タイトル一覧
◉タイムアップ
◉5色の輝き
かばん「…それから僕達は研究に明け暮れた。けど…、いろいろやってみたんだけれど、結局パークの異変の原因は分からなかった。
その間に地形が変わって、あの火山は海の底深く沈んだ。そして最近になって、また活発に活動を始めた。そしてようやく海底へ行く目処がついた時、君達が現れたんだ。… 今まで隠しててごめんね。どうせすぐいなくなるのなら、忘れたままでいて欲しくて。それに、約束を果たせない僕を見せたくないって気持ちもあって、どうしても話せなかったんだ。」
助手は海底に注意を払いつつ、こう言った。
助手「呆れた事に、かばんは一人で行くつもりだったのです。様子がおかしかったので、我々でとっちめて無理矢理吐かせたのです。『正直は一生ものだから』…、かばんには、ウソは似合わないのです。」
かばん「あはは…、相変わらず、ごまかすのが下手だね僕は。結局サーバルちゃんも巻き込んじゃったし…。話はこれで全部だよ。サーバルちゃんは、何か思い出せた?」
サーバルは、ふるふると頭を振った。
サーバル「ううん…。でも、かばんちゃんが私の大事なお友達だってはっきりしたよ!
そうだ!この胸の羽、海から出たらかばんちゃんに返すよ!やくそくしよっ!」
そう言ってサーバルは、ニコニコしながらかばんさんに小指を伸ばした右手を差し出した。するとかばんさんは目を伏せた。
かばん「サーバルちゃん、僕たち、地上へはもう…。」
助手「かばん、できるかどうかではなくて、やろうとする意思が重要なのです。それがなくては、できるものもできないのです。」
かばん「…そうだね!」
そしてかばんさんは、しっかりとサーバルと指切りをした。
サーバル「やくそく!」
かばん「約束!」
そしてついに、かばんさん達の目の前に巨大な山が現れた。火口からは大量の煙と泡が吹き出している。
その麓には、オーブが納められた石板がある。よく見ると、今度は青いセイリュウのオーブがなくなっていた。
サーバル「わぁ〜、これがそうなんだね…。どうするの?外に出るの?」
かばん「ここから出るには、一旦バスのバリアーを解除しなきゃならないんだ。でもそうすると、海水の重さが体全体にのしかかってきて、すぐ潰されちゃう。だからそれは最後の手段なんだ。
バスを少しいじって、運転席の下にハサミ状のアームを付けてある。オーブが見つかったらまずそれで捕まえて、ここまで運んでから外に出ようと考えてたんだ。…本当はアームを操作して石板にはめられたらよかったんだけど、そこまでできなくてね。
だからここまでみんなに周りを見てもらってたんだけど、それらしい物は無かった。このまま空気がなくなるギリギリまで海底を調べて、オーブが見つかったら回収する。そして外に出て、それを素早く石板にはめる…。」
すると、アライさんが何かを指さした。
アライさん「ん?あれ、なんなのだ?」
そちらを見ると、バンドウイルカとカリフォルニアアシカの姿をしたセルリアンが、青いオーブをボール代わりにして遊んでいた。
サーバル「あれ、オーブだよ!」
フェネック「セルリアンが持ってる…、困ったねぇ。」
助手「どうするのですかかばん、飛び出して奪いますか?」
かばん「こっちは水の中を素早く動けないから、逃げられたらおしまいだ。なんとかセルリアンの興味を惹いて、近くまでおびき寄せないと…。」
背後からの気配に、イルカ型とアシカ型は振り向いた。すると、ジャパリバスが2体に向かってゴトゴトと進んでくる。そしてある程度近づいたところで、ヘッドライトが2体を照らした。
それに興味を惹かれた2体が近づいてきて、大きな目でバスを覗き込んだ。しかし運転席はもぬけの殻だった。
ラッキーさん「…イマダヨ!」
バスを遠隔操作していたラッキーさんの合図で、運転席とトレーラーの連結部分に潜んでいた5人が一斉に飛び出して、2体を押さえ込んだ。そして不意を突かれたイルカ型が落としたオーブをすかさず拾ったかばんさんは、石板へ向かって必死に泳いだ。
深海の水圧で身体中が締め付けられ、ヘルメットにヒビが入った。そしてあと少しでオーブをはめ込める、というところで左足に激痛が走った。振り返ると、アシカ型がかばんさんの足をガッチリと掴んで引き戻そうとしている。
そして他のみんなは、とうに力尽きていた。水圧でヘルメットが割れている。みんな意識を失って、力なく海底を漂っていた。
かばん『くっ…!』
かばんさんはそれを振り払おうと必死にもがいたが、バリン!という音と共にヘルメットに大穴が開き、大量の水が顔に流れ込んできた。
かばんさんは少しでも石板に近づこうと必死に体を伸ばしたものの、あと一歩届かない。激しく体を動かした事で息が上がっていたが、いくら口を開けても入ってくるのは海水ばかりだ。そして頭の中がガンガン痛みだし、目の前が真っ暗になった。
かばん『ごめん…、みんな…。』
とうとうかばんさんも意識を失い、オーブが手からこぼれ落ちた。
そしてついに、激しい地震と共に海底火山が大噴火を起こした。
◉5色の輝き
かばんさん達がバリアーを解除したため、ジャパリバスも水圧でひしゃげていった。すると、セットされていたテープから希望の歌が流れ始めた。歌は海水を伝って、あたりに響き渡った。
すると、それまでぐったりしていたかばんさんの体が、突然力強く水をかいた。その足のひと蹴りで、アシカ型の手が吹き飛んだ。そしてオーブをしっかりと掴むと、石板の穴にはめ込んだ。
4つのオーブがぼんやりと輝いた。そしてかばんさん達の体が、それぞれ赤、黒、白、青、緑色の輝きで包まれた。輝きの中から声が聞こえる。
かばんさん・赤(スザク)「懐かしい歌じゃなぁ…、よい手土産じゃ。お礼に少しばかり暴れてやるかの!」
助手・黒(ゲンブ)「歌はいい…、心が洗われる…。もっとも、わしはうまく歌えぬがのぉ。…わしとて、かような気持ちは持ち合わせておるのじゃ。無論、困っている者を助けようという気持ちもな。」
アライさん・白(ビャッコ)「久方ぶりの客人は、いつぞやの4人と出不精のオサ殿か。わざわざここまで出張るとは、余程のことが起きたのか、この4人に惚れ込んだのか…。面白い、力を貸そうぞ!」
フェネック・青(セイリュウ)「あなた達の頑張り、しかと心に留めたわ。すみません、少しの間、体をお借りします。あとは任せてちょうだいね。」
サーバル・緑(セーバル)「来てくれたんだね、サーバル。サーバルはセーバルの事、覚えてないのかな。でも大丈夫、セーバルはサーバルの事覚えてるから。ずっとずっといつまでも…。」
そして5人は、2体のフレンズ型セルリアンと周囲のセルリウムを消し飛ばしながら、一直線に火口へと向かっていった。そして4人(四神)はそれぞれのプレートに乗ると、一斉に力を解放した。
4人(四神)「「「「はあぁぁぁぁぁっ!!!!」」」」
4つのプレートの上に、4色の光の柱が立ち上った。そしてサーバル(セーバル)が、その膨大なエネルギーを全て手に集め、あやとりのようにまとめあげると、一気に火口へと注ぎ込んだ。
強烈な輝きが、火口から山の内部へと流れ込んでゆく。すると、噴煙も地鳴りも嘘のように鎮まり、火口がフィルターで覆われた。
サーバル「う…、う〜ん…。」
サーバルはうっすらと目を開けた。するといつの間にかジャパリバスの運転席に座っていた。周りにはみんなもいる。ぐったりしているが生きているようだ。そしてバスは巨大な泡で覆われていて、その向こうで四神とセーバルが手を振っている。
スザク「また来るがいい。日々の精進と、土産を忘れずにな。」
セイリュウ「かき集めた空気よ。十分とはいかないけど、なんとか海上までは持つわ。」
ビャッコ「なに、少しばかりの辛抱だ。海の上で嫌というほど堪能せい。」
ゲンブ「不便がなければありがたみが分からぬとは…。難儀なものよのぅ…。」
セーバル「そういえば、ちゃんとお別れ言ってなかったね、バイバイ、サーバル!」
そしてセイリュウが長い尾を一振りすると、潮の流れが変わってバスが浮上し始めた。5人の姿がどんどん遠ざかってゆく。
そしてラッキーさんの声がした。
ラッキーさん「ミンナ、シッカリ!海上マデアト…」
ここでまた、サーバルの意識は途切れた。
ビーストがホテルで戦い、かばんさん達が海底火山を鎮めるという構図はすぐに決まったのですが、具体的にどんな話にしたら良いのかかなり悩みました。
海底なのでできる事は限られている、でもせっかく5人いるのにかばんさん1人と変わらない展開はまずい。セルリアンを出したいけれど戦える者がいない。海獣のフレンズ…、シロナガスクジラなら来れるか?けどいくら優しいフレンズとはいえ、特に親しくもなかった相手からいきなり「一緒に来て死んでくれ!」と言われて頷けるものだろうか?いや無理だ!…などなど問題がたくさんあって、なかなか書き進める事ができませんでした。
◯我々でとっちめて無理矢理吐かせた〜
何があったのかはご想像にお任せします。私はニセ勇者の女僧侶がくすぐりの拷問を受けたり、アバンがロカに詰問されるシーンを思い浮かべながら書きました。
◯タイムアップは、溺れた時のアップアップという擬音とかけています。ヘルメット内部に通話用のラッキービースト本体を配置しようかとも思いましたが、サーバル達の溺れる声がかばんさんのヘルメット内に響き渡るのが嫌でやめました。