ことりちゃん、誕生日おめでとう。
楽しんでいただけると嬉しいです。
それではどうぞ。
とある休日のショッピングモール内の喫茶店にて。
「こんなに可愛いノートが買えて、よかったぁ♪」
「……(10冊近くのノートを買うのって、普通……なのかな?)」
目の前の上機嫌な幼馴染み、
「今日は、付き合わせちゃってごめんね。ゆーくん、疲れてない?」
「んー? 大丈夫だよ。今もこうやって休憩してるわけだし」
そう言って、注文してたレモンティーを優雅に飲む悠里。なんか様になってるな~と思ったことり。
「最近、考え事をすることが多かったから、たまにはのんびりゆーくんと過ごしたくて……♪」
「……そっか」
ふぅ、と注文してたミルクティーを飲んで一息つくことり。
「そういえばさ? 今日は雑貨屋しか回ってないけど、洋服は見ていかないの?」
「あ、でも……
「……」
ショッピングモールに来てから、雑貨屋しか回ってない事に疑問を感じた悠里は、ことりが好きな洋服は見てかなくていいのかと訊いたが、ことりは遠慮がちに今はいいかなと言った。
「……まあまあ。ファッションの流行とやらは、変わっていくんでしょ? 今日も一応見ておこうよ」
「わ、わわっ。ゆーくん待って~っ」
柄にもない事を言ってるなぁと思いつつ、悠里はことりを連れて喫茶店を後にするのであった。
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「来たのはいいけど、どのお店に入ればいいかな……って、あれ? ことちゃん?」
ショッピングモール内の洋服コーナーに移動した2人。さてさて。どのお店に入ればいいのかと思い、悠里はことりに訊くが彼女の姿がない。はぐれてしまったかと思ったが……
「わあああっ……!! このお洋服かわいいっ♡」
その心配はなく、彼女はすぐ近くの洋服屋に居た。
「前のシーズンは、淡いパステルカラーだったのに、新作はこんなにビビッドな色を入れるなんて! それなのにこっちはシックなモノトーンで纏めてる……バランス感覚が凄いんだ」
「ことちゃん、見つけた」
「アクセサリーはボリュームがあって……ふむふむ、なるほど~!」
「……」
ことりに声をかけるが、どうやら洋服に夢中なようなので、彼女が気づくまで、
「あっ!」
ここでことり。悠里が隣に居る事に気づいた。
「ご、ごめんね、私一人で夢中になっちゃって……」
「気にしないで。ついさっきまで、ことちゃんの楽しそうな表情を写真に収めていたから」
我ながらよく撮れてるでしょ?と、少しドヤ顔でスマホをことりに見せる悠里。そこには洋服を見て幸せそうな表情をしてることりの姿が写っていた。
「へっ……? は、恥ずかしいから、消してよ~!?」
「ほのちゃんとみーちゃんしか見せないからさ。……ダメ?」
「それもダメ~!」
穂乃果と海未にしか見せないからと悠里は言うが、ことりからしたらたまったもんじゃない。悠里の事だから、自分の母にも見せそう。母にからかわれるのだけは絶対に嫌だった。
「……じゃあこの写真は僕が
「こ、個人的に……!?(ゆーくん、な、何に使うんだろう……も、もしかして……
「……ことちゃんが何を考えてるか想像つくけど、違うからね?」
顔を真っ赤にしながら悠里をまじまじと見ることりを見て、悠里はことりが何を考えてるのか解ったのか、違うと言い切った。
「な、何の事かなあ……? あ、ゆーくん見て、あそこ……」
「?」
話を逸らすように、ことりは人混みの方を指を差した。なんか微妙に騒がしい。少し気になった2人は行ってみる事に。
「いいじゃん、俺らと一緒に遊ぼうぜ」
騒ぎの正体は、5人の男達がことりと同じ159cmの少女をナンパしていた。
「────」
白いワンピースに白い帽子を深く被ったその少女は、表情こそ見えないが、遠目から見ても嫌がってるのは明らかだった。
「おいおい、周りの奴らが見てっけどいいのか?」
「平気だろ! この子、意味わかんない言葉使ってるし、俺らに刃向かってくる奴がいれば、俺らでボコればいいだけだし?」
「ははっ! 確かにな!」
「しかもお前んとこの親父さん、お偉いさんなんだろ?」
「そう言うお前もだろ? 俺らは
男達の会話を聞く限り、周りの人達も少女を助けてあげたいが、
「ゆーくん、どうしよう……このままじゃ、あの子……」
「……」
「ゆーくん?」
「……ごめん、ちょっと行ってくる」
ことりが不安そうに悠里を見るが、悠里はナンパされてる少女を目を凝らしてジッと見た後、怪訝そうに呟いた後、早足で現場に向かった。
「────!」
「おい、何逃げようとしてんだよ」
なんとか隙を見て逃げようとした少女だが、腕を掴まれてしまった。
「退屈はさせないからさ、な?な?」
「そうそう。俺らと楽しい事しようぜ?」
男達の目は、変な事を期待している目だった。もうどうしようもないのかと思ったその時。
「…僕の連れに何か用?」
「!!」
声が聞こえた方に顔を向けて見ると。
そこには、少女も予想していなかった人物、悠里が立っていた。
「なんだテメェは!」
「陰キャは引っ込んでろ!」
文句を言う男達に悠里は静かに溜息を吐きながら……
「あ"?」
「「「「「ひっ……!」」」」」
腹の底から低い声で男達を威圧した。男達は情けない声を出しながら後ずさった。
だがこういう輩は脅したところで意味はない事を悠里は知っている。まして
なので……
「…お前らの親が上級国民だろうが、僕はそんなのどうでもいいよ。
「はっ! なんで陰キャのテメェの言う事なんか聞かなきゃいけねえんだよ!」
「おい、この子を人質にすれば、その陰キャも大人しくなるんじゃね?」
「可愛いじゃん! しかもかなり上玉じゃね!?」
脅してみたが、なんと1人の男が近くに居たことりを人質に取ったのだ。ことりの容姿を見て、ウッヒョー!と歓喜になる男達。
「ゆ、ゆーくん……」
「……」
「という事で陰キャ! 怪我したくなかったら、その子を渡せ。ま、素直に渡したところで、お前がボコられるのは変わんねーけど!」
「…………」
「あれれ? 急に黙っちゃってどうしたのかな? もしかして、怖くなっちゃったとか?」
「…………」
「言い返せないって事は図星じゃね?」
ギャハハと笑いながら、悠里を煽る男達。
だが次の瞬間……
「……お前ら、少し頭冷やそうか」
顔を上げるとそこには、瞳のハイライトを消し、ドスの利いた声と殺気さえ含んだ眼で男達を見る悠里が居た。
周囲の人達は悠里の事を知っていたのか、男達を憐みの目で、しかも合掌までしていた。子連れの親は自分の子供に『あなたは人を見下したりしちゃダメよ?』と注意していた。
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その後はもう大騒ぎで、少女の連れと思われる黒服達が惨状を見た瞬間、慌てて飛び出して悠里を抑えていた。
その時の悠里の表情はことりも少し怯えるくらい怖く、例えるなら"悪魔か死神"に近かった。ことりは今後、悠里を絶対に怒らせないようにしようと誓った。穂乃果と海未にも教えておかなきゃと。
「クソ! この縄を解けよ!」
「そうだそうだ!」
「無礼者! 誰に向かって口を訊いている!!」
縄に縛られ騒ぐ男達を黒服が黙らせる。他の黒服達は周囲の人に聞き込みと何処かに電話をしているのが確認できた。
「
「だからそう呼ばなくても……」
「いえ。そう言う訳にはいきません」
「?(悠里様……?)」
黒服が悠里の事を『様』付けで呼んでる事に首を傾げることり。
「まあいいや。多分そいつら全員、○○○中学出身だと思うから、僕としては手間が省けたよ」
「「「「「っ!!?」」」」」
「なんで俺らの出身校を知ってるんだよって顔してるけど、
淡々と話す悠里に男達は徐々に顔を真っ青にした。
「それで処遇だっけ? うん、
「はっ!! おい、連れて行け! お前とお前は俺と残れ」
「「はっ!」」
悠里が命令すると黒服の1人が他の黒服達に指示し、男達を連行して行った。
「あの、悠里様……こちらの方は?」
「…幼馴染みの南ことりちゃん」
「は、はあ……し、しかし私も話は聞いておりましたが、
「えっと……」
悠里の言葉を聞いた黒服は、ことりを戸惑いの表情で観察していた。しかし瓜二つというのはどういう意味なのだろうか?
「悠里様、この度は
「あ、いえ。怖かったけど、ゆーくんに助けてもらいましたし……え? 姫様?」
黒服が頭を下げて悠里とことりに謝罪した。そしてことりは気になる単語を聞いて首を傾げた。
「あー……ミナ、帽子を脱いでもらってもいい?」
「……」
「!!」
悠里がそう言うと、ミナと呼ばれた少女が深く被っていた帽子をゆっくりと脱いだ。その正体を見たことりは驚愕の表情になった。
何故なら、彼女は
「それでミナ? 護衛も付けずにショッピングモール内を1人でうろつくのはちょっと頂けないんだけど……」
「その、弁明とかは……」
「内容によるね」
なんと声も自分と同じだった。ことりから見れば、自分のそっくりさんが悠里に小言を聞かされてるように見えるという、複雑な光景だが。
「ここじゃなんだから、どっかの喫茶店で
「ぴ、ぴぃ!? あ、えっと……その……はい」
「ことちゃんもそれでいいよね?」
「え? う、うん!(ふえ~ん、ゆーくんの目が笑ってないよぉ~!)」
笑顔だが目が笑ってない悠里を見て、2人は頷くしかなかった。
そして自分と瓜二つの少女、ミナとの出逢いが後に悠里の運命を変えられる大事な選択の機会を得られる事を、ことりはまだ知らない。
読んでいただきありがとうございます。
なんとか間に合って良かったです……(苦笑)
次回の投稿は、ランジュちゃんの誕生日になると思います。
頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。