穂乃果ちゃん、誕生日おめでとう。
楽しんでいただけると嬉しいです。
それではどうぞ。
とある日の音ノ木坂学院の廊下にて。
「(見回りも楽じゃないなぁ……)」
内心そう思いながらも小さく溜息を吐く悠里。
そう。今日は自分がこの学校に転入してから初の『秋の学園祭』なのである。
そして自分は何をしているかというと、自由時間兼見回りである。
「(縁日って……あの縁日だよね?)」
目に留まったのは、1年生が出してる『縁日コーナー』だった。
現在の時刻は10時5分。
ちょっとだけ興味があったので、中に入ると、多くの人で賑わっていた。
「やった!! ついにゲットォ~!!」
近くの射的コーナーで聞き覚えのある声がしたので、悠里はそちらに視線を向ける。
「もう~、これじゃあ一等の賞品が今日のうちに無くなっちゃう」
「無くなっちゃいそうって事はまだあるって事?」
「ほのちゃん、何してんの……」
「あ! ゆうちゃん!」
会話を察した悠里が声をかけると、大量の賞品を取った少女、
一瞬、どこぞのスナイパーに視えたのは気のせいだと思う。
「……ねぇ。まさかこれ全部、ほのちゃんが取ったの?」
「……はい」
1年生にそう訊くと、彼女の口から案の定の答えが返ってきた。しかも穂乃果に大量の賞品を取られてしまったせいか、肩を落としながら項垂れていた。
「ねえねえ! もう1回やってもいい?」
「ダメです! 高坂先輩はもうタイムアウト!」
「ええ~!」
「これ以上狩られたら、赤字になってしまうので出入り禁止です!」
そのやり取りを見てた悠里は、そりゃそうだと思った。
「酷い……いくら穂乃果が射的の名手だからって大人げない」
「……どう考えても大人げないのは、ほのちゃんでしょ」
「痛っ!? うぅ~、ゆうちゃん痛いよ~!」
うるうるした表情で1年生に訴える穂乃果に、悠里が軽くチョップ。そして穂乃果は軽く涙目になり、頬を膨らませながら悠里を見る。
「とりあえず……ほのちゃんが取り過ぎた賞品はこれで賄えるかな?」
よいしょと悠里が何処から持って来たのか、大きめの袋を1年生に渡す。
「えっ!? 水無月先輩こんなにいいんですか!?」
「あれ? もしかして足りなかった?」
「いえいえ正直充分過ぎます! ほんとにいいんですか?」
「まあ強いて言うなら、その袋の中に賞品のチェックシートが一緒に入ってるから、取れた賞品の項目に印を付けてほしいんだけど……」
「しますします! 学園祭が終わったら、クラスのみんなで渡しに行きますので!」
悠里と穂乃果が射的コーナーを後にする時、1年生から何度も助かりました! と悠里は言われたのだった。
「むーっ……」
「……何?」
それも束の間、悠里をジト目で見る穂乃果。なんか機嫌が悪そうにも見える。
「ゆうちゃんと話してたあの子、楽しそうだった……」
「気のせいじゃないの?」
「そんな事ないもん! 楽しそうだったもん!」
両手に射的で取った賞品を持ってるのにも関わらず、器用に手をじたばたさせながら悠里に訴える穂乃果。
「もう! ゆうちゃんも少しくらいカフェのお当番を手伝ってくれたっていいんじゃない!? ゆうちゃんが呼びこみをすると人がたくさん来てくれるんだしぃー!」
「……そもそもカフェって言っても、ほのちゃん達
「そーんな事なーい!」
ぶぅーぶぅーと抗議しながら、悠里に訴える穂乃果。
ちなみに
そもそも自分が手伝わなくても、彼女達だけでなんとかなったんじゃないか?と今でも思ってる。
だからこそ悠里はこうやって見回りをしているのである。適材適所と言う奴である。
「……というか、ほのちゃんって今は自由時間なの?」
「うん! お昼のμ'sのステージまではまだ時間があるし、カフェのお当番の時間もまだまだ先だから」
その理由を聞いた悠里は納得。
確かにお昼の時間帯に行うμ'sのライブ開始の時間までまだ時間があった。
「うわあああーん、ちぎれちゃったよぅ」
時間もまだあるし、折角だから2人でどこか回ろうかと思ってた時だった。
近くのヨーヨー釣りのコーナーで小学生くらいの女の子2人を見つけた。その内1人の女の子は欲しかったヨーヨーが取れなかったせいか、涙目になったいた。
「ユナ、これ絶対に欲しかったのに~」
「どうしたの」
穂乃果が声をかけると、ユナと呼ばれた女の子はぷいっと顔を逸らしてしまった。
「……どうしたの? このヨーヨー釣り、おかしいところでもあったの?」
「うん。このヨーヨー釣りおかしいの。さっきから全然取れなくて……何かきっとどこか壊れてるか、わざと取れないようになってるんだわ」
今度は悠里が姿勢を低くして、ユナと連れの女の子の視線に合わせながら訊くと、ユナが涙目になりながらポツリと口を開いた。
「……(まぁ、この子の言いたい事も解るんだけどなぁ)」
ユナの頭を撫でながら、悠里が受付をしてた1年生に視線を向ける。1年生は困りながら首を横に振っていた。
「じゃあさ、
「え? ゆうちゃん、もしかして穂乃果もやるの?」
「……他に誰が居るのさ? それとももしかして、ほのちゃんはヨーヨー釣りは自信無いのかな?」
「むっ! そんな事ないもん! やるよ! ゆうちゃんをギャフンと言わせるんだから!」
悠里の一言に頬を膨らませながら、俄然やる気に満ちた表情をする穂乃果。
「……(ちょっと煽り過ぎちゃったな。ほのちゃんの目がマジになってるし)」
そう思いながらも悠里と穂乃果は、ユナの為にヨーヨーを取りまくる事に。
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「わぁ、すごい! お姉さんとお兄さんもう5つ目よ」
「あっ!? ゆうちゃんそれ、穂乃果が狙ってたやつ!」
「……ふっふっふ。スーパーボール入りのやつは、そう簡単には譲らないよ」
代わりにそっちのヨーヨー狙っていいからと穂乃果に言う悠里。
最初こそは、軽く手を抜いてやろうかなと思ってた悠里だったが、何故か穂乃果があまりにも本気なので、自分も気付けば本気でヨーヨー釣りをしていた。
「あっちのピンクと黄色のアイスクリームみたいなやつも取って♡」
「お姉さんとお兄さん、すごいんですね。高校生になると、こんなにヨーヨー釣りが上手くなるんだ……」
「「えっ?」」
ユナと一緒にいたもう1人の女の子、モモカにそう言われて、思わず手を止める悠里と穂乃果。しかも周りの人達にクスクスと笑われてる気がした……
「そ、そんな。別に高校生だから上手くなったっていう訳じゃなくて」
「右に同じく。僕の場合は、元々ヨーヨー釣りが少しだけ自信があっただけだから……」
「「?」」
穂乃果と悠里の答えを聞いたユナとモモカは、よく分からなかったのか首を傾げるのであった。
「はい」
ある程度の取ったヨーヨーの内、ユナが欲しがってたピンクと黄色の柄のヨーヨーを渡す穂乃果。
「なんかバナナ&ストロベリーアイスみたいな色だね♪」
「……あー、言われてみれば確かに。そういえば、そのフレーバーって実質期間限定らしいよ? 一部のアイスクリーム屋にしかないんだよね。僕は好きだけど」
「お姉さんとお兄さんも好き? ユナも大好きなの!」
嬉しそうな反応をするユナ。寧ろ、アイスクリームが嫌いな子供は少ないんじゃないかと悠里は密かに思っていた。
「よくモモカと食べに行くんだ。音小からの帰り道……」
「ええっ!? あなた達って音小なの!?」
「あ、いえ、違います。私達は山の上小学校の生徒で……」
「……あー。あの学校の生徒なんだ」
なるほど。この子達は山の上小学校に通ってるのかと納得する悠里。てっきり自分や穂乃果と同じ音小かと思ってたが。
「そういえばさっき音小の帰りって言ってたよね。あれって?」
「ああ。それはモモカに誘われて、合唱クラブに入ってるんです。日曜日に音小の校舎でやってる合唱クラブ」
ちょっと気になった悠里が2人に訊くと、ユナがそう説明してくれた。
「あああ! それってことりちゃんがボランティアで手伝ってるやつじゃない!?
「え、お姉さんとお兄さん。ことりお姉ちゃんのお友達なんですか!?」
「……友達っていうか、僕とほのちゃんの幼馴染みだよ」
自分の隣ではしゃいでる穂乃果を見て、さてどうしたものかと思ってた時だった。
「あああああ!! いた!! お姉ちゃん!!! こんなとこで何やってんの!?」
「
「……それと
「こんにちは」
振り返ると、穂乃果の妹の
「はぁ……もうこれだから」
溜息を吐きながら呆れ顔の雪穂。まるでうちの姉はどうしていつもこんなだろうかと言いたげな感じが窺えた。
「今日はμ'sのステージあるから絶対見に来てって騒いでたのお姉ちゃんでしょ? 折角だから友達も誘って連れてきてあげたのに! ゆうり
「ゆうちゃん~、雪穂が穂乃果をイジメるよぉー……」
「いや、今回ばかりは雪穂ちゃんが正しいと僕は思う」
「ええ~!?」
よく見ると、雪穂と亜里沙の他に彼女達のクラスメイトらしき子がもう1人居た。3人で学園祭に来てくれたのだろうか?
「そんな事してないで、早く行きなって! もうステージまで1時間切ってるんだよ!?」
時計を確認すると、時刻は12時10分だった。
「……あっ、屋台の焼きそばとわたあめ食べ損ねてる。これは由々しき事態だよ」
「「そっち!?」」
悠里の一言に思わず突っ込んでしまう高坂姉妹。
「ほら、ほのちゃん。早く行かないと、みーちゃんに怒られるかもよ?」
「えー! それはやだよー! じゃあμ'sのステージ、あとで絶対見に来てね」
そう言うと穂乃果は悠里に先に行くねーと言って、その場を後にした。
「あのお姉さんがμ'sの人!?」
「ウソー!? 私達、街でポスター見て、μ'sのライブを見に来たのに」
ユナとモモカもまさか穂乃果がμ'sのメンバーだとは気付かず、急いでライブが行われる講堂に向かうのであった。
「やれやれ……」
「あ、あの……」
「?」
2人を見送った後、雪穂と亜里沙の友達が悠里に声をかけてきた。
「あ、あの。わ、私……水無月先輩のファンです! さ、サインください!」
「サイン? このCDにすればいいの?」
「は、はい……!」
サインして欲しいと渡されたCDには、『No.39』と右上に記されてあった。
「雪穂。悠里さんって、そんなに有名なの?」
「うーん、それがよくわかんないんだよねー。お姉ちゃんが、ゆうり兄が凄い人だったんだーとしか私も聞いてないから。なんかスクールアイドルに関係ある事って言ってたけど」
「ハラショー!」
「……(ほのちゃん、どんな説明をしたのさ)」
サインしながら雪穂と亜里沙の会話を聞いてた悠里だが、穂乃果が雪穂にどんな説明をしたんだろうと内心思っていた。
「…あっ、思い出した。確かいつもライブで、新曲の案をくれた子だ」
「っ! は、はい……!」
悠里に覚えてもらえてたのが嬉しかったのか、少女は笑顔で答えた。
「この前の新曲、凄く良かったです! CDに付属してた楽譜、私見つけてすぐに練習しました!」
「隠し楽譜、見つかっちゃったか……はい。サイン書き終わったよ」
「あ、ありがとうございます! 一生大事にします!」
「「……」」
それを見てた雪穂と亜里沙は唖然としていた。実は彼女、クラスではかなり控えめな子で、こんな感情豊かに話してるのを見たのが初めてなのである。
「じゃあ僕もみんなのところに行くよ。あ、それと……」
「「「?」」」
思い出したと言わんばかりに……
「μ'sのライブが終わったら、僕の気分次第だけど……
意味深な表情で3人にそう言うのであった。
「あー! ゆうちゃんがまた楽しそうに話してるー!」
「お姉ちゃん!? まだ行ってなかったの!?」
「だってなんか嫌な予感がしたんだもーん!」
何故か戻って来た穂乃果を見て、まだステージ会場に行ってなかったのか……と思う悠里なのであった。
読んでいただきありがとうございます。
なんとか間に合って良かったです……(苦笑)
次回の投稿は、せつ菜ちゃんの誕生日になると思います。
頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。