僕の名前は章(あきら)。趣味で小説を書いている。
でも、将来は小説家になってみたいなぁ…とか考えたりして。
なんていうけど全然小説が書けないんだよなぁ。

好きなことと得意な事って必ずしも一致するとは限らないよね。

でも、そんな僕の元に妖精さんがやって来た。
小説の書き方を教えてくれるらしい。嬉しいなあ。

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教えて妖精さん

僕は今日から趣味で小説を書く事にした。

パソコンの前でこうして何時間も悩んでいるけれど、ちっとも文字数は増えない。

 

ひょっとして僕は小説を書く才能がないのかなぁ。

 

『何でも才能のせいにするのは自堕落が過ぎるよ!』

 

少々気の悪い事を言う声が聞こえた。見回しても声の主はいないし、一体誰なんだろう。

ついに幻聴が聞こえたんだろうか。毎日、起きる度に枕に散った髪の毛を思い出してストレス過多を心配していた。

 

そんな事を考えていると何もない中空からポン!と背中に羽の生えた妖精さんが出てきた。

 

「やあ!僕はノベル太郎!君は小説太郎だね!」

 

「いえ、章(あきら)です」

 

「細けぇ事気にするヤツだな、とにかく僕は小説の書き方を教えてあげるためにやってきた妖精さんだよ!」

 

わあ、これは驚いた。小説を書こうと思って悩んでいたら小説の妖精さんが出てきたぞ。

とっても嬉しい事だけれど、結構口も悪いしうざそうだ!

 

妖精と言っても僕と同じぐらいのサイズだ。大きいなあ、妖精。イメージと違う。

 

「ねぇノベル太郎君、君は小説で賞を取ったり人気になった作品とかある?」

 

「ないよ。どうして?」

 

「僕が教えてもらいたいのはちゃんとした実績のある経験者からなんだ。君みたいにネットで頻繁に目撃される上から目線の評論家気取りに小説の書き方なんて教わりたくないよぉ」

 

「これがプライベートだったら、ノミと金槌でお前の脳天をかち割ってやるのになぁ。まあいいや。君よりは書けるんだし、聞いて損はないんじゃないかな」

 

ノベル太郎の言う事を聞くのは癪だけれど、これ以上反抗しても特になる事はなさそうだ。この部屋は彼によって結界が張られ、抵抗しようものなら殺してやらんとばかりにトレンチナイフをちらつかせている。

 

怖い妖精さんだなぁ、もしも部屋の外に出られたなら電動芝生バリカンがあるのに…。仕方がない、僕は彼の言う話を聞く事にした。

 

 

 

 

「それで、小説太郎君はどんな小説を書くんだい?」

 

「人間の着用済のパンツを頭にかぶり呼吸する事で母星とは異なる大気である地球圏内での活動が可能となるパンチュ・カブルと言う宇宙人が、様々な人間のパンツを奪っては被りながら墜落して故障した宇宙船を修理して母星へ帰るという話を書こうと思うんだ」

 

「死ね」

 

「よく聞こえなかった」

 

「ダメだよ小説太郎君、そんなんじゃ。君は誰かに小説を見てもらいたいんじゃないの?」

 

「うん、1日あたりの平均閲覧数が100を超える様になりたい」

 

僕はノベル太郎から引っぱたかれた。とても痛い。

小学生の頃、友達を本気で怒らせてしまって殴られた時ぐらい痛かった。

 

手に持ってる鉛筆であいつの頬を抉ってやりたい気持ちを必死に抑えて立ち上がる。

 

「もう、痛いなあ何するんだよ」

 

「誰かに見てもらいたいんだったら自己満足な内容じゃダメだ!時代によって流行と言うのがあってね、あまり独特過ぎる設定というのは誰も関心を向けてもらえないんだよ!そういうノリが許されるのは一握りの天才と、ネームバリューのある人だけだよ!」

 

「どう言う事なんだい?」

 

ノベル太郎はパソコンにタイピングして小説を書きだした。えげつない速さだ。

こいつネットで長文レスバやってそう。

 

描かれた小説の内容はこうだ。

 

 

”僕は時間の管理人のアルベトディ。宇宙要塞、クロマネドのハンケラク部隊に所属する伍長だ。今日も元気に地球の平和を守るために、アグランデネブが襲来してこないか見張りをしていた。そこに現れた謎の女性、グエハム。彼女渡された謎のカード。このアイテムが僕の人生を変える事になるとは思いも知らないで…”

 

「どうだい?」

 

「クッソおもんなさそう!」

 

僕は引っぱたかれた。こいつ、丸腰だからと調子に乗ってるけど拳で殴殺してやろうか。

そう思ったけど、奴の持ってるトレンチナイフの事を思い出して諦めた。

 

人間は血と肉と骨の詰まった袋の様なものだ。どれだけ鍛え上げても、斬撃や刺突などの攻撃で致命傷を負ってしまう可能性は十分にある。危険な思想を持っている相手に対しては下手に挑発する行為は決して賢いとは言えない。

 

とはいえ、どうしたものだろう。彼から解放されたとしてどうやって彼を警察に突き出したものか…。

妖精に法が適用されるかもわからないし、下手すると僕はお薬をキメてると疑われかねない。

 

「いいかい、これだけ作品にあふれた世界じゃあまり新しい作品の設定を覚えたくないんだよ。だって、その作品で覚えた情報は他じゃ役に立たないからね。だから、既に使われた題材をもとに作るのが賢いんだ」

 

「つまり?」

 

彼はまたパソコンに向かって文字を打ち出してきた。うわぁ、指がつりそう…。

 

出来た内容はこうだ。

 

 

”私は姫騎士。オークにさらわれてしまった。今日は捕まって3日になる。

不本意にも仲良くなってしまい拘束は緩くなってきた。話は通じる。

後はどうにかしてここを脱走し、城へ戻るだけだ。

そんな事を企てているある日の事だった。オークの長はなんと我が国の大臣で…”

 

「どうよ」

 

「見知った題材とあって入り込みやすい内容になってるけれど、正直あまり興味が惹かれない」

 

僕はトレンチナイフで腹部を刺された。ギャグ補正があったから無事で済んだ。やったね!

 

「とにかく、読んで欲しい小説を書くには読者に親切な内容にしなきゃいけないんだ。いいかい、難解である事と不親切である事は違うぞ。内容を簡単にするにせよ難しくするにせよ、極力分かりやすくするように努める必要があるんだ」

 

わあ、とっても面倒くさいぞぉ。僕なんかにできるのかなぁ。

 

ノベル太郎の指導の事もあり、僕の各小節の内容はかなり変更された。

彼の協力も含め、内容は次のようにすることにした。

 

”俺の名前はNTR太郎。恋人を誰かに寝取られるのが人生目標だ。

そのために快楽堕ちしそうな人を恋人にした。いかにも性欲高そうな屈強な男と友達になったし、他人の恋人に手を出しそうなDQN男と友達になった。自分よりスペックの上の知り合いに寝取られる…考えるだけでも興奮する。目の前で行為に及ばれるもよし、ビデオテープを送られるもよし。

しかし、事はうまく運ばず僕は恋人を寝取ってもらうべく計画を立てる…”

 

…誰が読みたいんだこれ。

 

 

 

 

「あーん、駄目だあ!ちっとも執筆が進まないよお!」

 

「んもー、君は何をやっても駄目だなぁ。駄目が服を着て歩ているというか、駄目の擬人化というか」

 

「ぐすん、酷いなあ。君の耳に猫じゃらしの茎を入れて鼓膜を突きたくなっちゃう」

 

「それで、どこでつまずいているんだい?」

 

”俺は彼女と相思相愛でラブラブだ。だけど性癖の都合上、寝取られたい。

たまらなく悔しいことだが、それが好きなんだ。さてどうしよう。”

 

「全然進んでないじゃないかぁ」

 

「だからそうなんだよぉ」

 

「いいかい、とにかく文を長く書くんだ。長ければ長いほどいい。こんな風にするんだ!」

 

そこにバナナがある。

 

テーブルの上には、まだ黒い点もない新鮮なバナナが置いてある。

 

宗教的な意匠の施された、お世辞にも趣味のいいとは言えないデザインのテーブルの上にはまだ黒い斑点のないバナナが置かれていた。熱帯、亜熱帯地域で栽培されるとあって高温多湿の環境を好み日本での栽培は中々難しいと聞いていた事がある。

 

戦後は高級品だったらしいが、時代の変遷もあってこうして子供のお小遣いでも買えるリーズナブルな価格になったとか。そんなバナナが一体どうしてこんな所に置いてあるのだろう。

 

「こんな風にネットで調べた知識とかを交えながら長く書けばいいんだよ!」

 

「簡単に言ってくれるなぁ…」

 

「キャラ毎にバックグラウンドストーリーとか、設定を作っておくとよりキャラの行動原理を把握しやすく物語の構成に役立つよ!長編ならプロットを組むのもいいね!」

 

うへぇ…。小説を書くのって意外に面倒くさいんだなぁ。

思ってる事とか、映像を文章に書き起こすのってとても大変。

 

文字数稼ぎなんて一体どうやればいいのかちっともわからないよぉ。

 

「うーん、でも今日はとっても疲れたよ。お腹も減ったし、そろそろ休んでもいいかい?」

 

「駄目だよ。この小説はシリーズ化したくないからまだ説明は続くし君は小説を書かなきゃいけないんだ」

 

くそっ、扉が開かない。困った、このまま部屋から出られないと僕は餓死しちゃうぞ。

 

「1話書けばいいんだよ。3000文字か、6000文字か、9000文字以上。でないとここから出さないからね。あるいは、僕と(自主規制)するかだね」

 

ぐすん。仕方がない。こうなったらちゃんと3000文字以上書こう。

パソコンを扱いなれない僕が長時間キーボードを叩くのはとっても辛い作業だった。

 

ああ、今日のご飯はお好み焼きが食べたいなあ。

 

 

 

 

「ストップ!ストップ!駄目じゃないか!」

 

「んもう、何さ!」

 

「セリフが多すぎるよ!テンポは良くなるけど、これはSSじゃないんだ小説だよ!ト書きが少ないんだよ!」

 

ト書き…。ああ、括弧のない地の文的なアレか。

というかト書きと地の文ってどう違うんだ?

 

ああ、悲しい。ここの部屋はうぃーふぃーは飛んでないから調べられないんだった。

ネット環境がつながってたら調べるんだけどなー目の前にノベル太郎がいるしなー。

 

「セリフの対比なんて考えてる余裕ないよぉ」

 

「いいかい、読みやすい小説のト書きとセリフの対比は7:3だよ。セリフばかりになり過ぎないように気を付けるんだ。バランスが大事だよ」

 

ああもう、こいつうるさいなぁ。生きたままこいつの腹を掻っ捌いて小腸を取り出して、目の前で二重飛びをしてやりたい。

 

大体、説明ばかりになってしまう場面では一体どうやってト書きの文字数を稼げばいいんだ。下手に改行すると執筆してたソフトでは理想の文体が別のサイトにペーストすると改行が変なところになってしまうようし面倒くさいったらない。

 

とは言え見直してみれば僕の小説は確かにセリフが多くなり過ぎていたかもしれない。仕方がない、これからは意識してト書きを増やしていくとしよう。

 

「個人的には小説を読むのにちょうどいい文章の量が6000文字ってイメージだけど、あまり文字を読むことになじみがない人に向けては3000文字ぐらいにするといいかもしれないね」

 

「書くのが苦手って理由で3000文字でいい?」

 

「まぁ内容が面白ければ3000文字でも9000文字以上でもいいよ」

 

面白くなければ1000文字でも100文字でも変わらないんでは…。

 

長文を書くのはとっても疲れるし、シリーズ化するなら3000文字ぐらいにしたいなあ。

 

 

 

 

「ああ、目が乾燥してきた…」

 

不慣れで1話とは思えない速さの展開になってきてしまったが様にはなってきただろう。

ずっと同じ体勢で、缶詰状態で書くというのはまるで拷問の様だ。

 

ああ、こんなことなら小説を書こうだなんて考えるんじゃなかった。

 

「もうちょっとだから我慢してよ。ほら、もう4000文字超えた」

 

「うげぇ…。1話という一括りにするにちょうどいい区切りが見つからなくて惰性で書いてたけどそんなに書いてたのか…」

 

今NTR太郎がマジ泣きでDQN男に恋人を寝取るように懇願してるシーンだ。

見た目と日ごろの言動に対して存外にもまともな感性と倫理観を持ち合わせていた彼の友達は恋人に手を出そうという人がおらず半狂乱になってしまっている。

 

主人公の性癖に気が付き、そのために利用されていたことに気づいたヒロインは冬に行くために買っていたスキーのストックを持って主人公の元に向かっている。

 

何度も何度も書いては消してを繰り返しているうちに指というか指の付け根?手の付け根?感覚的に特定しがたいどこかが痛くなってきていた。

 

「正直、ノベル太郎と(自主規制)してもいいからここから出たい」

 

「あれは冗談だから気にしないでさっさと仕上げてよ」

 

そんな事わかってるよ…。

 

僕は一度立ち上がると窓を開けて新鮮な空気をいれ、ストレッチをする。ずっと同じ体勢でいる事も部屋の空気が悪いこともよくない。こうしてたまに体を動かして血の巡りをよくしなければ頭の巡りもよくなくなる。

 

もうちょっとの所まで来てる気がするのだがどうも上手くまとまらない。

 

「校正は最後にやるといいよ。そうやって書いてる途中で何度も読み返すと全然進まない」

 

「だって、誤字脱字があると恥ずかしいじゃないか。やっぱり何度も見返してしまうよ」

 

「仕方がないなあ。こいつを見てみなよ」

 

彼はスマホを取り出して僕に見せてくれた。そこにはヤングコーンという人物の小説の本文の画面が表示されていた。うわあ、誤字脱字だらけだ。よく投稿できたなこれ…。

 

「細かい事を気にしちゃいけない。君はアマチュアなんだからプロみたいに馬鹿真面目に誤字脱字のチェックなんてしなくていいんだよ」

 

「わかったよ」

 

校正は最後にする事にしたけれど、あんな風にはなるまいと思った。

僕は確かにアマチュアかもしれない。それでも、ネットに投稿するということは誰かが読むかもしれないのだ。

 

その文章に誤りがあって読者に不快にさせる様な事があってはならない。

常に読んでくれている読者がいる事を忘れないように意識しよう。僕は心に誓った。

 

日も暮れて気が緩くなりがちな自身に喝を入れてまた執筆作業に戻った。

 

 

 

 

…深夜になった。僕はようやく小説を書き終えた。

 

「やっと書き終えたよ」

 

「おめでとう」

 

ノベル太郎は僕の書いた小説を読んでくれている。校正も兼ねて。

これだけ時間をかけて書いたというのに読み終わるのはあっという間だった。

 

彼は静かに一息つくとうなずいた。

 

「粗削りだけど悪くないよ。面白いと思う」

 

「よかった」

 

「今日1日という短い時間だったけど、君はもう小説が書けるようになったし…。これでお別れだね」

 

彼は部屋の鍵を開けてくれた。

にこやかに笑うと、身体が透けていく。

 

僕は静かに彼の手をつかんだ。

もう触れるはずがない。そう思った彼は驚いた様子だった。

 

「どこへも行かせない。君はここで僕と小説を書くんだ」

 

「でも、もう行かなきゃ…」

 

まだ1話なんだ。これっぽちしか書いてない。ノベル太郎がいなきゃ僕は続きが書けない。

だから今日から彼にはここにいてもらう事にしたんだ。

 

「君のアドバイスが欲しい…。君に校正して欲しい…」

 

「え、えっと…そうだな。物語には着地地点という物がある。お約束だな。奇を衒うのはいいが、ちゃんとしたオチを用意してあげないと読者はがっかりしてしまうぞ」

 

逃げようとする彼をもう1つの手で掴んだ。絶対に逃がさない。

書き終わる事はないと思っていたんだ。でも書き終えられるかもしれない。

 

思い出したんだ。僕は確かにここで死んだ事を。

 

服毒自殺だった。夢を追って家を飛び出して、小説を書いてたはいいけどすぐに何もかも上手くいかなくて…。契約先は詐欺だった。前金なんてものを払ったっきりだ。親の言うことに耳を貸すべきだった。

 

完成させてから死にたかったけど、家から立ち退かなければならない日が近く気が気じゃなかった僕には目の前の小説を完成させられなかった。

 

事故物件に引っ越してきた男…そいつが僕の世界に迷い込んできてしまったらしい。

 

死してなお完成しない小説の事で思い悩む僕の元に降りてきた天使。逃がしてなるものか。

 

「手が冷たい…。お前、生きてるんじゃないのか…!」

 

「温かい…ノベル太郎の体温はとても温かいね…」

 

半透明だった彼をこの世界につなぎとめる事に成功した。彼の姿が元の不透明に戻る。

 

ああ、ああ…僕だけの友達。僕だけの読者。

良かった。小説には読者がいなくっちゃ。

でなければ完成してもつまらない。読者がいなきゃ書き起こしても文字に仕方がない。

 

「君が欲しい…もっとアドバイスが欲しい…」

 

「ひいい…。えっと、えっと…。キャラの知ってる情報管理をしっかりするんだ。そこを間違えると途端に物語がチープになるぞ。感情だってそうだ。伏線でもない限り会ったばかりの相手にいきなり世界が敵になっても君を守る的な好感を持つような事があっちゃならないぞ」

 

彼のおびえる表情が素敵だ。もっともっと間近で眺めたい。嫌がる表情も素敵だ。

胸板が擦れ合う。温かい。血の通る感覚というのはこんなものだったか。

 

死に間際、1人で寂しかった。この世から孤立するみたいで涙が出た。悲しかった。

 

「なあ、この世界にはもう僕達2人だけだ。これから一緒に暮らそう」

 

「そ、それからジャンル詐欺も駄目だ!純愛を謳ってNTRを書いたり、おねショタを謳ってショタおねを書いたりすると危ないぞ!ネットの怖いお兄さんお姉さんがやってくるぞ!」

 

顔の高さが同じになった。このまま近づけば接吻だってできる。

いいんだ。僕たちの物語はここで始まって終わる。だから恋愛だって成就していい。

 

それが掌編という物なんだ。

 

「頼む章…、僕はまだ死にたくない…」

 

「ノベル太郎……。そっか、ごめんな」

 

 

 

 

 

僕は目を覚ました。

 

確か、荷解きをしているうちに疲れて寝てしまって…。

時計の針は深夜0時を差していた。僕の目には涙があふれる。

なんだろう。訳も分からずたまらなく悲しい。

 

BGMを再生するために起動させておいたパソコンは文章作成ソフトが起動していた。

 

『ごめんね、ありがとう』

 

そう書いてあった。

 

「章……」

 

いや、謝るのは僕の方だ。僕も間違っていた。

 

小説は楽しく書くべきなのだ。それを忘れていた。手法だとか、そんな事ばかり気に取られて思うような小説が書けないでいた。それを彼に強いてしまったのだ。何が小説の書き方を教えるだ。僕の方が彼から教わったのだ。

 

本来、物語は自由に書いていいもの。他人に読んでもらうためには、作品と呼べるまでのレベルに昇華しなければならない。それにあたって必要なのが僕が学んだような手法や形式など様々な知識なのだ。

 

自由に書いていい。楽しく書けばいい。ただそれだけの事を僕は最後まで言う事ができなかった。

 

「僕は最低だ…」

 

…僕は先ほどの文章をデスクトップに保存した。

 

それから新しく文章ファイルを立ち上げるとこれから書く小説について考えを巡らせるのだった…。




最近、ふとした時に小説の書き方を忘れるから書いてみた。
最後に唐突なホラー展開来るけどジャンルは何にすればいいんだっけ。

仕事の事とかプライベートの事で悩み過ぎて自分でも何書いてるか分からなくなってきた。いやそれはいつもの事だった。

何かもう塞ぎ込んできた。飽きるほどカニを食べて、心行くまでベッドで寝たい。

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