クロムに憑依転生   作:石猿

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 お久しぶりです。読者の皆様は良いお年を。


E=12 OPEN MY EYES

「クロム、いい加減テメェの荷物どけろ」

 

 ある日のこと。天気も良く暖かいので村の広場で網を補修していた僕に、呆れと苛立ちの混在する非難を投げつけたのはマグマ。彼の指す『荷物』は僕が今まで集めてきた資材の山。ある程度は壺や籠に入れて整頓しているように見せているが、量が多すぎて焼け石に水。いっそ圧迫感すら感じる物量になり始めていた。

 次第に邪魔になっていることは薄々気付いていた。嘘だ。薄々というか、明らかに狭くなっているのだから当然気付いていた。ただ指摘されるまでのらりくらりと躱していただけで。

 

「やっぱり、そろそろ片付けないとなぁ」

「気付いてンならもっと早く片付けろ」

「そうなんだけど、どこに置こうかなって」

「ンな面倒くせぇことせずに全部捨てちまえ」

「おいマグマ──」

「ごめん、それは無理。金狼もありがとうね」

「ッチ」

 

 マグマから見ればゴミの山だ。一緒に補修をしていた金狼が庇おうとも、その事実は変わらない。それは分かっているけれど、僕からしたら望む未来に向けて必死に集めた『ゴミ』だ。邪魔だからと軽率に捨てる選択は出来ない。

 ただ、そうは言ってもやっぱり邪魔。むしろマグマがこうして指摘していて、何も言わずに捨てないあたり有情な気さえする。

 捨てられないからといって適当に外に放り出すわけにもいかない。今でも鉱石の多くは基本外に外に放置していて、問題の屋内に置いてあるのは主に植物類。どれも乾燥させて保存してあって、下手に雨晒しにしたら腐りかねない。

 

「んー」

 

 手を動かしながら、どうしたものかと唸る。

 一応いくつか解決策思い付いてはいる。流石に問題を放って置けるほど僕は肝が太くないから、時間を見つけてはあれこれと思索はしていた。しかし現状を見れば明らかで、その成果は(かんば)しくない。というのも僕が思い付いたのはどれも人手が──マンパワーが必要なものだったから。

 僕一人で出来ることは出来るのだけど、今の僕では掛かる時間がちょっと計り知れない。あまりにも時間を割きすぎたら他のことが疎かになってしまうし、それが引き起こす結果を思えば迂闊にそんな案を取ることが出来ない。だからもう少し成長したら短期間で集中して、という逃げの結論に至ったわけだ。

 

「おいクロム」

「ごめんマグマ。すぐには解決策が──」

「嘘つけ。テメェのことだ。どーせ思い付いてる」

「本当に思いついてないんだけど」

「あん? 新しく家建てるだの置き場所作るだのいくらでもあるだろうが。思いついてねえワケがねえ」

「それはそうだけど僕一人じゃ無理だろう」

「テメェ一人でやるからだろうが」

「うん、だから無理じゃないか」

 

 どこか噛み合わない気がする会話に内心首を傾げていると、マグマは腹の底から込み上げたような深く長いため息を()いた。呆れ果てたと言わんばかりに本当に深々と。

 

「クロム」

「うん」

「手伝ってやるって言ってんだよ」

 

 一瞬、理解が遅れる。

 

「手伝う」

「おう」

「誰が」

「オレが」

「誰を」

「テメェを」

 

 一つ一つ意味を確認した上でまだ驚きが抜けず、ぱちりぱちりと目を瞬く。僕のまじまじと見つめる視線が居心地悪いのか、彼は後ろに撫で付けた金髪を掻いて乱した。

 

「なんだよ」

「いや、意外だったから。こういうのあんまり好きじゃなさそうだし」

当たり前(たりめー)だ、誰がこんなこと好き好んでやるかアホ。邪魔なモン退()かすために決まってんだろボケ。調子乗んなダボ」

「あ、うん」

 

 暴言は立板(たていた)を外した水のごとく、機嫌の悪さと苛立ちに比例するかのようにその勢いは増していく。怒りは髪が天を衝かずとも滲み出ているが僕には()()()理由が分からなかった。

 

「それにオレだけが手を貸すとかありえねぇ。マントルは手伝わせるとして……おい金狼に銀狼、テメェらも手伝え」

「まあ、俺で良ければ構わないが」

「えぇー、なんで僕が手伝わなきゃならないのさ。そんなに人数いらなくない?」

「あ゛?」

「喜んで手伝わせていただきます!」

 

 怒涛の展開に目を白黒させている間に確保された人手は既に四人まで増えた。子供とはいえ石世界の住人は普通より遥かに屈強で、特にマグマや金狼は百人力、僕の知る大の大人よりもパワーに(あふ)れている。銀狼とマントルは、まぁ、うん。僕が二人増えたと思おう。

 

「お、なんだなんだ」

「四人で悪巧みか? 内容次第では私も手伝ってやらんことはないぞ」

「良いところに来た。こいつの荷物を──」

 

 そしてカーボにコハクも合流。子供組の男手──コハクも戦力的な意味では男手とカウントして良いだろう──は殆ど全員揃った。そしてこれだけの人数が揃えば当然目立つわけで。

 

「どうした。何か問題でもあったか」

「それともまた何か面白いことでも思いついちゃったかの」

「はっはっは、どう見ても面白いことだろうに」

「クロムもいるのか。珍しいな」

 

 何事かと顔を出した大人にもあらましをざっくりと説明がなされると、手を貸そうと彼らは乗り気を見せた。

 今更ではあるが僕達は子供であり、そしてもうすぐ大人として扱われるのだが、その際にその代の子供組で一つの区切りとして家を作るという行事がある。石神村の人間の一世代の期間はおよそ二十から三十年、今の家屋の寿命はもう少し短い所ではあるが、定期的な行事として組み込んでしまうのは更新の他に知識の継承の観点からも理に(かな)っている。

 大人達の思惑としてはその予行を行うのに丁度良いタイミング、というところだろうか。子供達にとってはマグマの恐喝も含め、総じて僕の邪魔な道具類を退()ける良い機会。他にも細々した理由もあるのだろうが、それを考えるのは結局僕が納得するための言い訳を求めているだけなのだろう。既に進路は舗装されて退路は絶たれた。だけど、僕は。

 

「クロム」

「うん」

「御膳立てはしてやった」

「そう、だね」

「出来るだろ」

「いや、でも、みんなの手間を──」

「うるせェ。テメェが撒いた種をわざわざ刈り取ってやるってわざわざ集まってンだよ。有り難く()き使え。音頭取ってさっさと片付けろ」

「……」

「──言い方変えてやる。腹ァ括れ。いつまでもグダグダすんな」

 

 きっと僕は瞠目していたが、しかしそれに気付けないぐらいに僕は目を奪われていた。不機嫌なマグマ、楽しげに目を輝かせるカセキに礁、面倒くさそうな銀狼、少しだけ不安そうなジャスパー、好奇心を隠しもしないコハク──様々に浮ぶ表情。そして集まった誰の目にも映っていたのは、(クロム)だ。

 息を吐いた。誰にも気取られぬよう浅く、肺に溜まった全てを吐き出すため長く。そして吸い込んだ息には春の陽気が溶け込んでいた。

 さて、さて。全く予期していなかったが舞台は整った。マグマが整えた。人手は十分、足りない知識も大人達に借りられる。およそ理想的な展開と状況で、あとは僕が決めるだけ。

 風が吹いた。冬の残り香を掻き消す春風に一度目を瞬き、そして。

 

「少しだけ、手伝って欲しい」

 

 待っていたとばかりのすぐさま返って来た声に、僕はどんな顔をしていたのだろうか。




 閲覧ありがとうございました。
 またお気に入り、評価、感想してくださった方にも感謝を。現状スローペースの投稿となってしまっていますが、間違いなく活力になっています。重ね重ね感謝を。



 以下雑談です。SSの内容には全くの無関係ですので必要無い方はどうぞ飛ばしてください。

 誰かDr.STONEの二次創作を書いてください。切実に供給が足りません。ここだけの話当サイトの某作品が好きで追っていたのですが、めでたくも、その、はい。他の好きな作品も、はい。
 ハーメルンDr.STONE原作で現状アクティブに更新が行われているのが(このSSも含め)ゼロという枯野状態です。荒野です。砂漠です。よってDr.STONEのSSを書いて投稿するだけで市場を独占出来ます。少し大袈裟に言いましたが少なくとも私は見に行くので読者を確実に確保できます。
 書いてみたいと気になっている方、干涸びた石猿に憐憫を覚えた方、どんな理由であれ書いてみる気が起きた方、お気軽に書いて投稿して下さい。亡者の如く手を伸ばしに行くから安心して書いて欲しい。
 以上長くなりましたが、こんな愚痴じみた雑談にお付き合いいただきありがとうございました。

 次の更新こそは……早く……出来ると良いな……
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