それから数日間、一緒にサバンナ各地を回りながらおうち探しをしたのですが、それらしいものを見つける事はできませんでした。
そうして一緒に過ごすうちに、3人の意識は変わりました。
キュルルの中で、カラカルはとても大きな存在となりました。加えて、ビーストへの憧れも強くなってゆきました。
そしてカラカルは、キュルルに恋心を抱くようになりました。けれどもキュルルの反応は今ひとつでした。その上なかなか自分だけを見てくれないし、たびたびビーストの事を口にするため、もやもやした思いをしています。
一方サーバルは、そんな2人をニコニコしながら見守っていました。
タイトル一覧
◉探偵コンビ
◉邂逅
◉憧れと希望を胸に
カラカル『サバンナX(クロス)って名前も、この子が考えてくれたのよね。あたし達の事を大切に思ってくれるのは嬉しいし、ビーストに夢中になるのも仕方ないけど、もうちょっとあたしを見てくんないかな、はぁ…。』
そんな事を考えているうちに、建物に到着した。
その中には、オレンジ色の帽子を被り、硬い毛皮に覆われた2人のフレンズ…、オオセンザンコウとオオアルマジロがいた。アルマジロは横になっていて、その隣でセンザンコウが心配そうに見守っていた。
昨日サバンナを歩いていたら、たまたまこの2人に出会ったのだ。声をかけてみると、2人は探偵なのだという。しかし1週間ほど前からアルマジロの元気がなくなって困っているというので、ここで休んでもらったのだ。
3人が帰ってきた事に気づいて、センザンコウは顔を上げた。
センザンコウ「おかえりなさい!」
サーバル「たっだいまー!2人とも、ご飯持ってきたから一緒に食べよっ!」
そう言うとサーバルは、センザンコウにジャパリまんを2つ手渡した。
センザンコウ「すみません…。ほらアルマーさん、ご飯ですよ。」
するとアルマジロが目を覚ました。
アルマジロ「う〜ん…。ありがとうセンちゃん。…ん?あ、みんな帰ってきてたんだ、おかえりなさい。」
そしてみんなで床に座ってジャパリまんを食べながら話をした。
センザンコウ「そんな形の大きなセルリアンが…?」
サーバル「うん!でも3人で力を合わせてやっつけたよ!」
カラカル「体調は昨日と比べてどうなの?」
アルマジロ「う〜ん、体の重さはあんまり変わらないな〜。」
キュルル「風邪でもなさそうだし、なんなんだろう?」
ご飯を食べ終えると、センザンコウとアルマジロが改まった態度で話しだした。
センザンコウ「みなさんのいない間に2人で話し合ったのですが…、やはり別のちほーに行こうと思います、私達。」
サーバル「でも…、せめて元気になるまでこうしてたら?」
アルマジロ「こんな危ない所で、いつまでもみんなに迷惑をかけるわけにはいかないよ。それにもともと引っ越すつもりだったんだ。大丈夫、普通に歩いたりはできるから。」
カラカル「どこかあてはあるの?」
センザンコウ「探偵としてパーク中を回ってましたから、過ごしやすい場所はいくつか知っています。今どうなっているかは分かりませんが、ここでじっとしているよりは安全なのではないかと。」
キュルル「そっか、じゃあ…。」
そう言うと、キュルルはショルダーバッグからスケッチブックとペンを取り出すと、サラサラと絵を描き始めた。
これは誰に教わったものでもない、キュルルだけの特別な力だった。頭の中のイメージを、いろんなペンを使って紙に描いてゆく。そしてセンザンコウ達とキュルル達が、サバンナで楽しそうに遊んでいる絵が出来上がった。
キュルル「これ、あげるね!」
アルマジロ「きれーい!」
センザンコウ「いいんですか?ありがとうございます!」
キュルル「うん、記念に。それと…、ね、2人とも?」
キュルルに促され、カラカルとサーバルが頷いた。
カラカル「あたし達も一緒に行くわ。」
センザンコウ「そんな…、気を使わなくても。」
サーバル「私たちもそのうち旅に出ようって話してたんだ。ここは危ないし、なんかキュルルちゃんのおうちも無いみたいだしね。それにみんなで行けば、なにがあっても大丈夫だよ!」
こうしてみんな一緒に旅立つ事となった。
さらにキュルルにはもう一つ、ビーストに会いたい!という理由があった。その子がヌシを倒してくれるという思いと憧れの他に、これだけ噂になっているのに正体の分からないフレンズをスケッチしてみたい、と考えていた。
そして一休みした後、みんなで建物を出た。しかしキュルルは重い扉に手をかけたまま、しばらくじっと建物を見ていた。
カラカル「キュルル〜、何してんのよ〜。」
サーバル「早く行こーよー!」
キュルル「わわっ、今行くよっ!」
そして心の中で『行ってきます!』を言うと、扉をしっかりと閉めた。
◉邂逅
キュルル一行は別のちほー目指して歩き始めた。
センザンコウ「ジャングルにいるヒト…、そういえば聞いた事があります。なんでも森の奥で暮らしているとか。キュルルさんはおうちも探しているんでしたよね。何か手がかりはあるんですか?」
キュルル「これに描かれた場所を探してるんだ。」
そう言ってキュルルがスケッチブックを手渡すと、センザンコウはパラパラと紙をめくり始めた。するとその手が、風車が描かれている絵のページで止まった。
センザンコウ「これに似た場所に心当たりがあります。そこへ行きましょう!」
それを聞いたキュルル達は、ひとまずセンザンコウについて行く事にした。その道すがら、キュルルは2人にビーストについて尋ねてみた。
キュルル「2人はビーストがどんな子(フレンズ)か知ってるの?」
センザンコウ「私達も直接会った事はないので、噂以上の事は分かりません。ですが、ビーストが壊したという現場を見た事はあります。」
アルマジロ「大きな木が真っ二つになってたり地面が割れてたりで、も〜むちゃくちゃだったよ。並のパワーじゃないよね!」
キュルル「わぁ〜、やっぱり凄いんだなぁ〜!」
そんなキラキラと目を輝かせているキュルルを見て、思わずカラカルは口を挟んだ。
カラカル「ねえキュルル…、そんなにビーストの事が気になるの?」
するとキュルルは、ニコニコしながら元気よく答えた。
キュルル「うん!気になるし、会ってみたい!」
カラカル「……ふ〜ん…。」
それを聞いたカラカルは、なんでもない風を装いつつも心の中で膨れっ面をしていた。
カラカル『ああもう!どーしてアンタは、そんな危ないやつばっかり気にかけるのよっ⁉︎』
やがて、大きな四角い建物が見えてきた。2階建てで全体にトラの模様があしらわれていて、上の階には目のような2つの丸い窓があり、口に当たる所から細長い道がどこまでも伸びている。
サーバル「こんな所があったんだ…。」
キュルル「これもヒトが作ったのかな…、でも絵の場所とは違うよ?」
センザンコウ「ご安心を。向こうを見てください。」
それの隣には丘があり、そこには沢山の石でできた建物が並んでいる廃墟があった。スケッチブックの絵と見比べてみると、屋根から風車がなくなっていたり階段が草地になっていたりしているが、どうやらこの場所で間違いないようだ。
キュルル「だいぶ変わってるけど、たぶんここみたい。」
サーバル「やったね!それでどう、何か思い出せた?」
キュルル「うーん…、おうちじゃないみたい。でも…。」
そう言って、キュルルは四角い建物の方を見た。その口のような所に、何かが止まっているのが見える。
それはモノレールだった。全体が黄色く塗られていて、まだら模様がついており、先頭の運転席は猫の顔のペイントが施されていて、屋根には大きな耳をあしらった飾りが付いている。
キュルル「…あれに乗ってここまで来た気がする。」
カラカル「そうなの⁉︎それじゃあ行ってみましょうよ。」
一行は建物の中へと入っていった。そこには切符売り場と自動改札口が並んでいて、その奥に上の階へと続く階段があった。
サーバル「なんなんだろうね、これ。」
みんなでそれらを物珍しげに眺めていると、サーバルとカラカルの耳がピクンと動いた。
サーバル「何か来る…!」
カラカル「あの丘の上!」
そちらを見ると、廃墟の陰から巨大なセルリアンが現れ、こちらに迫ってきた。今度のやつはデジカメ型よりも一回り大きく、テレビカメラの形をした頭に4本のドリル状の足がついている。
キュルル「セルリアン⁉︎」
サーバル「大変、ヌシだよ!」
カラカル「あれと戦うのはムリ…、逃げるわよ!」
すると、センザンコウとアルマジロが出入り口に立ち塞がった。
センザンコウ「私達があいつをひきつけます。その間に皆さんは逃げてください!」
キュルル「そんなっ…、一緒に行こうよ!」
アルマジロ「助けてくれたお礼だよ!私達なら大丈夫、どんな攻撃でも跳ね返しちゃうから!」
ズズンッ!
セルリアンが体当たりしてきて、建物が大きく揺れた。壁が崩れ、天井から瓦礫が降ってきた。それから狭い出入り口に無理矢理足を突っ込むと、力任せにこじ開けようとした。
すると2人はセルリアンの注意を引くために、その足にしがみついた。
センザンコウ「早く!」
アルマジロ「潰されちゃうよ!」
サーバル「ごめん…、ありがとう!」
カラカル「すまないわね…。キュルル、急いで!」
3人は後ろ髪を引かれる思いで階段を駆け上がった。
キュルル『…オオセンザンコウさん、オオアルマジロさん、ありがとう!もしまた会えたら僕…、お礼になんでもするよっ!だから…、だから無事でいて‼︎』
2階に上がると、目の前にモノレールが止まっていた。運転席には、海賊の格好をしたラッキービーストが乗っている。
サーバルがドアに駆け寄ったが、閉まっていて入れない。
サーバル「入れないよ、どうしよう⁉︎」
カラカル「なら力ずくでっ!」
カラカルが爪を構えたが、キュルルが止めた。
キュルル「待って!もしかして…。」
キュルルがドアに書かれた手ひらマークに手を当ててみると、シャッと勢いよく扉が開いた。そして運転席から声がした。
ラッキービースト「アヅアエン行キものれーるハ、マモナク発車シマス。オ乗リノ方ハゴ注意クダサイ。」
サーバル「え、ラッキーさん?」
カラカル「しゃべれたの⁉︎」
キュルル「とにかく乗ろう!」
3人がドタドタと車内に駆け込むと、天井の明かりがついた。
ラッキービースト「扉閉マリマース、ゴ注意クダサイ。…オ待タセシマシタ、発車シマース!」
アナウンスと共に扉が閉まり、モノレールが発車した。みるみるうちに後ろの建物が小さくなってゆく。
サーバル「動いた!」
カラカル「逃げられたの…?」
ドカーーン‼︎
3人「「「わあっ⁉︎」」」
なんとモノレールのすぐ後ろから、巨大セルリアンがレールを突き破って現れた。そしてレールに着地すると、すごい速さで追いかけてきた。
サーバル「すっごいジャンプだったね!」
カラカル「言ってる場合⁉︎追っかけてくるわよ〜!」
キュルル「これ、もっと速く走れないの⁉︎」
ラッキービースト「ムリダヨ。」
カラカル「頑張りなさいよ〜!」
ラッキービースト「ムリダヨ。」
そしてある程度距離が縮まったところで、セルリアンがまるでハエトリグモのように大きくジャンプし、モノレール目掛けて突っ込んできた。
3人「「「うわあああー!!!」」」
とっさに、キュルルは心の中でこう叫んだ。
キュルル『助けて、ビースト!!!』
?「グォオオオオー!」
ズガァァン‼︎
突然雄叫びが聞こえたかと思うと、白い光がセルリアン目掛けて飛び込んできた。よく見るとそれは、オレンジ色をしたフレンズだった。両腕に厳つい手枷をはめて、頭にはトラの模様の形をした紋章が輝いている。そしてその子の爪が、手首までセルリアンに深々と突き刺さっている。
セルリアン「ゴアオオオー!!!」
そして大きな叫び声と共にセルリアンは砕け散った。
サーバル「なにあれ…?」
カラカル「わかんない…。」
キュルル「カッコいい…!」
呆気に取られている3人の耳に、どこからともなく声が聞こえてきた。
?「あれはビースト!早く逃げないとお前らも喰われるぞ!」
キュルル「え?」
サーバル「なに、今の声?」
カラカル「え、アンタが言ったんじゃないの?」
あたりを見回しても誰もいない。謎の声に3人が首を傾げていると、サーバルの耳がピクンと動いた。
サーバル「ん?なんだろう、あれ?」
その視線の先には、凄いスピードでモノレールに追いすがる影…四つん這いで走るビーストの姿があった。しかし距離が離れているうえ地面の色と重なって、どんな格好なのかはっきりとは分からない。
カラカル「あいつが…ビースト?」
キュルル達は窓に張り付いてその子を見つめた。
するとビーストは、あれよあれよという間にモノレールを追い越して、そのまま見えなくなってしまった。
◉憧れと希望を胸に
センザンコウ「アルマーさん、しっかりしてください!」
センザンコウは、瓦礫に足を挟まれて動けなくなったアルマジロをなんとか引っ張り出そうとしていた。あれからセルリアンは建物を破壊すると、2人に目もくれずどこかへ行ってしまったのだ。
アルマジロ「センちゃん、私の事はいいから早く逃げて…。」
センザンコウ「なに言ってるんです、そんな事できるわけないじゃないですか!」
すると2人の頭上から、大きな瓦礫が降ってきた。
センザンコウ「あっ、アルマーさんっ…‼︎」
センザンコウは、とっさにアルマジロに覆い被さった。
ズンッ!
瓦礫が2人を押し潰した。が…、
ピシッ!ドガァァン‼︎
大きくヒビが入ったかと思うと、勢いよく弾け飛んだ。押し潰されたはずの2人の体は、輝きに包まれていた。
アルマジロ「センちゃん、センちゃん!」
アルマジロの声がして、センザンコウは顔を上げた。
センザンコウ「アルマーさん…、ここは天国ですか…?」
アルマジロ「違うよ、しっかりして!助かったんだよ、私達!」
センザンコウはその言葉を噛みしめた。
センザンコウ「生きてる…、はっ!アルマーさん、体は大丈夫なんですか⁉︎」
アルマジロ「うん!なんだか急に元気が出てきたんだ!私達2人にかかれば、あんな瓦礫なんてなんでもないよ!」
センザンコウ「よかったぁ、アルマーさ〜ん!」
アルマジロ「センちゃ〜ん、ありがとう〜!」
そうして2人は、瓦礫の中で泣きながら抱き合った。
モノレールはレールの上を滑るように進んでゆく。キュルル達は座席に腰掛け、一息ついた。すると車内にアナウンスが響き渡った。
ラッキービースト「次ハ、アヅアエンマエ、アヅアエンマエ。」
キュルル「あの運転席にいる、水色の小さい子は誰なの?」
サーバル「ラッキービーストだよ。私はラッキーさんって呼んでるんだ。」
カラカル「中にはボスって呼ぶ子もいるわ。それにしても喋れたのね、声を聞いたの初めて。」
キュルル「カラカル達が知らない事も、すぐそばにたくさんあるんだね。そういえばあの2人、大丈夫かな。」
カラカル「ヌシはいなくなったし、取り込まれたようにも見えなかったから、きっと大丈夫よ。」
サーバル「それにしてもあの子…、ビースト、見ず知らずの私達を助けてくれたんだよね、今度会ったらちゃんとお礼を言いたいな。」
カラカル「でもよく見えなかったから、どんな姿か分からないのよね。」
キュルル「それなら、きっと…。」
そう言ってキュルルは興奮気味にスケッチブックをめくると、目をキラキラさせながら最後のページの絵を2人に見せた。そこにはオレンジ色のトラのフレンズが描かれていた。
キュルル「この子だよ!」
こうしてキュルルはサバンナを出た。
おうち探し、自分は何者で何ができるのか、ジャングルにいるというヒト…、旅に出なければ決して答えにたどり着けないものばかりだ。この先どうなるかを考えると正直不安もあったが、隣にはカラカルとサーバルというかけがえのないお友達がいて、これから向かう先のどこかには、憧れのビーストがいる。そんな大きな希望を胸に、キュルルは次のちほーへと向かうのだった。
序盤はパロディ少ないです。はっきり分かるようになるのは物語の中盤、研究所編あたりからです。
この物語はクライマックスから書き始めたので、序盤ができたのは創作活動の終盤でした。そして改めて見返してみると、カラカルとキュルルが絡むシーンは多くありませんでした。これで強い絆ができるのもおかしいので、サバンナで数日一緒に過ごし、ある程度絆が深まった段階で旅立ってもらう事にしました。