けものんクエスト 孤峰(こほう)の騎士   作:今日坂

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紙相撲で遊んでいたキュルル達の前に、突如現れたビースト。しかし彼女は、どこかからか飛んできた紙飛行機の煙で逃げ出してしまいました。
そしてジャングルの奥から車に乗って現れたのは、緑色の髪をしたかばんという名のパークガイドでした。その目からは強い決意が感じられますが、サーバルに向ける眼差しはどこか悲しげです。いつか胸中を明かしてくれるのでしょうか。


タイトル一覧

◉研究所

◉約束

◉強襲!バス型セルリアン


研究所編
◉研究所


しばらく進むと、厚い壁に囲まれた研究所が見えてきた。

 

サーバル「わー、でっかーい!」

 

カラカル「ここがあんたのおうちなの?」

 

キュルル「多分違う…けどなんだかワクワクするよ!かばんさんはここに一人で住んでるんですか?」

 

かばん「違うよ。アフリカオオコノハズクの博士さんと、ワシミミズクの助手さんと一緒に暮らしているんだよ。あと、お手伝いをしてくれる2人組がいるんだけど、今は出かけてていないんだ。」

 

そこへ助手が音もなく空から下りてきた。そして車の屋根に乗ると、逆さに身を乗り出して窓からぬっと顔を出した。

助手「お前達、研究所を案内してやるですよ。」

 

キュルル達「わあっ!?」

 

そしてその体勢のまま、毛皮から「ことわざえほん」と書かれた本を取り出して読み始めた。

 

かばん「それ、このところのお気に入りなんだ。その影響で時々難しい事を言うんだけど、あまり気にしなくて良いからね。」

 

助手「言葉にしてこそ身につくのです。『百の文も、一言に如かず』なのです。」

 

 

車は薄暗いガレージに入って行った。その中には一台のジャパリバスがあり、かばんさんはその隣に車を止めた。

 

サーバル「かばんさん、この子は?」

 

かばん「それはジャパリバスだよ。これからちょっとやってもらいたいことがあってね、ようやく整備が終わったところなんだ。」

 

サーバルは、なぜか熱心にバスを見つめている。

カラカル「知ってる子?」

サーバル「全然。けど、なんだか見ててウキウキしない⁉︎」

カラカル「…いや、しないけど?」

キュルル「わぁ…、これもカッコいいなぁ…!」

 

研究所の入り口の前では、博士が待っていた。

博士「かばん、助手、戻ったのですね。… おや、珍しいお客が来たのです。」

 

かばん「ただいま博士さん。この子達はおうち探しの旅をしていて、たまたまジャングルにいたんだ。知りたい事があるそうだから連れてきたんだよ。」

 

それを聞いた博士は胸を張った。

博士「何でも聞くと良いのです。我々は賢いので。」

 

そしてかばんさんの隣で、助手も同じように胸を張っていた。

助手「『聞くは一生の価値、聞かぬ者は一生同じ』なのです。」

 

かばん「他にもいろいろあったから、後で話すよ。」

 

そしてかばんさんは、キュルル達にこう言った。

かばん「ようこそ研究所へ。歓迎するよ。」

 

 

かばんさん達は3人に研究所を案内した。ここにはラッキービーストのメンテナンスを行う機械もあり、数体のラッキービーストがその上に並んでいた。本体は外されて、前の台座に固定されていた。

 

その後、かばんさん達はお茶とお菓子で3人をもてなした。それからキュルルの話を聞いて見解を述べたり、自分たちの事を話したりした。

 

かばん「外出?時々ゴリラさん達に挨拶しに行ったり、ジャングルに食材を取りにゆくくらいかな。私達、あまり出歩かないんだ。」

 

博士「わざわざ出歩かなくても、賢い我々の所には、問題の方からやってくるのですよ。この間も、ホテルで行われるというペパプライブに助言をしてやったのです。」

 

助手「今度のライブは、夜通し行われる特別なものだそうです。」

 

かばん「正直、博士さんには、もう少し運動して欲しいんだけど…。」

 

助手「私もたびたび言っているのですが…、『暖簾に釘』、どうにもならないのです。」

 

博士「だから問題ないって言ってるのです!」

 

その後でセルリウムの研究を見せたり、セルリアンと海底火山の関係に気付いたキュルルの判断力に驚かされたりした。

 

そうこうしているうちに夕方になった。かばんさん達は3人に、今日はここに泊まるよう勧めた。

夕食は定番の激辛鍋にした。キュルルとサーバルは辛さにヒーヒー言いながらもバクバク食べていたが、警戒心の強いカラカルは食べようとしなかったので、あらかじめ用意しておいたケーキ風ジャパリまんと、きのこのスープをご馳走した。

 

ご飯を食べた後、3人はかばんさんに促され、大きなお風呂に入った。サーバルとカラカルは毛皮を着たままだったが、キュルルはどうにも違和感が拭えなくて、服を脱いで一緒に入った。

 

それからたくさんのベッドが並んでいる寝室に案内された。

かばん「どこで寝てもいいよ。今日はいろいろあって疲れたでしょ、ゆっくり休んでね。」

 

キュルル「あの…、僕、みんなで寝たいんですけど、駄目でしょうか?」

 

かばん「え?…2人もそれでいい?」

 

かばんさんが尋ねると、サーバルとカラカルも頷いた。するとかばんさんは、6つのベッドを繋げてこう言った。

かばん「私達は夜遅いから、先に横になってて。後から来るけど、無理せず寝てていいからね。」

 

そう告げて部屋から出て行った。

 

そうして窓のそばからカラカル、キュルル、サーバルと順に並んで、ベッドに横になった。

サーバル「面白いとこだね。辛いご飯も、最初はビックリしたけどおいしかった。カラカルも食べればよかったのに。」

 

カラカル「いいとこなのは分かるけど、あれだけはゴメンだわ。あんた火ィ吹いてたじゃない。キュルルはどう?」

 

キュルル「うん。もしかして、おうちってこういう所なのかもしれない。美味しいものがあって、みんなが笑ってて、あったかくて明るくて、安心できて…。」

 

サーバル「キュルルちゃんのおうちも、きっと素敵な所だよ。」

 

カラカル「あたし達と一緒に探せば、必ず見つかるわよ。」

 

キュルル「そうだね、ありがとう。あと…。」

 

カラカル「ビーストでしょ。ほんっと、あんたはそればっかりね!」

 

そして3人で笑い合った後、キュルルは目を閉じた。

カラカルの言う通り、頭の中に思い浮かぶのは、おうちよりもビーストの事ばかりだった。実際に会った彼女は、想像の何倍もカッコよかった。突然の事でビックリしたが、今日の事は何か訳があるに違いない。今度はいつ会えるだろう。そんな事を考えているうちに、いつしかキュルルは眠りについた。

 

 

◉約束

 

煌々と輝く月が、あたりを明るく照らしている。博士への報告を済ませたかばんさんは、2階の自室の椅子に上着をかけると、机の電気スタンドをつけて調べ物を始めた。すると窓から十分な月光が差してきたので、スタンドの明かりを消した。窓の向こうにはまんまるな月が見える。そしてそこに、ポツンと小さな影がある。

研究所の資料によると、あれはかつてヒトが作り出した人工衛星というものだそうだ。

 

かばん「ヒトはあれで、なにをしていたんだろうなあ。」

 

それをぼんやりと眺めていると、後ろのドアから音がした。振り向くと、そこにはサーバルがいた。

サーバル「えへへ、何してるの?」

 

かばん「サーバル…!どうしたの?眠れないの?」

 

するとサーバルは、右手の親指を立てた。

サーバル「私、夜行性だから!いつもはキュルルちゃんに合わせてるんだけど、今日はなんだか寝れなくて。あちこち見ながら歩いてたんだけど、かばんさんの部屋のドアが少し開いてたから、覗いてみたくなったの。」

 

そして床にペタンと座った。かばんさんは調べ物を切り上げると、サーバルと同じように床に座って、向かい合った。

かばん「じゃあ、眠くなるまでお話ししてようか。」

 

サーバル「うん!それじゃあ、…かばんさんはここで生まれたの?」

 

かばんさんは、少し言い淀んでからこう答えた。

かばん「…うん、気がついたらここにいて、博士さんと助手さんと暮らす事になったんだ。サーバルはどこで?その胸の赤い羽はなんなの?」

 

サーバル「この羽、フレンズになった時からあったんだ。それからずーっとサバンナで暮らしてたんだけど、たまーに知らない景色が頭に浮かんでくるの。そんな時はいつも隣に誰かがいるんだ。その子がどんな格好なのかはハッキリ思い出せないんだけど、とっても優しくて、私の大好きな子なの!」

 

「今日かばんさんに会って、私、その子の事が頭に浮かんだんだ。だからかばんさんに聞いてもらおうって思って。…それでね、かばんさんはその子の事、何か知らないかな?」

 

湧き上がる感情をグッとこらえ、かばんさんは平静を装いながらこう答えた。

かばん「…さあ、どうだろうね。さっきも言った通り、私はあまり出歩かないし、正体の分からないフレンズの噂話はたくさんあるからね。もう少し特徴が分かれば答えられるかもしれないけど、これだけじゃなんとも言えないよ。」

 

サーバル「うみゃ…ごめんなさい。」

 

かばん「謝ることないよ!分からないことをそのままにしないで、聞きにきてくれたんだから嬉しいよ!」

 

サーバル「ホントに⁉︎」

 

かばん「もちろんだよ!…実はね、今取り組んでる問題が全部片付いたら、私も旅に出ようと考えているんだ。ここでは沢山の知識が得られるけど、実際に様々な風景やそこで暮らすフレンズ達を見て、見聞を広めようと思ってね。もしかしたら途中で君たちとも出会うかもしれない。その時は、一緒にあちこち冒険したいな。」

 

サーバル「わぁ…!きっとそれはすっごく楽しいよ!楽しみだなぁ、やくそくだよ!」

 

かばん「うん、約束だね!」

 

そう言って、かばんさんは左手を軽く握ると小指を差し出した。それを見て、サーバルは不思議そうな顔をした。

サーバル「それなに?」

 

かばん「指切りって言ってね、ヒトが約束する時のおまじないだよ、その夢が叶いますようにって。サーバルもやってみて。」

 

するとサーバルは、かばんさんの手をじっと見つめながらぎこちなく右手の小指を伸ばした。

サーバル「う〜ん…」

 

かばん「あ、反対の手でやるんだよ。」

 

サーバル「えーっと、こう?」

 

かばん「そう!それでね…」

 

そしてかばんさんは、すっと腕を伸ばしてサーバルと指切りをした。

かばん「約束っ!」

 

それを聞いたサーバルは、目をキラキラと輝かせながら声を弾ませた。

サーバル「やくそく!」

かばんさん「約束だよ!」

 

指切りが終わっても、サーバルは興奮しっぱなしだった。

サーバル「やっぱりかばんさんはすっごいんだね!私の知らない事をいっぱい知ってるし、いっつも難しい事を考えながら、楽しい事もたっくさん思いつくんだもん!私も、かばんさんみたいにみんなを助けてあげられたらなー!」

 

かばん『っ………‼︎』

 

先程から、かばんさんはサーバルの言葉に心を揺さぶられ続けていたのだが、この言葉で耐えきれなくなった。どんなに必死に押さえつけようとしても感情が溢れ出てきてしまい、声が少し震えてしまった。

 

かばん「そんなふうに思う必要なんてないんだっ…!だって…、だって私は、ずっとサーバルの事が好っ…。

…素晴らしいフレンズだと…、思ってるんだからさ…!」

 

そしてサーバルをじっと見つめる目は、涙で潤んでしまっていた。しかし幸いな事に、月光に照らされていたサーバルはそれに気づかず、屈託のない笑顔を浮かべている。

サーバル「わーい!ありがとうかばんさん!」

 

かばん『よかった…、月の明かりが涙を隠してくれたみたいだ…。』

 

そしてかばんさんは、悲しげに笑いながら自分にこう言い聞かせた。

かばん『これでいい…、これでいいんだっ…!今はまだ言えないよ…。サーバルちゃんが思ってるほど、僕は強くもなければ賢くもないんだっ!なんとか…、早くなんとかしないと…‼︎』

 

 

◉強襲!バス型セルリアン

 

グゴゴゴゴッ

そこへ突然、大きな地震が起こった。研究所が激しく揺れ、セルリウムを保管していた棚が倒壊した。すると中に保管されていたセルリウムが、輝きに向かってうねうねと伸びていった。それはガレージに止めてあったジャパリバスまでたどり着くと、その輝きを取り込んでバス型のセルリアンとなった。

 

グワシャァン!

ガレージから大きな音がした。かばんさんとサーバルが慌てて窓から下を覗くと、バス型セルリアンがガレージを飛び出して、キュルル達の寝室に向かって猛スピードで走ってゆくのが見えた。

 

サーバル「いけない!」

サーバルはすぐに窓から飛び出すと、セルリアンを追いかけた。そして博士と助手が部屋に駆け込んできた。

 

博士「かばん、大変なのです!」

助手「ガレージからバスの形をしたセルリアンが!」

かばん「分かってる、行こう!」

かばんさん達は部屋を飛び出すと、大急ぎでキュルル達を助けに向かった。

 

外で大きな音がして、キュルルとカラカルは飛び起きた。すると…、

どっかーん!

寝室の壁を吹き飛ばして、バス型セルリアンが現れた。バス型は後輪で立ち上がり、運転席の正面に付いた巨大な目をグリグリと動かすと、前輪のシャフトを触手のように伸ばして振り回した。その大きなタイヤが、唸りを上げながらキュルルに迫ってきた。

 

とっさにカラカルがキュルルを抱えて跳び、なんとかタイヤをかわした。しかし体勢が整う前に、もう一つのタイヤが向かってきた。カラカルは避け切る事ができず、それが背中を直撃した。全身に激痛が走って意識が朦朧となり、彼女はその場に崩れ落ちた。

 

キュルル「カラカル⁉︎カラカル、しっかり‼︎」

キュルルはカラカルを抱き起こし、必死に呼びかけた。そこへ、両前輪を高く掲げたバス型が迫ってきて、2つのタイヤを勢いよく振り下ろした。

 

ゴシャァァン‼︎

大きな音とともにベッドと床が吹っ飛び、もうもうと粉塵が舞った。しかしそこに2人の姿はなかった。するとバス型の後ろからサーバルの声がした。

サーバル「ほら、こっちだよ!」

 

サーバルの隣には、キュルルとカラカルがいる。

2人は間一髪の所でサーバルに助けられ、外に連れ出されていた。

 

バス型がサーバルの方を振り向いた。するとその背後から、部屋に飛び込んできた博士と助手が空中から飛びかかった。2人はそのままの勢いでバス型を押し続け、研究所を囲っていた厚い壁まで押し込んだ。

2人の爪がバス型に食い込み、その背中に小さなヒビが刻まれてゆく。

 

サーバル「みゃみゃみゃみゃみゃみゃーっ‼︎」

そこへサーバルも突っ込んできて、ところ構わず攻撃を加えた。

 

するとバス型は上体を大きく捻り、振り向きざまに左のタイヤで3人を振り払った。その強烈な一撃で、博士と助手は壁の外まで飛ばされ、サーバルは地面に叩きつけられた。衝撃で頭の中がぐわんぐわんと揺れ、立ち上がる事ができない。

 

するとそこへ、かばんさんの運転するオフロードカーが突っ込んできた。かばんさんは運転席からチラッとサーバルを見た後、猛スピードでバス型に向かってゆき、思いきり体当たりした。

 

ドゴォッ!

大きな衝撃音と共に、バス型が壁にめり込んだ。しかし車の直撃を受けたにも関わらず、相手は怯む事なく触手を振りまわし、巨大なタイヤを車に叩きつけた。その攻撃で屋根が吹き飛んで内部がむき出しとなり、車体がひん曲がってメチャクチャになった。さらにバス型は車を抱え込むと、運転席ごとかばんさんを押し潰そうとした。

 

それを見て、サーバルが必死に叫んだ。

サーバル「にっ、逃げてかばんさん!そこから今すぐっ…⁉︎」

 

すると、かばんさんの乗る車がものすごい光を放った。対セルリアン用の最終手段である自爆装置を作動させたのだ。かばんさんは、真っ直ぐ前を向きながらこう呟いた。

かばん「ごめんねサーバルちゃん…、さっきの約束、もう守れなくなりそうだ。けど…、それでも君は生きて…!」

 

ドォォォン!

そして車が大爆発を起こした。激しい光と音とともに厚い壁が崩れ、車の残骸があたりに散らばった。

キュルル達は呆然とその光景を眺めていた。そしてサーバルの目の前に、かばんさんの帽子がパサリと落ちた。

サーバル「そんな…!やだよかばんさんっ…、かばんさぁぁん!!!」

 

それを震える手でギュッと抱きしめながら泣き叫ぶサーバルの周りに、キュルル達も集まった。そして3人は声の限り泣いた。

サーバル「うあぁぁぁん!!!」

キュルル「かばん…さんっ…、う…っわぁぁぁん!!!」

カラカル「ウソでしょっ…、わぁぁっ!!!」

 

そこへ、吹き飛ばされた博士と助手がやってきた。

博士「よかった…、お前達、無事だったのですね!」

助手「…かばんはっ⁉︎…まさか…!」

 

キュルルはむせび泣きながらこう答えた。

キュルル「僕達をかばって…、車が爆発して…!」

 

その言葉で2人は瞬時に状況を理解し、沈痛な面持ちでうつむいた。すると、瓦礫となった壁の山が崩れ、その中から物音がした。それまでうつむいていたみんなは顔を上げ、そちらの方を見た。

サーバル「かばんさんっ…⁉︎」

 

「グォォォォォーン!!!」

なんと瓦礫を吹き飛ばし、雄叫びとともに現れたのはバス型セルリアンだった。全身が焼け焦げ、体のあちこちから煙が上がり、両前輪は吹き飛んでいたが、ギロリとキュルル達を睨むと、ものすごい勢いで向かってきた。

 

ザシュッ!

しかし突然セルリアンの体が裂けたかと思うと、あっという間に全身にヒビが広がってゆき、そのままぱっかーん!と弾けた。

 

セルリアンのきらめきが降り注ぐ中、あまりの出来事にみんな唖然としていた。

サーバル「今のは…?」

キュルル「一体、何が…?」

カラカル「…かばんさんが、やっつけてくれてたのね…。」

 

しかし博士は疑問を抱いていた。

博士『妙ですね…、爆発にやられたというよりは、何か鋭いもので切り裂かれたような消え方なのです。』

 

 

それからみんなであたりを捜索したが、かばんさんの姿はどこにもなく、それぞれ悲痛な思いで夜を明かした。そして翌朝、博士と助手は出発するキュルル達を見送った。

博士「もっとゆっくりしていっても構わないのですよ?」

 

キュルル「いいえ…、早く行かないと。僕よりもサーバルが辛そうで、見てられないんです。」

 

すると、博士がキュルルにラッキービーストの本体を手渡した。

博士「それなら、これを連れてゆくと良いのです。何かあったら我々と話ができるのです。」

 

キュルル「ありがとう…。」

 

キュルルは暗い顔をしながら受け取ると、それを左の腕に着けた。

 

助手はかばんさんの帽子をサーバルに差し出した。

助手「これはお前が持っていても良いのですよ。」

 

けれどもサーバルはかぶりを振った。

サーバル「ううん…、かばんさんが戻ってきた時、ここに無いと困るだろうから…。」

 

博士「近くを通りがかったら、また遊びに来ると良いのです。」

 

助手「特にお前には、辛さの素晴らしさを知らしめてやるのです。」

 

カラカル「甘いもの用意しなさいよ…。でも、何か美味しいものを見つけたら持ってくるから…。」

 

そう言って、3人は重い足取りで旅立った。その姿が見えなくなると、助手が涙ぐみながら博士に話しかけた。

助手「グスン。客人の前ではなんとかこらえてましたが…、やはり、気が緩むとダメですね…。ところで博士、かばんの事なのですが…。私はどうも、腑に落ちない点があるのです。」

 

博士「…ええ、確信がないのであえて伏せていたのですが、いくら凄い爆発とはいえ、体だけでなく毛皮の切れ端すら見つからないのはおかしいのです。それにもし万が一の事が起きて消滅したのなら、部屋にあった毛皮も消えるはず…!もう一度、しっかり周りを探すのです!」

 

助手は涙を振り払い、帽子を胸に抱いて叫んだ。

助手「一度と言わず何度でも!私は絶対諦めないのです!」




助手はかばんさんの事が大好き!なのですが、なかなかそういったシーンを出せませんでした。また、台詞も博士の繰り返しや補足が多かったりして、あまり目立つものがありませんでした。
なので微妙に間違ったことわざを口にするキャラクターにしました。これにより、たとえ「」の横に名前がなくとも、博士と区別できるようになったのではないでしょうか。

◯かばんさんの姿が見えなくなっても探しに行く2人。はじめは帽子が消えていないから諦めない、という流れだったのですが、かばんさんに何かあっても帽子は消えない事に気づいたので、上着に注目させる事にしました。

◯一般的なセルリアンは相手を取り込んで輝きを奪う事を目的としていますが、バス型は元となった輝きや生まれた経緯が特殊なので、相手の破壊を目的とした行動をさせています。

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