けものんクエスト 孤峰(こほう)の騎士   作:今日坂

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バス型セルリアンからみんなを救うため、乗っていた車を自爆させたかばんさん。自分の命はもう無いと思っていたのだが…?


タイトル一覧

◉焼け焦げた大きな背中

◉ 悪夢(ナイトメア)

◉トラ×アウル+LOVE→トラブル


◉焼け焦げた大きな背中

真っ暗だった世界に、急に光が差した。

かばん「う…、う〜ん…。」

 

かばんさんは、木漏れ日が降り注ぐジャングルの中で目を覚ました。ぼんやりした視界が、しだいにはっきりと像を結んでゆく。

 

そして右腕で光を遮ると、ラッキーさんが大喜びした。

ラッキーさん「カバン⁉︎目ガ覚メタンダネ!ヨカッタ!ホントニヨカッタ‼︎」

 

かばん『生きてる…?そうだ、あの時…!』

 

爆発の瞬間…、誰かがものすごい速さで飛び込んできて、バス型セルリアンに爪を見舞った。そしてかばんさんを抱き抱えながら車から飛び出し、爆発から守ってくれたのだ。

 

しかし凄まじい衝撃で、2人は空高く舞い上げられ、かばんさんは意識を失った。そして、気がついたら研究所から遠く離れたジャングルまで飛ばされてしまっていたのだ。

 

するとかばんさんの隣から、荒い息遣いが聞こえてきた。そちらを見ると、ぼろぼろになったビーストがうつ伏せに倒れていた。彼女は気を失っていて、背中が焦げ、毛皮がズタズタになっている。

 

かばんさん「ビースト⁉︎私を助けてくれたんだね、ありがとう…。

‼︎…ひどいケガ、待ってて。」

 

かばんさんは携帯していたサンドスターのビンを取り出すと、中身をビーストに振りかけた。するとビーストの体がぼんやりと輝き、背中の火傷が小さくなってゆく。

かばん「これじゃ足りない…。彼女の消耗も激しいし、なんとか研究所まで連れていって休ませないとっ…イタタ。」

 

改めて自分の体を見てみると、いたるところが擦りむけたり火傷したりしている。が、なんとか動くことはできそうだ。かばんさんは意識のないビーストの体を支えながら、研究所に向かって歩き出した。

 

しばらく歩いてゆくと、ラッキーさんがこう言った。

ラッキー「上空カラ近ヅイテクルふれんずガイルヨ。」

 

見上げると、かばんさんを捜索していた助手が舞い降りてきた。そして泣きベソをかきながらかばんさんに抱きついてきた。

助手「かばぁぁぁん!よがっだ、心配(じんばい)じだのでずよぉぉ‼︎」

 

大泣きしている助手の頭を、かばんさんは優しく撫でた。

かばん「ごめんねミミちゃん。安心して、私は大丈夫。それよりこの子が大変なんだ!」

 

助手「ビースト⁉︎お前がかばんを助けてくれたのですか⁉︎」

 

助手はすぐさま博士を呼んできた。そして助手がかばんさんを、博士がビーストを抱き抱えて研究所へと急いだ。こうして2人は、なんとか研究所にたどり着く事ができた。

 

 

 

◉悪夢(ナイトメア)

 

かばんさんは自分の部屋のベッドに横になった。助手がその隣に座っている。

助手「かばん、体は大丈夫なのですか?」

 

かばん「うん、あちこちヒリヒリするけど平気だよ。心配かけてごめんね。それよりあの子たちは?」

 

助手「かばんがいなくなってしまったと一晩中泣いた後、また旅に出たのです。『悲しい子には旅をさせるな』と言いますし、博士が引き止めようとしたのですが、ここにいるのはサーバルにとって辛すぎると…。」

 

かばん「そっか…、早く大丈夫だって知らせ…ない、と…。」

 

話の途中で、かばんさんは眠ってしまった。大きな怪我はないようだが、あれほどの事があったのだ、相当消耗しているのだろう。助手はそんなかばんさんを心配そうに見つめていた。

 

一方博士は、ビーストの看病をしていた。バス型セルリアンにめちゃくちゃにされてしまった寝室から無傷のベッドを居間に持ってきて、そこにビーストをうつ伏せに寝かせた。

 

博士はベッドの横で微笑みながら、彼女にこう囁いた。

博士「かばんを助けてくれてありがとうなのです。」

 

ビーストは、静かに寝息を立てている。呼吸も落ち着いてきて、顔色も良くなってきた。博士はひとまず安心し、今度はかばんさんの様子を見るために、そっと部屋を後にした。

 

 

ビーストは、鉄格子がはまっている四角い箱の中で目を覚ました。鉄格子は一部がぐにゃりと曲がっていて、大きな隙間が開いている。そこから這い出てみると、あたりは真っ暗で誰もいない。するとどこからか低い声が聞こえてきた。

「戦え…、戦え…!」

 

それに急かされるようにビーストは駆け出した。しかしどこまで行っても暗闇ばかりで、次第に心の中が恐怖と寂しさでいっぱいになっていった。それなのに、声ばかりが大きくなってゆく。

「戦え…!戦えっ!!戦うんだっ!!!」

 

 

ビーストはハッと目を覚ますと、ガバッと起き上がった。すると背中がズキンと痛んだ。その痛みにうずくまりながらあたりを見回すと、見知らぬ建物の中だった。床には緑色の絨毯が敷かれ、部屋の真ん中に丸いテーブルと椅子があり、壁際にはヒト一人が入れるくらいの細長い機械のカプセルが置かれている。

 

するとテーブルと椅子の影がチロチロと揺らめき、耳が生えてフレンズの顔のようになった。そして耳障りな声でしゃべり始めた

影「タベタンダ。タベタンダ。」

 

それからケラケラと笑いだした。ギョッとしていると、すぐ後ろからも同じ笑い声がした。恐る恐る振り向くと、そこには自分の影が立っていた。真っ黒な顔に、亀裂のような笑みを浮かべた大きな口だけが白く光っている。

影「オマエガ、タベタンダァ!」

 

ビースト「グワァァァッー!!!」

 

恐怖で胸が張り裂けそうになり、ビーストは大きな叫び声をあげた。

 

博士「何事ですっ⁉︎」

それを聞いて博士が飛んできた。ビーストはベッドの上で喚きながら両腕を振りまわしていたが、すぐに力尽きて仰向けに倒れ込むと、ひどく怯えた顔をしながら震えていた。

 

博士「大丈夫、何もいないのです!ここは研究所、お前が助けてくれたかばんのおうちなのです。

やはりお前は喋れないようですね。私の言葉は分かりますか?…ま、分からなくても良いのです。お前が優しいフレンズである事は、ハッキリしているのです。」

 

博士はビーストを刺激しないよう、できるだけ穏やかな声で話しかけた。するとビーストは、次第に落ち着きを取り戻した。

 

それを見て、博士は微笑を浮かべた。

博士「今はただ、休んでいれば良いのです。難しい事は、元気になってから考えるのです。…っと、助手が来たようですね。相手をしてくるので、お前はゆっくり寝てると良いのです。」

 

そう言って博士は部屋から出ていった。すると廊下から声が聞こえてきた。

助手「何事です?」

博士「心配ないのです。きっと怖い夢でもみたのです。」

 

ビーストは会話はできないが、言葉はある程度理解できた。それと仕草や雰囲気などから、相手の気持ちを察することもできた。

どうやらあれは夢で、ここは敵のいない安全な所らしい。ビーストは大きく安堵の息を吐くと、再び眠り始めた。

 

 

◉トラ×アウル+LOVE→トラブル

 

それから2日後、ようやくビーストは目を覚ました。身体を起こしてみても、もうどこも痛くない。どうやらゆっくり休んでいる間に傷は消え、すっかり元気になったようだ。

それからわきに目をやると、ベッドに突っ伏して眠っている博士がいた。そのあまりにも無防備な寝顔に面食らい、ビーストは博士をまじまじと見つめた。

 

ビースト『この子…、本当に私が怖くないのか…?』

 

するとそこへ、一足先に目覚めたかばんさんと助手がやってきた。2人は元気そうなビーストを見て、思わず顔をほころばせた。

 

かばん「…‼︎よかった、目が覚めたんだね!ずっとお礼を言いたかったんだ、助けてくれてありがとう!」

 

助手「お前には、言葉で言い表せないくらい感謝しているのです。かばんを助けてくれて、ありがとうなのです。」

 

すると博士も目を覚ました。

博士「むにゃ…、ん?…ビースト、起きたのですね!よかったのです〜!」

 

そう言って、博士はニコニコしながらビーストの手をきゅっと握った。

 

その様子を見たビーストは困惑していた。なにしろこれまで笑顔を向けられた事はおろか、明るく笑った事すらないのだ。それでもなんとか相手の気持ちに応えようと、見様見真似で顔に力を入れてみた。

そうしてでき上がったのは、まるでキバを剥き出して威嚇しているかのような、あまりにも不器用な笑みだった。しかし3人は特にそれを気にする事もなく、ビーストに笑顔を向けている。

 

博士「ふふっ、まだまだ練習が必要なのです。」

 

助手「笑顔は幸せを運んでくるのです。『過度な笑いに福が来る』、ですよ。」

 

かばん「ははは、すぐできるようになるよ。さあ、ご飯を食べてからお風呂に入ろう!」

 

こうして、朝食の後みんなで入浴する事となった。かばんさん達は毛皮を脱ぐと、のんびりと湯船に浸かった。お湯の温かさが、体の隅々にまで染み渡ってゆく。

 

かばん「はぁ〜、気持ちいい〜…。」

助手「極楽なのです…。」

博士「ほぅ…。ほら、怖くないですよ、お前も入ると良いのです。」

 

ビーストは毛皮が脱げる事を初めて知った。それにお風呂を見たのも初めてだ。そのためしばらくの間警戒しながら周りをウロウロしていたが、かばんさん達の気持ちよさそうな顔を見ているうちに考えが変わったらしく、やけくそ気味に毛皮を脱ぐと、意を決して飛び込んだ。

 

初めてのお風呂は、とても心地よいものだった。つるつるの肌がポカポカと温かいお湯に包まれて、心と体が溶けていった。しかしビーストはそのままのぼせて目を回してしまい、ぶくぶくと沈んでいった。かばんさん達は慌てて彼女を湯船から引っ張り出すと、しっかり体を拭いてやり、それから毛皮(ワイシャツとパンツ)をゆったりと着せてあげた。そして博士が彼女を居間のベッドに連れてゆき、ネクタイやベストなど残りの毛皮を床に置いた。

 

博士はグッタリしているビーストの額に、冷たい水で濡らしたタオルを乗せた。

博士「しっかりするのです。誰しも最初は不安で、失敗するものなのです。大事なのは、それを繰り返さないよう学ぶ事なのですよ。」

 

するとビーストは、熱に浮かされたような目で博士を見た。そしておもむろに大きな手を伸ばすと、ギュッと抱き寄せた。

博士「ひゃっ⁉︎た、食べないで………?」

 

博士は驚いて思わず体を細くしたが、ビーストは彼女を両腕で優しく包むと、顔をこすり付けてきた。

博士「…心細かったのですね。よしよし。心配しなくても、私はお前のそばにいてやるですよ。」

 

そして博士は、微笑みながらビーストをぎゅっと抱きしめた。ぬくぬくの体と温かな羽毛がお互いを優しく包み込んでゆき、やがて2人は眠ってしまった。

そんな部屋の外では、かばんさんと助手がその様子を見守っていた。

かばん「…悲鳴がしたから来てみたけど、問題なさそうだね。」

 

助手「ええ、ひとまずビーストは博士に任せましょう。」

 

2人は小声で言葉を交わすと、そっとそこから離れた。

 

 

しばらくしてビーストは目を覚ました。するとすぐ目の前に、眠っている博士がいた。

自分を恐れず、こんなに近くまで来てくれたフレンズは初めてだった。ビーストは、しげしげとその寝顔を眺めた。

 

博士はすーすーと寝息を立てている。それに合わせて小さな肩が揺れていて、体からはお風呂上がりのいい匂いがする。大きな目には艶やかなまつ毛が生えていて、ふっくらした頬は、ほんのりピンク色に染まっている。

 

そのままじっと見つめていると、可愛らしい唇がむにゃむにゃと動いて、大きな瞳がゆっくりと開いた。

博士「ふぁ…、おはようなのです。気分はどうですか?こうしているとなんだか心がふわふわして、とっても気持ち良いですね。」

 

そう言ってにっこりと笑った。

 

なんだか急に恥ずかしくなってきて、ビーストは顔を真っ赤にしながらバッと起き上がった。するとゆったりと着せられていた毛皮がずれ、胸元が露わになった。慌てて床に置いてあった分までしっかりと着直すと、ベッドに腰掛けて大きなあくびをした。

博士は微笑みながらその様子を眺めていたが、彼女の後ろ姿を見て、毛並みがボサボサな事に気づいた。そしてブラシを持ってくると丁寧にブラッシングをし始めた。

 

ビースト『わぁ…、気持ちいいな…』

これまたビーストには初めての体験だったが、とても心地よいものだった。そのまま目を細めながら博士に身を委ねていると、今まで笑った事のないその顔にわずかな笑みが浮かびかけた。

 

しかし突如、頭の中に例の声が響き渡った。

【戦えっ!】

 

ドクン…!

途端に心臓が高鳴り、全身の毛が逆立った。ビーストは弾かれたかのようにベッドから飛び出すと、空中で一回転して四つん這いで着地した。そして吹き飛ばされたブラシが床に転がった。

 

その突然の行動に、博士はびっくりした。

博士「えっ、どうしたのです⁉︎痛かったのですか⁉︎」

 

ビーストは右手で頭を抱えながら苦悶の表情を浮かべると、唸り声を上げながら部屋をバタバタと駆け回った。そしてなだめようと近づいた博士を突き飛ばしてしまった。

博士「あっ…⁉︎」

ビースト『!!!』

 

ビーストは尻餅をついた博士を見て悲しそうな顔をした後、不意に窓から外に飛び出すと、そのままどこかへ走り去ってしまった。

 

あまりに急な出来事で、博士はビーストの跡を追う事もできず、ただ呆然としていた。

博士「ビースト…、一体どうしたというのですか…。」

 

そこへ、アライさんとフェネックが調査から帰ってきた。そして部屋に入ってくるなりこう叫んだ。

アライさん「大変なのだ!…え〜っと、とにかく大変なのだ‼︎」

 

フェネック「キュルルって子の絵からフレンズそっくりなセルリアンが現れて、ホテルに向かったそうだよ!」




ナイトメア(nightmare)は、騎士(knight)を意識してつけたタイトルです。スペルは違いますが。

ビーストと博士は、書いていたらいつの間にか仲良くなってました。これがキャラクターが動き出すという事なのでしょうか。
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