜見「いや、こいしさんが急に繋いできたんだよ」
燐「本当かな~、本当は黒夜さんが手を繋ぎたいとか言ったんじゃないの~?」
お姉ちゃんは私とお兄ちゃんが手を繋いでいるのを見るとどうしたのか聞いて、お燐はニヤニヤと笑いながらお兄ちゃんのことを冷やかした。
でも、お兄ちゃんはお燐の冷やかしに対しては何も返さないで、腰に挿してあった黒い刀を空いてる手で少しだけ抜いた。
燐「う、嘘だよ く、黒夜さん、冗談だって」
夜見「冗談じゃなくしてもいいんだか?」
燐「わ、悪かったって」
すると、お燐は慌てて冗談って言ったんだけど、お兄ちゃんが淡々と返答するとお燐は素直に謝った。
そんなことをしていると、その様子を見ていたお姉ちゃんが不意に「ふふっ」て笑った。
空「さとり様、どうしたの?急に笑って」
さとり「いえ、ただ、最初はあまり黒夜さんは喋ったりしなくて暗い人かと思ったけれど、すぐに打ち解けてくれて良かったなと思いまして」
お姉ちゃんが笑ってお空は不思議そうにどうしたのか訊くと、お姉ちゃんはお兄ちゃんが私達とすぐに打ち解けていることを喜んでるみたいだった。
夜見「ん、そうか?こんなもんじゃなかったか?」
燐「うん、確かに」
こいし「最初は暗かったよね」
さとり「無表情のままなのは変わりませんがね」
空「なんでいつも無表情なの?笑えばいいのに」
だけど、お兄ちゃんは特に私達と打ち解けてる実感は無いみたいだったから、私達はお兄ちゃん次々と打ち解けていることを伝えた。
夜見「て言うか早く食べないと冷めるぞ」
すると、お兄ちゃんは照れ隠しのつもりなのかわからないけど、机に置かれているご飯を見て話題をご飯の方にすり替えた。
でも、私達はお腹が空いてたから話題がご飯の方にすり替わったことを特に気にしなかった。
さとり「そうね、早く食べましょうか」
こいし「わ~、お腹減った〜」
そして、私はお姉ちゃんの隣の席に座ると目の前にはニンジンが千切りになってる肉じゃがとご飯が置いてあり、お姉ちゃんの向かい側の空いてる席にも同じものが置いてあった。
さとり「さぁ、私の正面が空いてますよ 早く一緒に食べましょう」
夜見「...あぁ、そうだな」
お姉ちゃんは自分の正面の席にお兄ちゃんが座るように促すと、お兄ちゃんは素直にお姉ちゃんの正面の席に座ってご飯を食べる準備が整った。
こうして、私達は新しい家族である人間のお兄ちゃんを迎え入れて生活をすることになった。
どうも皆さん、お風呂場の蓋でございます。
シリーズ的には約6ヶ月ぶりの投稿でございますが、本編の方を含めると久々の1ヶ月以内の投稿でございます。
アナザーストーリーの方は会話の内容が大体既に決まっているので会話に関しては特に考える必要は無いのですが、こいし目線の考えとなるとキャラ設定を含めて考えなければならないので中々難しいです。
ですが、アナザーストーリーの方は忙しくない限りはできるだけ、1ヶ月以内の投稿を目標として頑張っていきたいと考えています。
よければ、また次回も見てください。