月の少年のSecret book   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
侑ちゃん、誕生日おめでとう。
楽しんでいただけると嬉しいです。

それではどうぞ。


記憶10 高咲侑

とある日の平日の虹ヶ咲学園(にじがさきがくえん)の校門前にて。

 

「あれ? 悠里?」

 

珍しく1人で帰る事になった高咲侑(たかさきゆう)が校門を出ると、見覚えのある後ろ髪と制服姿が確認できた。

 

「……(どこか出かけるのかな?)」

 

学校を出た途端に悠里を見かけるのが珍しいと思った侑。同時にどこか寄り道でもするのかな?と思った。

 

しかしその割には、彼の歩くペースがおかしくないか?と首を傾げる侑。

 

「……(なんか気になるな~……でも平日の帰りに悠里を見かけるなんて滅多にないし。でも、このまま帰ろうかな~?)」

 

だけど帰っても暇だしな~と悩みながらも、好奇心に負けた侑は見つからないように悠里の後を追いかけるのであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……(どうしよう~!? 気になっちゃって悠里を追いかけてきたけど、私ストーカー紛いな事をしてるよね!?)」

 

見つからないように悠里を尾行する侑。そして同時に、これってストーカーにならないよね!?と今更ながら不安になってきた。

 

「……え?」

 

横断歩道を渡ろうとした悠里のある姿を見て、ポカーンとしてしまう侑。

 

「ゆ、悠里が……ベ、ベビーカーを……お、押してる……!?」

 

それは悠里が()()()()()()()()()()光景だったのだ。あまりの衝撃的な光景に状況整理ができない侑。そして横断歩道を渡り終えた悠里は、近くの公園の中に入って行った。

 

「はっ! 悠里を追いかけないと」

 

未だに信号が青なのを確認した侑は、車に気を付けつつ、横断歩道を渡り悠里が入って行ったと思われる公園に向かうのであった。

 

 

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「(あっ、いた!)」

 

公園に入った侑は、悠里を捜す。すると彼はあっさりと見つかった。ベンチに座って休んでいた。

 

「何してるんだろう……?」

 

そう思っていると、侑のスマホが鳴った。

 

『そんなところで隠れて何やってんの?』

「あっ……」

 

なんと送り主は悠里だった。まさかと思い、ベンチの方に視線を向ける。そこにはジト目でこちらを見る悠里がいた。

 

「えっと、その……いつから?」

「侑ちゃんが尾行を始めた時から気づいてた。……まぁ、最初からだね」

「うう……」

 

悠里の隣に座りながら侑が訊くと、彼はそう返した。それを聞いた侑は項垂れてしまう。

 

「あうー」

「あ、起きちゃったか。よいしょっと……」

 

するとさっきから……というか、悠里を尾行してた時から気になってたのだが、ベビーカーから可愛らしい声が聞こえた。赤ちゃんだった。そして悠里はよいしょと言いながら赤ちゃんを抱っこする。

 

「ま、まさか……ゆ、悠里の子供……」

「んな訳ないでしょ。バイトだよ」

「バイト? なんの?」

「ん? ()()()でバイトだけど……」

「えっ!?」

「そんなに驚く事かな……? 高校に入学した時からずっとやってるんだ。それで今日はこの子の面倒を見てた」

 

未だに驚愕の表情をしてる侑に悠里は彼女に懇切丁寧に説明する。

いつも通りバイト先の幼稚園に行ったら、件の赤ちゃんの両親が半泣きになりながら、園長先生にお願いしていたという。それで悠里が代わりに引き受けたと言う。

 

ちなみに悠里がバイトしている幼稚園は保育園も兼用しており、そこに通ってる園児達はみんな変わった子達ばかりだと言う。簡単に言うと()()()()()が多いとの事。

 

「まだ1歳だから、他の園児のみんなも一緒にこの子の面倒を見るのを手伝ってくれるんだ。ねー?」

「あー♪」

「(か、可愛い……! 遊んであげる悠里も可愛い!)」

 

キャッキャッと赤ちゃんと戯れる悠里を見た侑は、その場で悶えていた。

 

「抱っこしてみる?」

「え、でも、泣いちゃわないかな……」

「大丈夫、大丈夫。はい、こうやって抱っこしてあげてね?」

 

自分が抱っこしたら泣いてしまわないかと思いながら恐る恐る赤ちゃんを抱っこする侑。

 

「あーうー!」

「か、可愛い~! この子、持って帰っていい?」

「いやダメだから。侑ちゃん、サラッと危ない事言ってる」

 

あまりの可愛さにベタ惚れになってしまう侑。

 

「さて。もう少しで親御さんが駅に着く頃かな。はーい、それじゃパパとママのお迎えに行こうねー?」

「あー♪」

 

しばらく3人で遊んだ後、スマホで時間を確認した悠里は赤ちゃんをベビーカーに乗せた。侑も一緒についていく事に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あらあら、もしかして()()さん? 可愛い赤ちゃんね」

「え……!?(し、ししし……新婚さん!? 悠里がパパで、わ、わわわ……私が……)」

 

3人で駅に向かう途中、1人のお婆さんに声をかけられた。新婚と言われて顔が赤くなる侑。

 

「いや違いますよ。そもそも1歳児の新婚学生がどこにいるんですか? 彼女は幼馴染みです」

「ほっほっほ。冗談よ。違和感がなかったからついね?」

「それは知ってましたけど」

 

どうやら、このお婆さんは悠里の知り合いらしい。

 

「これからこの子の両親の迎えに駅に向かうところなんです」

「あらそうなの? 他に頼める人はいないの?」

「どうやらタイミングが悪かったらしくて。僕としては会社に託児所とかを設けてもいいじゃないかって思ってて……」

「その会社ってどういう場所なの?」

 

そう聞かれた悠里は、赤ちゃんの両親が働いている会社について話す。隣で聞いていた侑は首を傾げていたが。

 

「そういう事なら任せてちょうだい」

「お願いします。これ、証拠のリストです」

「おや、察しはついていたけど、やっぱりこいつらなのね。私の会社で鉄の掟を破るとはいい度胸してるわねえ……ほっほっほ」

「多分こいつら、バレてないと思ってると思いますよ? あとこれ、ボイスレコーダーです」

「おや、ありがと。これなら言い逃れもできないねぇ……」

「ええ♪ そうですね♪」

 

お婆さんとも別れた後、駅でそわそわしながら待っていた赤ちゃんの両親に子供を無事に引き渡した。両親は泣きながら何度も悠里にお礼を言った。

 

そして悠里と侑は帰路についていた。

 

「赤ちゃん……いいなぁ……(チラッ)」

「そうだね、赤ちゃん可愛いもんね(侑ちゃんから熱い視線を感じるのは気のせいだよね?)」

 

さっきから侑の視線が気になるが、気のせいだろうと思いつつも質問に答える悠里。

 

「(むう~……悠里、ガードが硬い。せっかくの二人きりだから、悠里に手を繋いでほしいってお願いしてみる……とか? でもそれだと他の4人に悪いし……間を取って、頭を撫でてほしい……とか?)」

「侑ちゃん、顔が赤いけど……どうしたの? 具合でも悪い?」

「そ、そんにゃことないよっ!?」

 

結局、自宅に着くまで何も考え付かなかった侑なのであった。




読んでいただきありがとうございます。
なんとか間に合って良かったです……(苦笑)
次回の投稿日は愛ちゃんの誕生日になります。
頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。

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